ラーメン大好きイルカ先生


公認KI祭!!!にて小話。

その日、俺は久しぶりの一楽で、味噌チャーシューを堪能していた。熱々のスープに、厚切りでとろけそうなチャーシュー!そしてコシのある麺!
久しぶりだと言う事を差し引いても、美味すぎて言葉も出ない。
はふはふと麺をすすり、一心不乱にラーメンを平らげる俺の耳に、くすくすと笑う声が届いた。驚いて麺を口に含んだまま振り返ると、 そこには意外な人が立っていた。
「となり、いいですか?」
「!カカシさん!」
驚きのあまり声が裏返ってしまった。以前ちょっともめたこともあったけど、この人の方が先をみることができてたってことを痛感して 速攻謝りに言ったら、逆に言い方が悪かった俺も悪いなんていってくれて、その時からずっと尊敬していた。
そしてさらに、この間は命まで救ってくれたのに、恩着せがましく言うこともなく、無事で良かったといってくれた。
俺は、その飾る所のない人柄と懐の広さに、密かに尊敬を深めたのだ。
最近退院したと聞いてたけど、もうラーメン食えるほど回復したのか!良かった…!
「あの時もそうやって俺の名前呼んでましたね。」
そうだった…あの時も今みたいにさりげなく、俺の危機を救ってくれた。
「そ、そうでしたね…!あの!お礼っていうか、その!ココのラーメン美味いんで、奢ります!」
上忍で収入の多いカカシ先生には、退院祝いにもなりそうにない寂しいお礼かもしれないけど、ココのラーメンはすごく美味いから俺にはそれ以上のものなど 思い浮かばなかったのだ。
「あー知ってます。で、となり…いいですか?」
一気に喋る俺に、にこっと(まあ覆面越しだからあんまりよくわからないんだが)わらったカカシさんが、俺の隣の椅子を引いたので、慌てて俺も座りやすい様 に椅子をちょっとひいてスペースを開けた。
「はい!もちろんどうぞ!」
「じゃ、失礼しますね。」
座る姿もなんていうかこの人上忍なんだなと思う。隙が無いし動作が滑らかだ。俺を助けてくれたときも、そうだった。
目の前に暁の刃が迫ってきて…ああ、死ぬのかって他人事みたいに思って…でも、この人は気配も何も感じさせずに、敵の攻撃を止めていた。それから、 俺に負傷者を運ぶように言って、この人は一人で暁と戦ったんだ。
…俺も…見習わなきゃな…。
俺は中忍で強さは遠く及ばない。でもこれからも修行して、それから、この人みたいにさりげない優しさと強さを持ちたい。
俺があのときの事を思い返しながら、ラーメンをすすっていると、カカシ先生がどんぶりの中を覗きこんできた。
「イルカ先生は何食べてるの?」
「味噌チャーシューで大盛りです!」
「じゃ、俺も同じのお願いしまーす!」
「はいよ!」
テウチさんが威勢よく返事して、手早く麺を茹で始めている。ココの店のイイ所は、茹でてる所もしっかり見られるところだよな!
スープとタレが混ざり合う瞬間のあの感動!…それに麺が加わって目の前に置かれたときの期待感!そして一口食べれば口の中に幸せが…!!!
美味いんだよなぁ!ホントに!
感動を思い出して、俺はついついテンションが高くなってしまった。
「ココのはどれも美味いんですけど、味噌チャーシューはお勧めですよ!」
カカシさんは、俺の食べてる姿を見て、美味そうっていってたから、きっと俺と同じのを食べてみたくなったんだろう。
何だか嬉しい。俺がニコニコしながら残りわずかになった俺の幸せをほおばっていると、カカシさんがまたくすっと笑った。
「…イルカ先生ホントにラーメンが好きなんですねぇ…。」
優しい目で俺を見ながら、カカシ先生は何だか幸せそうに笑っている。
そんなに見られると…何だか照れるんですけど!
「え!その!確かにそうなんですけど!ここのは特に美味いんですよ!」
取り乱すあまり、思わず一楽のラーメンのすばらしさを主張してしまった。
何やってんだ俺は!
