楽しいな!皆で修行だ!頑張るぞ!(あくまで子イルカ)


今日は任務が休みだったので、昼飯を作ってたら、今朝早く出てったばっかりのカカシがいいタイミングで帰ってきた。
「おお早いな!おかえりカカシ!今日は…」
早速俺がおやつを差し出そうとしたが、なんでかカカシはヤル気だった。
「今日こそちゃんと修行するぞ!イルカ!」
「おっし!任せとけ!で、何の修行?お菓子作りたいならちょうど貰い物の柿が沢山…」
後はこの間貰ったドライフルーツが酒につけてあるから、ぱうんどけーきって言うの作って見たいかも!俺が期待をこめた瞳でカカシを見つめていたら、 なんだかカカシががっくりと肩を落としてた。
「忍術に決まってるだろうが!お前…自分が忍だっていう自覚あるのか…?」
ずいぶん落ち込んでるなぁ?ソレのそんなコトは当たり前なのに。そう思いながら俺はつかれきってるみたいなカカシを慰めてやることにした。
「おう!勿論だぜ!なんてったって俺はいずれアスマ兄ちゃんを超えるモサモサ具合になる男だからな!」
力いっぱい、俺の将来のビジョンをアピールしてやったぜ!コレならカカシも安心するだろう!
あれ?何でカカシ座り込んじゃったんだ?
「…ソコは目指すな。そして忍と関係ないだろ!」
なぁんだ!毛についてショックを受けてたのか!
「毛は、大切だぞ?」
しょぼくれてるカカシの肩をポン叩いて、ちゃんと言聞かせてやった。
「だからしみじみ言うんじゃない!そのゆがんだ考え方を何とかしろ!」
「ま、食え!今日は、おやきだぞ!」
なんだか今日はいつになくイライラしてるみたいなので、空腹を何とかしてやるべく、俺がカカシのおやつ用に作っておいた新作おやきを 口に突っ込んでやった。
「うぐっ!…あ、甘くない。美味いなコレ、もちもちしてて。」
よしよし!食ってる食ってる!
「残りご飯で簡単に出来るんだぜ!今食ったのは醤油味だけど、甘味噌もあるんだぞ!まあどんどん食え!因みに中に肉味噌も入ってるぜ!」
カカシは毛が薄いから、ちゃんと肉食わさないとな!
俺はウマそうに俺の作ったおやきをもごもごやってるカカシに、片っ端からおやきを詰め込んでやった。
「むぐっ!…だから俺は自分で食える!詰め込むな!」
「沢山食って、いっぱいもっさもさになれよ!!!」
励ましの言葉も忘れない。
カカシは頭と他一部はもさもさのくせに、相変わらず腕毛とかすね毛が薄い。今も、なでてやってるが、つるつるのままだ。 きっと気にしているに違いない!!!
俺が毛がはえてくるよう祈りながら腕をなでてやってたら、カカシに振り払われた。
「ならないって言ってんだろうが!腕をなでるな!」
相変わらずガウガウ吼えてるカカシは、相当イライラしてるみたいだ。
その怒りと悲しみを慰めるべく、もっさもさの頭をうりうりしてやる。
「そう悲観するなよ!ちゃーんと俺が何とかしてやるから!肉パワーで!」
確かにココまで毛が薄いと色々悩む所もあるんだろうけど、俺がちゃーんと毛艶管理してやるって!!!肉で!!!
俺が次に突っ込む予定のおやき片手にカカシのご機嫌を取ってたら、へばってたカカシがいきなり立ち上がった。
「だから!そんなもんいらん!話が進まないだろ!…で、飯は?」
「今日はおやつがおやきだから、昼飯はお好み焼きだ!」
肉も山芋もキャベツも入ってるし、海老とかイカとかも用意してある!他にもキムチとか明太子とか…さらに!特性野菜ジュースと…、 あとコレは晩飯用だったんだけど、カカシの毛艶を考えて、コラーゲンたっぷりのスープもある!!!正に準備万端だぜ!!!
「…何のつながりがあるんだ?」
「ホットプレートつながり!焼きそばもあるぞ!勿論肉もたっぷりだぜ!」
釈然としない顔してるカカシにも分かりやすいように、ちゃんと説明してやりながら、俺はさっそく準備に入ることにした。
「あー…うん。まあ何でもいいからさっさと食って行くぞ?」
「そう焦るなって!肉は逃げないぞ?な?」
空腹のカカシをなだめながら、肉の存在を強調してやった。
「肉じゃねぇ!!!」
照れてるのか、まだまだ吼えるカカシを早く満足させてやるために、俺は急いで台所へ向かった。
「すぐできるから!!!」
*****
イルカは相変わらず会話が成立しない。だが、今日こそは絶対にイルカの修行を見てやると決めていた。
なにせイルカには忍としての覚悟がないというか…忍がどういうものかちゃんと理解してない。適当に詳細の分からない術使うし、 えんたーていめんとせいがだいじだぜ!とか言い出して俺の忍犬巻き込んで変な遊びしてるし、危険な薬品調合するし…。
努力は一応ちゃんとしているからソコは認めてやりたいが、目的というか…方向が完全に間違っている。
だから、今日からは実践的な術の使い方を教えてやるつもりだ。遊びのためじゃなくて、どんな術をどんなときに使えば効果的なのかってことを 学ばせればいつかは…いつかはちゃんとした術の使い方を身に付けられるはずなんだ!
