お付き合い−初日(適当)


久々の任務に張り切って望んだまでは良かったが、きっちり罠だったってのはどういうことだ。
まあ今までも幾度となくそんな目に合わされてきたおかげで、比較的あっさり倒して、ついでに全員縛り上げて転がして、さっさと式も飛ばしたんだが、手持ちの武器はは全部使い切っちまったし、トラップまみれの中に転がしてきた連中の飯とかそういうものもかんがえなきゃいけない。
多分すぐ回収してもらえると思うが、ご丁寧に里から随分とはなれたところで襲撃してくれたせいで、救援…というか処理班が来るまでおそらく三日はかかる。
この辺に任務を片付けて暇な忍がいれば話は別だが、こんな遠方からの依頼は滅多にないんだよなぁ…。
この下らない大捕り物がなければ、今頃一楽でラーメンでも食って、ついでに銭湯で汗を流して、キンキンに冷えたビールで一服なんて至福の時間をたっぷり堪能していたはずなのに。
この何もないところで食料を調達しながら待機しなきゃならねぇんだよなー。アレは拷問尋問部でたっぷり泥を吐き出させなきゃいけないから、少なくともどれか一匹だけでも活かしとかないきゃまずい。こんな時のために準備しておいた行動不能にする札も、日数が経てば劣化しはじめる。天候が悪くなったら転がってる連中を担いで死なない程度に安全確保しなきゃならないしな。
里に帰っても尋問に付き合わなきゃならん。書類も増える。当然拘束時間も増える。そして留守の間に仕事は溜まってるってのに、余計な仕事が増えるってことは。
…俺の憩いの一時は遠くなるばかりだ。
幸い水はあった。というか、たった今見つけ出した。
毒をまかれたりはしていないようだ。顔を洗って渇きを潤し、からっけつになりかけたチャクラで火を熾した。水遁で一気に水ごと魚をひっぱりだしたいところだが、そんな余裕もなさそうだ。
兵糧丸を齧りつつ、もう少し休んだら挑戦しようと流れる水をぼんやりと眺めていた。
「あ。いた」
「うお!え?あー!え!?もう着いたんですか!」
木の葉の忍だ。でも暗部だ。だがこの際そんなもん構ってられるか!
「え、ああうん。ほら、この辺で任務だったの」
「そうですか!早速ですがあっちの木陰に5人転がして…」
「拾っといた。部下が運んでるよ」
「ありがとうございます…!」
部下、ってことはこの人少なくとも部隊長クラスなのか。無茶苦茶強いってことだな。
任務が終わったばっかりだって言うのに申し訳ないな…。だがこれで残党がいてもなんとかなるだろう。安心した途端ぐっと疲れが襲ってきた気がする。
あーちくしょう。後ちょっとなんだからがんばらねぇと。
「お礼よりもさ、大丈夫?顔色悪いよ?」
「え?あ、ああ!大丈夫です!」
チャクラはまだ戻ってないがその内戻る。体力も装備も空っぽでも、幸い派手な怪我はしていない。走るのは無理でも歩くくらいなら大丈夫だろう。…多分。
「はぁ…」
「ええと。なにかありましたか?」
何で頭かかえてんだ?しかもなんかこう…くらーいため息まで。まあ面倒ごと持ち込んだ俺が悪いんだけどな。
「ん。アンタ運ぶから」
「へ?」
「帰ったらラーメン奢ってあげるし」
「え!いいんですか!」
「そこは警戒しなさいよ…。どうせ俺が誰だかわかってないでしょ?」
怒ってるっていうより拗ねて呆れてるんだよな。これは。
面越しでも分かる。なんでだ?ってマントで髪の色もわかんないしな。
「ええと、お知り合い、ですか?あ!いいですいいです!聞こえませんでした!気のせいです!」
「お知り合いですよ。ついでに言うとアンタ狙いです。言ったことなかったけど警戒しなさいね」
「は?」
「あー…ま、いいや。里、帰ったらラーメン食いに連れてってあげるから、それから良く考えなさいね」
「え、あの」
「はいお口チャーック。しっかりしがみ付いててよ?」
「え!は、うおあ!えええええ!?」
景色が流れて行く。すさまじい早さだ。…でも揺れない。なんだこれ。どうなってんだ。
「あーこのまま俺の家に持って帰りたい」
「それはちょっと、その、報告が」
「…報告が終わったらいいの?」
「すみませんよくないです。ラーメンも食いたいし」
「…はぁ…」
また呆れられちまったな。でもなあ。なんかこんな冗談言うような知り合いに心当たりはないんだよな。間延びしたしゃべり方は最近どっかで聞いた覚えがあるんだが。
でもなあ?あの人引退済みだもんな。
「えーっと、お勧めはみそとんこつです」
「知ってる。ま、いいや。報告、らーめん、それからうちね?」
「えー…と、その」
「返事は?」
「は、い?」
「ん。まあよしとしましょ?楽しみだねぇ?」
ちょっとだけ明るくなった声で暗部(多分知り合い)が笑って、それから。
里に帰ってから本気で報告書提出後にらーめん奢ってくれて(暗部にみっちり張り付かれながら食うラーメンはそれでも美味かった)、家に連れ込まれて、そのまま俺までぺろっといただかれたってのはな…。
流石に己のうかつさに対してはたっぷり反省した。
面とったら知り合いだし、ラーメン屋で銀髪だった段階でまさかとは思ったけどまだ現役だったとか聞いてねぇよ。そんな里の機密なんざ聞きたくもないが!
