性格の悪いカカシ注意!それと、隠さずに微エロ(あくまで当サイト比。)がありますので、苦手な方はご注意下さい!!! いつも通り中身はあんまりありません。…無理は禁物。 月の無い夜…光の差し込まない暗い森の中をただひたすら走る。冬の森は生き物の気配も薄く、その分周囲への警戒より 自分の思考に沈みがちになる。 考えるのは…イルカのことばかりだ。 今頃どうしてるだろう?また他のヤツのところにいったりしてないだろうか…?イルカは一人でいるのを嫌がるから 心配だ。 離れている間中いつも、胸の中でわだかまるもやもやしたモノを振り払う様に、速度を上げて走った。 そのうちに墨の様に広がる闇の彼方にかすかに里の明かりが見えはじめてきた。 あそこまで行けば…イルカに触れられる。 もうそれ以外のことは考えられなかった。 ***** 今までも新年早々任務なんてことは珍しくもなんとも無かった。正月なんていっても、別に何か変わるわけでもないし、 自分には関係ないことだった。いつも通り日が昇って沈むだけ。護衛だの暗殺だの…任務の内容も相対して代わり映えする わけじゃなかった。 でも、今年はイルカがいる。 イルカはアカデミー教師なんてモノをやってるせいか、それとも元々の性格からか、季節の行事はいつでもきっちり仕度して祝う。 それに…俺にも祝わせたがる。 今回だって、新年の行事なんて大名の護衛任務のときに見聞きしたものくらいしか知らないとばれたら、本だの現物だのを 見せては一生懸命説明していた。 折角の休みだし、正直そんなコトはどうでもよかったが、教師らしくはっきりした声で俺のためだけに説明してくれるイルカの顔には 欲情した。 喋りすぎて赤く染まった顔で、「ちゃんと祝いますからね!新年!」なんて勢いこんで言われたら…我慢するのが馬鹿らしくなって。 ま、その場で押し倒して、怒り狂ってるイルカをさっさと頂いたんだけど…。 その場で一回ヤッて、それでも怒りの視線を向けてくるイルカに我慢できなくてそのまま寝室に運び込んでさあこれからって時に …窓をこつこつと叩く音が響いた。 「任務ですか…?」 「そうみたいね。」 窓を開けるなり俺の手のひらの上で紙切れに変わった鳥は、いつも通り忠実に…陰鬱な任務を運んできた。 印を組んで忌々しい紙切れを燃やした。灰になった所で任務がなくなるわけじゃないが、それでも僅かに溜飲が 下がった気がした。 それでなくても任務続きでイルカに触れられなくてイラついていた所に、本来なら休みのはずの時間を削って、 今晩中に任務に出なくてはならなくなったのだ。 「急ぎの任務…に決まってるか。わざわざ火影様が式を…」 燃えつきて灰になった紙切れを見つめながら、イルカがつぶやく。折角イイ所だったのに。これじゃイルカがこれ以上ヤ らせてくれないかもしれない。 思わずこんな任務をよこしたジジイに殺意が湧いた。 だが、ソレよりもイルカだ。まだ全然足りない。触って確かめて…それに俺の匂いが染み付くまで混じりあいたい。 「あー…面倒くさ…。ちょっと面倒な任務入っちゃったから出かけないといけないけど…あとちょっとならできるか。」 俺は当然、残された僅かな時間をイルカと過ごそうとしたのに…。 「馬鹿野郎!任務サボる気か?とっとと行ってとっとと帰ってこい!!!」 案の定…いつも通り拳骨を食らった。 「なによ!折角の休みなんだから少しでも満喫したいだけでしょーが!」 いい所だったのに!イルカだって絶対物足りないはずなのに…!こんな任務が来たせいで! 俺が不満をぶつけても、イルカはひるみもしなかった。 「こんなことしてる暇あったらちゃんと任務の準備しろよ!…こんな急ぎの任務なんてどうせ碌な内容じゃないんだろ…?」 イルカが、心配そうに潤んだ目で俺をみている。泣きそうな声で、でも真っ直ぐに。 …それは俺の理性を引きちぎるのに十分な威力だった。 「任務の準備なら、するよ。」 「アンタ無理するんだからちゃんと丸薬とか持ってけよ!それに、そんなに面倒な任務ならちゃんと装備も多目に…」 俺の言葉にホッとしたように、腰を庇いながら任務の準備に立ち上がろうとしたイルカを、ベッドの上に引きずり戻した。 