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これの続き。 からかわれているんだろうか。 出鼻をくじかれたというか、風呂掃除で発散しようとしていた苛立ちを恐怖に塗り替えられたおかげで、どうにも冷静になれない。 あんなモノが側にいて落ち着けって言う方が無理だ。 洗剤を取るだけだったのに自意識過剰だろうか。…単に偶然、そこにあったものをとろうとしただけなんだろうか。 それともこっちが怯えたから引いたのか、むしろ、はじかれる条件を満たしていたからこそ途中でごまかしたんじゃないかという疑念が払えない。 風呂場で、惚れた相手と一対一。自分でも行動にでないにしろそれなりの欲求は湧くかもしれない。むしろ男ならそっちの方が自然だ。 上忍だからコントロールはできると言っていた割りに、あっさり結界に引っかかる辺り、抑制がどこまでできるかすら怪しい。 そう期待できそうもない自制より、物理的にどうにかできる方法を考えたいと思ったが、里長ですら押さえ込めないものを、自分がどうこうできる可能性はほぼないと言っていいだろう。 そもそもその思考からして理解できないのだ。次に何が来るかと怯えるばかりで、今もろくな手を打てないでいる。 居間に戻った途端、ピーピー音を立てて湯が沸いたことを教えてくれたやかんのおかげで、結構な時間が経っていたらしいことには気づけた。 疑ってばかりじゃ前に進めない。もう少しだけならアレを知る努力ができるかもしれない。 そう割り切ろうとする自分も確かにいるのだが、くつろげるはずの空間にあんな生き物がいるというだけでそれができない。 恐怖というものは、それだけ理性を削るということだろうか。 忍として任務に出ていれば命の危機に瀕することなど日常茶飯事…とまではいかなくても、それなりに身近になる。 警戒を怠る原因にもなりうるから恐怖を忘れることの方が危険だが、ただ闇雲に怖がっているだけでは生き残れない。 さじ加減というヤツだ。今まさにその狭間で自分は苦悩している。 実力で敵わないなら…他にどうにかしてあの理解できない男の隙を見つけなければならないだろう。 現状でも最低限、どこまでもつかわからないという問題はあっても、あの男はそういう意味ではこの身に触れることはできない。 カップラーメンのふたを開けた。…一つでなく二つ。 湯を入れてしまえば伸びてしまうから、コンロの火を細めておいた。 千里の道も一歩から。 冷静になれと自分に言い聞かせた。 多分こんな自分のことなど、あの男は欠片も斟酌しないだろうと思いながら。 「お風呂、綺麗にしといたよ？後で一緒に入ろうね」 案の定そんな台詞で自分の緊張と覚悟をめちゃくちゃにした男に、この熱湯をかけてやれたら…少しは楽になれただろうか。 いや、次が怖くてとてもできなかったんだが。 触れ合える距離で微笑む男が、恐ろしくてならなかった。 ********************************************************************************* 例の続き。 おわらせたい…！もう一個の方が早く終わりそうなので先にしめるかもしれませぬ。 ではではー！ご意見ご感想等御気軽にどうぞ！ |