トラップ地帯で捕まえて! 6

「来ましたね。」
約束の時間までウダウダと悩みながら時間を潰し、不安になりながら足を踏み入れると、そこにはイルカが待っていた。
その口調はただ静かで、怒っているのか悲しんでいるのか分からなかった。ただ、研ぎ澄まされたチャクラが、まるで実戦のときのようだ。 張り詰めた空気が、イルカがただカカシに文句を言いにきたわけではないということを伝えてくる。
「イルカ。」
「ここら辺一帯にトラップを仕掛けました。」
イルカは緊張した表情と裏腹に、淡々と説明し始めた。トラップ…?一体何のために?
「その中をこれから俺は、逃げ回ります。夜明けまでに俺を捕まえられたら、俺はあなたの言う事をなんでも聞きます。俺が逃げ切ったら…あなたは俺に 全部話してください。」
「全部…?」
イルカが何を言っているのか分からない。
「今からスタートです。…絶対全部話して貰いますから!」
それだけ言うと、イルカは全速力で駆け出した。イルカは怒っているようだったが、とにかく言う事を聞いてくれるというところだけが頭に残った。
イルカの全速力なら追いつける。誘われるように後を追った。
正直すぐに捕まえられると思ったが、そう簡単には行かなかった。
イルカの前に回り込もうと木々の間を飛んだとたん、クナイが跳んできた。
…あのときのトラップか!
殺傷能力を高くと指示したのを忠実に守り、四方八方からクナイが降り注ぐトラップは、かなりの完成度だ。イルカのことばかり考えていたので危うく 避け損なう所だったが、幸い腕をかすっただけで済んだ。
「やるなぁ…」
イルカは忍だということを忘れていたのかもしれない。人を殺す前提の武器も、トラップも扱える。でも、まっすぐでいちいちそれに悩む。 だから守って閉じ込めてしまいたくなったんだ。
「全部か…俺の、こういうトコとかもかな…。」
今ので目が覚めた。本気で行かないとマズイ。トラップにも、何よりイルカに対しても。
ぼんやりしてたら置いていかれてしまう。
チャクラを探りながら再び駆け出した。必死で追う自分と、逃げるイルカ。
「最初と逆だな。」
あの時は正確な仕掛け方に驚いたが、修行の成果か、更に巧妙になっているうえに、カカシの動きを読んでイルカのようにタイミングよく発動する。
よけて、壊して、それでも尽きることなくトラップは発動し続ける。
それでも諦めることなくイルカを探した。
「暗部さん。」
だから目の前にイルカが立っていたときは驚いた。
あの時の様に少し開けた場所に生えている大きな木を背に、イルカが真っ直ぐにこちらを見ている。
…十中八苦罠だ。
「やっぱりココまできましたね。」
イルカの口ぶりからすると、カカシは誘導されていたらしい。
ある程度予想していたとはいえ、その手並みには舌を巻いた。
「俺はもうここから動きません。でも、勿論簡単にはつかまりません!…それでも、来ますか?」
馬鹿正直に罠である事を宣言するのだから、それなりのものが仕掛けてあるのだろう。だがそんなコトより、挑戦的な言葉を吐きながらイルカが 泣きそうな顔をしていることが気になった。
どっちにしろ答えは一つだ。
「行くよ。」
イルカにもカカシの答えが分かっていたようだ。ゆっくり瞳を閉じて、それからまたカカシの方に視線を向けて、笑った。
「なら…覚悟してください。」
「ッ!」
その瞬間、何も無かった地面から、一斉に水が噴出した。あのときに使ったのと同じ罠かと、警戒しながらすぐ側の木に飛び上がると、 さらにそこに向かって千本が降って来た。イルカの方から遠ざけるためかと、視線をやると、水遁が暴れまわっていたはずの所はすでに水が引いていた。
駄目元でそこに飛び込む。
すると、踏んだ地面が崩れ落ちた。
「落とし穴か…!?」
