変態さんと一緒

ヤツが任務に出てからもう3日もたつが、未だに俺の元へは現れていない。ひょっとするとやっと飽きてくれたのか!と嬉しく思ったが、 念のため受付所で確認するとどうやら相当難易度の高い任務に出ているようだ。
…ホッとすればいいのか悩む…。あんなアホには金輪際かかわりたくないが、里の戦力が落ちるのは困るし、ナルトたちの指導に支障が出る。
まあどっちにしろ油断は禁物だ。おそらくヤツのあのしぶとさからして絶対に俺のケツのために帰ってくるだろうし、あの変態が俺のケツを諦める可能性は 限りなくゼロに近いような気がする…。
何よりこの任務さえヤツの策略かもしれないのだ!
今のところはヤツ対策は順調に進み、何とかなりそうな気がしているが…ヤツは常に想像の斜め上を行く変態なので、警戒は怠らず、いつ襲撃を受けても いいように工夫してある。
今度こそ…ヤツから俺のケツを守ってみせる…!!!
…俺がそう思っていた矢先に、その知らせは届いた。
*****
「オイ!はたけ上忍が大怪我したってよ!!!」
職員室で残業中のところに、大声でそう叫びながら同僚が職員室に飛び込んできた。
…まさか!ヤツはもう…。いや!まだそうと決まったわけでは…!
「今、木の葉病院に入院してて…イルカの名前、必死で呼んでるって言うんだよ…。なあ…イルカ。俺だってきっとイヤだと思うけどさ…もしかすると もしかするかもしれないだろ…?行ってやってくれないか…?」
もちろん断りたい…!!!ヤツの顔を見るだけで、今まで数限りなく行われてきた変態行為を思い出し、不愉快な気分になるし、 コレがヤツの策略かもしれないからだ。
だが、俺も忍だ。もし本当に末期の願いなら…会うくらいなら叶えてやってもいい。もしかしたら俺のケツ目当てに生き返るかもしれないし…ソレはソレで迷惑だが、 ナルトたちのことを考えると、ヤツにはまだ生きていてもらわなければならない。
なにより…誰かが死ぬのはあんな変態でも…嫌だ。
「…行く。コレ、頼んでいいか?」
「ああ!…行って来い。」
同僚も何回もヤツの変態行為に巻き込まれているというのに、優しく言って笑ってくれた。
同僚の心の広さに感謝しながら、急いで帰り支度を整える。元々今は残業中だし残っている仕事はごくわずかだが、今度同僚には奢ってやらないと…。
…俺に何の償いもしないで…勝手に死ぬなよ!!!
そう思いながら俺は木の葉病院に向かった。
*****
病院につくと、何故かすぐに暗部にとっつかまった。
「俺はなにもしていない!!!」
と慌てて釈明したが、単に病室に連れてきてくれただけだった。
…暗部と言うだけで変態と決め付けてしまいそうになったことを恥じたが、せめて何か一言、言って欲しかった。暗部は無言で俺を病室の扉の前に連れてくると、 いつの間にか消えてしまった。
何だか良く分からないが、一応あの変態はアレでも里の看板忍者だから、護衛にでも付いていたんだろう。
おそるおそる扉を開けると、そこには元々生っちろい顔の変態が、より一層白っぽい顔色で横たわっていた。少しはだけた布団から、包帯だらけの上半身が 覗いている。いつもは俺の側にいつの間にかくっ付いているのに、今はピクリとも動かず瞳も閉じられたままだ。
…いつもの不死身なんじゃないかと思わせるしぶとさはどうしたんだ…?まるで本物の病人みたいだ…。
ここに来るまで半分くらいはアイツの策略なんじゃないかと疑っていたが、…コレは本当にもう駄目なのかも…?
「オイ!変態!…起きろよ!…大丈夫だよな!?」
ヤツの耳元で叫んでやると、うっすらと目を開いた。よかった!一応生きてる!!!
