夢みるチョコレート
その日の受付所で、カカシさんは真剣な顔をして俺に小さな箱を差し出した。
「受け取って下さい。」
「は?」
ピンク色のに薄いピンク色のリボン。…カカシさんの普段の姿からは想像できない物体だ。元暗部で、上忍で、しかも凄腕。… まあ、時々のみに言ったりはするけど。
そのカカシ先生が、可愛らしい箱を両手で差し出しながら、じーっと俺を見つめている。
その取り合わせの意外さに思わず躊躇っていると、カカシさんは小首をかしげて俺に問いかけてきた。
「今日は、バレンタインデーであってますよね?
「はい。…ああそれで!あの、でも俺は何にも…。」
そうかそうか!バレンタインの…所謂友チョコとか感謝チョコとかいうやつだな!
いくら自分の部下たちの元担任といえど、たかが中忍相手に義理堅い人だなぁ…!
こんなことなら、せめて俺も1両チョコでも用意しとけばよかったか…?
俺が感心しながらも、自分の用意の悪さを後悔していると、カカシさんは何故かちょっと思いつめたような表情で、更に 箱を突き出してきた。
「それは、いいんです。…受け取ってくれますか?」
「はあ。」
その時のカカシさんがあんまり必死な瞳をしてたから、…俺はつい、その箱を受け取ってしまった。
差し出した俺の手に、そっとカカシさんの手が添えられた。まるで箱ごと俺の手を包み込むように。ちょっと面食らってる間に、 すぐにその手はすっと離れていった。
「お返事お待ちしてます。」
「え?」
ぺこりと俺に一礼し、カカシさんは一瞬にして姿をくらました。
「何だったんだ…!?」
バレンタインといっても義理チョコだ。それなのに、やたらと真剣な様子だったのが気に掛かる。
それに、最後に見せた強い視線も。
…手の中に残されたピンク色の箱が、やけに重く感じられた。
*****
うちに帰ってから早速ピンク色の箱をあけてみると、中身はやっぱりチョコレートだった。
小さな箱の中に詰まっていたのは、丸い三つのチョコレート。確かトリュフとかいうものだろう。 上忍が手ずからこんなものを作るとはとても思えない。きっとどこかの店で買ったに違いない。だが…。
「…高そう…。」
こんなに小さな箱にわざわざ三つだけ。しかもラッピングも丁寧で可愛らしい。もしかしなくても、カカシさんはチョコを 今日渡す意味を勘違いしてるんじゃないだろうか?
チョコはものすごくウマそうだが、何だか気が引ける。今度お返しに何か…ちょっとしたものを買って渡そう。 たしかカカシさんは甘いものが苦手なはずだから、酒なんかどうだろう。
そんな事を考えながら俺はその小さな丸いチョコを一個だけ口に入れた。
「わぁ!美味いなこれ!」
蕩けるような口どけに、思わず顔までとろけそうになった。さすが上忍!
酒もきいてて甘すぎないし、コレなら何個でもいけそうだ。
「でも…なんか…」
チョコを口にしたとたん、急に目蓋が重くなってきた。
眠い。何でだ…?疲れてるのかな…?
「まあ、いいや…。」 最近ちょっとだけ忙しかったし、今日はカカシさんの謎の言動で限界が来たのかもしれない。
俺はこの抗い難い眠気に逆らえず、そのまま布団に倒れこむようにして眠りに落ちていった。
*****
ああ、コレは夢だ。だって俺の視界の中なのに、俺がいる。
俺の…っていっても夢の中の俺が見つめているのは、俺だ。
それはいくらなんでも間違いようがない。
自分が俺だって言う意識があるのに、目の前で動いてる俺をみるのは何だか凄く不思議な感じだ。
しかも見ているのも俺のはずなのに、何でか全然自由にならない。それこそちょっと鼻傷をかくことさえ。
最初は…それはもうものすごく慌てた。何しろ勝手に手が動いたり足が動いたり…視界も勝手に動いていくのだ。
だが、俺も忍だ。観察していく内にだんだん冷静になってきた。
しょうがないから俺のはずなのに俺じゃない人の視線を、ずーっと見ているしか出来ない。
、 …それもずっと俺の顔を。
…なんでだろう?この人。どうしてこんなに俺のことばっかり見てるんだ?