しかもご丁寧にそこには札らしきものが張ってある。発動するまえにチャクラで壁に張り付き飛び出すと、次の瞬間爆発音が響いた。 とっさに距離をとり、爆風をチャクラで凌いだ。
それでも…宣言どおりイルカは確かにそこから動いていなかった。
「殺す気で。か。」
これが、イルカの本気。計算されていて、隙が無くて、忍らしい。
「うん。怒ったの分かったかも。」
だが、イルカが、泣きそうな顔でこっちを見ている。
「もう、いいでしょう!止めましょう!」
そんな顔をされて引き下がれる訳が無い。
「絶対に捕まえる。だから、本気でね?」
距離をつめると、すぐにイルカがなぜ動かないのか分かった。イルカの周囲はワイヤーだらけで、どれに触れてももおそらくトラップが発動する。
「触ったら駄目です!」
ワイヤーに指を伸ばすと、イルカが中から叫ぶように言った。
「でもイルカは、大丈夫なんでしょ?」
目を見開いてイルカは首を横に振った。
「駄目です!だって怪我してる!」
最初のクナイでやられた傷に気がついたらしい。
気にせずワイヤーに触れると、すぐにヒュンッと音がして、イルカの背後の木から千本が降って来た。
当然よけたが、地面に突き刺さったうちの何本かが爆発した。
仕掛けは相当手が込んでいる。やはりイルカは筋がいい。
「でも、諦めないから。」
俺の言葉にイルカが涙をこぼした。それを嬉しいと思う自分に驚きながら、それでもトラップを発動させていく。そのたびにクナイだの札だの術だのが カカシに向かって襲い掛かってきた。
「止めてください!」
イルカが叫びながら慌てた様子でクナイを取り出した。そのままワイヤーを切断しようした手を、カカシは掴んだ。
「捕まえた…!」
本体が次々トラップを発動させながら、影分身に少しずつ仕掛けを解除させていたのが間に合った。ちゃんと自分の手で捕まえないとと思っていたので、 安堵のあまり思わず深く息を吐いた。
嬉しさのあまり涙をまだ瞳にためて、ぽかんと口を開けているイルカを腕の中に閉じ込めた。
「…!」
驚きのあまり声も出ないらしい。このままその口をふさいでしまいたくなったが、イルカにはちゃんとカカシの勝ちを認識して欲しい。
「ね、捕まえたよ。イルカ。」
「…なんでっ!止めろっていったのに!」
イルカの耳に、やっと言葉が届いたらしい、正気に返って腕の中でもがき、カカシの背中を叩きながら怒っている。
「でも、捕まえた。」
「それは分かりました!でも…なんてことしてるんですか!怪我までして!」
「イルカが仕掛けたんじゃない?」
「だって…アナタならよけられると思って…!」
「ソレは、俺が油断したのが悪いの。」
それに、おかげで冷静になれた。心配してしょんぼりしているイルカには悪いが、あの程度で諦められるわけがない。イルカはしばらくうつむいていたが、 いきなり顔を上げて、きっとカカシを見た。
「…責任とります!」
「え?」
「私情であなたを傷つけた。…煮るなり焼くなり好きにしてください!」
男らしくそう言い切って、イルカはカカシの傷に手をやった。傷の深さはそれほどではないが、薄く長く傷つけたので、大げさに血が流れている。
イルカには相当ショックだったんだろう。
「あー…じゃ、さ。こうしない?」
「なんですか…?」
「イルカは俺のお願いを聞く。で、俺は全部話す。イルカが聞きたいこと全部。」
悲しげ中尾をしているイルカの頭を慰めるように撫でながら、カカシは提案した。
「なんでですか!?俺が負けたのに!」
案の定イルカは怒り出したが、ココで折れるつもりはない。
「だって、ずるしたし。影分身使ったから。」
「それは…俺は何にも言ってなかったからいいんです!」
「いいから、まず、何を聞きたいの?」
頬に手をやってイルカの瞳を覗き込むと、戸惑いながらもイルカが話し始めた。
