返り討ち


美味い酒に、美味い料理。それに目の前の上忍は話し上手。
めったにない機会だ。いきなり酒に誘われたときは驚いたが、話してみるとカカシさんの意外な気さくさに、俺はすっかり楽しくなっていた。
しかもこの店は個室だからか、カカシはいつもつけている怪しげな覆面を外していて、眼福までついてきている。俺は雰囲気に乗せられて、 ついつい杯を重ねてしまい、すでにりっぱなよっぱらいだ。
気分がよくなってくると、当然口も軽くなる。
「カカシせんせー!かおきれいですねぇ!」
そんな事は普段のイルカなら決して口にしないが、酒の勢いで手まで伸ばして顔をなでてしまった。つるつるの肌は、ひょっとして女性よりきめが 細かいかもしれない。満足げな笑みを浮かべて半分眠りかかっていた所に、思いつめたような声が耳に届いた。
「えっと。それはやっぱりOK!ってことですか?」
「ふえ?」
何だか良く分からない内にカカシさんが腕を掴んで俺を押し倒した。そして…。
「がんばります!」
そういうや否や俺の口に吸い付いた。
「ギャー!!!俺は男です!!!」
慌てて顎を押し返したが、カカシさんは一方的に宣言した。
「愛さえあれば大丈夫です!」
「そんなもん俺にはびた一文無い!」
そもそもあんまり話したこともない人なのに、愛とかそんなものをもつはずがない!
「そ、そんな…!」
でも、あからさまにショックを受けた顔をしているカカシ先生がちょっとかわいそうになって、とりあえず殴るのは止めて説得に切り替えた。
「普通はこういうことしようとする前にとりあえずせめておつきあいからとかですね…」
すっかり調子に乗った生徒を説教するノリで語り始めてしまったが、言い終わらない内にカカシ先生は俺の腕を取って抱きついてきた。
「おつきあいしていただけるんですね!わーやったー!!!」
その顔があんまり幸せそうだったので、その日の説得は諦めてしまったのだった。…別に酔っ払ってて面倒だったからじゃないぞ!
*****
「イルカ先生!おかえりなさい!」
今日もにこにこと笑顔全開のカカシさんが、仕事が終わった俺のところに駆け寄ってきた。
なし崩し的に気がついたら一緒に暮らし始めた俺たちだったが、思った以上に楽しく暮らせている。
なにせ、この人は一緒に過ごしてみると意外にかわいいのだ。俺にくっついては幸せそうに笑うし、これまで相当の戦闘スキルをつんでいるはずなのに、 ちょっぴりドジっこで、天然だ。
この間なんかラーメン食いにいって、コショウが出てこないからって中蓋まで開けて、中身を全部入れそうになってたし(上忍の反射神経で全て術使って 受け止めて元に戻してたけど)、俺と話してて、同僚と一緒に飲みに行ったときの話したら、ピントがずれた驚き方するし(酒飲んで裸踊りしたってだけで、 どうして同僚に怒るのか分からない。)…最初に俺と飲みに行ったときの勘違い振りもうなずける。
「はいイルカ先生!これ、任務先で貰ったんで上げます!」
「ありがとうございます!」
カカシさんがどこからともなく紙袋を出して俺に差し出してきた。こうやって色々くれる気持ちは嬉しいんだけど、くれるものが変わってて、 お菓子とかは一緒に食っちゃうからいいんだけど、時々飾り紐とか宝石とかなんだよなー…。
流石に受け取れないから、断るんだけど、すっごく悲しそうな顔するから自宅に結界張って一時保管してある。いつか返さないといけないんだけど、 量がすごいからどうしようか悩み中だ。
今度はどっちなんだろう?
俺は、不安になりながらそっと袋を開けた。
「これは…お茶?」
「任務先で買ってきたんですよ!後で一緒に飲みましょう!イルカ先生お茶好きだし。」
そんな事を言いながら、カカシさんが優しい瞳で俺を見つめた。
こういう気遣いがありがたいよなぁ…!
最初は…お付き合いって言うのは出来ればお断りしたかったんだけど、結構かわいいし、まあ男でもイイかと思い始めている自分にびっくりだ。
ただ、最初の強引さがウソのように全然手を出してこない。
というかコレはむしろ俺の出方を待ってる可能性がある。最初はあれだったけど、もしかしてカカシさんはそっちの人なのかもしれない。
…顔がココまで整ってるなら、もしかして俺がやっちゃってもイイんじゃないだろうか。