一番心配だった俺の任務も、なんとか終わらせることが出来たし、当面の問題はコレからさっさと飯を食わせることと、集中して修行できるよう 工夫することだ。
飯のほうはさっさと俺が食えばイイし、集中させることに関してはちょっとした計画も立てた。
とにかく飯だ。コレを済まさないことにはイルカがちゃんと修行しないからな。
だが、どうして俺はホットプレートの前で正座させられてるんだ…!?
さっきテーブルの上にホットプレートをのせた瞬間から、何故かイルカの気配が変わって、ものすごく真剣にお好み焼きの生地を混ぜ、焼き始めた。
そこまではまあ、またなんか変なこと考えてるんだろうと思ったんだが、ソコからが違った。俺がちょうどよさそうだからと、生地をひっくり 返そうとしたらイルカにいきなり正座を命じられたのだ。しかも、静かにしてろよ?とか言い出して…。
…そして、今。イルカのチャクラがものすごい勢いで練られている。
「クマをも倒した俺の実力…!見せてやる!」
「何する気だー!!!」
ナニしでかすかわからないイルカの言う事を素直に聞いた俺が馬鹿だった!
あまりの気迫についつい押されてしまった己を悔いながら、俺は慌ててイルカを止めようとした。
だが…すでにイルカは動き始めていた。
「ローリング返し!」
滑らかにしかもすばやい動きで、イルカの手が円を描く様に動き、その両手に握られた一文字によって、天井の際までお好み焼きが舞い上がった。
そして…再び鉄板の上に舞い戻ったお好み焼きは、見事にひっくり返っていた。
「へ?」
驚きのあまり間抜けな声を出したというのに、イルカがお好み焼きを今まで見たことがないくらい真剣な瞳で見つめている。
鉄板が立てるジュウジュウという音だけが、居間を支配し、イルカの研ぎ澄まされたチャクラが俺に沈黙を余儀なくさせる。
「まだ、まだだ…!」
イルカはお好み焼きを見つめながら眉間に皺を寄せ、まるで苦悩しているかのような表情を浮かべている。
お好み焼きの立てる音がじわじわと変わっていくのを聞きながら、思わず俺も唾を飲んだ。
次の瞬間。イルカが、動いた。
「まずは…ソース嵐!」
「おお!」
イルカの手に握られた刷毛が激しく、だが確実に狐色のお好み焼きを茶色く塗りつぶしていく。そして、イルカの手はまだ止まらなかった。
「次!…青海苔吹雪!」
「なっ!?」
スプーンの上から青海苔が正に吹雪のようにお好み焼きに降り注いでいく。しかも、むらなく。俺がその正確さに驚く間もなく、 イルカは次なる行動に移った。
「削り節の舞い!!!」
「おお!」
お好み焼きの上に削り節がふわふわとのせられ、熱気で踊るように揺らぐその様は正に舞いそのもの。
「マヨネーズはお好みで…とおちゃん直伝!お好み焼きの儀終了だぜ!!!」
イルカが集中しきっていたチャクラをもどし、額の汗を拭いながら、宣言した。その顔はどこか誇らしげでさえあるが…。
「お前の父親って…ほんっとうに忍だったのか…?」
確かに動きは見事だったが…一体なんの役に立つんだこんな技!お好み焼き屋でもないのに!
…どうしてろくでもないことばっかりしっかり身に着けてるんだイルカは!!!
俺がうっかりしっかり凝視してしまったことに焦りながら、イルカに呆れた視線を向けると、何故か胸を張ったイルカがニカっと笑った。
「おうとも!俺の技の切れなんて、とおちゃんに比べたらまだまだだ…。」
腕組みをしながらうんうんと過去を振り返っているイルカは、何を目指してるんだか知らないが、明らかに間違った方向に努力しすぎだ。
コレだから術の使い方もおかしいに違いない!
「だから、ソレはしみじみ語らなくていい。お前はちゃんと忍術の修行をしろ!」
コレだけの技…っていうか細かいことが出来るんなら、術にだって生かせるはずだ。それに、トラップとかも上手いのも、こういう手先の器用さと マニアックさにある気がする。
あとは方向を修正さえしてやれば…!