「あ、う。あの!何であの時、俺を試すみたいなこと言ったんですか!?しかも…絶対俺が怒ると思ってたでしょう!俺だって忍なのに…!」
「んー…何か、やけになって。」
「やけにって…?」
「あのね。あの時もう駄目だと思ったから。」
「何が?」
「イルカとの関係。」
「え?」
イルカに気付かれているとは思わなかった。やっぱりイルカはすごい。全部といったからにはまだ聞きたいことがあるんだろう。
「…他には?」
「…あ、あの時!何で俺にキス、したんですか…?」
目を泳がせながら言うイルカの鼓動が激しくなったのが、密着したからだから伝わってくる。
「好きだから。」
色々言おうと思っていたのに、いざとなったらコレしかいえなかった。
「へ?」
イルカが驚いて目を丸くしているが、ソレにかまわず話を続けた。
「イルカが好きだから。あの時はつい暴走しちゃったけど、今も我慢してるの。」
「え?え?」
「コレが俺のお願い。イルカが好き。だから、付き合って?」
「…!」
声もなく驚いたイルカが、次の瞬間真っ赤に染まった。鼓動も激しく打っていて、動揺しているのが良く分かる。しかも、この様子だと、 まるで駄目というわけではなさそうだ。
ダメ押しに、イルカをさらに聞いてみた。
「脈あり?それとも全然駄目?」
「だ、駄目じゃないです…。」
耳まで赤く染めて、イルカがブンブンと首を横に振っている。だんだん自分の鼓動も激しくなってきて、どちらの鼓動か分からないくらいだ。
「なら…俺のこと、好き?」
「す、きです…!」
つっかえながらそう言ったイルカが、自分のセリフに耐えかねたようにうつむいた。赤いうなじが視界に入り、その手がぎゅっとカカシの背を掴んで…。
「…もう駄目。」
「え?」
驚いて顔を上げたイルカの瞳が潤んでいて、更に頭に血が上り…そのままイルカを地面に引き倒した。
*****
「ちょっと!どうしたんですか!?怪我が!?」
カカシが倒れたのと勘違いしたイルカが、肩を掴んで起こそうとしてきたが、それどころではなかったので、無視してベストの前を開けた。 鳥に言われたことを鵜呑みにしたわけではないが、これ以上のチャンスは無いかもしれないのだ。逃がさずにモノにしたい。
それ以上にイルカが目の前にいて、好きだと言ったことが理性のタガを外してしまった。
「わ!」
驚いている隙を逃さず、アンダーもめくり上げた。
「なにするんですか!」
イルカの驚きと怒りはもっともだが、もう止まれない。
勢いのまま下穿きにも手をかけたとき、イルカに耳を引っ張られた。
「聞いてくださいってば!何するんですか!?」
「イルカが欲しい。」
それ以上会話をするのももどかしく、面を投げ捨て驚いているイルカの口をふさいだ。
夢中になって熱い粘膜の中に舌を滑り込ませる。縮こまったイルカの舌に吸い付いて、絡ませる。イルカは最初は瞳を見開いて驚いていた様だったが、 途中で息ができなくなったのか背中を叩いてきた。それでも離れられずにいると、今度は髪に手を伸ばして引っ張ってきた。
流石に辛いかと、一旦口を開放したが、すでにイルカはぐったりしていた。
「大丈夫?」
イルカを下に敷いたまま頬に手を伸ばすと、はあはあと荒い息をしながら、イルカがきっとカカシを睨んできた。
「顔!さらしちゃっていいんですか!?」
イルカは開口一番そう言うと、地面に転がした面を指差して慌てている。他にも顔見ちゃったとか、どうしようとかぼそぼそつぶやきながら 頭を抱えてもがいている。
「突っ込む所ってそこなの?」
ついカカシがそう聞くと、イルカは赤い顔を更に赤くした。
「あ、う、それだけじゃなくて!いきなり何するんですか!…背中、痛いじゃないですか…。」
「じゃ、続きは帰ってから。」