経験が極端に少ないとはいえ、俺も男だ。成り行きとはいえ、恋人でかわいいカカシさんがいつも側にいると色々と思うところもある。
最近ではもういっそのこと襲っちゃおうかと思うこともしばしばだ。
そんな事を思いながら今日も一緒に俺んちに向かった。
*****
元々俺はあんまり自炊をしないけど、カカシさんもしない方だ。一人分で自炊って言うのが面倒だったからだけど、最近はカカシさんも一緒にいることが 多いからチョコチョコ作るようになった。それでもやっぱり出来合いの惣菜とかも買っちゃうんだけど、家に一緒に飯食ってくれる人がいるって 言うのは幸せだと思う。
「イルカせんせ!お味噌汁できました!」
「飯はもうちょっとかかるな…。もう1個なんかおかず作りますか?」
「うーん?じゃ、かまぼことか切ります?」
「でもお野菜少ないかな?ほうれん草茹でませんか?」
「おひたしかぁ…いいですね!」
「ジャコもあったから混ぜちゃいましょう。」
こういう他愛のない会話が楽しい。今まで彼女とか出来たことなかったけど、きっとこういう感じなんじゃないかと思う。俺はついついにやけながら、 カカシさんの提案に同意した。
「カカシさんは魚好きですね!」
「イルカ先生のほうが好きですよー!」
「あはは!」
突然そんな事を行って微笑むカカシさんにドキッとした。これは…今夜こそ、行っちゃってもいいんじゃないかな!
俺はこれからの事を考えて気合を入れた。
*****
一緒に飯食って、カカシさんの買ってきてくれたお茶を飲んで、風呂に入って…俺は勝負に出ることにした。
並べた布団の上でイチャパラ読んで寝ころがっていたカカシさんに俺はそっと近づいた。
「カカシさん…。その。イイですか…。」
出来るだけ怖がらせないように、優しく、さりげなく下に敷いてみたが、大丈夫だろうか。不安と期待でドキドキしながら、目をまん丸にしている カカシさんを見ていたら、なぜかくるんとひっくり返された。
「嬉しい!最初強引にしちゃったからイルカ先生がその気になるの待ってたんだけど…やっと俺の事を受け入れてくれたんですね!」
イチャパラをその辺に放り投げたカカシさんが、いつもより数倍嬉しそうな笑顔でわらっていた。天井と一緒に移るカカシさんの笑顔が、 どんどんそのまま近づいてきて…。
「え?わっ!…あっ!」
カカシさんが俺のパジャマのボタンをサクサク外して、しかも露になった肌にキスを落としている。ふにゅっと柔らかい感触がカカシさんの唇だと思うだけで ちょっといけない気分になりそうだ。
「じゃ、早速いちゃいちゃしましょうか?」
「俺が!俺がしますから!」
思ったより積極的なカカシさんに驚きながら、形勢逆転を狙ったが…。
「もしかして舐めてくれるの?…でも、最初だから俺が頑張ります!次から色々やってもらっちゃいますね!…積極的で嬉しい…!」
「ちょっとまっ…んうっ!」
積極的なのはカカシさんだ!と叫ぶことも出来ずに口をふさがれてイイ様にされて…。
「イルカせんせ…」
やたらエロイ声を出したカカシさんの顔がアップになった。
…カカシさんがの顔がきれいだと思う間もなく、俺がやろうと思ってた事をカカシさんにされちゃったのだが、気持ちよくておかしくなりそうな時間が 延々と続く内に、俺は意識を失った。
*****
「あー…やっちゃった…」
目がさめるなりあんまりな第一声だが、こんなことになるとは思っても見なかったんだ。だってこのひと普段は凄くぽわんとしてるのに反則だ!
呆然とする俺にカカシさんが頬ずりしてくるから、キラキラした髪が俺の顔をもさもさとなでる。しかも、ものすごーく嬉しそうに「幸せです!」 なんていってきて…。その笑顔にまた俺の胸がぎゅっと締め付けられて。
…この可愛さにほだされちゃう俺が悪いんだということに今更ながら気付いたのだった。
そんな訳で、今日もカカシさんは俺の隣でニコニコ笑っている。

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カワイイケダモノの別話みたいのをあげてみました。
まもたせにもなりませんが一応置いておきます…。

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