新年



性格の悪いカカシ注意!それと、隠さずに微エロ(あくまで当サイト比。)がありますので、苦手な方はご注意下さい!!!
いつも通り中身はないってばよ!!!くれぐれもご無理はなさらずー…。



帰ってこないから何かあったんだと思っていた。
…だからって、ここまで予想通りの格好で帰ってくることはないだろう?
「アンタどうしたんだ!その格好!?血が…!」
支給服に染みこんだ赤い液体は一人や二人でつくはずがない量だった。それにこの男ほどの腕でここまで汚れるなんて…相当厳しい状況だったことは間違いない。
殺気は今更だから気にもならないが、怪我のほうは気になった。
「ああ、ちょっとね」
こっちが心配してるって言うのに、男は伸ばした手をさりげなく避けて相変らず飄々とした態度のままで面倒くさそうに溜息をついた。
「怪我は!?早く風呂入って来い!今日は里7班と内任務だったんじゃ…?」
状況が分からない。
返り血が大部分だろうと思っても、それに乗じて怪我を隠すなんて事がしょっちゅうな子の男相手に、安心なんて出来なかった。
改めて男に手を伸ばし、ベストをはいだ。俺の気迫に、今度は止めても無駄だと諦めたらしい。固まりかけた血に阻まれはしたが、何とか引き剥がすことができた。その下にアンダーに傷がついていないところを見ると、上半身はほぼ無傷だろう。
安堵の溜息は思った以上に俺の神経が昂っていたことを教えてくれた。
だが、今はまだ脱力している暇はない。
「ま、年の瀬だからねぇ?いい大掃除になったんじゃない?」
思わせぶりな言葉から、任務がろくでもない内容だったのは予想できた。
「…何か、あったんだな…?」
普段なら怪我をしていないことが確認できればここまで心配なんてしない。
でも、今日は出来なかった。
「大したことじゃない。アンタは知らなくていい」
いつも離れていることなんかないくらいにくっ付いてくるこの男が、近づきたそうにしているくせにぎこちなく距離を取っている。…それだけでもおかしいというのに。
「ふざけんな!言え!…そんな顔してなにが大したことじゃないだ…!」
痛みというより諦めと酷い疲労に瞳を濁らせている男を、放ってなんかいられなかった。
取り繕うことさえ出来ないなんて。
瞳の奥が熱くなって、息が苦しい。
「…アンタが、泣くこと無いでしょ?」
弱りきった言葉と表情が、さっきまでの見ていられない瞳を覆い隠してくれたから、遠慮なくその頭を殴った。
「なら心配なんかかけるな!」
「っ…!もうなによ?だから心配なんかするほどのことじゃ…っと!」
おとなしく殴られて、それでもまだ普段の図々しさを取り戻さない男の胸倉を掴んでやった。
こういう時は言葉で言っても無駄だ。行動するに限る。
「風呂場行くぞ」
脚絆もサンダルも乱暴に脱がせた。ソコにまで飛び散っている赤黒い汚れが忌々しい。
こんなになるまで戦ってきたくせに、誤魔化そうとする男自身も。
「…ま、いいけどね。どうせなら洗ってくれる?…体で」
にやついた男の頭をぶん殴ってやった。
誤魔化すためと、…多分かなり本気なのが分かっていても、からかわれて流せるほど今の俺に余裕なんて無かった。
「馬鹿なこと言っても誤魔化されないぞ!…言えないことなら言わなくていいから、手当てもしないでぼーっとしてるんじゃない…!」
どうして、こいつはいつも自分を大事にしないんだろうか?
