晴れた日に(アホの子バージョン)



先にシリアス風味バージョンを読んでからいらっしゃると、より一層大笑いできるかと思われます。
逆だと…きっついんじゃないかなぁと。
それと…カカチはシリアス風味バージョンと同じ人ですが、イルカはアホの子です。
それでも宜しければどうぞ…!
ああでも…苦手な方はご無理をなさらない事をお勧めします…。


いっそ掠ってしまおうか。動きを封じるのにはあまりにも忍らしくない、このチャチなおもちゃでも使って。

「閉じ込めたいなー…。」

あのひとは明るくて何もかも自分とは違う。
…欲しいと気付いたのはいつだったか。ただ自分でも不思議に思ったのは覚えている。
あのひとの前では善人面しながら、…いつもめちゃくちゃにすることだけ考えてる。
気付いてから、ずっと。

「明日。天気良かったら、掠っちゃおうかな。」

この暗い欲望をいつか押さえ切れなくなるのなら、そんなきっかけもいいかも知れない。
手の中の硬質な音を立てる銀色の輪を弄びながら、そう、思った。
*****
「お疲れ様ですカカシさん。報告書、お預かりしますね!」
「…今日は、天気がよくないですねぇ。」
「ああ、そういえばここの所曇り続きですね。早く、晴れればいいのに…。」
「そうですね…。」
「…はい。結構です。お疲れ様でした!」
「じゃ、また、今度。」
「はい。今度お会いする時は天気がいいといいですね!」
「…晴れてたら。いいですね。」
「ええ!」

晴れたら、きっと。

*****
「俺さ、最近おかしいと思うんだよ。」
「は?なんかあったのかよ?」
「カカシさんが俺のこと見すぎ。なんだろう。やっぱさ…最近3kも太ったから、忍びとしてどうなんだとかそういう…。 大体天気の話題って…それで俺のことガン見とかありえねぇ!」
「それ!お前またラーメンばっか食ってたんだろ!?」
「…美味いんだ!にしても」
「そういう問題じゃねぇ!なんだそれ!?」
「ココはひとつ…あの微妙に上から目線のエリート上忍の度肝を抜いてやりたい!」
「…勝手に頑張れ。」
「任せとけ!」
「だから応援してねぇよ!」
「中忍の意地で平常心を保ったけどさ…あのお天気トークは俺への挑戦と見た!俺は…次の晴れの日までにナイスバディを 手に入れてみせる!!!」
「はたけ上忍も気の毒に…。」
*****
「ざーんねん。…今日も、雨、か。」

ここの所ずっとはっきりしない天気が続いていたが、今日になってやっと、天を覆う雲は、ついにそのため込んだ水を 吐き出したようだ。
雨脚はこの時期にしては激しく、地面を白く煙らせている。

「でも、きっとこれで、晴れるよねぇ…?」

どんよりと曇った空は、その内に蓄えたものを流しきって、いずれウソのように青い空を覗かせるだろう。

今日も、あの人は受付に座っているだろう。自分の身に何が起ころうとしているかなんか知りもしないで。

…折角だから顔だけでも見に行こうか。多分、まだ大丈夫のはずだから。

「晴れるまでは、ね。」

銀色の輪は静かにその時を待っている。

*****

「雨だなぁ…。」

晴れるのはいつになるんだろう。結構頑張ってるのにまだ目標まで2kもある。…まあちょっと目標を厳しくして10代のころと同じに 設定したってのもあるけどな!
忍として乏しい食料でも何とかやっていけるだけの気合いある!
だがしかし…俺の目標体重に対して残された期間が短すぎる…!!!
幸い厚く垂れ込めた雲から降り注ぐ雨は、ざあざあと騒がしいくらいだ。
…いつか晴れるなんて思えないくらいに。
あぁ…このままずっと雨ならいいのに。

「なんだよ。また洗濯の心配か?コインランドリーでも行けよー?」
「あー…うん。そうだな。」

コイツには暴言を吐かれたので俺の決意とその経過についてはあいまいにぼかすことにする。

…ヤツは、今日も来るだろうか?

「イルカ先生。報告書。」

俺の思考を読み取ったみたいに、気がついたら…ヤツがが目の前に立っていた。
その手が差し出した報告書を、少し緊張しながら受け取る。…いつもの様に。

「あ、はい。お預かりします。」

いつも通り、嫌味なくらい完璧に仕上げられた報告書を確認した。
いつも通りガン見してくるかと思いきや、意外や意外!ヤツの視線が、窓の外に向けられているのに気付いた。

「雨、ですね。」
「そうですね。あいにくの天気で…。」

なるほど…!タイムリミットは近いぜ宣言か?
コイツも…晴れるのを待ってるのか…!それなら、俺は…。

「でも、もうすぐ晴れますねぇ。これだけふったから。きっと。」
「ああ、そうですね。明日には晴れるんじゃないでしょうか?」

どうだ!平然と受けてたってやったぞ!!!