「準備。まずイルカ切れにならないようにしとかないと…ね?」 後ろから抱き込んでイルカの匂いをかぐ。ぴったり密着したイルカの背中から緊張に早まった鼓動が伝わってきて俺は にんまりと笑った。うなじに顔をうずめると、イルカの汗と俺の付けた匂いがする。でも、まだ足りない。 「馬鹿言ってんじゃねぇ!!!離せ!!!」 じたばたと暴れるイルカは、結構本気で俺のことを蹴ってきたけど中忍の…しかも腰の抜けた蹴りはたいした ダメージにならなかった。 どっちかっていうと、暴れられると返ってその気になる方だ。 「やだ。だって任務中集中できなくなったら困るでしょ?」 耳に舌を這わせながらイルカの説得に見せかけた愛撫を始めた。 「はあ!?だからなんでそうなるんだよ!」 色っぽい返事は返ってこなかったけど、鼓動も体の反応も、拒んでないのが分かった。本気ならもうとっくに投げ飛ばされてる。 …これならいけるかもしれない。多分…あとちょっとでイルカはおちる。 「ね、協力して?」 イルカに擦り寄って囁く。これ以上なく甘い声で。 「んっ…!帰ったら覚えとけよ!!!」 赤く染まった眦を吊り上げてイルカが大声で喚く。 でも、そうやって憎まれ口を叩きながら、イルカはいつだって俺を受け入れる。その事実に歓喜しながら、俺はその素直じゃない口 をふさいでしまう事にした。 その後は…いつも通り喘がせて鳴かせて、任務先に発つギリギリまでイルカの中に入り込んだままでいた。 ***** 「イルカ…ッ!?」 ここにも、いない。 あれだけ急いで帰ったのに。 着いたのは真夜中といっていい時間だったのに、イルカは、家にも、アカデミーにも、それに…ナルトの家にもいなかった。 里の中に気配が感じ取れない。それに…書き置きもないし、イルカが任務に出るときに持っていくものも全部揃っていた。 もしかして、と俺の家にも寄ってみたが、そこももぬけの殻だった。 「…どこに行ったんだ…!?」 こんなに俺がイルカを探してるのに、イルカがいない。 忍犬たちは随分前に里中を探すように言っておいたから里にいるなら返事があるはずだ。もうすぐ夜が明ける。優秀な俺の忍犬がこんなに 時間がかかるはずが無い。 任務でもないのに姿を隠しているんなら…。 俺の思考はすぐにソレにたどり着いた。 …逃げたのか。俺から。 やっぱり外に出さないで閉じ込めておけばよかった。どうしてやろう。 草の根分けても探し出して、今度こそ鎖に繋いで…いや、それだけじゃ生ぬるい。 イルカの脚を奪おうか。…二度と走れないように。それとも、腕を…印を組む指を奪おうか。体の自由を奪う術なんて腐るほどある。 薬も、暗示も。 ああ、でもそれじゃ俺の腰に巻きつく脚も、背に回る腕もなくなってしまう…。 それなら、イルカの心を奪おうか。 イルカを欲しいと思ったのはあの意思の強い瞳だ。それでも、あの煌きが俺からはなれていくのなら、全部奪って閉じ込めてしまおう。 イルカは俺のものだ。どこかへもやらない。 やっぱり外に出さなければよかった。イルカの言葉なんて信じなければ…ほだされたから逃げられた。 外に出せばあの煌きに魅せられて、灯りに群がる羽虫のようにたかってくる奴らがいる。ソレを知っていたのに…。 …でも、次は無い。絶対に。 早く…早く見つけないと。俺がもっと狂う前に…。だって俺はもうイルカを手放せない。 たとえイルカが俺を拒んでも。 イルカは俺を見つけたら逃げるだろうか。あの瞳で俺をなじるんだろうか。拒絶の光を湛えた瞳で、あの良く通る声で…俺を、 拒むんだろうか。 でも、そんなことは許さない。いくら逃げても捕まえる。もう、絶対に外に出さない。 イルカがいないなら意味がないんだ。 自分の呼吸が獲物を捕らえるために鋭く、早くなっていくのを感じた。 眩暈がするほど意識が集中する。 …獲物を…イルカを捕らえるために。 狂おしいほどの飢餓感と焦燥感と…それに怒りが自分を支配した。 一秒が俺の忠実な部下の声が聞こえるまでは…。 「ご主人。