まつり


イルカ先生が木の葉祭りの準備をしている。イルカ先生にとっては、待ちに待ったお祭りで、随分前から すごくすごく楽しみにしていた。
ふんどし一丁に半被のみ。無防備すぎる!…どこかにしまっておきたいのだが、イルカ先生は、やる気まんまんだ。
「さ、行きますよ。」
「…はい。」
こんな素敵な格好のイルカ先生を晒すのもきついが、イルカ先生の隣を歩くのは俺の特権だ。
たとえ、俺も同じ格好を強制されようとも…。
正直ふんどしはキッツイ。暗部装束も大概タイトな作りだが、それとは別種の拘束感というか、何かがある。
それなのに、見える部分は微妙なフリーダム具合。見るのは最高だ。それは絶対だ。
でも顔は隠してくださいね!って…。顔だけ隠すのもどうなのかな…。俺の今の格好…確実に変質者御用達だと思うんだが…。 イルカ先生は最高にかわいい!!!でもコレを着るのは…
「へへ。おそろいですね!」
イルカ先生がかわいい顔で、鼻傷を掻いている。もうこの笑顔だけでいい。俺は己の格好をしばし意識の外に追い出すことにした。
「イルカ先生。行きましょう。」
こうして俺たちは、いつものように手をつないで、祭りに向かったのだった。
*****
木の葉神社の本堂前についた。やっぱり、いくら俺が上忍でも流石に何か言われるんじゃないかと思ったが、意外にも誰も何も言ってこない。
1、俺が怖い。(写輪眼+上忍+元暗部)
2、イルカ先生が怖い。(トラップの威力は精神肉体ともにかなりの恐ろしさ。)
3、触らぬ神に祟りなし。(勝手にやってくれ。)
ってとこかな…。
売れっ子の上忍になってよかったと喜んでおくべきだろうか…。まずそうだったら、幻術バリバリ使うつもりだったけど。
さすがに神事でそれは…。めんどくさいことになりそうだし。まあ良かったのか。
さて、目下の敵は、黄色いアイツではなく、三代目だ。
アイツは祭りに出ないことが多かったが、今年はルーキーズと遊びに行くと昨日任務前に嬉しそうに報告してきたので、 ちょっとだけ小遣いを与えておいた。
子ども神輿はもう終わっているから、今頃はもう縁日を駆けずり回っている頃だろう。
そろそろ大人たちの担ぐ本神輿も、里長の祝詞に合わせて出す予定のはずだが、どうも三代目が見当たらない。
この格好、早く何とかしたいんだけど。
ガイとかさっきからうるさいし。勝負なんてしないし、ナウい格好ってなんなんだ。
…イルカ先生に触ったら、今度こそ術でも使って、どっかに飛ばしてやろうかな…。
しかし、上忍がこんなイベントに大勢参加してるってどうなのかな…。平和?
待ち時間が長いので、だんだん思考がそれてくる。
イルカ先生は、血が騒ぐらしくて、落ち着きなくうろうろしている。祭りに興奮して、キラキラしているイルカ先生を堪能していると、 本堂前の人だかりのざわざわした空気が収まってきた。やっとじじいが来たらしい。
「イルカ!……!?貴様その格好は何じゃ!?ふざけた格好しよって。……頭でも打ったのか?そうかそうか。 安心してよいぞ。イルカはちゃーんとわしの家に引き取ってやるから。さっさと病院に行って来い。」
三代目がイルカ先生ににこやかに話しかけている。…じじいは今地雷踏んだの気付いてるかなあ。 大体自分のファッションセンス振り返ってみたらそんなこといえないと思うんだけど。…まあ俺の格好も相当だが。
イルカ先生が真っ黒なチャクラを漂わせながら、三代目にゆっくりと振り返った。
「うちのよめに。何か?」
あー怒ってるね。似合ってるってはしゃいでくれてたしなあ。どうだろ。さすがにごまかしきれないんじゃないかなー。好都合だけど。
「いやその。イルカ。粋じゃのう。似合っておるぞ!」
ご機嫌取りに走ったな。
「よめに、何か?」
やっぱり無駄だったか。
「すまん。その。」
「今日はめでたいお祭りですから、許しますが、次はありませんよ。」
イルカ先生がかっこよくびしっと決めてくれた。俺は嬉しいが、怒ってるイルカ先生は本当に怖い。 報復内容も精神に影響が出そうなものを繰り出してくるので、しばらくじじいはしかばね状態かもしれないな。
今日はいい日だ。流石祭りなだけはある。神を信じたことなどないが、今日のことでちょっとだけ信じる気になった。
じじいが凹みながらも、流石に里長だけあって、朗々と何かめでたいらしい詞をうたいあげている。
集まった忍たちの熱気も高まってきていて、暑苦しい。一際暑苦しそうなのは、さっきドサクサにまぎれて、すっ飛ばしておいたから、 少しはましなはずなのだが。
さて、神輿を担ぐのは初めてだが、上忍も混じった忍ばかりの集団が、全力を出して担ぐほど重くはなさそうだ。
…適当に楽させてもらって、イルカ先生を堪能しよう。
イルカ先生の魅力に惑った、不埒な輩を排除するという目的もあることだし。