ヤツの口調は淡々としているのに、その瞳には僅かな期待のようなものが浮かんでいて、俺も何だか晴れるのが 楽しみになってきた。
アンタがそういう態度で来るのは予想の範囲内なんだよ!
…みてろよ!中忍の俺だってやれば出来るんだ!!!

「明日、晴れるといいですね。」
「そうですね。」

白々しいくらいいつもの様に笑顔で返すと、ヤツも嬉しそうに微笑んだ。
その笑顔があんまりにも純粋に見えたから、それに驚いている間に出て行ってしまったことに気付かなかった。
何だ?…そんなに俺に恥かかせるのが楽しみなのか…!?

「はたけ上忍も天気の心配なんかするんだな。」

胡乱に思いながらも俺がぼんやりしていると、同僚が不思議そうにつぶやいた。

「まあ、そりゃそうだろ。天気悪いのってなんかやだし。」

っていうか、今回の件に関しては恐らくヤツは相当ヤル気だ!
俺も中忍として…男としてココで引く訳には行かない!!!

「でもさ、上忍って、そういうの気にしないような気がしてたよ。特にあの人は。」
「…あの人って…カカシさんか?なんでだよ?」

天気…確かに場違いだ。まあ、ソレは俺がターゲットになってるからってだけなんだけどな!
…俺も…ヤツがココまで陰湿な性格してるとは思わなかったさ。
ナルトも懐いてるし。…まあ確かにちょっと変わった性格してるってのは聞いてたけど。だからって、最近の執拗なガン見は 正直ムカつく。何様だよって思うのもしょうがないよな!強くて優しいって触れ込みなのに俺にだけあんなに感じ悪いのって 何なんだ?
苛立ちを忍らしく隠しきって、さりげなく会話を続ける俺に、同僚が不満そうに言い募る。

「えー?なんかさ、浮世離れしてるし、半分伝説だろ。」
「そりゃ俺たちより強いだろうけど、あの人も同じだろ。」
「ま、そうなんだろうなー。なんかちょっと違和感あるけど。」

まだ何かいいたそうな同僚のことばを遮るように、ヤツ出て行った先に向けていた視線を書類に戻した。
これ以上会話しても無駄だからな。ヤツは…俺の体重を気にするようなちっちゃな男なんだよ!

「いいから。仕事するぞ。」

不満げな同僚をいさめ、俺も止まっていた手を動かし始める。
いつもの仕事をいつもの様に終らせるために。

それでも…明日は晴れる。そう言ったときにヤツが見せた表情が、俺の脳裏からはなれなかった。何かを期待するような、 それでいて恐れているような…。
つまりヤツも俺の体重が実は結構減ってきてるってことに気付いたに違いない…!

「明日は、晴れるかなぁ?」

タイムリミットは間近に迫っている…だが!こうなったら絶対間に合わせる!!!
晴れたら、きっと。ヤツに目にモノ見せてやる!!!

*****

開け放した窓から、朝日がうるさいくらいに飛び込んでくる。
今日は間違いなく天気がいい。それもきっと雲ひとつ無いくらいに。

「晴れちゃった。」

心は浮き足立った様に落ち着かないのに、俺の手は冷静に準備を進めていく。
あの人を閉じ込めるために。

「だって、晴れちゃったんだよねぇ…。」

さあ、哀れな獲物を捕らえに行こう。

*****

一瞬だった。

いつも受付で異常にしつこく見つめてくるヤツが…ついに待ちきれなくなったのか俺の家に尋ねてきんだ。
俺が気合い入れてトレーニングした結果、何とか目標まで届いたのにもかかわらず…。
それで、確かこういった。

「だって、晴れちゃったから。」

「え?」
タイムリミットってことか…だがな!おれだって忍!忍は裏の裏を読め!つまり…アンタの考えてるコトはお見通しだ!!!
そう思って余裕の笑みを浮かべてたら、なんでか謝られた。

「だから。…ごめんね?」

言葉は謝っているのに、その笑顔は晴れやかで、でもどこかまがまがしくて。俺は思わず身構えた。
コイツ…もしかしてココで…天下の往来で俺のボディチェックでもするつもりじゃあるまいな!?