それも、任務を一緒にやってるって言うなら別だけど、そんなコトもなかった。だって、この人が見てるのは重要って 訳じゃない受付で笑う自分とか、アカデミーでいたずらした生徒を叱ってる時とか…そんな所ばっかりだ。
他愛の無い日常。それも…こうしてみると何だか空回りしてるみたいな気がする…。
それに、こんなに見られてると思うと、ちょっと…恥ずかしくなってきた。
ああ…あんなに大きな口あけてあくびしてるよ俺…!なにやってるんだ!こんなトコ見られて!
…それにしてもなんでこんなにずっと…これじゃまるで…。いや、気にしすぎか?
コレは、夢だ!だから…そんなことは…!
俺がひとりで焦ってる間にも、身体は勝手に動いて行く。
そして、夢の中の自分が、窓ガラスを閉めて、ソレを見つめている俺の姿が、そこに映りこんだ。
ソコに映っていたのは…。
カカシさん…!?
窓ガラスに映り込んだカカシさんの瞳は…何だか真剣で、どこか苦しそうで…。
ドクンッと心臓が跳ねた。
「うわぁ!?」
俺の手、俺の意志で動く…!
…目が、覚めたのか…。
「なんだったんだ…今の…?」
目覚めても俺の心臓は、まだバクバクと脈打っていた。
まるでさっきの…夢の中みたいに。
*****
「チョコレートは、もう食べましたか?」
いつも通り受付に座って、でも昨日の夢のせいでついつい考え込んでいたらカカシさんが声を掛けてきた。
報告書の提出にきただけなんだろう。
…何だか焦る。昨日のはただの夢なのに。
「え、ああ、はい。でも、あんまりウマいんでもったいなくてまだ一個しか…」
お礼を言おうとした俺の言葉は最後までつむげなかった。
「食べてもらえたならいいんです。…また、来ます。」
静かな声だ。でもカカシさんがこんなことをするのは珍しい。何せ俺にはいつだって気を使ってくれて、 話をするときにも相槌が上手くてついつい話し込んでしまうくらいなのに。
「え?あの!」
来たばっかりなのに。しかも、報告書も出さずに出て行こうとするから、思わず引きとめようとした。
でも、カカシさんは…。
「チョコレート全部食べ終わったら、返事を下さい。」
振り返りもしないでそれだけ言った。
…明らかに様子が変だ。
「え?え?」
普段とあんまりにも様子が違う。いつものカカシさんなら報告書を出しながら、ちょっと世間話でもして、 それから帰って行くのに…。それにこんなに無表情なカカシさんを始めてみた。
事態が飲み込めなくて、馬鹿みたいにおたおたしてたら、カカシさんはそのまま受付所を出て行ってしまった。
「じゃ。」
っていう短い挨拶だけ残して。
*****
箱の中にはまだ2つチョコが残っている。
あの意味深な態度からして、もしかしてあの夢はカカシさんが仕組んだことなんだろうか?
「でも、美味いしなぁ…。」
こんなに美味しいもの捨てるなんてもったいないし、もし単にチョコレートを渡す意味をカカシさんが勘違いしてて、 ソレを知って照れてるとかで、様子が変だっただけだったら、ものすごく失礼なことをすることになってしまう。
「それに、食ったらもっと何か分かるかもしれないし…。」
もし、コレが昨日の不思議な夢の原因なんだとしたら、昨日急に眠くなったのも、もしかするとこのチョコのせい なのかも知れない。
だが、どっちにしろ、今の段階では確認する手段は限られている。
「食ってみれば…」
俺は、ドキドキしながらチョコを口に運んだ。
味は昨日と同じでとても美味い。ほにゃっと頬が緩むのが自分でも分かる。
そして…ほど無くして眠気が襲い掛かってきた。まるで昨日と同じ状態だ。
「これ、やっぱり、このチョコ…」
…俺は、間違ったんだろうか?
激しい眠気に屈服するまでに、そんな思考が泡のように浮かんで、消えた。
*****
昨日と同じに、俺は俺を見ている。
そしてやっぱり自分を見ている自分の身体は、俺の意思で動かせない。
しかも、今日の俺は俺の記憶にある場面にいる。
ちょっと生徒のことでもめて苛立っていた自分が正体無くすまで飲んで…。ああ、これあの時の記憶だ。 しかも、また俺が見えるってコトは、またカカシさんの視点になってるのか。…どうして…?