人をいきなり寝室に連れ込んだ男がいうことには、家に上がったんだからそういうことなんだそうだ。
心配かけたお詫びだとか、お礼してとか、最終的には好きなんだもんとかなー。いい年こいた男が駄々捏ねるから説教もしてみたんだが、泣きそうな声で膝かかえて、でも手は握ってはなさねぇし、好きとか小さい声で言うんだもんな…。
嫌いじゃないんだ。何でまだ暗部やってんだとは思ったが。
まあその、あんまり悲しそうに泣くもんだから、うっかり俺も好きですなんていっちまったのは確実に失敗だった。
次の瞬間には押し倒されてキスされて、服にいたっては引きちぎられた。馬鹿力にもほどがある。
それからは、まあなるようになったというか。タガが外れたらしい男には、俺の悲鳴も怒号もビタ一文届かなかった。馬鹿力で押さえつけられて頭突きもけりも交わされて、食われそうな口付けに喘いでいるうちに、もう尻に指を突っ込まれていた気がする。
当然悲鳴も上げたし暴れた。が、しかしそれを聞いた男は、尻を弄繰り回すことをやめなかったというか、むしろさらに熱心さを増した。
もっと気持ちよくすればいーい?とかな。
どうも俺の許しを得るためだった、らしいんだが。こっちの身にもなりやがれ!
事故として片付けるには体に刻み込まれた快楽の証が鮮明すぎる。最終的に焦らされすぎてぶん殴って続きさせたとかな…思い出したくないが忘れられそうにもない。
始めたら止まらないもんだ。恐怖はもちろんあったが、それを遙かに凌駕する快感に引きずられて、後はここまでヤッたら後はもう一緒だっていう開き直りも手伝って、さんざっぱらやったというかやられたというか。
…尻が痛い。
「イルカせんせー。朝ご飯できましたよ!」
「うぅ…ふろ、あとごうもんじんもん…」
「SMもいいかも!イルカ先生って縄似あいそうですよね?」
「そっちじゃねぇ…下らん冗談はいいんで、風呂だ風呂。風呂貸して下さい」
「もう今日からここがイルカ先生の家なんで、貸すとかそういうの気にしなくていいですよ?」
「…その件についてはまたしっかり話しましょうね」
舞い上がりやがって…!ちょっと思い込み激しそうだもんな。この人。
毎日墓参りしながらくらーい顔してるって、ナルトに聞いたときも繊細な人だと思ったけど、こういう性格なんだな。
家に着いた途端駄々こね坊主っつーか、甘えん坊になった気が。
「歩けないもんね?一緒に入ります」
「え、あーいえ。そんな、あれ?」
なんでだ。足が動かん。真っ直ぐ立つのも難しいとかどういうことだ。
「いっぱいしちゃったからね?はい捕まって。今は何もしませんよー」
今はってことは後でなんかされるのか。
「無理です。ええもう無理です。無理だっつってんでしょうが!」
「ん。お風呂行きましょ?」
「や。ですからあんなのはもう無理だって!尻が!腰が!」
「誘うの上手だよねぇ?ま、いいからいいから。ほーら温泉の素」
「おおおおおお!これ…!数量限定の…!」
「俺が服脱ぐまでちょーっと待っててね?好きなの選んで」
「これもこれも…!どこで一体…!」
「さ、入りましょー」
「あ、じゃあコレで!」
温泉の素に惑わされ、こんなに体が重いのは、チャクラ切れで無茶な運動したせいだってことにやっと思い立った頃には、一緒に風呂に浸かっていた。
なんなんだ上忍。あと俺はもうちょっとしっかりしろ…。さっきしこたま反省したはずなのにな。
「いい湯ですねー」
「俺のうなじの匂い嗅いでも温泉のよさはわからないと思うんですが」
「そ?」
「うお!舐めんな!舐めんで下さい!なにすんだ!」
「我慢してるんだけど。これでも」
「…もっと我慢してください。ええ。これ以上したら尻が」