痛みも蔑みの言葉も全部…堂でもイイとばかりに振舞う男が腹立たしくてならなかった。
上忍だからじゃない。…きっとコイツが馬鹿だからだ。
こっちがそれでどんなに苦しむかも知らないくせに。
怒りに任せて胸元に叩きつけた拳を、男は簡単に捕らえた。
「いいから。泣かないでよ。…ほら、洗ってくれるんでしょ?」
その顔が僅かながら戸惑いを含んでいるのに少しだけ溜飲が下がったので、風呂場に放り込んで、このまま全身洗って手当てして…それからもう1回殴って休ませようと決めた。…さりげなく俺の腰にまわった手をひっぱたきながら。
「洗ってやるからおとなしくしてろよ!」
*****
「ほら、シャワーかけるから、目、瞑ってろ」
最初は服ごとシャワーをかけた。ベストもそうだったが、固まった血液で張り付いた衣服は扱いづらい。ある程度流してからでないと脱がせられないだろう。
「ん。…温かい」
目細めて気持ち良さそうにしている男は、よほど気持ちイイのかされるがままだ。
「大体、落ちたか?ほら、脱いで」
あまりの無防備さにいたたまれなくなってきた。顔にも出てただろうし、俺が何を考えているかなんてバレバレだったんだろうが、それでもなんでもない風を装って服に手をかけると、くすくす笑いながら男が呟いた。
「そういうセリフはもっと色っぽく言って欲しいよねぇ?」
帰ってきた時のしょぼくれた感じはすっかり鳴りを潜め、もう殆どいつも通りの態度のデカさに戻っている。
腹は立ったがそれ以上にホッとした己に呆れた。
「だ、黙ってろ!…ああ、怪我はなさそうか…さすが腐っても上忍」
一気に服をひんむいてやった。
ちょっとは驚けば可愛げがあるのに、嬉しそうにしているだけなのがまた人の神経を逆撫でする。だが、まあ露になった部分には怪我がなさそうだ。これなら飯を食わせて寝かせておけばいいだろう。
おそらく、ソレが一番大変だろうというのは予想できたが。
任務帰りにやたら盛る男が、おとなしく寝ていてくれるとは思えない。
「脱がせてくれちゃうなんて、積極的―?」
「…。下も、脱げ」
これ以上会話を続けても、コイツのペースに持ち込まれるだけだ。
上半身よりはましそうだが、ズボンも相当なものだし、とにかく減らず口の相手をするより、現状を何とかするのを優先しなければ。
早口でそう言った俺に男は目に見えて調子に乗った。
「はいはい。今まであれだけヤッってんのに、かわいい顔されてもねぇ?襲って欲しいの?」
つ…っと服を着たままの俺の胸元に白く濡れた手が触れて、じんわりと湿って張り付いたシャツが不快だ。
何を意図しているかなんてありありと分かったが、そうそうコイツの思い通りにはさせない。
「脱げないならひん剥くぞ!無駄口叩かずさっさと脱げ!」
「色気が足りなーい。ま、いいけど。ほら。大丈夫でしょ?」
俺の怒声にもったいぶって男はゆっくりと服を脱ぎ捨てた。
言葉どおり、男の体には傷一つついていない。さすが上忍と言った所か。
…まあ態度自体は凄腕の上忍というよりただの子どもなので、無傷であることへの評価よりも、手をかけさせたことへの怒りのほうが勝ったのだが。
そして、なにより安堵した。脱力するくらいに。
「…ふぅ…良かった…!」
思わず声に出ていたその言葉を、男は当然のようにからかった。
「なぁによ?俺、強いのよ?そんなにぎゃあぎゃあ喚かなくても」
「黙ってろ!ほら、背中流すぞ?」
態度の悪さが戻ってきたということは、詳細は口にしないながらもそれなりにこいつの状態が良くなってきたというコトだろう。
…聞いてなんとかできないなら、俺ができることをするだけだ。
脱がせた服はあらかた中身を抜いたベストともにたらいに放り込んでおいた。状態を見てから捨てるか洗うかすればいいだろう。
後はこいつをきれいさっぱり洗ってやればいい。…そしてそれこそが難問なのだ。