「…ぁ…う…イルカ先生…?来てくれたんですね…?うれしい…!」
何だかいつものずうずうしさが感じられない。最初からこうやって塩らしくしていればもうちょっと扱いが違ったかもしれない。
「アンタ…大丈夫なんですか…?」
いつもと違いすぎて異常に弱っているように見える。…死んだりされたら…。
「ええ…!!!イルカ先生が来てくれたから…。」
「大げさな…。」
やはりコイツには俺が一番効くのかもしれない。俺が見舞いにきただけでさっきの青白さからほんのりピンクに復活した。コレなら死んだりしない… と思いたい。
「さっさと治してくださいよ…。」
そうじゃないとナルトたちが困る。里の財政も。…俺は別に心配なんかしてないぞ!!!
「心配してくれるんですね!!!」
…心配などしていない!!!ちょっと驚いただけだ!!!それにしても…何かどんどん元気になるな…。…もう帰ろう。義理は果たした。 これ以上ここにいたら危険な気がしてきた。
「あー…じゃ、ちょっとまだ仕事があるので。失礼します。」
さっさと逃げよう。コレだけ弱ってるから大丈夫だと思うが、だんだんいつもの元気を取り戻しつつあるようだし…。
「え…?!帰っちゃうんですか…?」
うう…その顔は反則だ!!!捨てられた犬みたいな顔しやがって…!!!
「ああ…その…。」
「またきてくれますよね…?」
だからその顔をやめろ!!!クソっ…しょうがない…!
「…ナルトたち連れてきますから。」
子どもたちには悪いが、変態への抑止力として一緒に来てもらおう。
…弱っている今が全面対決のタイミングとしては正しいのかもしれないが、やはり…流石にちょっとためらわれる。
「ああ!!!もう無理です!!!」
アレ?何で俺ベッドに乗ってるんだ???
「イルカ先生…。」
あ、口になんかくっ付いた。やわらかい?…目の前に白っぽいふさふさが…。って!!!何しやがるこの変態!!!
「オイ!放せ!!!大体アンタ大怪我してるんだろうが!!!」
コイツ相手に油断した俺が馬鹿だった!!!コイツは…ヤル気だ!!!毎回毎回人のケツ勝手に触りやがって!!!
「イルカ先生にお見舞いに来てもらえるなんて!!!嬉しくて嬉しくて…怪我なんてホラ、直っちゃっいました!!!」
目の前で変態の包帯がほどけていく…結構でかい切り傷。一応縫われているがまだ傷口から血がにじんでいるし深そうだ…。 しかし…この傷で動くなんて上忍でも無理だろ!?
でも…見る見るうちに血が止まっていくんだが…コイツほんとに人間なのか?!
「寝てろって!!!死ぬぞ!?」
血が止まっても失われた血液はすぐには戻らない。おそらく造血丸はすでに使用済みのはずだ。あれはそんなに何回も飲んで効くもんじゃないしな…。 動き回れば貧血を起こすはず。
…それなのに…こんなにぴんぴんしてるのはなんでなんだ?!
「大丈夫ですって!!!結構この位の怪我はしますから!!!ま、久しぶりですけどね!!!」
そうか、コイツも大変だったんだな…。じゃ無くて!!!怪我人相手だと遠慮していたが、無駄だった。 このままではおそらくコイツは早晩俺に何か仕掛けてくるはずだ。その前に…こっちからやってやる!!!
…今こそ俺の最終兵器を仕掛けるときが来た!!!
「食らえ!!!」
思いっきりたたきつけたのは煙球だ。コイツにはコレは聞かないが、チャクラを読み取りにくくする特殊な成分入りだし、視界はさえぎれる。
それに…予想通りコイツは煙球の残骸を慌てて拾い出したので、その隙にヤツの下から這出ることに成功した!
「ああ…イルカ先生の匂いだ!!!」
何で無邪気に喜んでるんだコイツは!!!だがまだまだこっちも手はある!!!コレからが本番だ!!!
間髪いれずに、含み針を思いっきりヤツに向けてはなった。コレならアイツは…。
「ああ!!!イルカ先生の唾液つき!!!」
よし!!!思った以上に気持ち悪いが、ヤツは罠に嵌った!!!一心不乱に俺の放った針を舐め取っている…。
…刺さってもある程度の効果があるが、アレには口から入ると微量でも身体をしびれさせる効果のある毒がたっぷりと塗りつけられている。
それに…効果の高い性欲減退剤もしっかり配合してある!!!…しばらくは役にたたないはずだ!!!