*****
…結論から言うと甘く見ていた。
祭りという特殊な状況に、みんなテンションがあがっているらしく、異常なスピードで神輿が移動していくのだ。
忍の脚力、膂力を全開にしてるんじゃないかと思うくらい、荒々しく神輿が上下する。…一般人は付いてこれないだろう。
こんな状態で、イルカ先生は大丈夫なんだろうかと思ったが、しっかり一番いいところで神輿を引っ張っていた。
「おらおらどきやがれ!!!!!」
…祭りの時の荒々しいイルカ先生も素敵だ!ゆれる尻。輝く汗。熱い瞳…。このまま持って帰りたい。でもイルカ先生は、 この祭りをずっと楽しみにしていたので、ぐっとこらえる。
だが、しかし、周りの奴はイルカ先生に触りすぎ!!!イルカ先生には、肌と肌とのぶつかり合いも、祭りの醍醐味だからって言われたけど、 我慢できるか!!!
俺のものに手を出すとは……。
「イルカ先生!!!」
上忍の本気で、イルカ先生の周辺に勝手に居座っていた輩を押しのけ、イルカ先生の側に付いた。多少、怪我でもした かもしれないが、もうすでに、神輿に引かれたり、神輿を担ごうとして乱闘になって転がってたりする奴が他にもごろごろいるので、 問題ないだろう。さっさと放置することした。
「いくぜ!!!」
俺が側にいるのに気が付いて、イルカ先生のテンションが更に上がったようだ。神輿の移動がより早く、より激しくなってきた。
もはや、かなりの人数が、落伍している。
…祭りって結構危険なものなんだと知った。今まで祭りに出たのは、4代目に引きずられて射的の的になったとき以来だし。 もっと平和的なものなんだと思っていた。
まあ、それはともかくとして、一生懸命に神輿を担ぐイルカ先生は隙だらけなので、ドサクサに触りまくってみようとした。
が、神輿のスピードが速いのと、イルカ先生の動きが早いのと、周囲から酒がかけられるのとで、なかなか難易度が高い。 …イルカ先生の動きは上忍を軽く超えてる気がする。
こっちは、酒が口布にかかるから呼吸が厳しいし、かけてる奴も忍らしくて、避けにくい。だからといって、コレを 取ればイルカ先生に怒られてしまう。
必死に神輿についていきながら、せめて酒を浴びてキラキラと輝くイルカ先生を堪能した。