…あの若造を見つけたぞ。」 「どこに、いるの?」 自分でも驚くくらい冷たい…無機質な声だった。 俺の頭に響いたのは、パックンが戻ってきたことでも、その様子が焦ってる訳じゃないことでもなくて…俺のイルカが 見つかったってコトだけで一杯になった。 「結界に阻まれて時間がかかった。…三代目の屋敷じゃ。ご主人のことも気遣っておったぞ?どうやら三代目が…」 「そんなところにいたの…。…イルカ。」 早く捕まえて勝手なことした事をしかって、匂いつけて…閉じ込めてしまおう。心ごと。 俺の脚は自分でも気付かない内に動き出していた。 「ご主…カカシ!待て!」 殺気を撒き散らしながら駆け出した俺の背に、慌てたパックンの声が投げつけられても俺の足は止まらなかった。 ***** 殺気全開で火影邸に進入した時点で、すぐに護衛の暗部が俺を止めにかかった。 「先輩!落ち着いてください!」 「はたけ上忍!?」 「止めろ!…正気じゃない!」 ぎゃあぎゃあ喚きながら、突っかかってきたうっとおしいそいつらを適当に振り払い、俺はイルカを探した。 そいつらの立てる悲鳴も、振り払ったときの鈍い音も遠くに聞こえるだけで…俺にはイルカのことだけしか考えられなかった。 すぅっと空気を吸い込むと、かすかにイルカの匂いがした。…結界だらけの火影邸でも、イルカの匂いだけはわかる。 迷いなく足を進め、邪魔する奴らは適当に払いのけた。 怒りよりも焦りが自分を支配し、理性よりも本能がイルカを求めた。 そこにたどり着くまでにかかった時間は、多分一瞬だったはずなのに、俺にとっては永遠に近いくらい長かった。 「見つけた…。」 灯りの漏れる部屋の中で、イルカはのんきに三代目の側で何かを運んびながら笑っていた。 イルカを見つけたらすぐ術をかけてしまうつもりだった。 だが、気が付いたら腕の中にイルカがいて、驚いたように身体を硬くしていた。 「わー!ナニすんだ!!!って…アンタかー!!!」 イルカの声。イルカの匂い。やっと触れられたそれに安堵のため息がこぼれた。 「イルカ…!」 その存在を確かめるように腕の中のイルカを力いっぱい抱きしめて、頬を擦り付ける。それでも足りなくてイルカのうなじに 噛み付くように口づけた。 「…う…っ!いってー!つぶれるだろうが!落ち着けって!」 イルカが盛大に文句を言いながら俺の頭に拳骨を落としたが、離れる気になんかなれるはずもない。 しつこくしがみ付いていたら、イルカが大きなため息をついた後、頭をなでてきた。その気持ちよさにうっとりしながら、 なおもしがみ付いたまま身体を触り続ける俺に、イルカ諦めの濃い声で話しかけてきた。 「随分早かったんですね。」 「どうして勝手に…」 「それは…え、アンタどうしたんですか!?」 「アンタがいなかった。」 「ちょっと!質問に答えろって!どっか痛いんですか!?」 「逃げたかと思った。」 「だから!何で泣いてるんですか!怪我は!?」 「泣く…?」 「自分でわかんないのかよ!早く言え!どこが痛むんだ!殺気も抑えられないなんて…!」 イルカが怒鳴ってる。必死な顔で。俺を見つめて。 …痛み…?強いて言うならさっきイルカに殴られたところぐらいしか痛む所は無い。 そんなことよりさっさとイルカを閉じ込めないと…。 俺の手が印を組む前に、三代目が、気迫のこもったチャクラとともに凛とした声を発した。 「カカシよ。報告が先じゃろうが。」 そういえばこの爺もいたんだった。流石に里長だけあって、こういう時にも気配を乱さない。…邪魔をされると困る。 流石に三代目相手に戦うとイルカを守りきれないかもしれない。適当に誤魔化してさっさと攫ってしまわなくては…。 俺がさっさと報告を済ませてしまおうと思ったのに、何故かイルカが三代目に噛み付いた。 「三代目!ナニ言ってんですか!怪我してるみたいなんですよ!?コイツが泣くなんて相当の…」 「怪我なんかしてないよ。」 イルカの上ずった声を遮ってやった。 本当は会話なんかどうでもいいと思ってたけど。…ちょっとだけその態度が気に入ったから答えてやることにした。 