「はいお待ち!…嬉しいこと言ってくれるねえ!イルカ先生!そう褒められて何も出さない訳には行かないね!ほら…ビール!飲んでってくんな! お連れさんの色男も!」
「え、テウチさん!そんな!」
マズイ!照れ隠しがビールになっちまった!美味いのはホントだけど!金も払ってないでビールは悪い。
「いいからいいから!」
だが、俺が断ってもテウチさんはビールジョッキ片手に、しきりに勧めて来る。
ここは、断る方が失礼かも…?
「じゃ、じゃあ、済みません!頂いちゃいます!」
何だかいつも美味いラーメン食わせてもらってるのに、更にこんなものまで貰っちゃって…嬉しいんだけど何か悪いことしちゃったなぁ…。
「イルカ先生のおかげで得しちゃいましたね。ご馳走様。」
しょぼくれる俺を慰めるように、ぽんと肩を叩いてくれるカカシ先生は、やっぱり男らしくてカッコイイ。
「だって、ココのラーメンホントに美味いから…!」
ソレなのに、俺といえば口の中でもごもごと言い訳することしか出来ない。
…カッコ悪いな。俺…。
「ははっ!イルカ先生のそういうとこ好きですよ。」
落ち込む俺を見ながら、楽しそうに笑うカカシさんが、流石にちょっと憎らしくなってきた。上忍としても実力があって、ラーメン食ってても カッコイイって…ずるいよな!
「…今、さりげなく馬鹿にしませんでしたか…?」
ちょっと卑屈になってる自分がいやだが、あの笑い方は確実に…。
まあ事実ラーメン好き過ぎて理性とばしちゃったのは馬鹿っぽかったかなって思うけど。
ついつい唇を尖らせて不満げな顔になってしまった。
「馬鹿になんてしてませんよ!でも、可愛いなとは思いましたけど。」
カカシさんは、にっこり笑ってラーメンを食いながら、かるーい口調でさらっと…変な事を言った。
「か、かわいい!?なんてこというんですか!」
こんなイイ年の中忍捕まえて、よくそんなコト言えるな。この人!
「うん。かわいいです。」
「あ、う、…」
しみじみと言われてしまった…。何かもう喋れないくらい頭に血が上ってるんですけど!…顔、真っ赤かも…。
「ラーメン。ほんとに美味しいですね。」
うろたえる俺を楽しそうに眺めながら、ものすごい速さでラーメンを平らげたカカシさんは、終始ニコニコしていて。
…取り乱してる自分が、なんかこう…恥ずかしかった。
*****
折角の味噌チャーシューのスープなのに、味の分からなくなった。
それでも残すのがもったいなくて、健康に悪いと知りつつスープも全部飲み干した。
勿論ビールも一気のみだ。…ちょっと頭がくらくらする。
「テウチさん!お勘定!」
カカシさんが変なコト言い出したから、何だか冷静になれない。こういう時はさっさと帰って寝たほうがいい!
それにしても…なんでこんなに照れてるんだろう…?俺。
一人百面相をしながら、自分としては最大限手際よくお勘定を済ませる。そのまま挨拶だけして帰ろうと、振り返ったら、いつの間にかラーメンを キレイに食べ終えたカカシさんが、何故か後ろに立っていた。
「この後、ちょっといいですか?」
「はい!」
っていっちゃったけど!どうしたら良いんだ!?この事態!!!
自分でも何だかおかしいのが分かってて、カカシさんにくっついていくのは…よくないんじゃないだろうか。
絶対にこのままだと何かやらかしそうな気がする。
だが、俺の返事にものすごく嬉しそうに笑ったカカシさんに、もう帰りたいなんて言えないし…。
結局俺はカカシさんに連れられるまま、カカシさんの自宅までのこのこ着いていってしまった。
家の前では一応躊躇したのだ。
「あの!ここ!まずいですよ!上忍の方の家は!」
だって、上忍の家には機密が一杯だ。俺の家をあさっても、精々テストの草稿くらいしかないし、そんなものを欲しがるのはアカデミー生ぐらいの ものだし、そんなものを使おうと思うような子は、俺のトラップに簡単に引っかかるから問題ない。
だが、取り乱した俺にカカシ先生はこんなことを言ったのだ。
「イルカ先生に…お話があるんです。」
相手は尊敬している人だ!そんな人に…真剣な瞳で言われて、どうして断れよう。
結局俺は上忍の家を初体験することになったのだった。
で、今俺は、カカシさんの家の中にずうずうしくも上がりこみ、進められるままにお茶をすすっている所だ。そんなに広くなくて、良く整頓された家の中で、 自分が浮いているような気がしてならない。
落ち着かない気分を押し隠しながら、とにかくお茶をすする。コレがまた美味くて、やっぱり上忍って収入違うんだなと思う。
三代目の所でお茶汲みやってた俺がいうんだから間違いない!