俺がイルカの今後について考えているというのに、俺の背中をバンバン叩いたイルカは、また明後日な事を言った。
「この技を受け継ぎたいんだな!で、今度は何の役なんだ?」
「役なんかあるかー!!!」
どうして何度も忍術使って見せてるのに納得しないんだこいつは!俺は!俳優なんかじゃない!!!
だが、俺がそう怒鳴るためにあけた口に、間髪入れずにお好み焼きが突っ込まれた。
「冷める前にどんどん食えどんどん!」
そんな事を言いながら、イルカはガンガンお好み焼きを押し込んでくる。
「ふもがっ!あっちぃ!」
焼きたて突っ込む馬鹿がいるか!熱さで涙まで出てきそうだ。あまりのすばやさにチャクラでガードする暇もなかった。
俺が視線で抗議しているというのに、いるかは嬉しそうに薀蓄をたれる。
「お好み焼きははふはふ言いながら、涙目で食べるのが正統派だぞ?」
「あにふんはほ!」
熱いといっても限度がある。何とか水でも…!
俺が机の上の野菜ジュース(緑色でちょっと不気味でも何故か美味い)を手に取ろうとしたとき、更にイルカが口に何かを突っ込んできた。
「あっついか?じゃ、コレ食え!」
「もごっぐふ!」
冷たい…!?氷か!
「ひんやりしちゃうぜ!」
自信満々に宣言するイルカを睨みながら、も何とか飲み下すと、口の中に冷たい感触が残った。それに妙に爽やかな香りが…。
「んぐっ…!なんだこれ?」
「レモン水で作った氷だ!ウマイだろ!」
わざわざ氷作ってまでやけどギリギリの食い方する必要なんかどこにあるんだろう…?
「…で、コレでまた吊るされたのか…?」
ここまでやったら当然そうされるであろうイルカの親父さんのその後を予想したが、驚いたことにソレは外れた。
「男だけの秘密だっていって、かあちゃんが任務でいない時しかやってくんなかったよ?匂いもちゃんと術使って消してたし!」
つまり、こそこそ嫁さんに隠れて危険な食い方をわざわざ子どもに…!!!
「そうか…。巧妙って言うかなんていうか…相当しりに惹かれてたんだなお前の親父さんは。」
呆れたのと驚いたのとを必死で押し隠し、俺はなんとか冷静さを装った。それにしても…ほんっとにコイツの親父さんは忍だったんだろうか…? 心底疑問に思った。
「しり?うーん?上にのってたのって縛ってるときくらいだったよ?座ってたことあったかなぁ…?」
「お前はそっちも学ばないとな…。」
そうか…慣用句の方からか…。アカデミーでナニ学んできたんだろうな…お前は。
俺が今後のイルカの教育計画に更なる修正を加えつつ落ち込んでいると、いきなり顔を覗き込まれた。
「どうした?腹減ったか?」
イルカは小首をかしげて心配そうな顔をしているが、言ってることが常に的外れだ。
「違う!今めし食ってるだろうが!」
口いっぱいに突っ込まれたお好み焼きは熱すぎて味すら分からなかったが、帰るなり口に突っ込まれたおやきだけでもすでに結構腹が一杯だ。
ソレと!お前はどうして俺が凹んでると飯を食わそうとするんだ!!!
だが…。
「そうか!寂しいのか!よしよし!」
俺の訴えを他所に、俺の頭をモサモサと撫で回すイルカがご機嫌すぎて脱力した。
「なでるな!いらん!…イイからさっさと食え!」
説得を諦めた俺が、さっさと食い終わるよう促すと、何故か何度も深くうなずいたイルカが、胸を張って嬉しそうに同意した。
「おう!勿論だぜ!鉄板との戦いは熱く激しく速やかに!が鉄則だよな!」
「お前の親父さんに会ってみたかったよ…。」
脱力しきって言葉も出ない。教育する人間がまともじゃないっていうのは凄く大変なことなんだと思い知った。
…四代目もかなりとんでもないことをする人だったけどココまで酷くなかった。
きっとあって話したらイルカと同じか、それ以上にとんでもない性格をしていたに違いない。
単に思いつきで口にしただけだったのに、何故かイルカが腕組みをしながら何か考え込んでいる。
「えーっと?呼び戻すのはお盆とかじゃないと難しいよ?」
「…呼び戻せんのかよ!それ、また禁術だろ!絶対駄目だからな!」
どうしてそんなに危険な術を知ってるんだ!三代目はまだ書庫にコイツを出入りさせてんのか!?
「大丈夫だって!」
「駄目だ!いいからソレ使うのは禁止!」
そしてコイツも根拠なく自信満々だから困ったもんだ。大丈夫とか言いながら結果の分からない術とか使うからな…。
「ちぇ。かあちゃんに折角教わったのになー。ま、いっか!今度別のを探してみるぜ!」
「ちょっと待て!?」
かあちゃん!?ってことはコイツの母親から…!おかしいのは親父さんだけじゃなかったのか!!!