「そんなのより、させて」
獣じみた視線が何より雄弁に語るのは…欲望。
「…はぁ…腕上げろ」
今はまだ相手にしてやらない。そんなことより優先すべきことがあるからだ。
本当なら中途半端に湿った服を着ているよりさっさと脱いでしまいたかったが、今そんなコトをすれば何が起こるか予想できたので、腕まくりだけしてタオルを泡立てた。
服を脱がせた途端に当然のようにやたらくっついてくるから、体を洗うのも一苦労だ。
とりあえず上半身だけは洗ってやって、後は自分でやらせよう。
そう思ったが、男につかまれた腕がびくともしない。
「後でいいでしょ?どうせ汚れ…んっ」
余計なコトばかりしゃべる口をさっさとふさいでやった。
…少しだけならご褒美をくれてやってもいい。
「これでしばらく我慢してろ!早く、腕!」
いきなりの口づけは男をそれなりに驚かせるコトに成功したらしい。
ぽかんとしている間に、男の腕からのがれ、さっさと手の届く所にタオルで擦ってやった。
ついでに腕も自分で持ち上げて洗ってしまおうとしたとき、ぎゅっと全身を抱きこまれてしまった。
…もう正気に返ってしまったようだ。
「無理に決まってるでしょ?そっちから誘ったくせに」
くせの悪い手が俺の服をめくり、このままだと脱がされてしまいそうだ。
人の話しなんか禄に聞かないと知っていたから、アカデミー生にするように耳を引っ張って怒鳴りつけてやった。
「とっとと洗わせないと、あんたが限界だろ?風呂にも入らないヤツと寝る気はない!」
自分が言った内容も大概だ。そう思ってもコイツ相手だからしょうがない。
だが…今度はむっとした顔で腕の力を強めた男は、まだ何か文句を言いたげだ。
「限界なんて…!チャクラも余裕だし、アンタが満足するまでいくらでもやれるけど?」
口を開けばこんなコトばっかり言い出すのは、何とかならないんだろうか?
深い溜息がこぼれたが、こういう反応が出るなら大丈夫だろう。
「それだけおったてといて分からないとでも?」
そういうだけで、男の誤解はすぐ解けたようだ。にやりと…色気ばかり強いたちの悪い笑みを浮かべている。
「そういうアンタはどうなのよ?これ」
「…っ!」
服の上からぎゅっと握られた。自分でも気付いてはいたが、完全とは行かないまでも兆し始めていたことは誤魔化しようが無い。
誘うような態度に加えて、こういう時の男の色気はもはや凶器に近い。…迷惑なコトに、自覚があるというのも俺にとっては不利だ。
思わずこぼれた吐息に調子に乗ったらしい。ぺろりと舌なめずりをした男は、本格的に俺の服に手をかけ、ソコを弄ろうとし始めた。
堪え性がないというかなんというか…こうなったらコイツを止めるのは難しい。
「…っ!後でって言ってるだろ!」
「いったいなぁ!」
結構本気で殴ったからちょっとだけ目に涙が滲んでいる。
俺が本気で抗ったらコイツは手を出せない。…だから、本当ならこのまま黙らせてやってもいいんだけど。
「…今日は、甘やかしてやる」
「どういう風の吹き回し?」
不審げな声とは裏腹に、濡れた腕には更に湿って温かい感触が這っている。正面切手ではないが、許しを出してしまった以上、コイツが我慢なんかする気はないだろう。
…戸惑ってはいるようだが。
この隙にとっとと畳み込んでしまおう。
「あんたが痛いって言えないような馬鹿なんだからしょうがないだろ!ただし、洗ってからだからな!ほら、そっちの腕も!」
すがりつく手の必死さが、男が耐えた痛みのせいだとしたら。
心まで痛みと血に溺れさせる前に俺に出来ることは、男を無理やりにでも抱きしめて、こっち側に引き戻すことだけだ。
「はいはい」
「はいは1回だ!」
「お預けなんかさせたんだから、覚悟してよね?」
…この態度を見てると、もう俺の手なんか必要ないんじゃないかとは思うが。