「美味しいですか?」
「ああはい!もちろん!」
お茶に集中するあまり、声を掛けられたことにびっくりしてしまった。それにしても…話ってなんだろうな…?
「良かった。普段お茶なんか飲まないから、お店の人に聞いて買ったんです。」
ホッとしたように微笑んでさらっと言ったけど、それって…!
「お店の人にぼったくられてると思います!こんなに美味いお茶は普段は必要ないんじゃないかと!」
何で普段飲まないのにお茶飲みたいと思ったのかは分からないけど、コレは酷い。お店の人も雰囲気で上忍だと分かって、吹っかけたんじゃないか!?
「ああいいんですよ。お客様用ですから。」
お客様…?って俺か!なんてもったいない事を…!俺ならこんなに美味いお茶は買わない!…というか…買えない。高くて。
「そのー済みません。」
何だか美味いお茶たかりにきたみたいだよな…。こうなったらその話ってヤツを真剣に聞いて、絶対に何とかしないと!
俺はドキドキしながらカカシさんに水を向けた。
「それで、その。お話と言うのは…。」
ナルトのことだとは思うんだが、最近アイツはたまにラーメンたかりに来るくらいで、あんまり離さなくなったんだよな。
昔は…自分のことばっかりそれこそマシンガンみたいに話してくれたのに…。大人になったのと、…アイツには辛いことが多いからかもしれない。
そろそろ一緒に酒を飲める年齢になるし、その時は絶対に!じっくり話を聞いてやろうと決めている。
「イルカ先生?」
あ!しまった!ナルトのことばっかり考えてボーっとしてた!
「すみません!自分で話振っといて!で、あの!」
慌ててカカシさんに謝った。だが、カカシさんは怒るでもなく、なぜかするすると覆面を下ろした。そして。
「イルカ先生。好きです。」
「は?」
耳。悪くなったかな。
…それとも最近里の復旧作業が続いてて、徹夜とかザラで、睡眠不足だからかもしれない。
それにしても…なんてキレイな顔してるんだろう。
誰だ!覆面の下はたらこ唇でオマケに出っ歯だっていったヤツは!ちょっと信じてたのに…!天は二物も三物も、この人に与えすぎだ!
っていっても、この人の歩んできた道は半端なく大変だったはずだから、そう考えると帳消しどころかマイナスなのかもしれないけど…。
「あの日ね。俺、イルカ先生に告白しようと思って、探してたの。」
あれ?えーっと。…告白?今変な単語聞いたなぁ…。
知り合いの上忍の家で、聞くべき単語じゃない気がする。
やっぱり今日は疲れてるんだ。一楽にいた時からおかしかったし。…もう寝よう。ソレが一番だ。
「イルカ先生の、優しい所が好き。それと、強い所がすき。でも、この間みたいなことは止めてね?俺の心臓が止まる所だったんですよ?」
まだまだ幻聴は続いている。
こんなに美味いお茶ご馳走になって役に立たないのは申し訳ないけど、今日はきっと駄目だ。こんな幻聴が聞こえるのに、相談事なんか聞けない。
「そのキラキラした瞳が好き。意思が固くて、ちょっと意地っ張りで、それに涙もろくて。…イルカ先生の全部が好き。」
「あ、あのーちょっと耳の調子が悪いみたいなので、申し訳ありませんがご相談は今度うかがいます…。」
さっさと暇乞いしちゃわないと。俺の耳がどんどんありえない単語を拾うから、何だか今多分俺の顔真っ赤になってる。
カカシさんに変に思われる前に帰らないと!
「帰らないで…?耳の調子は悪くないと思いますよ。…それとも、やっぱり俺じゃ駄目ですか。」
「耳、おかしくない…?え、え、それじゃあ…えぇぇぇぇ!!!!!」
好き、この人が俺のこと?それにさっき耳が溶けそうな位俺のこと褒めてたんですけど!ありえない!!!
「…えーっと。もしかして俺の話ウソだと思ってますか?」
「いえ、その!信じられないって言うかありえないって言うか…!俺、俺ですか!?」
いやいやちょっとまて、巷の噂じゃこの人には常に女がいたはずだ。
ってことは、幻聴じゃないなら、罰ゲームか!!!