驚愕に身震いした俺に、イルカは過去を懐かしむようなちょっと遠い瞳をしながら、自慢げに語った。
「かあちゃんはさ、いろんな術が得意で、俺にも…ばらえてぃゆたかな術を…えーっと。ほうふにおしえこんだ?んだぜ!!!だから色々…」
「また適当な事を…!っていうかこんなガキに何てことしてるんだお前の両親は!!!」
父親だけでも相当な被害なのに…!母親まで…。
どうしてコイツの教育担当者にはまともなやつがいないんだ!!!
…もちろん、イルカは俺の問いかけに変化球を返してきたんだが。
「みゃくみゃくと?えっと受け継がれてきた秘術が、かあちゃんの代で途絶えるのはもったいないからって言ってたよ?才能あるとか。あと! とおちゃんの術はあんまりあてにするなっていってた!でも、とおちゃんの教えてくれる術もおもしろいかったんだけどな!豪快で!かあちゃんの 繊細な術とは全然違ってて雰囲気の違いをお楽しみいただけること請け合いだぜ!」
そうか…何だか知らないが母親なりに悩んだ末の行動が、コイツにとってはお遊びくらいにしか受け取られていなかったということなんだろうか…? もしくは、父親が台無しにしたとか…?
だがとにかく!今問題なのはイルカだ!!!
「だからなんだその煽り文句は!!!術は使うもんだ!披露するもんじゃない!!!…まあ、いい。今度その術、書き起こして見せてくれ。」
イルカが使う前に中身を把握しておけば多少は対策が講じられる。禁術に類するものならそれなりに対処しないとまずいしな…。
…それにしても、イルカの、この危機感というか緊張感のなさは一体何なんだ…!?
「いいけど。ソレより実践してみせちゃうぜ!」
俺が色々と覚悟を決めながら言ったというのに、いつもの通りイルカは俺の提案を明後日に解釈してくれた。
「駄目だっていってるだろうが!何が起こるかわかってないもんを使うんじゃない!」
危険な術をうっかり使って、何かあったらどうするんだ!
「おもしろいぞ!挑戦することに意義がある!」
これは…もう言っても無駄か…?
「イイから食え!…やることがまた増えた…。」
とにかく飯食わせてからじゃないと、より一層訳の分からん事を言い出しかねない。今後のためにも術に対する考え方を学ばせないと!!! …なんでこんなに常識がないんだこいつは!!!
「そう落ち込むなって!きなこアイスもあるからさ!しかも…抹茶あふぉがーどだぞ!」
どこまでも俺に食い物を与えることに執着するイルカにとって、俺の疲労は全て食い物で解決できることになっているらしい。
甘いものは好きじゃないと何度言ったら…!
「…はぁ…。まあイイか。アレも捕まえに行かないといけないからな…。」
「ほら!焼きそば食え!」
「もごっ!だから自分で食える!」
俺は楽しげに俺の口に食い物を押し込むイルカを叱りながら、これからの計画に思考を向けた。
*****
「おい!もういいだろ!下ろせよ!」
何だって最近やたら俺は吊るされるんだ!!!そもそも道を歩いてただけの無害で善良な上忍を縛り上げて吊るすなんざとんでもねぇ!!!
俺を担いでる箒頭と、何でかうっとりと俺を見つめるイルカに訴えたが、返ってきた答えは相変わらず無常なモノだった。
「だって、ほどいたら逃げちゃうじゃん!」
にっこり笑ってイルカは言ったが、笑顔がかわいいとか言ってる余裕はさすがにない。
「当たり前だー!!!なんで俺を的なんかにしやがるんだ!」
何の目的か知らないが、妙に仲良く俺を拘束して楽しんでるコイツらは…もしかして俺の肉狙い…!?何度も言うが俺はクマじゃねぇ!!!
何だって何もしてないっつーのに木に吊るされなきゃいけないんだ!イルカの縄が見事に決まってるせいで、身動きもしにくい。縄抜けもできねぇって …暗部仕込だからなのか!?
「いいじゃない。雰囲気でるし、やる気も出るし。」
「そうだぞアスマ兄ちゃん!すっげぇいい感じだ!さすが男の中の男!!!」
こんなときばかり、箒頭の育児ノイローゼは、イルカと一緒に息の合った連携を見せ付けてきやがる!
「何がだ!!!」
大体男の中の男が吊るされるってのがよく分からん!…コレはやっぱりクソ親父のエロ本の悪影響がイルカに…!!!火影やってるくせになんてこと してくれやがったんだ!!!