それにしても気持ち悪いな…。いつまで舐めてるんだ…コイツの変態性はきっと死んでも直らない…!!!
「アレ?」
効いてきたか?
そっと側によると、ヤツはベッドの上できっちり動きを止めていた。…怪我人にはちょっときついかもしれないが、命にはかかわらない薬だし、 なによりコイツの性欲は俺にしか向いていないようなので、そんな無駄なものは無い方がいいに決まっている!
「…やったか?」
油断は出来ないが、うまくいったようならこのまま上層部に突き出して…。
「…イルカ先生の今日のお昼は職員食堂のA定食ですね!!!あと、おやつは冷やしチョコ!!!ごちそうさまです!!!おいしかったですよー!!! と・っ・て・も!!!」
なんでだ…!?何で分かるんだ!?じゃなくて…今度の薬には自信があったのに…!!!
薬品部からいち早く手に入れた、試験投与したやつも1週間は動けなかった新薬なのに…!!!コイツは化け物か?!
「ああ!それにしても…こんなベッドのある所で二人っきりなんて!!!…やっぱり決心が付いたんですね!!!」
「なにがだー!!!ってなんでアンタ平気なんだ!!!」
先ほどまでたしかにへたばってたはずなのに…!!!
「えー?だって俺暗部出身ですから!!!毒薬の一気のみとか全然平気です!!!今日は濃厚なイルカエキスを摂取できたのでより一層元気になりました!!! ホラ!!!」
…そうだった…。こいつ変態の癖に実力だけはあるんだった…。
と思う間もなく…。俺はコイツの寝かされていたベッドに逆戻りしていた。
股間を密着させるな!!!気持ち悪い!!!!!…そうか、こっちにも効かなかったのか…!じゃなくて!!!何なんだコイツは!!!
「放せ!!!決心ってなんだ!!!そんなもんビタイチしとらん!!!」
「そんなに照れなくても大丈夫!それに護衛はさっき追い払ったからイルカ先生のかわいいところを盗み見るような変態はいません!!! じっくりゆっくりしっかり…楽しみましょうね…!!!」
「変態はアンタだろうが!!!…あ!ちょっ…そこっ…さわんなー!!!」
ヤバイヤバイヤバイ!!!!このままでは完全に俺のケツは…!!!
…俺の服はいつの間に脱がされたんだかベストもアンダーも着てないし、ズボンも半脱げだ。
しかもコイツにいたっては全裸だ…!!!何なんだこの速さは!!!大体俺のケツを揉むなと何度言ったら分かるんだ!!!股間もだ!!!
…クソっこの手は使いたくなかったのに…。だが背に腹は変えられん!!!
俺は…出来れば使いたくなかった奥の手を開放することにした…。
ヤツの頭をがっしり掴み、思いっきり大声でどなる。
「俺のこと好きなんだよな?アンタ。だったら俺にプレイ内容を指定させろ!!!」
言ってる内容が大分変態じみているが、変態には変態返しが一番いいはずだ!…頼む!効いてくれ!!!
「ええ!!!そんな!!!」
ちっ…駄目だったか!?…今すぐ逃げても…つかまるだろう。俺の貞操とは今日でお別れなのか…!?
「嬉しい!!!積極的なイルカ先生もス・テ・キ!!!です!!!」
よし!!!馬鹿で助かった!!!
「今回のプレイは…女王様と犬だ!!!オイ犬!俺の上からどけ!!!生意気だぞ!!!」
「はい!!!」
変態が返す元気一杯の返事は、俺が危機から脱した証拠だ!!!
毎回毎回本を開くたびに鼻血を吹いて貧血になりかけながらも、必死でこの変態の愛読書を読破した経験が今ここで役に立った!!! やはり敵に勝つには敵のことを知らないといかんな!!!情報戦は忍の十八番だ!!!