「俺は、ずっとイルカ先生のことが好きで。でも、あなたは俺のことなんとも思ってないって分かってたし、諦めてたんです。始める前から。 たまに話して、ちょっと酒飲んだりして…それだけでいいって…。」
「あ、う、」
「でも、ナルトがどんどん大きくなって、変わっていって。そのうちアナタも誰かのものになるかもしれないと思ったら、 諦められなくて…あの日アナタを探したんです。」
「え!?」
「そうしたら…アナタ的に啖呵切ってるし、攻撃よけようともしないで勝手に覚悟決めた顔してるし!…入院してなかったら、 その日のうちにアナタを攫ってしまうつもりでした。」
「あ、あのー?」
「入院してる間に頭ちょっと冷えたと思ったから、またアナタを探して、そしたらラーメン幸せそうに食ってて、やっぱりイルカ先生のことが好きだって 思ったんです。」
俺が目を白黒させているのにもかまわず、一気に言い切ったカカシさんはちょっとスッキリした顔をしている。
「返事を。下さい。…正直に言うとアナタがイヤだって言っても諦められないと思うけど。でも、アナタから聞きたい。」
「えっと、その!俺は…」
「俺では…駄目ですか?」
「ちょっと落ち着いてください!」
カカシさんはいつでも冷静で、あの時だって敵の襲撃を受けたって言うのに、すごく普通に対処してたから知らなかった。この人は結構な激情家だったらしい。
キレイな顔を苦しそうにゆがめて、必死で俺に訴えるその姿に、俺はさっき自分が何であんなに取り乱したのか分かった気がした。
だって、今、俺、…嬉しいと思ってる。
期待と不安の入り混じった瞳で俺を見つめるカカシさんの瞳を、俺のしっかり見返した。
「カカシさん。…えーっとですね。月並みですが。…好きです。付き合ってください。」
「え?」
カカシさんはきれいな顔してるくせに、口を半開きにしてぽかんとした顔をしている。よっぽどびっくりしたんだろう。
…さっきの俺もこんな顔してたのかなぁ?
とにかく、固まられてちゃ話が進まない。カカシさんの瞳を見てもう一度はっきり言った。
「だから!好きです!…返事は!」
「はい!はい…!俺と、付き合ってください!」
カカシさんはまだびっくりした顔のままで俺の手をぎゅっとにぎった。なんだか思ったより子どもっぽい人なんだな。そういうトコも好きだけど。
わー俺、今普通にこの人のこと好きって言った。
「イルカ先生。顔、真っ赤。」
「カカシさんだって!」
「ははっ!ほんとだ!」
「あはは!」
二人して顔を見合わせてたら、何だかもうがまんできなくて、馬鹿みたいに二人で笑った。
腹が痛くなるまで笑って、涙まで出そうになりながら、カカシさんと一緒に床に大の字に転がった。天井が見えて、俺の横には今日から 恋人のカカシさんがいる。
俺はとなりのカカシさんの手をにぎった。もうイイ年なのに、やたらドキドキしてる。緊張を誤魔化すように、一回深く深呼吸して カカシさんのほうを向き直った。
「…カカシさん。というわけで、末永く宜しくおねがいします。」
コレは、何だか言っておかないといけない気がしたんだ。この人つっぱしりそうだから、これからは俺が止めないとな!
「勿論!こちらこそ、末永く!」
それからまた床に転がったままで、二人でしばらく笑ってたけど、このままじゃ腰が痛くなる。
「カカシさん。そろそろ…」
「帰っちゃうの?」
あ、そうか、そういや結構な時間だ。早めの夕飯で一楽にいったけど、辺りはもうすっかり暗くなってる。
「流石に今日は何もしないから、泊まってって?」
「ちょっ!何言ってるんですか!」
何もしないって…そうか!恋人だし!って恋人なんだよな!?