この場面は、ついこの間、カカシさんと酒飲みに行って、愚痴を聞いて貰ったときのものだ。 ちょっと絡み酒っぽくなっちゃったのに、それでもやっぱりカカシさんは親身になって俺の話を聞いてくれた。
客観的に俺を見てみると、大分情けないマネをしてたんだということが良く分かる。
酔ってるからって何度も同じ愚痴繰り返して、しかも自分の力不足を力いっぱい訴えすぎだし、 萎れた顔は今にも泣き出しそうで…こんな情けない顔をカカシさんに見せてたんだと思うと、自分でものすごく落ち込んだ。
でも、俺の瞳に映っているカカシさんの笑顔は、俺の記憶にあるのと同じで…。
温かくて優しい目をしている。
あー…なんか、思い出しても幸せな気分になるなぁ…。それにしても、カカシさんは酒が強い。
俺も結構いける方だけど、すっかり出来上がってつぶれそうな俺と同じくらい飲んでるって言うのに、 カカシさんは全然手も足もぶれない。たった今奇襲されてもすぐ動けるくらい。カカシさんの体の動きをここまで しっかり見たことが無かったけど、今更ながら実力差を実感した。
やっぱり上忍なんだなぁ。この人は。
それなのに…夢の中の俺の方は机につっぷしたまま、既に意識を失ったようだ。
この差がやっぱり中忍なのか…。
突きつけられた実力差だけでも相当なのに、自分があまりにも幸せそうにぐーぐー寝くたれてるのが、またより一層 俺を落ち込ませた。
ああ…こんなに近くで見たらよだれとかまで見えちゃうじゃないか!って…何でこんなに近くに俺の顔が…!?
アップになった俺の顔からは酒の匂いがぷんぷんしてて、しかものんきなことにすーすーと寝息まで聞こえる。 ついでに顔も真っ赤にしてて、唇なんか半開きで…。
とても正視できない。でもこの身体は自分の自由にならないから、自分の顔の検分をする羽目になってしまって …当然の様に落ち込んでたら、唇に何かふにゅっとするものが触れた。
舌に触れるぬるっとするものは酒臭くて、温かくて…でもこの感触って…!!!
「うわっ!?」
俺は、自分の驚いた声で目を覚ました。
今の自分が夢じゃない証拠に自分の手で自分の唇を押さえられた。…まだ、夢の中の感触が残っている。
さっきのアレは、もしかしなくても…キス、だったんじゃないだろうか?
生々しい感触が今でも感じられて、まるで現実に自分にキスしちゃったみたいで…、なんだかイヤだ。
「…でも、アレ、夢だよな!?」
俺は、俺に襲われたいという変な願望でもあったんだろうか?でも夢の中でキスをしたのはカカシさんと俺で…。 俺はあの日寝ちゃったのは確かだけど、そのままカカシさんに連れられて自宅まで送ってもらったはずだ。
眠気といい、こんな夢を見ることといい…やっぱり貰ったチョコ食べてるからなんだろうか?
「全部食べたらって…あと、1個だけ…。」
返事。そういえばそう言ってた。
でも、この間した飲みに行きましょうって言う約束はもうすんじゃったし、一体何のことだろう?