「吊るされまくってればその先に見えるものがあるハズだぜ!!!栄光の…とおちゃんろーどが!!!」
「なんだそりゃあ!?」
どんなエロ本置いてたんだ親父!イルカが…!!!イルカが妙な世界にいっちまったじゃねえか!!!箒頭も止めろよ!!!
だが、俺の怒りも叫びも無視して、カカシがイルカに向かって印を組んで見せている。オイオイオイ!!!もしかして…俺になんか術かける気か!?
「…いいか、イルカ。まずターゲットに向けて…こうやって…こうだ。」
「えーっと?こうやって…こうか!」
「ぶっ!何しやがる!」
戦々恐々としていた俺に向けられた術は…水鉄砲だった。逆さ刷りにされて水かけられて、鼻にまで水が入って思わず涙目になる。
俺がゲホゲホ言いながら怒って見せてるっつーのに、箒頭は動じないどころかイルカに淡々と話続けてやがる!
「水遁は今ので分かったな?じゃあ、どういう場合に使えばイイと思う?」
「うーん?アスマ兄ちゃんの捕獲には使えないしなぁ?」
「そう。捕獲とかより足止め向きだ。但し、攻撃に使わないんならな。他には窒息させる方法もあるけど…。」
「そっかぁ!今まで波乗りにしか使ったことなかったよ!」
「アホか!…任務どうやってこなしてんだお前は!?」
「え?それはさ。ふつーに。野菜貰ったりお菓子貰ったり…。」
「違うだろ!ソレ任務じゃないだろ!!!」
「まあまあ。小さいことばっかり気にしてると、大きな大人になれないぞ!!!」
「おまえな!!!」
俺を使って何する気だ!!!それに…実践的指導はイルカ向きかもしれなくても、それよりなにより…
「イイからほどけよ!イルカの教育に悪いだろ!!!」
このまま妙な趣味持っちまったら、イルカの母親に申し訳が立たねぇ!!!
俺が箒頭に怒鳴りつけたら、何とか正気に戻ったようだ。
「はっ!?そうだった!」
「あのな…!もっと早く気づけよ!暗部だろうか!!!」
「えー?どうしてほどいちゃうの?」
「イルカ!お前も残念な声だすんじゃねぇ!!!」
俺は、育児ノイローゼ気味の暗部に、今後の教育を任せることが危険だと痛感した。
縄をほどいて腕だの首だのを回して何とか普段どおりの動きが出来る事を確認して、箒頭に提案してやった。
「おい。ちょっと顔貸せ。」
「何よ?」
「作戦会議だ。」
このままイルカを任せといたら、毒されたこいつと一緒にナニしでかすかわかんねぇからな…。
「そうね…。」
ちょっと憔悴した様子のカカシの様子に今後の不安をひしひしと感じながら、俺たちはそろって茂みの陰に向かった。
*****
「イイか。まずイルカにものを教えるときは、飯が基本だ。」
「はぁ!?」
クマの教育に悪いって言うのは確かにそうだと思ったからついてきたけど、紐をほどくなり変な事を言い出した。…吊るされたくらいで頭おかしくなるなんて 上忍のレベルも落ちたもんだな。
俺の冷たい瞳に敏感に反応したクマは、ちょっと情けない表情を浮かべ、顔を真っ赤にしながら訴えてきた。
「確かに吊るすと食いつきイイけどまずいだろ!教育に!…そんなのより食いもんでつるんだよ!それでアイツのかあちゃんもちゃんと教えてたんだ!」
なるほど。ついつい安易にヤル気を起こそうとしたけど、確かに食い物にも反応がいいし、常識を教えるんなら、多分その方がイイよね。
それにしても…。
「そのせいで、料理うまいの?何かバイトのせいとか言ってたけど…。」
確か金がないから料理屋がどうとか言ってたような…?あの時はテンパってたからうろ覚えだけど。定食屋ででも働いてたのか?だが、 クマの口から語られた真実は俺の予想をはるかに超えていた。
「いや、基礎は出来てただろうけど、アイツの場合は…任務先の料亭の亭主に気に入られてしばらく板前の修業やってたことがあるからなぁ…。」
しみじみと、しかもかなり暗い表情で語るクマは、吊るされたせいだけじゃなく顔色がどんどん悪くなっている。
「それ、忍びの経歴じゃないよね…。」
潜入任務じゃあるまいし、何だってあんな子どもが料亭の修行を!?…そして…なんて外面がいいんだイルカ…。三代目も妙にイルカびいきだし、そんな 他所のおっさんにまで気に入られたって…ひょっとしてイルカは爺キラーなのか!?
「気がついたらいっぱしの料理人になってたんだよ…。天才とか言われてなぁ…。」
「止めろよクマ!」
天才って…料理の腕は相当上手いけどな!確かに!だからってどうしてガンガン道踏み外すって言うか、むしろ道なき道を突き進んじゃった イルカを止めなかったんだ!!!
