変態とチョコまみれの恐怖


「もうすぐバレンタインか…。」
ため息混じりのつぶやきが漏れた。
アカデミーでもこの日は戦争状態だ。
特に人気のある生徒は逃げ回ったりと苦労してるし、俺たち教師も色々と対策をしなくちゃならない。
…生徒がチョコくれたりするのは嬉しいんだけどなぁ…。生徒同士が術使ってまで渡したりとか色々はなぁ…。
しかも、思い悩む俺を更に疲労させるモノが…。
「チョコプレイは必須ですよね!」
毎度のことながらどこからともなく湧いた変態が、背中からのしかかって耳元に息吹き込んできたのだ。
「気色悪いマネしやがって…黙れ!…今年は何個かな…?お返しも決めておかないと…。受付で配る分の買出しも 分担決めて無かったよな…?」
非常に不穏な発言が混じっていたが、とりあえず無視に徹し、できる限り変態を増徴させないようにしたつもりだったが、 変態はその言葉にすら反応した。
「イルカせんせぇ!?浮気!?浮気なんですか!?」
「だから黙れ!…いいか。俺はアカデミー生に色々貰うんだ。お前だって…」
そもそもコイツに浮気を咎められるいわれは…悲しいことにいつの間にか結婚…いや、とにかく事実としてはあるんだが、 義理チョコくらいでグダグダ言われるなんてうっとおしいことこの上ない。
第一コイツは対外的にはスゴイ上忍ってことになってるから、きっとチョコだって山ほど渡されるはずだ。
だが、変態は何故か涙と鼻水をたらしながら絶叫した。
「俺は…今まで一度もチョコ受け取ったこと無いのに…!!!」
「あー…そうだな。上忍だもんな…。毒とかか…?」
時々どころか常にも忘れがちだが、こいつは一応ビンゴブックに載るくらい他国でも有名な凄腕上忍で、 命も狙われることがあるんだった。
…安心してチョコももらえないなんて、灰色の青春時代とか送ってそうだよなぁ…。俺でさえそれなりにチョコは …義理だけど…。
さすがに同情した。…ちょこっとだけだが。
…そして…きっちり後悔するはめになった。
「だって…甘いもの嫌いだし!」
「そっちか!」
同情して損した。大体ああいうモノは気持ちをもらうもんだ!いくら甘いものが嫌いだからって、チョコ渡すのは勇気が いるはずだ!…生徒から良く相談されるし!
コイツは…女性の勇気を一体何だと思ってるんだ!
しかも、いつも通りグダグダと訳のわからないことを言い出した。
「でもぉ…イルカ先生の愛の篭ったチョコレートっていうか、チョコにまみれたイルカ先生なら…美味しく頂く 自身があります!!!もちろん全部丸ごと!!!」
ちらちらとこちらの様子を伺いながら、期待に胸と股間を膨らませているらしい変態は、どっからどうみても 碌なことを考えていそうにない。
…これは、早めに手を打たなくては…!
俺は、出来る限り静かな口調で変態に問いかけた。
「チョコが、欲しいのか?」
「はい!イルカ先生とチョコプレイがしたいです!!!」
返事が全くかみ合ってないが、またコイツはイベントに便乗してとんでもないことをしたがってるってコトははっきりした。
それなら、早めにイベントを終了させればいいだけのことだ。先手必勝だ!
「…チョコ…たしか…お!あった。」
記憶を頼りのあさってみると、カバンの底に、腹ふさぎに買ってきといたチョコが、まだ1個残っていた。
すかさず変態に差し出す。
「あ、1両チョコ?」
変態は手のひらに載せられたそれに、小首をかしげているが、コレで一応チョコを渡したことにはなるはずだ!
「コレをやろう。先払いだ。コレでバレンタインは終了だ。俺は当日忙しいから邪魔するな。」
…ダメ押しもした。
これ以上ガタガタ言うようならチョコをやらんとでも言えば、黙って引き下がるだろう。
そう思っていたんだが、変態はやはり変態だった。
「イ、イルカ先生からの愛…!確かに受け取りました!!!当日は…俺からの愛を受け取ってくださいね…!!!」
嬉しそうに俺の渡したチョコをしまい込み、輝かんばかりの笑顔全開で、身もだえしている。
「は!?いや、待てこら!ソレはそういう意味じゃ…!!!」
しまった!?義理チョコって言ってやればよかった!
このままじゃ…ヤられる!?
とっさに身構えたが、変態は、にっこり笑って姿を消した。
「準備があるので失礼しまーす!!!楽しみにしててくださいねー!!!」
…という引き綱捨て台詞を残して。
「マズイ…!」
このままでは…俺は、当日変態の餌食に!?