だが、俺の警戒は…大して意味がなかった。

「さ、行こうか。…もうずーっと。待ってたんだよねぇ。」

その言葉を最後に、俺の意識は一旦途切れた。


…目を覚ましたときに、一番最初に目にしたものは、輝く銀色。

「やっぱり似合うね。」

「う……?カカシさん…?」

何だコイツ!あのでっかい態度とぶしつけな視線からして、さぞすかした面視てるんだろうと思ってたら、 顔までいいのかこの野郎!
でも一応相手は上司、ちょこっと気を使って一応名前を呼んでやる。
にしても何する気何だコイツ?
上忍専用ボディチェック方法とかあんのか?わざわざ術かけて移動まで…?
不審に思う俺相手に、何か勝手に盛り上がったヤツがのしかかってきた。

「ずっと欲しかったんだ。だからもう…我慢しない。」
「カカシさん…?」

満足そうに微笑むヤツに伸ばした手が、かちゃかちゃと音を立てた。
それで、俺の腕を捕らえているものの存在に気が付いた。

…手錠だ。

忍が使うことのない、銀の鎖と輪でできたおもちゃのようなそれに、俺の腕は捕らえられていた。
砕くことも抜くことも出来ないように、ご丁寧にチャクラ封じまでされている。
なんだよこれ!?マニアックだな!

「可哀相なイルカ先生。…でも、諦めてね?」

俺を捕らえたヤツは、横たわる俺に覆いかぶさりながら、どこか皮肉っぽいしたり顔で囁く。
俺の理想体重がコイツの予想とずれてたってことか!?

「なんで…こんな…?」

だからってこれはないだろ!忍としてたるんでるから強制訓練ってことか…!?
中忍舐めんなよ!

「さあ、俺が聞きたいくらい。ま、晴れちゃったから。ね?」

何だコイツ?意味分からん。…まさか…電波かコイツ?
妙になれなれしく人に触ってきやがって…!
あーなんでだろうなー…春先になるとどこからともなくわくんだよなぁ…この手のヤツは。
…っていうか、ちょっと待て!?こんなヤツに任務やらせてていいのか!俺のかわいい教え子たちが!

「おいコラてめぇ…!ふざけんなよ!!!」

ガン見の理由はちょっと外してたみたいだが、そうと分かれば話は早い。何で野郎二人で裸祭したくなったのかは さっぱりだが、コイツには思い知らせてやる必要がある。

「へぇ?ヤル気?」
「へっ!余裕見せやがって!吼えずらかくなよ!」

なんてったって、俺は…!
「チャクラが無くても体術がある!」

最近体重管理を兼ねて鍛錬しまくってるからな!こんな青瓢箪手もなくひねってやるぜ!!!

「ちょっとだけならいいよ。遊んであげる。」

余裕たっぷりに微笑むヤツに、猛烈に腹が立った。
…調子こきやがってちくしょー!!!

「覚悟しやがれ!!!」

*****

ゆっくりと、その瞳が開かれるのを、見ていた。
目覚めてもぼんやりと虚空を見つめているその瞳には、まだ意思のきらめきが見つけられない。

「壊れちゃった…?」

この人がもう笑わないかもしれないのが恐ろしい。
でも…もうこの人がどこかの誰かのものになる事を恐れなくてもいいのなら。
俺は…。

「カカシさん。」

俺を呼んだ。まるで正気みたいな声で。

「なぁに?」

「ふざけんなよ!?何だ手加減しやがって!」

「だって、アンタ相手に本気でやったら失神だけじゃすまないよ?」

「…馬鹿野郎!」

怒り狂った視線は真っ直ぐに俺だけを見つめている。

「そうね。でも、もう…」

もう、後には引けないから。

*****

何だコイツ?どてっぱらにイイの決められてつぶれてる間に何があったんだ!?
変な顔して笑いやがって!
…なんだか胸がちくちくするじゃねぇか…そんな顔されると。
笑ってんのに泣いてるみたいな…それなのに勝手になんか納得したみたいな話し方しやがって…!

「俺は…まだやれる!いいか!だからそんな情けねぇ面するんじゃない!」

「確かに俺は中忍だけどな!だからって…一方的にやられたまんまで引き下がれるか!」

「だから、もう…。」

しょぼくれた犬みたいな、叱られたアカデミー生みたいなその顔が。

「そんな顔するんじゃねぇ!」

虚を突かれたような顔をしたヤツが、俺の手を戒めるちゃちなおもちゃを外して、ぎゅうぎゅう抱き着いてきた。
…まるでガキみたいに。

「ずっと。このまま。」

「馬鹿言うな!勝負は一旦お預けだ!…アカデミー行くぞ!アンタも任務だろ!」
「はは!アンタには敵わないね。」
「…電波に言われたくねえ。いいか!売られた喧嘩は買ってやる!だから、アンタはもうちょっとしゃんとしてろ!」
「そうね…。ふふ…。」
「ふにゃけてんじゃねーそ!」
「はーい。」

へらへら笑いながら、ものすごく嬉しそうにしてるヤツには、馬鹿みたいに見えたが…。
…ほんのちょっとだけ、かわいいと思ったのは秘密だ。

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はいギャグ変をどうぞ!!!カカチが真剣な分アホさが際立った気がします!!!
…思いのほかアホらしい仕上がり!でも楽しかったのでイイことにします!!!
ご意見ご感想などがございましたらお気軽に拍手などからどうぞ…。

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