俺が思わず怒鳴りつけると、クマもややヒステリックな声で怒鳴り返してきた!
「だから!気付いてすぐに止めさせたんだろうが!…まあ、そのせいで女装に目覚めちまったんだが…。」
「なんでだよ!?」
どうしてなんだ…!?なんで普通に忍…まあ忍っていう職業も普通じゃないっていえば普通じゃないが。それにしても、どうして全うな忍び生活が 送れないんだ!!!
女装って…もしかして俺にやらせたのも仲間に入れるためなのか!?
…気がついたら混乱のあまりクマの胸倉を掴んでいた。
「肉、欲しかったんだと。…まけて貰えるからとか言っててなぁ…ソレも気づいたの最近だからな…。」
「イルカ…お前ってヤツは…!!!」
いっつも肉、肉いってるけど、そのためだけにとんでもないことばっかりしでかしやがったのか!?どうして…。
「だからな、まずは…修行の後に焼肉を食いに行こう。そんで、色々教えれば覚えがはぇぇはずだ。」
「そういえば肉、肉言ってるしね。でもさ、それならイルカに肉を買い与えた方がいいんじゃない?」
今日だってやたら肉を使って料理作ってたし、まあ、妙な技も披露してたけど…。
「それじゃまた料理の方に集中しちまうじゃねぇか!」
「くそっ…どうしたら…?」
…俺たちの議論は暗礁に乗り上げようとしていた。
*****
アスマ兄ちゃんがカカシと密談してる…。ちょっと待ってろとか言って、俺から隠れるなんて…やっぱり仲いいんだな…。気をつけないと!!! カカシは俺んちの子なのに、持って帰られちゃうかも!それに…もしかしてクマ王国の住人にされちゃったら…!!!大変だ!!!ちゃんと見張ってないと!!! 俺は、アスマ兄ちゃんが危険な行動を取らないかどうか警戒しながら待つことにした。
全然話は聞こえないんだけどな!
ちょっと待ってたんだけど、あんまり長いからちょっと探りを入れてみることにした。
「ねー!まだ話するの?俺帰ってイイ?」
ホントはアスマ兄ちゃんがカカシを持って帰っちゃったら困るから、どうしようかと思ってたんだけど、揺さぶりかけてみるのも手だよな!
そう思っていってみたんだけど…。
「駄目に決まってんだろうが!」
「誰のためにやってるとおもってるんだ!」
二人の息の合ったりアクションに驚いた。何のために…?そういえば何のためなんだろう?でもこの面子でってことは…。
「アスマ兄ちゃんとカカシ!!!…の男らしさ大会?」
「「違うだろ!!!」」
「え?じゃあ誰のためなの?」
すごい息の合い方が俺の不安をかきたてるけど、それにしても誰のためっていうか何のための修行だったんだろう?アスマ兄ちゃんはとおちゃんろーどを 極めるためとしても…カカシは?
俺が不思議に思って聞いてみたら、また息の合った解答が得られた。
「「お前だよ!!!」」
「そうか!俺って人気者だな!!!」
二人そろって俺の事をソコまで…!!!なんて愛されてるんだ俺!!!嬉しいな!!!
嬉しかったので、カカシだけじゃなくてアスマ兄ちゃんの頭もうりうりしてやった。
アレ?何で二人そろってぐったりしてるんだろ?
「アホか…。」
「どうして母親に似なかったんだろうな…顔は似てるのに…。」
「そうなの…。」
何だかわかんないけど二人でなんか修行してて疲れてるみたいだ。ここは一つ。俺が何とかすべきだよな!!!
「ねえ!俺特製のおやつでも食って小休止しない?」
こういうこともあろうかと、おやき以外にもおやつを用意してきてある!!!俺特製あんこから作った大福だ!!!お茶ももちろんしっかり用意済み!
…俺って出来る男だよな!!!
やっぱり相当疲れてたのか、二人とも俺の提案に同意してくれた。
「まあ、そうだな。」
「そうね。…所でそれ何?」
カカシに聞かれたので早速俺は持参の風呂敷を開いた。
「冬が近づいてきたからな!大福だ!」
ふたを開けると、白い生地に薄くあんこが透けて見える美しい大福が並んでるぜ!!!しかも…ただの大福じゃないんだぞ!!!これは!!!
俺はわくわくしながらカカシを見つめた。
「へえ?」
カカシは、大福を一個手にとってしげしげと眺めている。
「美味そうだな。」
アスマ兄ちゃんも一個とって、コレで残りはあと6個。
さあ!ここらで種明かしだ!!!