「そっちこそ!…身体、素直に洗わせないと、我慢する時間が長くなるぞ」
とにかく、こいつを洗うのが先決だ。衛生的な問題もあるが、血の匂いは例えそれになれた忍であっても、正気を失わせる何かがある。殺気が押さえ切れていない辺り、もう結構ギリギリだろう。だが、それがもたらす快感と恐怖に溺れたら…そこにいるのはもう人ではない。
男はそう簡単に堕ちるとは思えないが、ホンの小さなきっかけで道を踏み外すものは驚くほど多い。耐え続けてきた男だからこそ、もしかすると思うとソレが怖かった。
血の溺れたからと言って、この我武者羅に俺の何もかもを掴もうとする手を、もう離せないだろう自分が。
「そうねぇ?」
「ニヤニヤすんな!」
「ま、いいか。後で」
脅し文句にニヤつく男がろくなことを考えているわけが無いのはわかっている。
あっさりと引き下がったのも多分目的を達するのにソレが一番の近道だからに過ぎない。
どうしてこんなのに捕まったんだろうと思わなくも無かったが、今更だ。
…どうせ失うことに耐えられないのだから、最後までこの手を掴んで離してなんかやらない。
「…はぁ…年越しの準備、手伝えよ!」
…こういうは譲れないけどな!任務だったからしょうがないにしても、せめてそばくらいは食わせてやりたい。おせちも大体出来ているが、まだお重につめてもいないし、初詣にも行きたい。それにお年玉も準備していない。
「別に、いいけど」
「あと、全部途中なんだから、歩けなくなるようなことはするな!」
あっさりと引き下がったので、念を押してやった。
…やることだらけなのに、寝込んでいるわけには行かないのだ。
だが、当然のように鼻で笑われた。
「歩けなくなるに決まってるでしょ?準備は俺がやった方が早いし」
つ…っと俺の腰をたどる手はこれからさきのことを暗示していて背筋が震えた。
…それが、情けないコトに怒りだけでなかったのが苛立たしい。
「うるさい!…ソコは自分で洗えよ?」
腹立ち紛れにタオルを投げつけたのは、十分すぎるほどに興奮を露にしている男の怒張。
これ見よがしにも程がある。ここまで自信ありげにさらされているのと流石に不愉快だ。だが残念なコトに男は俺の冷たい視線に躊躇うほど可愛い性格はしていなかった。
「これから一番アンタが使うところだしねぇ?」
使う…それは、つまり…!
「だ、黙って洗え!」
もうこのまま出てやろうと風呂場の扉に手をかけたが、当然のように引き戻された。
「脱いで、そこで待ってなさいよ」
「うぅ…!年末まで手のかかる…!」
濡れたからだの男に遠慮なくしがみ付かれたせいで、俺の服もすっかり水気を吸ってしまっている。こうなったら脱ぐしかないんだろうが、いいなりになるのも、男の前で脱ぐのも躊躇われた。
「ああもういいや。俺が脱がせるから」
「へ!?」
ぐずぐずやってる俺に痺れを切らしたらしい。あれだけ自分の服を脱ぐのに時間をかけたくせに、俺の服は簡単に引き剥がされてしまった。
「んっ!」
…ついでに強引な口づけのオマケつきだ。いよいよ我慢も限界かとある程度腹を括った俺に、男の呟きが届いた。
「アンタに、怪我なんかさせない」
懇願にも誓約にも似たそれは、小さすぎるほど小さかったけれど…。
不遜な男をここまで追い詰めた理由はその辺りにあるのだろう。
「…アンタも、怪我なんかするな。原因は大体わかるけど」
心配するのは自分だけだと思っているのは気に食わない。
…だが、きっとあの血は…あの血のどれかは、同胞の血でもあったのかもしれない。
仲間は何を押しても守ろうとする男の手は、だがそれでも…届かないことがあるから。
そうして、男は誰よりそれ傷つくのに、それを外に出すことすらしないのだ。
だから、そんな馬鹿には…嫌でも縋らせてやるしかないだろう?