「当日…逃げるか…!?いや、生徒がいるし…!…どうしよう…?」
幸い受付のシフトは入っていないが、変態のことだ、きっとアカデミーだろうがなんだろうが、お構いなしに 乗り込んでくることだろう。
節分の時なんか深夜に襲ってきたし…!
焦る俺の頭には、変態の口にしたチョコプレイという単語が、呪いの呪文のようにこだましていた。
*****
どんなに嘆いても恐れても、時間は止まってくれない。
もちろん仕事も。
つまり…今も、放課後のアカデミーを見回り中だ。
本当なら変態の対策に時間を使いたいが、どうやったって変態は変態行為に持ち込む気だろう。不愉快なことに ソレを察知するのは俺の実力では非常に困難だ。
焦りと不安と、変態によってこうむるであろう周囲の被害を思うと、今から胃が痛い。
それでも、仕事は仕事。一個一個教室を見て周り、居残っている生徒がいないかどうかを確認していく。 夕方まで残っている生徒は、自習だったり、補習だったりする生徒たちもそれなりにいるんだが、 大抵はイタズラが目的だったりするから、注意が必要だ。
今日も、とっくに生徒たちが帰ったはずの教室で、コソコソ何か話し合う声が聞こえてくる。
「ね!私はハート型のでクランチにしようと思ってるんだ!」
「えー?でもそれってありきたりじゃない?」
「だって、この間好きだっていってたし。やっぱり好み重視じゃないと!」
…どうやら高学年の生徒たちのようだ。話してる内容からいっても、既にいっぱしの女性らしい会話内容だ。
まあ、好みは重要だよな。サスケもよくチョコ貰ってたけど、甘いもの嫌いだって言って女の子泣かしてたもんなぁ…。 最終的には逃げ回ってナルトがまぜっかえして…。
バレンタインっていったら、自分の頃はもらえるかもらえないかで戦々恐々としたもんだったけどなぁ…。
微笑ましさに、思わず注意するのも忘れて自分の思考に浸っていると、なぜか会話はとんでもない方向にすすんでいった。
「えっと、これとこれと…それに、自分の髪の毛入れるんだっけ?」
「えっと、それにこっちの薬草入れるといいって…。」
「両方入れてみようかなぁ?」
…チョコに髪の毛!?しかも薬草って…!?
流石にコレはマズイ。思わず教室に飛び込んで止めようとしたが、ぐいっと肩をつかまれた。
もしかして…変態!?
焦りながら後ろを振り返った先にいたのは、にっこりと微笑むくのいちの同僚だった。
「コレは女だけの秘密。そろそろかなって思ってたのよねー?私があの子達に正しい投与…いえ、 チョコの作り方を指導しておきますから。」
ぽかんとする俺にそういい残すと、同僚は教室に入っていった。
しかも、結界張られちゃったんだが、とりあえず大丈夫そうだ。
モテル子は大変だなぁ…。にしても、おまじないだか何だか知らないが変なモノを混ぜるのは…っていっても、 混ぜるものが変わるだけで危険なのは変わらなさそうだが。
「…アイツも…!?」
…何だかより一層、バレンタインが恐ろしくなった。
*****
「バレンタイン…ついに今日だな。」
深夜の来襲も予想されたので、トラップなんかも設置しておいたが、朝になった今確認してみても、作動した形跡はない。
…この分なら何とかなるかもしれない。
なにせ、ヤツは今、任務中のはずだ。
受付の権限というか…ちょっと裏から手を回そうとしていたんだが、例年ヤツが自分でこの日に任務を入れるから、 最初っから入っていたのだ。
チョコを渡したがるくのいちたちが起こす混乱を避けるためという触れ込みだったが、ヤツのことだ。恐らく甘いものを 勧められるのがイヤだったんだろう。
…悔しくなんか無いぞ!
まあ、ソレを知ったヤツが大分愚痴ったらしいが、自業自得だ。
それに、だからといってまだ安心は出来ない。あの駄犬がイベントに託けた変態行為を諦める訳が無いからだ。
変態がイベントに託けて変態行為に及ぶとき、大体において変態は俺の家に仕掛けを施すことが多いが、今回、 ソレは難しかったはずだ。常に俺が警戒していたし、任務が昨日からだったから、衣装系や薬物混入系は危険かもしれないが、 とりあえず大掛かりな変態の仕込みは防げた。…ハズだ。
といっても、変態のすばやさから考えると依然として不安は残る。
チョコプレイ…ヤツはどう出る気なんだろう…?