もう引っ込みがつかない所まで来ているが、確かに初めてだろう相手に流石に外はまずいと気付いた。自分の天幕は面倒だし、イルカのところなら 人気もないからちょうどいいだろう。何か言い返そうとしているらしいイルカを担いで、跳んだ。
*****
全速力で、イルカの天幕に駆け込んだ。途中暴れていたが、どんなにもがいても放されることは無いことに気付いたのか、諦めたようにため息をついたイルカは、 割とおとなしくしていてくれた。
「イルカ。」
寝台にイルカを下ろすと、早速続きをしようとした。
「ちょっと待ってください!」
「なあに?」
もう限界もいいところなのだが、イルカが必死な顔をしているので一応聞き返した。
「あのー…これって、その。」
「ああ、セックス?」
「わあ!何さらっと言ってるんですか!?」
さっきあれだけのことをされていたのに、改めて確認してくるところを見ると、更に興奮した。
イルカが耳を塞いでばたばたしている隙に、自分も服を脱ぎ捨てた。
「あ…」
イルカがつぶやくような声をあげて、カカシを見ている。
「ん?どうしたの?」
「キレイですね。」
状況が分かっているのかいないのか、急にもがくのをやめてさらっとそんなセリフを吐くイルカは、おそらくこれから何をされるのか理解していないんだろう。
「触ってもいいよ?俺もイルカに触るし。」
「え!あ!何いってるんですか!」
「ま、どっちでもいいけど。」
物慣れない様子のイルカの隙をついて、すっかり服を剥いだ。ついでに額宛と髪紐も外し、やっと慌てだしたイルカの口をまた塞いでおとなしくさせた。
熱い感触を味わいながら、胸の突起に手をかけて押しつぶす。ふさいだ口から小さな叫び声が上がったのに気を良くして、更に感触を楽しんだ。
イルカはそんな所を触られることに、最初は驚いていたようだったが、すぐに反応しだした。そこにも手を伸ばして、熱を更に煽った。
すぐにイルカの限界が来た。
篭りきった熱をカカシの手に吐き出し、そのままイルカはくたりと力を抜いた。
「っ…んっ!」
それにあわせてようやく開放された口からは、言葉らしい言葉も出てこず、イルカははあはあと荒い息をしている。
「次、俺ね。」
抵抗が無いのをいいことに、投げ出された足を掴んで肩に抱え上げた。
「あ…?」
まだぼんやりと空をみているイルカにいとおしさを募らせながら、露になったそこに白濁を塗りつける。
「んっ…!え…?」
「大丈夫。ちょっとだけ我慢して。」
湿った感触に軽く眉をしかめるイルカをなだめるようにキスを落とし、中に指を入り込ませた。
「あっ!?」
流石に違和感が強いようで、イルカがカカシに腕を伸ばしてきた。その手をいなすように口づけて、少しずつ指を増やしながら動かした。 程なく、辛そうな顔で荒い息を吐いていたイルカの身体が、魚のように跳ねた。
「みつけた。」
「やっ…!今の…?」
刺激がよほど強かったのか、中の指を食い閉めて硬直したイルカが、怯えたような瞳でカカシを見上げている。
「痛い?」
「痛くないけど…。変…!なに…なんで…?」
ひくひくと短く息を吐き出しながら、イルカがカカシの腕をぎゅっと掴んだ。それでもイルカは止めろとは言わない。ソレを免罪符に、 イルカのかたくなな身体をさらに開いていく。すべりが足りない分は転がしておいたポーチから取り出した軟膏を使って、傷つけないように慎重に。イルカは、そのたびに眦から涙をこぼした。
「気持ちイイでしょ?」
「わかんない…!」
目を閉じて怯えたような顔をしているが、イルカ自身は反応している。感じたことの無い快感に、驚きの方が勝っているのだろう。 中を弄っていた指を抜いて、ホッと息をついたイルカに、囁いた。
「イルカ。俺の首に手、回して。それでぎゅっとしてて?」
