再開

引き離されてからは、八つ当たりのような任務ばかりまわされた。
俺なら何てことないモノばかりだったけど、イルカには絶対に会えない様に長くてくだらないものばかりなのにはうんざりだ。

たまに里に帰還できても、ご丁寧に監視までつけきて…。
あの老人が、俺を相当恐れているってコトが分かった。

だが、直接会わなくてもイルカが何を思い、どんなことをしているかは筒抜けだ。

元々イルカに何かあればすぐに分かるようにしてあるし、夜毎の曖昧な夢にまぎれてイルカの心に触れれば、素直にすべて教えてくれる。

…意識の表面では俺を忘れていても、無垢な心と身体に刻み込んだものは深く静かに俺を求めるから。

俺を拒絶することが出来るなんて、想像もしていないんだろう。

意識に忍びこんだ異物である俺を、いつだってイルカは受け入れてくれる。
待ち望んだように俺を求め、触れれば安心したように笑って…そうしてまるで番の鳥のように寄り添って過ごして…。

だから俺を忘れている時でも、イルカも俺も他の相手に心が揺れ動くことなんか無かった。

無意識の支配。…あの老人は気付いてもいないだろう。

…引き離したはずなのに、一人では立てないくらいに依存させてしまったことなんて。

意味の無い行為に専心するあの老人を思うとおかしくてたまらない。
だが、直接触れられないのが苦しいのは確かだから、そろそろ飽きてくれないだろうかと思っていた。

だから、一際長い任務を終えて里に戻った俺を、苦虫を噛み潰したような顔で里長が迎えた時は、思わず笑みが漏れた。

この老人がこんな顔をするってことは、多分イルカに会える可能性が高いから。

いつもは適当に聞き流すしわがれ声に耳を貸してやると、これまでも形ばかり素質の無いのばかりを試験させてきた老人は、九尾の器とうちはの遺産を俺に押し付けたいらしい。

正直、面倒だと思った。
老人の様子からして里に戻されてもイルカに会うことが出来ないようにしているコトは予想できたし、そもそも今までのが酷すぎた。
今更、期待などできない。

あの老人が望んでいるように、何も考えずに下忍にしてやる気にすらなれなかった。

…イルカに会える。引き受けたのはただそれだけの理由だ。

押し付けられるはずの子どもたちを教え、導いたのはイルカだ。
…そのお陰で怪我までしたのも知っている。
俺以外のために傷つくなんて腹立たしいが、イルカには見棄てるなんてことはできないだろう。

真っ直ぐで揺らがないあの瞳を、きっと忌み子にも向けたに違いない。

それなら…きっと俺が何もしなくても、イルカの方から俺に関わってくるだろう。
…老人がソレを望まなくても。

そうして、俺は老人の望みに応えてやった。

…予想に反して、預けられた子どもたちはそれなりの素材だったのには驚いたが。
血統もあるだろうが、これはきっとイルカが教えたからだろう。

可愛いイルカ。…離れていた間にも、その輝くような笑顔に引き寄せられる害虫がいることは簡単に予想できた。

その髪の一筋さえ俺のモノだ。
…触れていいのは俺だけなのに、イルカは一人でいるのが何よりも嫌いだから…きっと近づいてくるものたちにもその笑顔を分け与えているに違いない。

俺以外にも微笑んでいるイルカを想像すると寒気がした。

…だが、それももう終わる。

「ねぇイルカ…きっともう、離して上げられない。」

舌の上で甘く溶けるその名を呼んだ。

「ごめんね。」

この狂気に抗うすべを、俺は持たないから…。
この扉の先にいるのは、待ち望み続けた俺の…大切な宝物。
俺の傍らの子どもたちに向ける笑顔に胸を焼かれながら、それでも、俺は笑顔を向けた。

「初めまして。コイツらを担当することになりました上忍師の、はたけカカシです。」

…身のうちで暴れる歓喜と狂気を心地よく思いながら。

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ついついまたヤンカカモノ。
赤い糸の続き?…お子様でラブイチャ編がー!?また抜けた…!
もう順番無視してこそっとどっかで入れようか!? ご、ご意見ー求むー…!!!


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