瞬く間に顔を真っ赤にした俺に、カカシさんは柔らかく微笑んで、ぎゅうぎゅう抱きしめられた。
「もう、そんな顔して!俺はずっと我慢してたんですから!いいんですか?襲われても!」
「え!!!あの!その!」
耳元でやたらに甘い声を出されると、どうしたらいいのか分からなくなる。
「冗談です。でも、いいよね。泊りってコトで。」
「えっと。お邪魔でなければ!」
「邪魔なわけ無いでしょ?」
そう言ったカカシさんにテキパキと風呂の準備やら着替えの準備やらをされて、ほこほこのままベッドに寝てるわけなんだが…。
「落ち着かない?」
「あ、そのー。腕、重くないんですか?」
腕枕って…俺、男なんですけど!重いはずだ!それに、何だその表情!
「平気。でもあんまりもそもそされちゃうと、その気になっちゃうから。」
「う!え!?」
なんてこというんだこの人は!
「じゃ、寝ましょ?」
「あ、はい。」
ドキドキしながら一応返事だけしたら、カカシさんが俺の肩を掴んで、顔が近づいてきて…。
あ、俺今、カカシさんとキスしてる。
そう思ったら頭が沸騰した。
そんな俺の顔を楽しそうにみつめて、カカシさんは更に口づけを深くする。舌を絡ませ、俺を抱き寄せて調子に乗った手が…何か俺の…!
だが、あまりの激しさに、頭がぼうっとして、ろくに抵抗も出来なかった。
「…ごちそうさま。今日はココまで。」
ニコッと笑うその表情からは想像もできないくらいこの人は手が早い。
「あ、」
口が離れた瞬間思わず漏れた声に、カカシさんが反応した。
「…我慢しなくて、いいの?」
「!いいわけあるか!今日はココまでです!」
大体…さっき何もしないって言ったじゃないか!我ながらどこのアカデミー生かって思うが、流石に男相手っていうのは初めてだし!
何より今日、カカシさんが好きだと気付いたばかりなのだ。…いきなりは勘弁して欲しい。
「はーい。ってことは、そのうちこの先に進む予定があるってことですね。」
「あ、うー…!」
まずった!この目は…何か悪いことを考えてるに違いない…!
「そんな顔しないで?今日はホントにココまで。」
にっこり笑うカカシさんは、すっかり満足した様子で俺を抱き包むと、ぎゅうぎゅうと抱きしめてきた。
「あの!」
流石にコレじゃ眠れない。俺は手を伸ばして俺を締め付けるものを外そうとしたんだが…。
「あーなんか、もう幸せ。」
耳元でそんな事を言われて…結局その日は諦めて寝た。
*****
「カカシさん!」
「あ、イルカ先生!どうですか新居は?中も結構凄いんですよ!」
「アンタ何勝手に人の家引き払ってるんですか!!!それに何で忍犬が俺のこと案内しに来るんですか!」
目を冷まして、目の前にこの人がいることに驚いて、それからひとしきり照れて、寝起きの悪いカカシさんに発破かけながら一緒にアカデミーに行って、 帰ってきたら…俺の家がもぬけの殻だった。
あまりのことに呆然としてたら、パックンが現れて、「着いて来い。若造。」なんていわれて、そのままたどり着いたら、得意満面のカカシさんがいたのだ。
「だって…あの家、狭いでしょう?家具はそのまま運び込んであります。書類はちょっと分からないものもあったので、ダンボールに入れてあるのもありけど。」
「だから!」
とうとうとまくし立てるカカシさんは、やはり突っ走ってしまったようだ。今日の朝も一人でニコニコして、何かたくらんでるみたいだったから 心配してたんだけど…こんなに行動が早いとは予測できなかった!
俺が怒っているというのに、嬉しそうなカカシさんは俺の手を引いて、勝手に家を案内し始めた。そして、一直線に向かった先の扉を開けて、 誇らしげにカカシさんが宣言した。
「風呂場が広いんです!」
「わあ…!」
俺は風呂が好きだ。広い風呂はもっと好きだ。コレなら足を伸ばして入れる!
嬉しい!…けど!ちょっとまて、流されるな俺!
「カカシさ…」
「だから一緒に入れますよ!」
とめようと思ったんだ!でも、俺を抱きしめて今にも踊りだしそうなカカシさんを見てたら…何かもう吹っ切れた。
「今度からは相談してください。…二人のことなんですから。」
「あ、そっか。二人…これからは二人なんですよね!」
まるでその辺の女の子みたいなセリフでものすごくうれしそうなカカシさんにぎゅうぎゅうと抱きしめられながら… 俺は今後の生活を思って、色々と覚悟を決めたのだった。

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お祭その22…長いよ…。
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