「だから誘わないでよ。夜までは我慢してあげたいの」
…なんなんだろうなこの会話。いっそ落ち込みたおしたいくらいだが。隙を見せればさっきから執拗にもまれている尻とか胸とかが大変なことになる気がする。
「それにしても良かった」
「あーそうですね。救援に来ていただかなかったら、多分相当苦労を」
「夏までに告白できなかったら監禁しようって、決めてたんです」
「…は?」
「もうちょっとがんばりますね」
「ええ。それはもうたっぷり全力でがんばってください」
なんか怖い話を聞いた気がするが、聞かなかったことにしたい。
目が本気だ。っつーかこええぇ!この人綺麗な顔してるのに、何でこんな獰猛な目つきなんだ!
「いーい筋肉だよね」
「飯食いたいです」
「そ?」
不満そうだが俺も不満だ。折角の温泉の素を堪能する前に出るのは悲しい。だがここで貞操というか、そっちはいまさらだが、とにかくこれ以上尻にダメージをおいたくない。
それに。
「腹減った…」
「ん。じゃ、また後でね?」
不穏だ。不穏すぎる。だがとにかく飯だ。食ってそれから逃げよう。もしそれが叶うならばだが。
尻をもまれつつお揃いだと勧められた謎のノースリーブを断り、普通に近い忍服を着せてもらうところにまでこぎつけるのは大変だった。だがそれ以上にそれからが…。
「ね、おいしい?」
「…うっうめぇ…!おいしいです!」
「はいあーん」
「いやあの自分でもが!」
「こっちは?」
「うめぇ…!もが!」
「やーもうかわいい。俺の咥えてくれないかなぁ」
「食卓でそういうことを言い出すのはどうかと思いますよ…?」
この人とは実は前に飯を食った事があるが、やたらにこにこしながら見てくるから飯食ってるのを見るのが好きなんだろうと思っていた。まさか飯時に下のことなんざ考えないだろう。普通。
「したいなー…」
「無理です。尻がおかしくなったら次どころか永続的に無理になっちまうでしょうが」
「そっか…。がまんしなきゃね」
そういいながら尻を揉むなといいたいが、本気で悲しそうな顔をするからなんつーかそれ以上言い辛い。そんなに尻が好きか。変わった人だと思っていたが、本物の変態だったとはな。天は二物も三物も与えたついでに、厄介なものまで押し付けたもんだ。
とにかく飯は美味かったので残さず綺麗にいただいた。
「あ、それじゃそろそろお暇」
「え!?うそ!」
「尋問につきあわねぇと。あと家の冷蔵庫とか色々」
「持って来ればいいよね?」
「…いえ、俺は家に帰りたいので」
「なんで!どうして?俺の家、嫌い…?」
道理を言っても通らなそうだ。
アカデミーにもいるんだよな。うちの父ちゃんになってとかな。下手すると母ちゃんだからな。もっと酷いとうちの犬とかな。何にも考えてないだけにしても地味に傷つくんだよな。
「嫌いじゃないですが」
「じゃ、いいじゃない」
「よくないです。けじめってもんが必要です」
そもそも付き合ってもいないんだが、そこはそれだ。
やられちまったことに関しては…一人になってから考えよう。
「…じゃ、我慢します。側にいたら我慢できないし。今日は」
「じゃ、そういうことで」
今日はってなんだとはあえて聞かない。
許可をもぎ取った事を励みに、ぐずぐずの腰に気合を入れなおした。
汚れていたはずなのに何故か綺麗に整えられていた荷物を担ぎ、速やかにその場を後にした。
ネットリと張り付く視線には気付かないフリをして。
 

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適当。
ひどいありさまな初日。

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