他には、迷惑かけたお詫びに一楽のラーメン奢るって言ったのも、返事がいるようなものじゃない。
うんうんいいながら、頭を悩ませていると…1個だけ、思い当たるものがあった。
あの聖なる日だかなんだかに、チョコを渡す理由。
「もしかして…!?いや、でもなぁ?ありえないか。」
バレンタインだからってそんな馬鹿な。カカシさんは俺といる時はそんなそぶりを見せないけど、もてもてだって聞いてるし、 何より俺は男だ。
それに、あれは…愛の告白って雰囲気じゃなかった。
…そう思って納得したはずなのに、何故かドキドキが止まらなかった。
*****
あれから、最後の一個がまだ食べられないでいる。
それに、カカシさんとも話せていない。
窓から見下ろす先には、カカシさんがいて、やろうとおもえばすぐに話しかけられるっていうのに…。
あれ以来、カカシさんを見ると、心臓がドキドキして、視線が合わせられないのだ。
今だって…歩いているカカシさんを、真っ直ぐに見ることも出来ないでいる。
「馬鹿か俺は…!」
まるでどこぞの乙女のように、情けない自分。
どうしてこんなことになってるのかは謎だ。すごく。あのリアルな夢を思い出すたびに、落ち着かない気分になる。
本当は、分かってる。あれを全部食べてしまえば、それで終るんだろうって。
でも、俺は…。
「はたけ上忍!」
「今日もステキですね!」
…俺が思い悩んでるちょっと意識を離した隙に、いつの間にかカカシさんが女たちに絡まれていた。
バレンタインはもう終ったのに、そんなことは里の目ざとい女たちには関係ないようだ。きゃあきゃあ言いながら、 カカシさんにまとわり付いて、本人は本に夢中で殆ど相手にしていないっていうのに、しつこく話しかけている。
…なんだろう。凄く苛立つ。
「けっ!あんなにモテるんだから、チョコのことだって知ってろよ!義理なら義理って言えっての!」
子どもみたいに毒付いてみても、心は晴れない。
くさくさしながら、それでもカカシさんから完全に視線を外すこともできなくて、ちらちら見てたら、 どうやら気付かれてしまったらしい。
上忍なんだから当たり前なのかもしれないけど、その鋭さに驚いてちょっとのけぞった俺に、視線を上げたカカシが ニコッと微笑んで。…俺だけに向けられたそれに、心臓がまた暴れだした。
…夢なら覚めてたんじゃないかって位。
「…うそだろー…なんだよこれ…!」
俺は、胸を押さえてずるずると座り込んで、しばらく呆然としていた。
*****
最後の1個。箱の中に上げ底が無いのは確認済みだし、泣いても笑ってもコレでおしまいだ。
チョコも、夢も。
「これで、最後…。」
チョコが原因っていうのは、間違いない。何度もあんなにリアルな…しかも繰り返し誰かの視点で自分を見るってコトは 何かの術なのかもしれない。
でも、俺は確かめたいんだ。チョコの効果じゃなくて、コレを渡した意味を。
だから、今日も俺はしっかり寝る仕度をしてから、チョコを口に放り込んだ。
「美味いなー…カカシさん今度どうやったら買えるのかとかきいてみよう…」
沈んでいく意識のなかでも食い気って捨てられないものなんだなぁとか、考えていた。
…本当に知りたいことから、逃げるように。
*****
今度の夢は、いつもと違っていた。 なにしろ俺が出てこない。今までのは、絶対に俺が出てきていたのに…。それこそ映画の主役みたいに。…っていっても、 三枚目の役だったけどな。
でも、今日俺は夢の中で、一生懸命茶色い何かを溶かしている。
甘い嗅ぎ覚えのある香り…これ…もしかしてチョコか?
菓子作りはそれほど詳しくないが、湯煎で溶かすんだって生徒たちが言っていたから、ほぼ間違いない。
俺の手は、迷いなく動き、丁寧に丁寧にチョコを作っている。
何のためなんだか分からないけど温度計をチョコに突っ込んだり、酒を入れたり、生クリーム入れたり、何だか卵も 入れるみたいだ。流れるような動き手が、卵の殻をわって、卵黄だけ取り出している。
そうやって、ひとしきり何やかやと混ぜ込んでいるのを見ていると、その手際のよさが恐ろしいくらいイイことが分かった。
思わず見ほれていると、そのとろっとしたものをかき混ぜる手が一旦止まった。そして、どこからか小瓶を取り出し、 ふたを開ける。
「仕上げ。」
そういって、俺の手は瓶を傾け、キラキラした何かをチョコレートに入れた。
ゆっくりと溶け込んでいくそれは、やがてすっかりチョコの色と同化してしまった。
それから、夢の中の俺の手はソレを冷やして、丸めて、最後にチョコレートをかけて…俺がさっき食ったのと全く 同じものが出来上がった。
「これで、いいかな?」
声!カカシさんの声だ!