イルカの上体を起こして腕を引いたら、素直にしがみついてきた。そのままカカシの上に乗せるようにして、少しずつ自身を埋め込んでいく。
「ふ…あ、あ、…」
入り込む異物に怯えるように、イルカが目を見開いているが、もう自分を止められない。イルカの腰を掴み、最奥まで入りこんだ。
「っ…はぁ…」
イルカがぎゅうぎゅうと締め付けてくるのは、痛みのせいもあるのかもしれない。散々弄ったせいで立ち上がっていたイルカのモノは、力をなくしている。
突き上げてめちゃくちゃにしたいのを堪え、しがみついて肩で息をしているイルカを抱きしめた。
「あ…」
イルカが痛みと共に吐き出す声が腰に響くが、必死に耐え、イルカの前に手を伸ばした。イルカの腕や、鎖骨に口付けながら、手を動かすと、 だんだんと締め付けが緩んできた。
「んっんっあ…!」
吐息にも甘いものが混じり始めたところで、カカシの方に限界が来た。
「ごめん!」
「え…?…ああっ!」
ガツガツと腰を押し付けて、イルカの中を蹂躙した。イルカが叫び声をあげているのに、興奮は治まらず、イルカの口を再び塞いで、揺さぶった。
我慢していた分限界は速かった。
「くっ…!」
「っ…!」
イルカの中に吐き出しながら、腰を強く押し付けた。イルカもその衝撃で達したらしく、カカシの腹に熱い感触が走った。
「あ、あ、…」
イルカを抱きしめたまま、目を閉じて開放の余韻に酔う。イルカも耳元で熱い息を吐いている。今までで一番気持ちよかった。それに全然足りない。
「も、だめ…。」
ぐったりしたイルカが、もたれかかってきているのに、あと何度だって出来そうだ。
「イルカ。俺の名前、カカシっていうの。」
「え、なまえ?…名前!んあっ!」
驚いたイルカが意味を理解する前に、もうすでに、カカシは動き始めていた。
「ちょっ…ッ!…名前って!」
「カカシ。…呼んで?」
揺さぶられながらカカシに問いかけてきたイルカの耳元に、もう一度囁いた。
「カカシ…!」
「…イルカ。」
名前を呼ばれると、胸が熱くなる。こんなことは初めてだ。
湧き上がる熱に浮かされるように、イルカに溺れた。
*****
「おはよう。起きれる?」
「え?」
目の前に銀髪の…カカシさんだ!この人と昨日…!
「わーわー!顔とか服とか!」
何故か服も着ないで隣に横になっていた暗部…カカシさんが、俺にお茶を勧めてきた。だが、そんなものより服を着てほしい。 とっさに顔をそらして服を探したが、すぐに後ろから抱きすくめられた。
「いいじゃない?ちょっとくらい。出発って、今日の夕刻でしょ?」
「そ、そうじゃなくて!」
「そっか、照れてるの?」
「言うな!」
「いいから、もっとくっ付いてようよ?」
勝手な事をいいながら、腕を絡みつかせてくるこの人は、思っていたより子どもっぽかったみたいだ。凄く大人な感じがしたのに、 イルカに強請る姿はまるで子ども。
ソレがいやじゃないのが自分でも驚きだ。大体、かなり強引な真似をされたのに、拒まずに受け入れてしまった自分が怖い。
今だって一応もがいてみているが、本気で引き剥がせないでいる。
「うー…!」
「ああもう…!かわいいなー!」
「可愛くないです!アナタの方こそ!きれいな顔してるくせに!」
「カカシ。呼んでっていったよね!」
「カ、カカシ、さん」
「そ、そう呼んでね。イルカ。」
何を言ってもこの人のペースに飲まれてしまって、しかも見慣れないキレイな素顔が間近でにっこり微笑んだりなんかしたら…!
何も放せずにうつむいている俺の髪を弄びながら、カカシさんはくすくす笑っている。
…いたたまれない…。
「イチャイチャしてるとこ悪いんですが、次の任務です。」
「ちょっと!空気呼んでよ!」
「わりぃがお前らほっといたらいつまでもいちゃいちゃしてろうだからな!…ここで足止めくらい過ぎた。一刻まつから支度しろ。」
あの二人だ!
