贈り物7
「ふーっ。やりすぎちゃったかなー?どうでしたー。気持ちよかった?」
好き勝手してくれた悪魔がうれしそうに何か言っているが頭に入ってこない。 ベッドの上で横たわるイルカは、体は綺麗にされていたが、身体もだるく腰から下がしびれたように 動かず、喉もかれてしまい、ことばを発する気さえ失われていた。
「あれぇ。たりませんでしたか?もっと?」
だが、恐ろしい科白を吐かれ、あわててかすれ声で否定した。
「いえっ。もう結構です。おなかいっぱいです。」
(いろんな意味で。)
「そうですかー!良かった!俺もそれはもう気持ちよかったです。」
(別に聞いてねぇ。)
あれだけやられたのだからカカシも相当疲れているかと思ったが、本人は全く 疲れた様子も見せず、むしろつやつやしている。これが中忍と上忍の差なのか それとも己の鍛錬不足のためなのか、イルカはしばし悩んだ。
「で、どうします?」
「は?」
(何をだ?)
「だからーやっと思いが通じあったわけですしー。そうなったら次は結婚です!まっ、その前に 同棲かなーって思うんですけど。どっちの家がいいですか?」
「はぁ?え!うぇ?」
(結婚???同棲????)誕生日プレゼント?を貰った覚えはあるが、嫁を貰った覚えはない。
「家のほうが防音ばっちりなので、愛し合う二人にはぴったりだと思います!でもーイルカ先生の 狭いお家で身を寄せ合って生活するのも捨てがたいですよねー!」
(…躾だ!躾は最初が肝心だ!さっきは失敗したが、今こいつは落ち着いているはず。)
これまでの行動から考えて、どう考えてもカカシに常識はない。自分のものになる以上、それでは困るのだ。
「カカシ先生。」
「はーい。」
(返事だけはいいな。)理解力がなくて返事だけ良い生徒はアカデミーにも多い。…最初から聞く気がない確信犯も。
「同棲はお断りします。」
(はっきり言わないとな!鉄は熱いうちに打つ!)
「そうですか!やっぱりこういうことはきっちりしておいた方がいいですよね!じゃこれにサインして下さい。」
そういって目の前に出されたのは婚姻届だった。
「なんでだー!」
「イルカ先生はそういうのこだわりそうだなーと思って、貰ってきておいてよかったです!」
全く会話が成立しない。
「…そうではなくてですね。」
(頭が痛い…。)
他のところも激しく痛むが…。
「そうではなくて?んーやっぱりマイホームの方が落ち着きますか?愛の巣って大切ですよねぇ。 でも俺も今すぐ一緒に住みたいんですよねー。建売にとりあえず引っ越してから、新しい家を建てましょうか!」
(だれか助けてくれ…。いや!俺のものはキチンと責任持って俺が躾けなければ!)
しっかりと躾しておかないと、周囲に迷惑をかけるたびに責任を取らねばならなくなる。
「違います。その前にですね。まずお付き合いといいますか。恋人からとか…。」
「えー。だってもうお付き合いしちゃいましたよ。はだかで!」
自分の行動が引き起こした問題を認識していない、カカシがしれっと言う。 「ぎゃー!なんてこというんですか!」
「やっぱり足りなかった?だから怒っちゃいましたか?」
「違うだろ!」
(なんでこんなに話が通じないんだ。)
カカシの中にはそれ関係のことしか入っていないんだろうか。
「安心してください!責任は取ります!」
「別に頼んでねぇ!」
(責任って…。何されちゃうんだ俺。)イルカは躾すべきことの多さに、頭を抱えたくなった。
「感動のあまり舞い上がっちゃってるんですね!」
「あなたがね!…いいですか。まずそこに座りなさい。」
(こいつは子供と一緒だ。アカデミー名物正座de説教イルカverの威力みせてやる!術は上忍にかなわなくても こういうのは得意だ!)締めはもちろん一楽のラーメンだ。
「イルカ先生怒った顔もすてきです!」
「いいから聞け。…いいですか。カカシ先生。」
「はい。」
「まず、聞きたいことがあります。…カカシ先生は俺のことが好きなんですか?」
(あんな表情しといて、冗談とか抜かすなよ。)
説教には前後関係の確認をすることが第一と信じるイルカは、まず事態を整理することにした。
「もちろん!愛しちゃってますよ!心も身体も相性ばっちりで、」
重要な所は言質を取れたので、いつまでもしゃべり続けそうなのをさっさと遮る。
「分かりました。では、カカシ先生は愛していればいきなり…そのこんなことをしても良いと?」
(返答次第じゃただじゃおかねぇ。誰にでもこんなことしてるんじゃねぇだろうな。)
「こんなことって?舐めたり入れたり出したりですか?」
「黙れ。いいですか、俺のことを愛しているとおっしゃるのなら、俺の同意とか考えとかをですね…。」
どうにも常識をどこかに置いてきたらしいカカシに、イルカはきっちり言い聞かせてやろうとした。
「えーイルカ先生は俺のこと愛してくれちゃってるでしょ。嫌ならわかりますよーイルカ先生のことならなんでも わかっちゃいますから!」
(こいつは何でこんなに自信満々なんだ…。)
イルカはため息をついたが、口調の割りに、よく見ると不安そうな目をしているが。イルカは、やや上目遣いにこちらを 窺っているカカシに向かって諭すように言った。
「なら俺がいま怒っているのも分かるんですね。」
「…ハイ。」
「俺のものになるんなら。まず。俺の意見を聞くこと。それに俺は浮気は許さない主義です。あと、礼儀知らずも嫌いです。 後で三代目の所に一緒に謝りに行きますからね!」
(躾の第一段階ならこんなもんだろ。まずきっちり言うことを聞くようにしておかないとな。)
躾すべき内容のあまりの多さに、イルカは基本だけであきらめることにした。
「…イルカせんせー!!!!!やっと俺をうけいれてくれたんですね!!!!!」
(散々婚姻届とか言い出したくせに結局自信なかったのか…。)
涙を流しながらしがみつき、そっとしりを触ってくるのを払いのけ、イルカはそっとため息をついた。

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ぐだぐだ。
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