忍び恋(適当)


細心の注意を払った。
敵は本当に中忍かと思う程に強く、気付いて欲しいことには鈍いのに、気配には鋭敏だ。
「でも、ま」
自分で言うのもなんだが、腕はいい。
木の葉でも五本の指には入るはず。…多分、今の所は。
自分の受け持ちの下忍たちは将来有望だし、いつまでこの立場にいられるかはわからない。
いずれは俺を超えて欲しいし、恐らくソレは確実に果たされるだろう。
…ま、不安要素もたっぷりなんだけど。
潜在能力なら文句なしなのに、ドタバタするばかりのナルトに、復讐に囚われて…それからきっと元々周りが見えなくなりやすいんじゃないかと思うサスケ、それから恋愛に一生懸命すぎて、頭の回転は速いのに色々と騒乱の種になるサクラ。
そういう所を含めて、あの子達はこの人の生徒なんだとしみじみ思う。
一生懸命で真っ直ぐで、それから周りが見えてない。
なにもそんな所ばかり似なくてもいいだろうに。
今の所その己を曲げない信念の強さが、彼らのバネになってはいるようだが、どうにも不安はぬぐえない。
いつか、危ういそのバランスを崩すんじゃないかと気が気じゃないのだが、彼らの可能性を信じてもいる。
追い抜かされるのは師の宿命で、悲願でもあるから。それは別に構わない。
…この人を手に入れるための技量が十分にあればそれでいい。
布団に顔を半分うずめて眠っていたから、そっとめくった。
「うぅ…?」
不思議そうに呻いただけで、もそもそとまた眠りに戻ってしまった。
これなら、いけるだろう。
大体言い出したのはそっちなんだから、もうちょっと警戒心を持つべきだ。
忍なんだから忍らしく勝負しましょうなんて。
…告白の返事にしては相当だと思うけど。
「じゃ、早速」
術を使わなかったのは、無効だなんだと言われないためだ。
ルールは簡単。
俺がこの人の唇を奪うことができれば、俺の思いを受け入れる。
期限もなにも設定されていないこの賭けは、俺にとってはありがたすぎるほどに分があった。
とはいえ外ではさりげなく警戒されてしまい、接触するのすら困難ではあったのだ。
…それが自宅ではこうも無防備に過ごしているというのはどういうことなんだか。
一瞬よぎった疑問は、目の前に晒されているおいしそうな獲物の前に霧散した。
寝息をこぼす半開きの唇に己の唇を重ねて、その甘さに一瞬我を忘れた。
無意識に逃げを打つ体を押さえつけ、遠慮なくむさぼる。
「ふ、ぇ…?」
目覚めきらない瞳が生理的な涙で潤んで、それすらも欲を感じて舌を滑らせた。
「イルカせんせ。これで、俺の勝ちでしょ?」
勝負で決めるなんてどうなんだろうと思わないでもなかったけれど、約束は約束だ。
なりふりなんてかまっていられるほど、この思いは甘くない。
愛しい人は、その宣言にパァッと顔に朱を散らした。
「え!あ!ウソだろ!?え!?…まさか本気だったんですか…!?」
今更それはないだろう。
こっちは必死だったって言うのに、今更ウソでしたなんていうなら、既成事実でも作ってしまおうか。
だが殺気混じりの俺の耳にも、次の言葉はちゃんと響いた。
「…好きだなんて、だって言えねぇし…!」
文句なしにかわいかった。
意味が一瞬分からなかったけれど、いきなり抱きついて胸元に顔をうずめる理由なんて、言葉がなくたって分かる。
これが演技ならくノ一にだってなれるだろう。
「せんせ。好きです。…俺、がんばったよ?だから…」
俺と付き合って?
囁きに身を震わせて小さくうなずいてくれた。
そのまま全部頂いてしまいたいほどかわいらしい。
「うー…!俺も!好きです!うああ!恥ずかしい!」
そういって呻く姿だってもちろん。
「好き。何度だって言うから、ね?」
「も、いいですから!黙れ!ほら寝ますよ!」
告白した相手を布団に引きずりこむ豪胆さというか…これはわかってないんだろうなぁ…。
とにかく、もうちょっとだけ待ってあげる余裕はある。…ほんのちょっとだけなら。
「そうですね?寝ましょう?」
初お泊りが夜這いってのはどうなんだろうと思いつつ、引きずり込まれた布団の中で恋人になってくれたひとを抱きしめた。
こんな鈍さも愛おしいと思いながら。


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適当。
ねむい!
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