…天幕の外からとはいえ、何をやったのかばれていることがわかって、頭が真っ白になった。
「まったくもう!イルカが照れちゃってるでしょ!」
カカシさんが天幕の外にブツブツ文句を言いながら、俺の頭をなでてくれた。
だが、それよりも…!
「任務。なんですね。」
「そう、みたい。」
俺とは違ってこの人は暗部だ。しかもこうして呼び出しが来るってことは、この人じゃなきゃ出来ない任務なのかもしれない。 普通、任務と任務の間には休暇が与えられるのに…。
「じゃあ一刻後に集合だからな!」
「いちゃいちゃするならあと一回が限度ですからねー!」
とんでもない事を言い置いて、二人が去っていった。
「あのさ。」
頭をかきながら、カカシさんが暗い顔をしている。ソレを見ていたら言わなきゃいけないと思った。
「里で!待ってますから!」
「え?」
「アナタが帰ってくるの、待ってます!それと…怪我とかしちゃだめですから!」
「うん…!」
「必ず俺のところに帰ってきてください!」
すぐに任務に発つこの人に、コレだけは言っておきたかった。怪我とか簡単にするし、すぐに他人庇ってそうだし、心配だから…。
「怪我は気をつけるし、浮気もしない。だから、待ってて…?」
「浮気!?」
「そ、イルカも駄目だよ?」
「あ、当たり前です!」
今、そこが重要なんだろうか…?いや、浮気はゆるせないけど!
「俺の大事な恋人を裏切るようなマネは絶対にしないから。」
「こいびと…」
「そ、恋人。」
にっこり笑ったカカシさんは、またぎゅうぎゅうしがみ付いてきた。強いのに、子どもっぽいひと…何だかすごい人恋人にしちゃったのかも…。
抱きしめられて、抱きしめ返しながら、俺はちょっとこれからのことが心配になった。
「そんな顔しないで?」
「え?」
「もう一回ならできるかなー…?」
「わあ!何言ってるんですか!任務!支度してください!」
不穏な事を言い出して、俺の腹に手を這わせ始めたのを慌てて止めた。
「えー?」
「早く行って、早く帰って来てくださいね!」
「…うん!」
ものすごくいい返事をして、支度をし始めたカカシさんに、ホッとしながら、ちょっと寂しく思った。
*****
ツバキには断っておいたが、こんなに長く抜けるつもりは無かったので、すぐに謝りに言った。事情を話すと、怒りもせずに逆に心配された。
「で、決着はついたのね?…すっきりした?」
「はい!ありがとうございます!」
「なら、いいわ。これから多分色々あると思うけど、いつでも相談に乗るから。」
「はい!」
「あんな相手だと苦労するでしょうけど…。相性ぴったりみたいだから頑張って!」
「…はい…。」
励ましなんだか何なんだか分からない言葉を受け、俺が言いよどんでいると、背中に重みがかかった。
「イルカ。行ってくるね?気をつけて…!」
「ソレは俺のセリフです!カ、えとアナタの方こそ、気をつけてください!」
「うん。」
それだけ言うとすぐにカカシは去っていった。
時間ギリギリなのに、わざわざ会いにきてくれたんだろう。さっきカカシが着替えている間に、先に出てしまったのに…。
「ほんと、大変そう。」
ため息をつきながら、ぼそっとツバキがつぶやいた。心配してくれているんだろう。
「え?ああ…でも、任務ですから…」
「そうじゃなくて。…あなたをいじめたから怖い目で見られちゃったってこと。」
「ええ!?」
「無理しないのよ?」
「う、え!?」
ツバキに深い同情と心配の瞳を向けられながら、イルカは戸惑うことしか出来なかった。
*****
その後、ツバキの予言どおり、苦労することになったが、お互いに幸せだと思う。
ただ、カカシが、「俺ってイルカのトラップにつかまっちゃったから、責任とってもらわないとね?」とよく言うのには納得していないが。


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コレで一応おしまいです。

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