イルカは勝手に抜け出したわりに、今は俺のことだけを考えているらしい。眉間にしわ寄せて今にも泣き出しそうだ。 それに、俺の体を探っては、怪我でもしていないかと探っている。 「じゃ、じゃあどこが痛…」 イルカは俺の答えに一瞬驚いたあと、俺の頭をぐいっと掴んで顔を覗き込んできた。その顔は今まで見たことないくらい悪かった。 その顔に満たされるのを感じた。 そうだ。アンタはこうやって俺のことだけ考えていればいいんだ。 「ここ、ココがいたい。アンタがいなかったせいだ。」 イルカの心配に付け込むように、胸を押さえてみせた。実際イルカがいなかったせいでずっと痛んでいたんだから別にウソを ついてるわけじゃない。 「し、心臓!?病院行きますよ!アンタ一応上忍のくせに!一体何の術くらっちまったんだ!?」 怒鳴りながら顔色を一層青白くして取り乱したイルカは、しがみ付いたままの俺を引きずっていこうとしている。 病院なんか行く必要はないが、このまま外に出てしまえば攫いやすくなるかもしれない。 だが、俺を引きずりながら移動し始めたイルカを、三代目が制止した。 「落ち着けイルカ。カカシ。イルカは…。」 すぐにイルカは三代目の言葉に集中した。…今俺以外の言葉に耳を傾けるのも許せないし、余計な事を吹き込まれても困る。 …もう話は必要ない。このままイルカを攫ってしまおう。 「帰る。もう駄目。どっか行くんならもう…」 イルカを肩に担ぎ上げてすぐに、イルカの拳骨が飛んできた。 「っ…!」 相変わらず迷いのない一撃が俺の頭に振り下ろされた。 元々イルカ程度の攻撃なら大したことはないし、イルカはイルカで俺に状態を心配してかそれなりに手加減したようだ。 イルカをしっかりと掴んだまま僅かによろけた俺にむかって、イルカからの鋭い視線が突き刺さった。 「人の話を聞きやがれ!!!」 相変わらず実力差にも階級差にも気を配らないイルカが、耳元で怒り狂った声を上げている。 その口をどうやってふさごうか考えている俺の耳に、三代目のやたら大きなため息が聞こえた。 「ふう…新年早々痴話喧嘩か…イルカ。手伝いはもう良い。ソレを早く持って帰れ。」 心底うんざりした顔の三代目は、まるで犬でも払いのける様に手を振っている。 俺にとっては好都合なその様子は、イルカとっては相当腹の立つものだったらしい。 一応里長である三代目が相手だっていうのに、しがみ付く俺の肩を押しながら、憤懣やる方ないとでも言うように目を吊り上げている。 「三代目コイツは…!」 三代目はイルカに甘いからめったなことは無いだろう。ただ、騒ぎになったら面倒だから流石に止めようか? そう思ったとき、渋い顔をした三代目が吐き捨てるように言った。 「大方任務帰りにお主が…イルカがおらなんだから拗ねておるんじゃろうよ。上忍ともあろうものが情けない顔しおって…。」 「はあ!?」 爺が余計な事を…!そんなに面倒くさそうな顔してるんなら最初っから黙っていてくれればイイのに!お陰でイルカが…! イルカは三代目の言葉に目を見開いて驚いたあと、キッと俺を睨みつけて耳を思いっきり引っ張ってきた。 「…またですかアンタは!!!もしかして被害出してないだろうな!?」 完全に説教モードだ。俺に向かって真剣に怒るイルカを見るのは楽しいけど、そんなコトよりさっさと連れて帰ってしまいたい。 「邪魔するヤツを片付けただけ。」 大体あの程度で負傷するようなやつは暗部でやっていける訳がない。手加減できた自信はないが、無造作に振り払っただけだ。 話は済んだのに、イルカはかんかんに怒って叫び声を上げた。 「アンタ一体なにやらかしたんだ!?三代目!申し訳ありません!!!」 キャンキャン喚いたと思ったら、抱きかかえられたまま三代目に向かって頭をぺこぺこ下げている。 イルカの意識が俺からそれたことにむっとしながら、逃げられないように抱きしめる力を強めた。 イルカがこんなに頭を下げてるって言うのに、三代目はことさら深くキセルを吸って、大量の煙を吐き出した。 「カカシ、新年早々任務じゃったから今日のコトは不問に処してやる。イルカ、そやつのしつけはお主に任せる。」 …それだけ聞けば十分だ。咎められるのは構わないが、イルカを閉じ込められないのは困る。 「は!申し訳ありません…。」 律儀にも抱えられたまま頭を下げるイルカの腰を改めてしっかりと掴みなおした。 「じゃ帰るから。」 時間を使いすぎた。早く帰らなければ。準備もある。 俺はそのまま火影邸から真っ直ぐに自宅に向かうはずだった。 …すぐにも飛び出そうとした俺の髪をイルカが思いっきりひっぱらなければ。 「あーんーたーはー…!ナニ考えてんだ!説明しやがれ!!!」 「だって、逃げた。俺のなのに。…だから捕まえにきただけでしょ?」 怒ったって許さない。誤魔化されるつもりも無い。こんなに俺が苦しいのにヘラヘラ笑って爺の手伝いなんかして…! 「馬鹿いってんじゃねぇ!!!アンタに任務が入って新年一人になっちまったからって三代目が一緒に祝おうって呼んで 下さったんだよ!ついでに手伝いしてるだけだ!」 イルカが顔を真っ赤にして怒っている。…言い訳なんか聞かない。逃げる気が無かったんだとしても、これからも俺のことを ないがしろにするに決まってる。 「だっていなかったじゃない。書き置きも無かった。放っとくとどっかいっちゃうならもう…」 「大体なぁ!いなかったからってすぐ逃げたの何のってどうしてそうなるんだよ!…俺が敵に捕まったとかそういう可能性、 少しは考えなかったのか!?」 こっちは我慢の限界だっていうのに、イルカは俺の言葉を遮ってまで吼えかかってきた。 その激しい怒りを湛えた瞳を見つめていると、足元をあぶられているような焦燥感が、僅かに遠ざかった気がした。 それに…そんなコトになっていたんなら、もっと簡単だったはずだ。 「そうなったら分かるよ。」 「アンタまだ俺になんか…!?」 「印つけたから。だってアンタ他のヤツに簡単に触るし触らせるし…逃げるでしょ?」 フラフラ出歩くイルカを捕まえやすいようにつけた印…でも、里の中だと里の結界に阻まれて分かりにくいし、 流石に三代目の結界の中だと完全に探りだせなくなるのが分かった。 最初からもっと強い術をかけておけばよかったんだ。…これからは閉じ込めて出さないつもりだが、もしものためにもっと 強い術をかけなおしておかないと。 今だって暴れてる。また逃げるかもしれない。 だが、イルカは、俺の顔をみて、イルカは深い深いため息をつくと、ぐっと顔を近づけてきて…よく通るその声で、言った。 「ったくもう!…いいか。その耳かっぽじって良く聞きやがれ!!!…おれは、アンタから逃げたりしない。…絶対にだ!」 「ウソつき。」 真っ直ぐな瞳も、真剣な表情も、凛とした声もウソはないと思った。イルカはウソを付けない方で、 適当でいい所も誤魔化さないからイイように使われてるのも知っている。 だからって、素直にハイそうですかなんて言ってやれない。 イルカは子どもだの任務だの…俺以外のモノを簡単に優先するくせに、こういう時だけ自信満々だから。それでも、 さっきまで俺の中で渦巻いていた黒い感情が少しずつ薄くなっていくのを感じる。 イルカのせいだ。俺のことを平気で後回しにするくせに、大切だと主張して、それに…真っ直ぐで、頑固で、逃げないなんて 保証できもしないくせに、自信満々に言える…。一生一緒だなんてことまで。 忍としてはどうかと思うが、そのむちゃくちゃな所こそが、俺を捕らえて離さない。 …コレがイルカの強さなのかもしれない。 俺は、自分の変化を静かに受け入れながら、イルカにはずっと敵わないんだろうと感じた。 たまらなくなってイルカに頬を擦り付けた俺の顔を覗き込んで、イルカがむっとした顔をしている。 「イイ年こいて拗ねても可愛くなんかっ…!」 赤く染まったイルカの頬に唇を滑らせて、更に赤さを増すのを楽しんだ。 「帰るよ?」 閉じ込めたいのは変わらない。コレは多分ずっと続くだろう。今はそれよりもイルカのこのかわいい顔を晒したくないという 気持ちの方が強い。 「説教はまだ…」 照れたように視線をそらして、もごもご口の中で言っているイルカを覗き込んでもう一度だけキスしてからにしようと 顎をすくい上げたところで、三代目が咳払いした。 