出来上がったチョコをこれまた手際よく、この間俺が貰ったのとそっくりな箱につめている。ラッピングまですばやくて、 上忍っていうのは、何でも出来るんじゃないかと思うくらいだ。
キレイなピンク色の箱にリボンが巻かれて、…やっぱりバレンタインに俺が貰った箱になった。ってことは…俺が食った チョコって、カカシさんの手作りだったのか!
そうやって、驚いて、どきどきして、色々パニックになってた所に…更に止めが刺された。
俺が、っていうか、カカシさんが、チョコの詰まった箱にキスしながら、甘い声で囁いたんだ。
「好きです。イルカ先生。」
*****
「うわああぁぁぁぁ!?」
叫びながら目を覚ますのは三度目だけど、コレまでで一番驚いた。
「なんだよ…!アレ!」
胸がばくばくする。甘くて切ない声で、自分が喋ってるはずなのに、まるで告白されてるみたいな…! …コレが、狙いだったのか…!?
「何だよもう…!」
こんなにドキドキさせといて、これじゃもう…。
「返事。しなくちゃな…。」
業腹だが、ちゃんと返事をするって、自分も約束した。まあ、かなり一方的だったけど。
でも、どこでカカシさんを捕まえたらいいんだろう。任務だったら、どこに行ってるかわからないし。 悩みながら、とにかくさっさと着替えて受付にでも行ってこようかと思っていた。
でも、玄関をコツコツ叩く音が聞こえて慌てて出てみたら、そこには…カカシさんが立っていた。
「返事を、聞きにきました。」
「わあ!?」
何でここにいるんだとか、やっぱり術だから分かったのかとか、そういうことも頭をよぎったけど、何よりこの人の目を 今は真っ直ぐに見られない。顔が真っ赤になってるのが自分でもわかる。
…だって、俺にしてみればさっき突然告白されたも同然の状況なんだ!
しかも、あんなに切ない声で…!
ソレなのに、俺が返事をしないからか、聞こえないとでも思ったんだろうか?
カカシさんはもう一度、その言葉を繰り返した。
「返事を、聞きに来ました。」
「…あ、う…」
恐る恐る顔を上げた先には、カカシさんの笑顔が待っていた。
この間までの無表情とは打って変わって、どこか余裕すら感じられる。
…この顔、絶対俺のこと分かっててやってる!
「なんだよもう!聞かなくても分かってるくせに!」
結局また顔が上げられなくて、カカシさんの足元見ながらそういうのが精一杯だった。
しかも、情けなくかすれた声で。
…それでも、カカシさんは諦めなかった。
「それでも、あなたの口から聞きたい。」
その言葉にはじかれたように顔を上げた。
あの時窓ガラスに映ったのも、こんな瞳だった。
あの時俺のこと好きだって言ったのも、こんな声だった。
でも、やっぱり違う。だってこんなに、こんなにドキドキしなかった!
…ああもう!
「…おれも、好きです。」
嵌められた、俺の負けだ。
だって、あんなに真っ直ぐな感情を見せられて、惚れない方がおかしいだろ?
開き直ってみたものの、どうにも納得はいかない。
「良かった…!」
嬉しそうに抱きついてきて、塩らしいコトいってるけど、この人は…!
「あんなモノ仕込むなんて…卑怯だ…!」
だって、チョコ食ってこんな目に合うなんて思わないし!
そもそもずっと友達だと思ってたのに!
…ああでも、もう戻れない。だってもう知ってしまった。
「それでも、あなたを逃がしたくなかったから。それに、全部食べてくれたでしょ?」
「ああもう!黙れ!…この責任は取ってもらうからな!」
満足そうに微笑むカカシさんを睨みつけてやったけど、やっぱり楽しそうな顔は変わらなかった。
「勿論。ずーっと。一生取り続けますよ?」
そういって余裕たっぷりに笑う男の顔があんまりにもうれしそうで…。
「絶対ですよ!」
そういって、とりあえずそのうるさい口をふさいでやったのだった。…俺の口で。


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ラッピングにこだわるカカチを書いてみたくなったので!…なんでだろうなぁ…?
ああそれと。ヲトメ中忍さんでございます。…ばれんたいんだから!
…ご意見ご感想などがございましたらお気軽に拍手などからどうぞ…。と逃げてみることにします。

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