*****
町中を練り歩き、というか駆け抜け、本堂に戻ってきたときには、神輿を担いでいるのは、俺とイルカ先生しか残っていなかった。
大勢の忍が町中にボタボタと落っこちてしまったらしい。…迷惑な話だ。
じじいが、そっとイルカ先生に何か言いながら、何か葉っぱを振り回している。嫌そうだったが、俺にもやってくれた。
「今年も勝者はイルカじゃのう。」
勝者?
「はい!!!」
勝者ってなんだ?何の勝負してたんだ???
「不愉快じゃが、貴様もか…。さっさと用意せい。」
じじいも勝手に話し進めようとするし。
まだ何かあるのかと、イルカ先生を見ると、ニコニコ笑いながら、手をひいて、本堂の中に案内してくれた。
「そんな顔して、うちの嫁さんはかわいいなあ。」
ほめられた!じゃなくて、コレってまたなんかめんどくさそうなことなんだろうか。
「コレに着替えて。」
渡されたのは、羽織袴。この格好から開放されるのは嬉しいが、一体なんのためなのか。
「イルカせんせ。これなんなんですか?勝負ってなにかあったんですか?」
やっと口布を外せて、大分呼吸が楽になった口で聞いてみた。
「コレを着て、祭りの最後にみんなにコレをまくんですよ。俺たち夫夫で神輿に勝ったので。」
イルカ先生が、かごに入った、何か文字が刻まれた小さな陶器の人形と、餅などを見せてくれた。
「神輿に勝つって?」
他の町で祭りを見たことがあるが、そんなことは聞いたことがない。
「木の葉の伝統ですよ!神輿を出し得る力を限界まで出し切って、決まった順路を担ぐんです。それで、 本堂まで担いでいられた者がその年の勝利者。…因みに俺が出場し始めてから、ほぼ全戦全勝!!!」
全戦全勝…。だからあんなに一生懸命だったのか。喜ぶイルカ先生がかわいい。
イルカ先生と神前で羽織袴…。まるで、結婚式みたいで嬉しい。
もちろん着替え中のイルカ先生を堪能し、そっと色々しようとしたが、祭りの興奮冷めやらぬイルカ先生は、 異常にすばやく、俺の繰り出す技を、無意識に全てキレイに流してくれた。
ちょっと悔しいが、カッコいい。期間限定の魅力も堪能しておいて、帰ってから色々楽しむことにした。

*****
「さっすがー!!!今年もイルカセンセーだってばよー!!!」
「あ、ホントね。」
「カカシもいるな…。」
子どもたちも縁日から引き返してきたようだ。イルカ先生に寄り添うように立ちながら、 一緒に持ったかごの中身を掴み、ばら撒く。満遍なく撒くのが大切だとイルカ先生に言われたので、かなり遠くまで 放り投げてみたが、本堂前に集まった者全員が、必死になって取り合っていて、地面に落ちる前に全て拾われているようだ。
なんでも、この人形は身代わりになるし、もちを食べると病気にならないらしい。
せっかく勝ったイルカ先生が、コレをもらえないのは、おかしいと思って聞いてみたが、祭りの勝者はその年に必ず スバラシイことがあるそうなので、コレを拾わなくてもいいんだとか。
イルカ先生が納得しているので、我慢する。
「去年は、よめさんがほしいってお願いしたら、よめさんができたので、いいんです!!!」
なんていってくれたので。

*****
かごの中身も終わり、子どもたちも何とか拾えたようだ。
また、敗者が山になっている。…この時期そういえば妙に忙しかったのは、けが人が増えるからだったのか…。
でも、まあ今日はいい日だ。
今年は俺も勝者なので、イルカ先生との素敵な夢を色々考えておこう。きっと実現するに違いない。
まずは、今日の初夜プレイだ。
決意を新たにした俺は、はしゃいだ様子で祭りのことを話している今日だけはすばやいイルカ先生を美味しく頂ける様に神様に祈って、 羽織袴姿のままうちへ向かったのだった。


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イルカ先生ご降臨祭りをばこっそり。
祭りの描写は、超適当ですので、つっこみはご容赦を…。
お読みになる際には、ふんどしとふくめんの上忍が、イルカ先生のしりを追っかけて、 すごい速さで移動していく映像を頭の中に思い浮かべると良いかもしれません。

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