とにかく、悩んでも無駄だ。一応対策はした。
「装備は、コレでいいな。」
…これから任務にでるのだ。それも、確実に今日中に終らないものを。ちょっと遠くに荷物を運ぶだけの、 しかも、変態が任務に発ってから入れたものだから、恐らくヤツも俺の予定を把握していない。
これで、しばらくは時間が稼げるはずだ。
本当ならアカデミーを手伝いたかったが、俺がいると、返ってそのせいで被害が拡大するのは目に見えている。
同僚たちも涙ぐみながら協力してくれた…。
「さて、行くか…。」
俺が玄関に足を向けたときのことだった。
「ただいまー!!!チョコプレイ!!!」
飛び込むようにして変態が現れた。笑顔全開で。
…チッ!間に合わなかったか!?
とりあえず服装は普通だが、挨拶からして異常な興奮具合が伺える。
だが、ヤツも忍。任務に行く俺を止めたりは…!
「駄犬。俺はこれから…」
朝らしく爽やかに変態を振り切ろうした俺に、同じく爽やかな宣言が返された。
「ああもちろん!ちゃぁあんと!イルカ先生の任務も終ってますよー!!!」
「何勝手なことしてやがる!?」
…俺の想像の斜め上を行く展開だ…!!!
どうやってか、俺の任務内容を把握してるのは知ってたが、ここまでとは!?
「ささ。準備万端ですから!早速イきましょう!ああ…イルカ先生の匂いと味…!!!」
「離せ!どこにもいかん!一体どうやって…!?」
俺にしがみ付いて、くんくん俺のにおいかぎながら舐めてくる変態の顎をぐいぐい押しのけてやったが、 人の話を聞かない変態はすっかり出来上がっていて…。
「いざゆかん!チョコプレイ!」
「うわぁぁぁぁああぁ!?」
俺は、抱き上げられたまま、寒空の下連れ出されてしまったのだった。
仕掛け…俺んちじゃなかったのか!?
*****
「さあ!到着です!」
「なんだ…コレは!?」
変態が嬉々として俺を連れ込んだのは、見覚えの無い場所だった。
というか、普通、チョコレートで出来たベッドに見覚えがある人間はいないと思う。
「ステキでしょー!俺のお手製!このベッドの中身のガナッシュもフレームもおいしいですよー!!!あ、 もちろん生クリームもありますから!!!どれから塗りますか!?」
舞い上がりきった変態は滔々とチョコベッドの解説をし始めた。
確かに部屋中に美味そうな香りが立ち込めているが、そういう問題じゃないだろう!?
…チョコプレイといえばチョコソースだかなんだかを使うものじゃないだろうか…。
そっちも欠片もやりたくないんだが、なぜこうまでして…!?
「おい、駄犬。これ全部食うなのか…?」
あまりのことに思わず妙に冷静な声が出た。
コレだけの量のチョコ食ったら、明らかに腹を壊すだろう。それに、健康にもよくない。いくらハードワークの 上忍だとしても。だ。俺もチョコは好きだが、こんなに大量にあると食う気がしない。
「イ、イルカ先生にトッピングできるなら…勿論!イルカ先生の肌に茶色いものと白いもの…勿論俺のも…!!!」
「今すぐこれ切り分けてご近所の方に配って来い!!!」
興奮する変態をさておき、変態の健康と俺の安全のために、最も妥当な提案をしてやった。
そうすれば誰も困らないはずだ。
「はい!!!愛のおすそ分けですね…!!!」
…思ったより素直だな。これなら何とか…。
「ちゃんとイルカ先生に俺の愛を受け取ってもらってから!!!」
「なんでだー!?」
俺が叫び終わらない内に、変態はいつものようにものすごい速さで全裸になっていた。
「さー!脱いで脱いで!」
ついでのように俺の服も剥ぎ取られ…。
「お!おい!止めろ!」
「俺の愛に…溺れてください!!!」
「うわぁあぁあぁ!?」
結局…こうなるのか!?
チョコベッドに変態ごとダイブしながら、俺は変態にはどうやっても勝てないんじゃないかという嫌な予感を感じていた。
*****
隙を見せたつもりは無かったが、気が付けば変態ごとチョコ製ベッドに押し倒されていた。
しかも、板チョコではなかったらしく、妙に柔らかい感触のソレは、俺の体温で溶け、逃げようと思ってもぬるぬると滑る。
…この状態は最悪だ。変態を刺激するに決まっている。
そしてやはり、その姿を見て変態は更にヒートアップした。
「ああ…似合いますねぇやっぱり…!!!あ、あとは生クリーム…!いや、その前に俺の…!!!」
変態もチョコまみれのくせに、どうでもいいことで悩んで、納得している。
このままでは…また良くわからん目にあってしまう!!!
焦りながら俺は必死で頭を働かせた。
…コレはバレンタインチョコだ。なら、突っ返すことだって出来るはず!