「カカシよ。さっさと報告せい。」 「全部片付けたよ。もう、帰っていいでしょ?」 元々報告書に残すような任務じゃない。余計なちょっかいばっかりかけてくるのが面倒だが、コレで用事も済んだ。 これ以上は干渉してこないだろう。 「馬鹿野郎!報告書は…」 担ぎ上げたイルカが髪だの耳だの引っ張ってきたが、当然無視した。 「休暇は規定どおりじゃ。…イルカ。ココで説教するより帰ってからにせい。片付けがあるでの。」 喚くイルカを諭すように、したり顔の爺がイルカにちょっかいかけてきたのが不愉快だったが、イルカが喚かなくなるならコレでいい。 「ああ!?申し訳ありません!」 「…すまんのう…ソヤツは手がかかるじゃろうが、お主以外に懐かん。無体なまねをされたらすぐに申し出るようにな?」 「いや、そんな…ホラ!離れろ!帰るぞ!」 「じゃあね。もう勝手にこの人使わないで。」 爺とイルカのどうでもいい会話が終わったのを見計らって、今度こそイルカを抱いて夜が明け始めた里に飛び出した。 「アンタはー!!!」 これでやっとイルカを独占できる。 ***** 「さて…どうじゃ?」 「軽微な負傷者のみです。」 「やれやれ…無事か。あれだけの殺気を撒き散らしても、一応は手加減しとったか。」 「はっ!…全員、放り投げられただけですので…。」 「なら、よい。…新年早々賑やかじゃのう。」 「三代目…処分は…。」 「よい。アヤツはイルカに任せてある。…それにしても珍しいモノを見たわい。アヤツが泣くところなんぞついぞ見たことがない。 あれで勘弁してやろう。無論お主らもな。」 「…では、その様に。」 「それにしても大変な輩ばかりに好かれよる。まあ、分からんでもないがな…。」 ***** 「俺は、あんたがいないと無理。もうどこにも出さないよ。」 やっと捕まえたイルカを自宅に連れ込んで早速ベッドに押し倒した。反撃される前にさっさと額宛ごとベストと上衣を剥ぎ取る。 「ちょっ!?何すんだ!」 驚きながらも俺の下で逃げようともがいて、さっきまで喚いてたせいで荒い息を吐くイルカを、早く喘がせたい。 俺の匂いをつけて、俺だけを見るように。 正気付く前に下も脱がせてしまおうと思ったのに、イルカの動きは予想以上に早かった。 「だから!あんたが任務に行くってわかったから三代目が心配してくれたんだよ!」 怒りながら手を掴んでこっちを睨んでくるイルカは、普段ならそれだけで気持ちイイのに今日はそれだけじゃ足りない。 「だから何?いない間ナニ考えてた?ダメ。あんたは…」 中忍の力なんて高が知れてる。軽くいなして腕を掴み返してやった。 「痛っ!だから力加減しろって!」 こうやって怒るイルカは好きだ。でも、今日は…。 「もう無理。ずっと我慢してたのに。アンタが悪い。」 俺のことを放っといたんだから、文句は言わせない。 むっとした顔のイルカからやっと全部服をはいで自分も適当に脱ぎ捨てた。 その間も腕を掴んだままにしていたら、イルカが小刻みに震え始めた。 暖房なんてつける余裕が無かったから、部屋の寒さのせいかと思ったが、杞憂だったようだ。 「この…馬鹿!!!心配かけさせた上に迷惑までかけやがって!!!」 怪我でも病気でもないとわかったせいか、イルカの拳は力いっぱい手加減なく振り下ろされた。 「ったー…!」 本気の拳は流石に痛い。頭を押さえた隙にイルカが起き上がってベッドの上に座り込んでしまった。…だが、そんなことより、 イルカがさらっと言ったことが気になった。 「…え?心配?」 「うぅ…あんたのせいだ!正月楽しみにして準備してたの三代目に材料分けて貰ったからばれてて…ソレなのにアンタに 任務ふったから…。こんなことになるならおとなしく家で待ってれば良かった!寂しいからってこんな…!」 半泣きで愚痴るイルカは、ぽろぽろと言葉をこぼしながら、ベッドをバンバン叩いて呻いている。 その姿も、その言葉も、俺の心に突き刺さった。 「…アンタも、俺がいなくて寂しかったの?」 自分でも馬鹿みたいに心臓が踊っている。