「おうとも!但し!一個だけオマケ入りだ!!!」
「…一応聞くけど。おまけって…?」
「秘密!」
ココで言っちゃったら面白くないよな!食いもんで遊ぶのはあんまりよくないことだけど、コレはまあはずれなしって言うか大丈夫だって分かってるし。
「おいクマ。お前食えよ!」
「うるせぇ箒頭!お前が食え!」
俺のオマケ宣言に、なんでだかアスマ兄ちゃんとカカシが戦い始めた。コレは楽しみだ!!!
「おお!頑張れアスマ兄ちゃん!例え負けても戦う姿は美しいぜ!!!」
この状況からいって、また吊るされる兄ちゃんが見られるかも!!!
「そうだ!もしかして…?」
俺がわくわくしながら結果を見守っていると、カカシが何故か外ではいつもつけてる額宛をずらした。真っ赤なイチゴみたいな目。キレイだな!!! 中の模様は変だけど!!!
「目が回ってる!!!すっげぇぞ!カカシ!!!それ、どうやってやるの?」
「あ、卑怯だぞ!!!」
アスマ兄ちゃんが何か言ってるけど、何がずるいんだろう?
俺が疑問に思ってると、カカシが大福を手に持ちながら大声でどなった。
「丸くて小さいチャクラ…?お前!?何でこんなもん入れてるんだ!!!」
「え?変だった?」
刻んじゃうより1個丸々の方がイイと思ったんだけどなぁ?苦くないし。
「これ、この間捨てろって言った丸薬だろ!!!」
「おうとも!じゅつしゃのチャクラを練りこんでえーっと?とにかくすっげぇ効果が!!!」
元気になること請け合いだぜ!!!演技に全力を出し尽くすカカシにはぴったりのはずだ!!!
「だからこんなもん作るなとあれほど!!!チャクラの質が合わなかったら大事なんだぞ!!!」
すごい勢いと形相で怒鳴るカカシはやっぱりかあちゃんそっくりだ!!!カカシはいつかすっげぇかあちゃんになれちゃうな!やっぱり!!!
それにしてもそんな事実があったとは驚きだぜ!
「そうなの?へー。」
そうかそうか。だから書いてあったんだな。本に。
「感心してる場合か!」
怒りながら大福をキレイに包み紙に戻してるとこも、かあちゃんらしいな!!!
カカシの将来が楽しみだ!!!
俺がカカシのかあちゃんぶりを堪能していると、なんだかアスマ兄ちゃんまで様子がおかしい。なんだろう?顔色悪いなぁ?
「イルカ…。お前今度は何に嵌ったんだ…?」
「なにそれ?ちょっと!話しなさいよ!」
「コイツは嵌るとずっとソレに集中するからな…これから口にするありとあらゆるものを警戒しろ!」
なんだかやっぱりこの二人は仲イイよな。…ちょっと寂しい。それに…。
「やだなぁ!アスマ兄ちゃん!そんなコトしないよ!だって、面白くないじゃん!ちゃんと皆さんに楽しんで頂ける形でのご提供をしちゃうぜ!!」
確かに今ちょっと読書の楽しみってヤツを見出しちゃって、薬とか術とかがんばちゃってるけど、どうせやるんなら楽しくないとな!!! とおちゃんもそういってたし!!!
「アホか!!!」
「まあまあ…食ってみろよ!」
なんだかまだまだ吠え掛かってくるカカシの口に、俺特製当たり大福をねじ込んでみた。
「もごっ!」
「コラ!止めろイルカ!!!」
「どう?」
カカシの口に合うといいんだけどなー?あんこもあんまり甘くしないで、皮はちょっとしっかり目に仕上げてみたんだけどどうだろう?
味の感想をドキドキしながら待ってるのに、何でカカカシが真っ青になりながらワタワタしてる。
「は、吐き出さないと…!!!」
「すぐソコに川あんだろ!いって来い!!!」
何でアスマ兄ちゃんまで慌ててるんだろ?
まあとにかく知りたいのは効果だからな!
「なあカカシ?元気でた?」
恐る恐る聞いてみたら、カカシが手を握ったり開いたりしながらびっくりしてた。
「ほ、ホントだ!なんで…!?」
「大丈夫なのか!?」
二人とも大騒ぎだ!驚きの効果ってヤツだな!!!
「即効性があるって書いてあったぜ!!!」
うんうん。しっかり効果があってよかったぜ!!!今度から帰ってきてすぐ食えるように用意しといちゃおうかなー?
「チャクラの相性…か?」
何だか考え込んでるけど、カカシは心配性だからなあ!俺がちゃんと安心させちゃうぜ!!!
効果のすばらしさにニマニマしてたら、アスマ兄ちゃんに怒られた。
「おめぇは!危ないことするんじゃない!」
「危なくないって!ちゃんと試したし!!!安全且つ安心だぜ!!!」
怖い顔して怒ってるけど、心配性なんだよな。アスマ兄ちゃんも。大丈夫なのになぁ!
