薬草つみに2(適当)




これの続き。


「あぁああ!?あんな足場が悪いところに!こ、こけ…!」
わが子が楽しげに歩いているのはまだいい。だがはしゃぎすぎてぬかるんだ地面にも速度を殺すことなくつっこんでいくから、危なっかしくて仕方がない。
そもそも俺はこの薬草採取任務とやらに、なぜわが子が同行しなくてはならないのかさっぱり理解できなかった。
四代目火影となった男はどうにも頭のねじが一本どころでなく外れているのか、欠片も話が通じない。
なだめてすかして、それでもだって楽しいですよで押し通す権力が、悲しいかなこの男にはあったのだ。
それでもわが子の危機にどうして黙っていられる?
いてもたってもいられずに三代目に詰め寄って、ようやっとこうして追尾の許可を得たわけだが。
なぜこんなことを息子に強いるのか。そちらの方が納得できない。おかげで息子には父ちゃんの馬鹿と…!
「鶏じゃないんだからコケって…あはははは!」
「わらっとる場合か!うちのイルカが…!」
それに、どうしてこの能天気馬鹿が公務を休んでまで着いてきているのか理解できない。
「ほら、いい加減子離れしてくださいね?」
女子供に好かれそうな美丈夫が、輝くような笑顔で偉そうに…いや実際火影ではあるが、だからといって親として譲れないものがある。
「子離れだとう!まだあの子は6つになるかならないか…」
「カカシ君はもうその頃中忍でしたね!」
「そんなもの規格外だ!うちの子はまだまだ子供で…一人で寝だしたのもついこの間なんだぞ!」
一人前の忍となって欲しいとは思う。それはイルカが望んでいるからだ。
忍でない職をのぞむのなら、俺はそれでもいい。幸せになって欲しい。ただそれだけだ。
「そんなんじゃカカシ君がかわいそうでしょ?」
「は?」
なぜあの銀髪小僧の名前が出てくるのかわからん。
確かに強い。そしてなぜかうちの子にご執心というか…。なぜあんなにもうちの子に四六時中張り付いていようとするのかがわからない。
隙を見せればいつの間にか側にいるし、一緒に遊ぶにしてはあの子供の方がたしか年嵩だったはず。
かわいいわが子が楽しげにしているのはいい。だが…あの子供の目が気に食わない。
傍から見ていてもあからさま過ぎるほどにわかる執着。
わが子が心配でならない。
それをどうしてこの男はかわいそうなどと…!
「だって、やっとみつけたお嫁さんのお父さんが、こんなに了見狭いなんて…」
「なんだとう!?」
「確かにカカシ君は一人っ子で、しかもご両親がいませんけど、すっごくすっごくいい子なんですよ!やさしくて先見の明があって、しかも強い!そんな子がだんなさんになったら、きっとイルカちゃんも…」
「ええい黙れ!ちゃんづけするな!気色悪い!そもそもうちの子は男の子だ!嫁を貰う予定はあっても嫁に出す予定などない!」
いつか幸せな家庭を築いて欲しい。そう願わない親などいるだろうか。
息子の選んだ相手ならどんな女性でもいい。だが…こんな幼子をだまし討ちのように取り込もうとするなど…看過できるわけがない。
「ま、それは本人たちが決めることですよね!もう手なんかつないじゃってるし、らぶらぶだし…」
「黙れといっているだろう!」
「煩くすると見つかっちゃいますよー?」
「く…っ!」
いちいち腹の立つ男だ。
…転げ落ちそうになったわが子を抱き上げて、それからそっと地面に下ろしている姿を見るだけで、平静ではいられないというのに。
あの子供は少なくとも中忍か、話によるとそれ以上の能力を持つと聞く。気付かれないようにしなければならないのはこの男に言われるまでもない。
「ほら!いきますよ!がんばれー!カカシ君!」
「黙れ!イルカ…!あぁ!だから足元をちゃんとみなさい…!」
「大丈夫ですって。カカシ君がついてるんだから」
「煩い!」
心配で心配で仕方がない。妻には任務であることのほかは何も言わずに家を出たが、帰ったらクソガキ対策を考えなくては。
…この隣の男への対策も。
不安と苛立ちに満ちた俺と男の道行きは、さほどの距離はないはずなのに恐ろしく長く感じた。


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子カカイル祭り継続中。
父ちゃんといっしょ編。親ばか二人。
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