「怪我ねぇ?あんまり煽るから無理やり突っ込まれたいのかと思ったけど?」
「そんな訳あるか!」
ふざけて誤魔化すのも、今日は騙されてやる。
殴りたくはなったけど。
「そうね。…気持ちよくしてあげる」
その声に風呂場の空気が色を帯びた気がした。
近づく瞳とその腕の力強さに、きっと今日はもう離してはもらえないだろうと覚悟した。
*****
後ろから抱きかかえられたまま、さっきと同じようにその白い手が俺の肌をたどる。違うのは俺が服を着ていないことだ。
「うあっ…!あっ…!」
細く長いその指で中の感じる所を直接触れられたら、声なんて堪えようにも堪えられない。その声が風呂場ではヤケに響くのが羞恥を煽ったが、男の機嫌は良くなるばかりだ。
「もう、入れていいでしょ?」
冷静にすら聞こえるそのセリフは一応俺の意思を聞いているが、触れる熱は言葉など待っていないことを教えてくれる。
切羽詰ってるくせに、こういう時にも妙なプライドを捨てない辺りがこの男らしい。
「好き、にしろ…!」
強請れとでもいいたかったのだろう。男は欲情を隠そうともしない顔に僅かに不満を浮かべたまま、中をうがつ指を引き抜いた。
「なによ、可愛くないの。ま、これから可愛いことしかいえなくしちゃうけどね?」
その瞬間、男のモノがためらいなく俺を貫いた。
「うっあ…っん…!」
痛みは一瞬。すぐに圧倒的な快感に上塗りされて、時には意識が飛ぶほど貪られる。
その全てを奪うような激しさで縋りつかれて、戸惑いよりも喜びを覚える辺り俺も終わっているんだろう。
可愛ないなんて言った男は、言葉どおり、俺にモノをしゃべらせる気はないらしい。容赦なく突きこまれる熱に溺れて…馬鹿みたいに喘ぐことしかできない。
だが俺だけを見つめて快感を追う男の顔は至極満足そうで…やり返そうなんて気は簡単に失せてしまった。
ただ、熱くて気持ちよくて男が笑っているのに満たされて…考えるのは後回しにして、俺も一緒にこの行為に溺れてしまうコトにしたのだった。
*****
…散々やられた。任務の疲れなど感じさせない行為の激しさに俺の方が先につぶれて、目覚めてもまだ男が俺の上で好き勝手してて、それからまた引きずられるように快感の波に追い立てられて…。
結局、言葉どおり歩くことすら出来そうにも無くなってしまった。
「で、結局…」
「ん?なによ?」
満足したのか男は大層機嫌がいい。殴る余力があったらせめて一発でも食らわせてやりたいのだが、それよりも…聞きたいことがあった。
あんなに様子がおかしかった理由。…それが、何なのかが知りたい。
「いいたくないならいい。…でも…」
守秘義務に抵触するならこれ以上知ることはできない。
…ただ、どうしてあんなに傷ついた顔をしていたのかを教えてもらえるのならと、躊躇いがちに切り出すと、男は呆れたように溜息をついた。
「はぁ…。そんな顔していい訳ないでしょ?…あんたってホント忍むきじゃないよね」
「うるさい!」
コイツの態度のでかさは相変らずだ。…だが、この態度は…話してくれるつもりのようだ。
「ホントはじじいにも口止めする気だったんだけど。…ま、アイツがらみだから」
「そうか…」
「襲撃前に全員捕らえて突き出した。抵抗なんかするから汚れちゃったけど、任務自体は終了してる」
「ありがとう」
大体の事情は分かった。
裏切り者の掃討…そんな任務、できればしたくないに決まってる。
敵ならばいい。だがかつて己が守ってきた者たちや、己の背を預けていた相手に刃を向けなくてはならないのなら。
男のあの疲れきった顔の意味が分かった気がした。
「アンタが礼なんか言わなくていい。使えない馬鹿はいない方がいいしね」
「ウソツキ。…いいから、ほら」
強がりばかり上手い男を抱き寄せた。
いつもは自分からしがみ付いて来るくせに、結局風呂場でもしばらくしょぼくれてたくらいだ。痛みはまだその胸に残しているだろう。
多少でもそれを癒す…いや、そこまでできなくても、その痛みを軽くしたい。
「なにすんのよ?足りない?」
「黙ってろ」
色事に誘うような減らず口なんかに誤魔化されてやらない。
