とある上忍のけいかく14(適当)


これの続き。



今を得るために過去の己にどんなに苦痛を与えてでも一言一句たがわず同じ言葉を。

「ん、カカシ…?」
「イルカせんせ」
「うー…?え?あっ!」
「ねぼけてたの?」
「や、なっ!も、でき…んあ!まてって…!」
甘ったるい声にうっとりと目を細めた。気を飛ばしかけているのにキュウキュウ締め付けてくる中は相変わらず狭くて気持ちイイ。
ゆっくり腰を動かせば体を引きつらせてしがみ付いてくる。乱れっぱなしの吐息がうなじを擽り、すんと鼻を鳴らす音さえ俺を煽った。
かーわいいなぁ!もう!どうしようね?
「イルカせんせい。だいすき」
囁きながら奥まで突っ込んだら、可愛い声で鳴いてくれた後、蕩けそうな笑みを浮かべて頭をなでてくれた。力なんて碌に入ってないから、かき混ぜるみたいになっちゃってたけどね。
「カカシ。カカシ…」
イルカ先生は激しいのも乱暴なのも好きだ。っていうか、俺がそうした。
最初なんてほとんどっていうか…完璧無理矢理だ。
欲しくて狂いそうで、失い続けて痛みすら分からないくらい全部が遠くて、そんな最低の気分だったときにこの人を見つけてしまったら…我慢なんてできなかった。
そうやって強引に体の関係に持ち込んで、大人ぶって流そうとするのも許さずに徹底的に仕込んだ。何度も何度も体を重ねて、愛して欲しいと懇願した。傍から見たら絆されてくれるまで時間は掛からなかったのかもしれないけど、俺にとっては永遠に近いほど長かった。
壊してしまうのが恐いのに離れてしまうことなどできなくて、どうしても欲しくて欲しくて、この人を殺してしまう前にいっそ俺が死のうかと思うほどにこの人で一杯で、そうして許されたとき、しょうがねぇなあって泣き笑いの顔で抱き締めてくれたとき、このために生まれてきたんだと確信した。
今では恋人で、伴侶で、外堀も完璧に埋めて、誰にも取られない地位にまで上り詰めた。対外的にもこの人は俺のモノだ。この人の名も存在も、人生丸ごと俺に縛り付けて絡め取ってしまった。
…それなのに、こうやって今でも俺を子供をみるみたいな目で見る。こういう関係になっちゃったことに、未だに罪悪感を感じてるんだってことも知ってる。
それくらい、俺に惚れてくれてる。
「ごめんね。でも…でも俺のモノだ」
いつもならキス一つで真っ赤になる人は、今はすっかり飛んじゃってるから腰をくねらせて次を強請る。
「んぁ、あ…!」
「すき。だいすき」
この人だけが俺の運命。
…だから、ごめんね?
痛みも苦しみも全部このためなら、いくらだって支払うとも。
それらを全部丸ごと抱きしめてくれるこの人を手に入れるためなら。
そしてそれを受け入れるだろうことを知っている。全ては繋がっているのだから。
*****
「ふぅん?中々いい面構えになったじゃない?」
「…!」
久しぶりに会う男は、あの時と、二年前と寸分変わらぬ姿をして現れた。
先立った父によく似た顔に痛みを覚え、それから理解した。
あの人に会える。
「行くよ」
「ああ」
他の事はどうでもいい。ずっとずっと会いたくて抱きしめて欲しくて…抱きしめたくて、そのことだけで頭がいっぱいだった。
「素直だねぇ?」
クツクツと喉の奥で嫌みったらしく笑っている。いずれはこれになるのかと思うと反吐が出そうだ。
何故あの人の側においておいてくれない?
そう問い正しても、口を割ることはないだろう。
…うすうす検討はつく。そうしなければあの人が手に入らないからだ。
あの声が聞きたい。あの手で触れて欲しい。それに触れたい。
「早くしろよ。…それにこの術、どうやって作った?」
俺が飛ばされたときには気付かなかったけど、目の前の男が使えるなら、俺もいつかは使えるようになるはずだ。
そう気付いたらいても立ってもいられなくて、手当たり次第に書物を当たった。ヒントらしきものはつかめたけど、まだ形にもなっていない。
攻撃用の術はいくつかモノにできたけど、時超えは火影直轄管理の書庫にも僅かな記録しか見つける事が出来ないままだ。
「さあね?」
相変わらず憎たらしい。…その首筋に残る歯型はあの人のものだろうか。
あの人を、この男が?
その手の知識は前線に立つ以上はと、年齢に関わらず知識としては徹底的に仕込まれた。まだ誰にも触れてはいないけど、それがあの人ならいいと。それなのに。
「アンタまさか」
「いっちょ前に嫉妬?そういやもうできるようになってたんだっけ…?でもまだはやいよ?くく…!ま、ずーっと先だ。気が狂うほどにね」
そういう意味ではとっくに狂っている。あの人に関してだけは、理性を保てない。
あの人だけだ。全てを忘れたフリをして過ごしていても、この男を見たらもう駄目だった。
イルカ先生。早く、会いたい。
「早くしろ」
「ん、そーね。…ねぇ。あの人は最高でしょ?」
何を当たり前のことを。
最高だなんて、何かと比べる必要はない。唯一だ。たった一つ、あの人だけがあればいい。
「お前を殺せたら」
そうしてその頭に詰まった術を全部奪い取れるなら、俺はきっと躊躇わないだろう。
先のことなど知ったことか。あの人に会えるなら。
「あの人が泣くよ?カカシカカシって名前呼んで泣くよ。だからお前も怪我なんかできるだけしないでよね」
この目は…嫉妬か、怒りか。
どっちでもいい。
「連れて行け」
「言われなくても。さ、行くよ」
まだ俺の倍近くある。早くこの男と同じ位強くならなきゃ。
あの時と意味が違う。抱き締めるだけじゃきっと物足りなくなる。追いかけて捕まえて、俺だけの物にするために。
視界が歪む。あの日と同じに。
内臓をよじられるような苦痛も気にならなかった。その先で待っている人のことだけを考えて、むしろ歓喜に震えさえした。
「イルカ、せんせ、い」
「…あーぁ。やだねー?…ま、俺だから当然か」
謝る必要なんてないよねと、一人ごちたのを最後に、世界が暗転した。

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適当。
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