ベッドの上でご丁寧に全裸で犬座りしている変態を眺めながら、俺はほとんど初めてといっていい勝利に酔いしれていた。
*****
「ちょっとアンタ!!!さえない中忍の癖にはたけ上忍と付き合ってるってホントなの?!」
最近こういう手合いが増えたな…。別につきあっちゃいないんだが…。
「ああ済みません。うちのカカシがご迷惑をおかけしたようで…。今すぐ謝罪させますね。」
面倒な客には、さっさとお引取り願おう。
「オイ!カカシ!この方になにか粗相をしたようだな!!!」
名前を呼ぶと、足元に相変わらず犬座りした変態が湧いて出た。流石に忍服は着ている。
…変態行為を仕掛けられていたときはコイツの付きまといに、非常に不愉快な思いをしたが、こうなってみると結構役に立つ能力だ。
最近自発的に首輪だのネームタグ(うみのカカシの刻印と何故か俺のスリーサイズの刻印入り。)までつけて、相変わらずいつでも俺の側に くっ付いてきている。
「えーそんなことしてませんよー!それより!これ!おみやげでーす!!!」
「おお!…ふん。そうだな一応褒めてやる。」
ヤツは最近、こうして俺に美味いものやら貴重な術の資料やらを持ち帰ってくる。今回は有名店の和菓子のようだ。
しかも日常の細々とした買い物や、家事全般までこなす便利な奴隷なので、働きがいいときは一応頭をなでてやっている。今日も無駄にもさもさと逆立った毛を、 わしわしと撫で回してやった。
「えへへ!!!」
俺の犬は、にやけた表情で嬉しそうに俺に擦り寄ってくる。だが…。
「お前は触るな!下僕の分際で!」
相変わらずコイツは変態のままだ…!!!手をなでまわすな!!!隙をみせればこれだから…!!!
「えー?あ、そっか。はーい!」
ふん。素直で宜しい。
…だがお仕置きは必要だ。躾は飼い主の責任だからな。
いつものように足元の駄犬を足で地面に転がし、腹の上を軽く踏んでやる。
「ああっ…!イルカ先生の、足…!!!」
コイツは俺からの行為にすべからく興奮してしまうので、あんまり罰にはならんが、俺はちょっとスッキリするので毎回踏んでやっている。
それにしても…毎回毎回嬉しそうだな…。踏まれるののどこかが楽しいんだ…?
「…ウソでしょ…」
俺による変態のしつけの様子を見て、絡んできたくのいちが呆然としながらつぶやいている。
…俺もウソだったらいいなと思うことがあるが、残念ながら…里一番の上忍はまごうことなき変態だというのは純然たる事実だ。
「あ、粗相をしたのはうちのカカシではなかったようなので、他の犬を当たってみてください。」
面倒なので、くのいちの動揺など気付かなかったような顔でそう言うと、言いがかりをつけてきたくのいちはよろよろと去っていった。
ふう…面倒ごとは片付いたな。
「オイ!帰るぞ。」
「ええー!!!もっと踏んで欲しいなー…。」
未練がましく変態が俺の足にまとわり付いてくるが、俺はもう踏むのに飽きた。
「俺は腹が減った。今日の飯は?」
さっさと話題を変えてやった。
「はーい!!!今日はー…スタミナ焼肉とー!!!あと野菜たっぷりナムル盛り合わせにスタミナスープです!!!イルカ先生の好きな木の葉 ビールもありますよ!!!」
最近スタミナ料理ばっかりだが、中々美味そうだ。夏バテ対策だろうか?…上忍だけあって気が利く犬だ。
「ふん。まあいいか。早く用意しろよ!」
「帰ったらすぐ食べられますから!!!」
嬉しそうに尻尾を振っているように見える駄犬も、一応俺と一緒に飯を食うが、俺はテーブルでヤツは床だ。自分の地位を勘違いさせないためには 必要な工夫だ。
これで…俺も変態の仲間入りか…いや!コレ以外にヤツを止められなかったはず…しょうがないんだ…!!!
…俺の悩みは深いが、それよりなにより…最近コイツが一心不乱に俺になつき、つくしてくるので、ちょっと可愛く見えてきたのが恐ろしい…。
「せんせー!!!帰ったらもっと踏んでください!!!」
嬉しそうに言う駄犬の頭を小突いてやりながら、俺はちょっと楽しくなってきた生活に…密かに恐怖したのだった。

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サブタイトル同じ穴の狢。相変わらずです…。
気分が悪くなった方は記憶からすぐに消去されることをお勧めします…。
変態さんは…まだ狙い続けているのでどうにかなる日が…おそらくきます。
と言うわけでこっそり続き書くと思います…。

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