こんな時でも揺らぎもしない自分の声が、返って良かったらしい。 イルカは顔を伏せて、体中真っ赤に染めながらベッドを叩く手をぴたりと止めた。 「そんなこと今更聞くな!…当たり前だろ…!」 …それだけで、頭が焼ききれるかと思うくらい興奮した。 「あーもう。無理。」 隙だらけのイルカに飛び掛って抱きしめる。イルカの匂いと鼓動と吐息を感じながら陶然となった。でも、足りない。 もっとイルカが欲しい。 「何が無理だ!人の話…わっ!」 てれも混じってか、荒い口調で話すイルカが欲しくてたまらない。 とっさに暴れるイルカに、つい言葉がこぼれた。 「逃げないで。」 そう言ったとたん、俺の肩を押し返していたイルカの腕から力が抜け、すぐに俺を抱きしめ返してくれた。 「逃げませんよ。で、飯は?怪我は?」 イルカは…きっぱりと、なんでもないことのように言い切った後、ぶっきらぼうに余計なことまで聞いてきた。 「怪我なんか無いよ。それに飯よりアンタが食いたい。」 適当に流して、とりあえず目に付いたうなじに食らい付いた。軽く歯を立てると、びくっと身体を跳ねさせてイイ反応が 返ってきて、それに煽られるように、手もイルカの身体を滑り始める。 もっと、もっとアンタが欲しい。 「新年だってのに、アンタ変わんないよなぁ…。」 イルカだって反応し始めてるくせに、呆れたような口調で俺の頭をかき混ぜている。 ふわっと柔らかい笑みを浮かべながら。 …そんな余裕なんてすぐに無くさせてやる。 「黙って。」 咎めるようにイルカの唇を甘噛みして、ひるんだそこに舌を滑り込ませる。戸惑って動きの鈍い舌を誘う様に吸って、 イルカを煽った。 「ん…っ!んぅっ!」 腰に響く声を零しながら戸惑いながらそれに応えるように動き始めたイルカのソレに、自分のものを激しく絡ませる。 徐々に熱を帯びて蕩けていく顔に引きずられるように執拗に…イルカが苦しさを訴えて背中を叩くまで続けた。 「んっ…っ!はは、情っさけない顔…。そんな必死にならなくても俺は逃げないって…」 さっきまで蹂躙されていたはずの口から、甘い吐息を漏らしながら、それでもイルカはイルカのままだ。 「アンタが、悪い。」 こんなに蕩けた顔してるくせに。それでも減らず口叩いて。 こういう態度は気に食わない。…絶対に、声がかれるまで鳴かせてやろうと決めた。 早速とばかりにイルカの脚を抱え上げ、舐めてやろうとしたら、イルカがため息混じりにつぶやいた。 「馬鹿だよなぁ…。」 それはどっちのことなのか。 一瞬疑問がよぎったがすぐにどうでも良くなった。目の前のイルカを喘がせることの方がずっと大事だ。 「何でもいいよ。もう。」 面倒くさいとばかりに言い捨てた俺に、イルカは苦笑して見せた。 「そう、かもな…お帰り。」 「うん。ただいま。」 挨拶をしないと怒るイルカにあわせておざなりに返し、すぐにイルカの身体を弄り始めた俺にイルカのため息が聞こえた。 「初日の出見たかったけど…さっき見たからいいか。」 「…もういいでしょ?」 返事の代わりに俺に寄せられた唇をもう一度味わいながら、イルカを鳴かせることだけに集中した。 ***** 「ってー…。新年の挨拶もしないで何やってんだろうなー…俺。」 俺の腕の中で目覚めるなり、腰をさすりながら愚痴をこぼすイルカは、予定通りしっかり喘がせたせいですっかり声を枯らしている。 ちょっと苦しそうに唾を飲み込みながら軽く咳き込むイルカの姿を見て達成感を感じた。 だが、そんなイルカの言葉を反芻してみて、気付いた。 「あーそういや姫初めだった?」 新年を迎えてからイルカに触れるのは昨日が初めてだ。新年じゃなくてもヤる事は変わらないからどうでもいいんだけど。 …だが、俺の言葉の方は、イルカにとってどうでも良くはなかったようだ。 「どうしてアンタはそういう余計で卑猥な知識だけ…!っくっ!」 身体を起こし、怒鳴りながら腰と喉と押さえて呻く姿ににんまりと笑みを浮かべた俺は、一応はイルカの要望に 答えてやることにした。 「あけましておめでと。今年…っていうより、アンタずっと俺のだから。」 