晩夏9(農家)


これの続き。


「あんた、やりすぎだ…!」
睨みつけてくる瞳が潤んでいてまた腰が疼いた。
…自覚はしている。途中でまずいとも思った。
でも止められなかったんだよねぇ…。あんまりこの人がかわいくて、俺を…多分無自覚に煽るから。
「ごめんなさい…」
素直に謝ったのは反省してたのもあるし、イルカ先生はうだうだいい訳するのが嫌いだからだ。
腕の中の温もりをぎゅっと抱きしめて、それから上目遣いで許しを請う。
だってもしも嫌われちゃったりなんかしたら、俺は生きていられない。
今でさえ欲情しながら冷や汗をかくなんて、我ながら器用な真似をしでかしてるくらいだ。
これでもし、出て行けなんていわれた火には…自分でも何をするか分からない。
「折角、あいつらが気を使ってくれたからって思ったのに…ちょっとは加減しなさい!」
「はい!ごめんなさい…!」
あの時続きなんて言われなければ、もうちょっと持ったはずだ。
そもそも理性を盛大に引きちぎったのは、イルカ先生の方だと思わなくもなかった。
だって真面目だし一生懸命だしかわいいしかっこいいし男前だし!
それなのにエロいなんて最高でしょ?男なら我慢できないでしょ?…あんな風に最愛の人に誘われたら。
あの時の顔…自分で言ってるくせにちょっと恥ずかしそうにしてるもんだから、俺の股間を直撃だった。
でも素直に謝る。
…イルカ先生に痛い思いをさせたかったわけじゃない。
掠れた声も水の膜が張ったみたいに潤んだ瞳もほてったままの体も、全部が俺を誘うけど、今は我慢だ。
だってもうすぐ…もうすぐ誕生日なんだし!
そのときだ。俺の考えを読んだかのように、イルカ先生が毒づいたのは。
「く…っ当日は好きにさせませんからね…!」
「ええ!?でも、お誕生日なのに…?」
思わず情けない声が出た。
我ながらびっくりするほど哀れっぽい声だ。
イルカ先生もぎょっとしてる。
…でもだって!折角の誕生日がもうすぐなのに!
そんな日に恋人に触れられないかもって思ったら、この世の終わりが今きてるんじゃないかって思うじゃないか。
「はぁ…もう。しょうがねぇなぁ…」
「ふへ?」
いきなりほっぺたをつままれた。
ちょっと痛い。でもイルカ先生がひっぱるからそのまま逆らわずに従った。
少しずつ近づく情交の名残を宿した顔に、こんなときだっていうのにドキドキする。
そして。
「ん」
「んん!」
ちゅーしてる。今。しかもイルカ先生から。
「…これで、今日は我慢しなさい!」
イルカ先生はやっぱり照れたようにふいっと顔を背けた。
「ふぁい…!」
どうしよう。心臓が騒ぎすぎて苦しい。
だってイルカ先生が自分から…もう今すぐ踊りだしそうなんだけど!
「はぁ…ほら、寝ますよ?」
「はい!」
「動けそうにないから明日の朝飯と弁当はお願いします」
「もちろん!」
なんだってする。だって俺のせいだし、イルカ先生が疲れるって言うならこれから毎日だって俺が飯を作ったっていい。
なんでもしたい。愛しい人の…イルカ先生のためなら。
舞い上がっていた俺は、イルカ先生がぼそりと何か呟いていたのを聞き逃した。
「…誕生日まで、おあずけだ…!かわいい顔でごまかされてなんかやらないからな…!」


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リクエストをいただけたので農家にしてみたり。
そしてなんだかんだいいつつほだされる中忍がいたという…。
ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ!

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