「おい駄犬…こんなもん食えるか!!!俺は…」
「因みにガナッシュだから体温で溶けるし柔らかいんですよー!!!」
駄目だ!聞いちゃいない!
「だから俺はチョコは普通のが…!」
「塗って舐めてもらう前に、塗って舐めますね!」
変態は俺の言葉を遮り、コッテリと手にまとわせたチョコレートを見せつけながら、はあはあと荒い息を吐いている。
「ナニを宣言してるんだー!!!」
「イルカ先生との愛です!!!いざ!!!」
「うわっ!?」
股間にべっとりと塗りたくられるチョコ。
そしてうっとりとソレを眺める変態。
事態は最悪の展開を迎えようとしている。
「おいしそう…!じゃ、いっただっきまーす!!!」
「おい待てっ!…っ!」
はむはむと口いっぱいに俺のモノをほおばった変態は、チョコを舐め取りながら、残った手で俺にチョコを塗りつけてくる。 体温で温まったチョコと、変態の舌が、俺を追い上げる。
「はな…せっ!」
俺が頭を鷲づかみにしても、変態は止めるそぶりを見せない。
むしろ更に奥深くまでのみ込んで、締め付けるように舐る。…それはもう、嬉しそうに。
「あ、…くっ!」
引き剥がすはずの手がかき混ぜた頭は、チョコに染まってすっかり茶色くなってしまった。
それでも滑る身体を僅かでも引き離そうと身じろぎする俺の腰に、変態の手が絡みついてきた。
「らめれふよー?ふ、我慢できませんか?」
喋りにくかったからか、変態は一旦しゃぶるのをやめた。
口の回りにチョコと、他の何かをまといつかせたその姿はそれだけでも卑猥なのに、さらに変態はにやっとたちの 悪い笑みを浮かべてみせた。
「あ…っ!」
急に刺激を止められて、俺の口から吐息のような声がこぼれる。
これ以上されたら…!
そう思ったところで、変態が俺の事情を考慮するはずなど欠片も無かったが。
「じゃ、こっちも!」
当然のように、変態はチョコにまみれた指を俺の中に突っ込んできた。
つぷつぷと出し入れされても、チョコのせいで抵抗なく入り込まれてしまう。
「んぁっ!や、ナニしやがる…!っ!」
頭を掴んでも、滑る足をばたつかせても、腰をがっしりとつかまれていてはどうしようもない。 俺に出来るのは変態をこれ以上刺激しないよう、声を殺すことぐらいだった。
「ぬるぬる…!!!」
そして、変態はいつも通り俺の制止を振り切り、グリグリと指を動かしては、どんどん興奮していって…。
「んっー!…っ!」
しかも、絶対に声を上げまいと堪えていたことが、逆に変態を煽ってしまったようだ。
「ああもう!そんな顔しちゃって…!おねだりには勿論お答えしますよー!!!」
興奮しきったモノとギラ付いた瞳で一方的に盛り上がった変態は、すぐさまその股間の凶器を俺に向け… それはもう好き放題にされた。
*****
「…俺の愛、たっぷり受け取ってもらっちゃった…!!!うふふふふ…!!!」
「…うぅっ…!」
チョコまみれの体を洗い流したい。
…チョコ以外にも色々かけられてしまったが、そこはもう考えないことにする。
とりあえず、しばらく生クリームもチョコも見たくない。
ある意味…チョコまみれというより、変態まみれだ。
「イルカ先生のも一杯舐めちゃったし!!!ああ…愛してます!!!」
隣で…というか、俺に絡みつきながら叫び、更にチョコで俺を汚していく変態は、やはり想像を絶している。
とにかく二次被害だけは避けないと…。
「とりあえず。風呂に入る。チョコは…」
「勿論ぜーんぶ食べます!!!イルカ先生が混じったチョコ…誰にも渡しません!!!」
「…まあ、いい。好きにしろ。」
コレで妙なモノが混入したチョコを口にする人間が減らせた。もうそれ以上のことは望まない。 こいつならあれだけのチョコ食っても大丈夫だろう。なにせ運動量が…いや、これ以上は考えるな…!
「はぁい!お風呂場で全身!余すことなく!隅々まで舐めてきれいにしますから!」
「な、なにい!?そんなことは頼んでない!!!離せー!?」
風呂場に連行されながら、俺は、来年は絶対に義理チョコを押し付けてやろうと決めたのだった。


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バレンタインのチョコプレイが少ない…。
一応そっと増やしておきます…。チョコプレイってご希望あるのかなぁ…?
あー…ご意見ご感想などがございましたらお気軽に拍手などからどうぞ!と爽やかぶっておきます。

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