俺は肩をポンポン叩きながら、怯える小熊のようなアスマ兄ちゃんを落ち着かせてやった。
「「…試した…?」」
二人そろって目をまん丸にして心配してるから、俺はさっさと安心させちゃうべく、大声で言ってやった。
「さっきのおやきで!!!」
ちゃーんと最初の一個に入れといたからな!元気すぐでなかったみたいだからちょっと心配してたんだよなー。でもちゃんと効果あってよかったぜ!!!
「何てことしてるんだ!!!」
「イルカ…おめぇなにやったんだよ!?」
「元気出てよかった!カカシ!!!これからもちゃんとお前の体調管理に尽力すると誓うぜ!!!」
不安を吹き飛ばしてやるべく、バンバン背中を叩いてやりながら、俺はカカシを慰めてやった。
「そういえば、チャクラが回復してる…?今日任務急いだから結構使ったのに。」
「相性がイイってことだな!」
何か駄目な場合は具合悪くなるって書いてあったから、ちゃんと効果があったって事は大丈夫だってことだな!やったぜ!!!さっすが俺!!!
いやむしろ…カカシが俺のチャクラにあわせたのかも…?チャクラまで芸達者なんだな!!!
「さすが超絶奇跡大俳優カカシ!!!」
「なんだそれは!!!」
「まあ、その。なんだ。もうイイから帰ろうぜ…。」
「そうだな…今日は、もういいか…。」
「もういいの?じゃ、帰ったらうまい飯つくってやるからな!!!」
何だかチャクラ戻ったはずなのにぐったりしてるなぁ?早く食わせてやらないと!アスマ兄ちゃんも何だか顔色悪いしさっさと直してやらないとな!!!
「あー…ひさしぶりに焼肉でも…」
「やった!アスマ兄ちゃんが肉買ってくれるってさ!!!よかったなカカシ!!!」
アスマ兄ちゃんの買ってくる肉はうまいんだよなー!!!楽しみだぜ!!!
「あーうん。そうね…。」
やばい!カカシがぐったりしてる!肉の話したせいで腹がへっちゃったのかも…!?急がなきゃ!!!
「じゃ、アスマ兄ちゃん下ごしらえして待ってるから早くね!!!」
コラーゲンスープは昼に食っちゃったから、晩飯はわかめと野菜のスープがいいかなー?それにサラダとナムルと…デザートは時間ないからふるふる コーヒーゼリーだけでも…。
俺は献立と調理の段取りを考えながら、カカシの手を引いて家路を急いだ。
「おいこら待て!カカシも!…いっちまいやがった!」
何かアスマ兄ちゃんがおたけんでたし、さっさと飯作らないとな!
*****
「今日は色々勉強になったなぁ!!!」
「何がだよ…。」
イルカは相変わらず無駄に元気一杯だ。俺はチャクラは妙に満たされてるのに、精神的な疲労でぐったりしてしまった。これからは食事にも気をつけないと …毛だけは飽き足らず、俺のチャクラまで…!!!
俺が動揺を隠せずにいると、イルカが豪快に笑いながら俺の頭をなでてきた。
「カカシの燃料は俺に任せとけ!!!」
自信満々に宣言するイルカは、楽しそうだ。
…イルカは悪いヤツじゃない。俺の具合を心配して何とかしようとしてくれた。だが、選んだ手段が恐ろしい。行動力があるだけに、 とんでもないことは確かだ。
だが、俺の顔を覗き込んで、凄く嬉しそうにしてるイルカを見ていると、もうこれ以上何も話したくなくなってきた。
「もう。今日はいいや。」
「疲れたか?担いでやろうか?」
心配そうにイルカが聞いてきた。以前と違ってチャクラの扱い方を理解し始めた今では、俺を担いで運ぶくらいは出来るだろう。だが、 イルカに担がれるなんてゴメンだ!
「いい…。」
俺の肩を掴んで聞いてきたイルカをさりげなく交わしたが、イルカはそれくらいでは引き下がってくれなかった。
「遠慮すんな!」
今すぐにでも俺を担ぎ上げそうな勢いだ。だが、俺は…。
「それより帰って飯食って早く寝たい…。」
疲れたし、なにより変な薬を飲まされたって言う精神的ストレスが…!!!
「おうよ!すぐ飯作るからな!!!」
ぐったりする俺の手をぐいぐい引いて歩くイルカに半ば引きずられながら、俺はこれからのイルカ教育の難しさを改めて痛感したのだった。

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子イルカはいつでも元気!そしてカカシも不本意ながら元気にされてしまったという話。
そしてアスマ兄ちゃんは常に警戒されています…。
いつも通りでお送りしちゃいましたが、御意見ご感想などありましたらお気軽に拍手などからどうぞ。

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