「あー。あけましておめでとうございます。こっちこそずっと面倒見てやるんだから感謝しろ!」 「ん。お願いね?」 お互いけんか腰で済ませるなんて、新年の挨拶としては問題ありかもしれないが、俺とっては最高の挨拶だ。 嬉しくて、離れたくなくて、イルカの腰を抱きかかえて頬ずりしてたら、俺の顔を見てイルカがぼそっと低い声でつぶやいた。 「っ!無駄にかわいい顔しやがって…!今、おせち用意するから…」 そのまま勝手に離れていこうとしたが、勿論そんなコトは許さない。 「駄目。」 腰にまわした手をイルカの感じる所に滑らせてやった。 「んっ!離れろって!ソコ…っさわんな!」 「駄目。いいじゃない。ちょっと位。全然足りない。」 熱を帯び始めたかすれた声でそんな事言われても全く止める気になれない。そもそもまだ全然イルカが足りてないんだから イルカも協力すべきだ。 「っ…!」 イルカが声を押さえようとしていることに気を良くして、もっときわどい所に手を伸ばそうとしたところで、 イルカの怒号が響いた。 「この馬鹿っ!」 殴られた。威力的には力が入らなかったのかそれほどでもないが、腹は立つ。 「いったいなぁ!なによもう!けち!」 不満を表明する俺に、イルカは赤い顔したまま腕を組んですっかり説教モードだ。 「飯食ってから。だ!初詣もまだだし、子どもたちにもお年玉上げないといけないし…」 「面倒くさ…」 そんなコトよりやりたいことがあるのに…。 そう思って視線をそらしたら、イルカに頭をぐいっと掴まれた。 鼻と鼻が触れるくらいまで近くにイルカの顔が寄せられて…。 「い・い・か!アンタのために用意したんだから無駄にしたら許さないからな!ちゃんと食え!」 真剣な瞳が真っ直ぐに俺を見つめる。頑固なイルカらしい厳しい表情を浮かべていて、自然と頬が緩む。 「うん。後でアンタも食うけど。」 一応はイルカの言うことを聞いてやろう。その後の時間はちゃんと俺のものにするけど。 それでも離れたくなくてまだしがみ付いてたら、イルカが頭を抱えて喚きだした。 「離れろって!あーもう!新年だってのに…めちゃくちゃだ!」 「いいじゃない。逃げないんでしょ?俺から。」 「…逃げないけどな…調子に乗んな!」 「ま、いいけど。」 ぎゃんぎゃん喚いてるのを見るのも楽しい。これからずっとなんていうのはどうか分からないとしても、 イルカは絶対に自分の言葉を曲げないだろう。一応忍で、言葉なんて大して重みの無い世界で生きてるくせに。 だから、一応信じてやることにした。 「ホラさっさと服着て手伝え!」 「はいはい。」 乱暴に振り払う手にとりあえず従ってやりながら、これからのイルカを思ってほくそ笑んだ。きっとまた真剣な顔で説明するんだろう。 あの顔が見られるんならちょっとだけ離れてやってもイイ。 「ハイは一回!」 「はーい。」 すっかり教師モードのイルカのイルカを眺めてニヤついてたら、イルカが不満そうに面倒くさい事を言い出した。 「…そ、そんな顔しても駄目だからな!あとでちゃんと三代目の所に謝りに行くぞ!」 「えー?」 処分の連絡がまだ来ないってことは、三代目のことだからお咎めなしってことだろう。 だが、イルカはよたよたしながらソレでもすばやく服を着て、腕まくりまでしてやる気まんまんだ。 「まず、飯だ!アンタも早く着替えて手伝え!」 気合たっぷりにそう宣言して、怒りながら台所へ向かったイルカを眺めながら、俺はどうやってもう一度その気にさせようか 考えることにしたのだった。 ********************************************************************************* わがまま過ぎるのをぎゃふんと言わせようとしたら、頭の中身が可哀相な話になってしまった…! イルカ先生、迷惑してるんだろうなぁ…。でもほだされちゃうんだろうなぁ…。 枳実様〜!!!…いつも通りなアレ感じでございますが、もしも、やっぱりエロは必要だ!等の ご意見ご感想などがありましたら、お気軽に拍手などからどうぞ…。 |