抱きしめた腕の中で少しだけ身じろぎしていたが、ふぅっと息を吐いて、観念したのか男の方から抱きついてきた。
「…アンタ、ホントなんていうかさ…甘い」
「アンタの痛みは、代わってやれない。でもアンタが痛いと俺も痛い」
「泣くな」
「…そうだよな…ごめん。辛いのはアンタなのに」
頬を伝う水が男を汚さなければイイと思った。
自分の感傷なんかより、男の痛みを思いたいのに…。
適当に涙を拭って、自分に出来ることを考えようと思ったのに。
「愁傷なアンタもそそるけど、今は可愛い顔だけみたい」
足の間をあっさり割られた。
散々やられて力なんか入らないから、禄に抵抗も出来ない。
「んっ!や、そんな…!も、無理、だって…!」
何をしようとしてるのかなんて明白すぎた。あれだけやったくせにまだ勃ってるそれが、今は凶器のようにすら見える。
身をすくませるのにも構わず、男はソレを押し付けた。
「力、ぬいて」
「…うぁ…っ!く…ぅっ!」
躊躇うそぶりも見せずに一気に貫かれて、もう無理だと思っていたのに、疲労した体はまだそれを快感と受け止とめた。
「ほら、入った」
にんまりと笑った男がそれだけで満足するはずがない。
腹の中一杯に満たされた欲望は、先ほどの情交からくすぶっていた熱を呼び覚ますのに十分で…。
結局、それから何度挑まれたのかまで、俺の記憶に残っていない。
*****
「うぅ…」
「ああ、水飲む?」
「うー…」
「はいはい。ほら」
「ん…!」
掠れたような声しか出ない、腰もあらぬ所も痛い。もっというなら立てもしない。
そんな俺を男は甲斐甲斐しく世話している。
…言葉どおり、俺より手際よく御節の準備なんかしながら。
作ったはいいが、どうやってつめようか悩んでいた御節も俺よりずっと美しくお重に盛り付けられていく。
色々癪に触るが文句を言うのも気だるいほどだ。
せめてもの意思表示ににらみつけると、なぜか男が台所から何か持ってきた。
「あんた甘いのすきでしょ?」
「むぐっ!」
口に突っ込まれたのはどうやら栗きんとんのようだ。確かに甘いのは好きだが考えてみれば年越しそばだって食い損なっていた俺の腹は、ソレを呼び水に盛大に鳴き始めた。
「あはは!腹減ってるの?ま、いいけど」
「あんたの、せいだ!」
がらがら声で文句を言っても、機嫌の直った男にはどうでもいいコトに違いない。
「ちょっと待ってなさいよ」
そういって御節を持ってきて、食わせようとしてきた。
あまりの変わりように…なんだか騙されたような気がしないでもないんだが。
とにかく。これを食う前にいうコトがある。
「…あけまして、おめでとう。今年も宜しく…んんっ!?」
痛む喉を酷使して言おうとしたというのに、男はさっさとソレをふさいだ。
「あけましてなんてどうでもいいけど、今年もその次もずっと…アンタは俺のモノだから」
元気を取り戻しすぎた男がそう宣言してくれたので、遠慮なく殴ってやった。
「馬―鹿!」
「いったいなぁ…!でも、ま、アンタらしくていいんじゃない?」
折角の新年なのにどうなんだと思わないでもなかったが。
それはもう嬉しそうに俺にしがみ付いてきた男はきっと俺を離さないだろう。それこそ、今年もその先の未来も…きっとずっと。
それなら俺もソレを望むだけだ。
その未来を嬉しいと思った自分に呆れながら、それでも…そんな未来を、この、馬鹿みたいな幸福がずっと続けてやるんだと決めた。
…まあ、今年こそはもうちょっとコイツを何とかしたいとも思ったんだけど。


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ぎりぎり一応間に合ったー!!!
ちなみに、わざわざ血を引っかぶってきたことが分かってぼっこぼこにされるごふんまえくらいのおはなしだったらどうしましょう?
まあとにかく!それなりにはぴはぴな新年だったとさ!
枳実様〜!!!大分あれですが、ご要望ご意見ご感想などがありましたら、お気軽に拍手などからどうぞ…。


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