はぴはぴめりーくりすます(適当)


 本人は至って当たり前って顔なのがタチが悪いと思うんだ。第一、いわゆる夜のお誘いってものは、もっと密やかなもんじゃないんだろうか。
「ね、シよ?」
「無理だって言ってんでしょうが!」
「なんでよ?いいじゃない?」
「いい訳あるかー!」
 毎日毎日こんなにやってたら死ぬんじゃないかと思う。あっけらかんとそれこそ気軽におやつ感覚で人を押し倒すこの人にとっては大したことじゃなさそうだが。
 上忍ってのは体力も桁違いなのか、今日も今日とて家に帰って飯を食って、風呂に入ろうと思ったらそのまま床に引き倒されている。
 こんな関係になる前は人に触られるのが好きじゃないとか言ってた気がするのになぁ。今となっては気が付けば側にひっついてきて不埒な行為を仕掛けてくるからどこまで本当だったか疑わしいくらいだ。
 玉砕覚悟で好きだと言ったその日になるようになっていた時点でどうかと思う。だってとられたくなかったんだもんと主張するこの人の上目遣いと涙目が可愛く見えた段階で俺に勝ち目はなくなったんだ。きっと。
 今も、普通なら鼻息荒く押し倒してくる同性なんて気色悪いの一言なんだろうが、見た目が良い分興奮してても様になるというか、うっかり目を奪われてしまう。それともこれが惚れた欲目ってやつなんだろうか。
 向こうの目も相当曇ってるのは間違いない。そもそもが男の硬い尻だってのに、何が楽しいのか断ったのに諦められないのか諦める気が最初からないのか、こっちは既にズボンを剥ぎ取られてパンツ一丁にされてしまっている。無心に揉まれても、情けないの一言に尽きる。勿論、そんな行為にも僅かに反応しかける自分の体がだ。
「気持ちイイでしょ?なんで駄目?」
 兆し始めた性器にはわざと触れずに、下着の上から昨夜も押し入られたばかりで疼く箇所を柔らかく撫でている。くりんと首をかしげて見せるのはいつものことで、これに俺が弱いっていうのも察知されている気がする。自分のことには鈍いくせに、密かに俺の弱点を探り出すことにかけては天才的だからな。この人は、
 教えてなんて言われるとそんなことをわざわざ口にしたくないと思うのに言わなきゃいけない気がしてくるし、嬉しそうに熱心に聞き入られると強くは出られない。
「ふ、風呂も入ってないのに…!」
 なけなしの抵抗は火に油を注いだ。…背中に当たっていた畳の感触は、興奮のせいか熱を帯びた逞しい腕に変わり、視界も随分と高い。…担ぎ上げられるのは初めてじゃないが、こうもあっさり同程度の体格の男をひょいひょい運ぶのは止めてもらえないだろうか。俺にもプライドってもんが…!もはや粉みじんに近いが一応は存在するんだ。
「お風呂入ってからならいいの?」
「そういう意味じゃないですが!」
「じゃ、お風呂入ろう?洗ってあげる」
 流石上忍様の早業だ。そう言った時には既に風呂場にいる。
 …ああ、今夜もなのか。
「あ、洗います!自分で!出ててくださいよ!」
 パンツを死守しようとした隙に、上はすっかり脱がされて結局は浴室でパンツ一丁という大変情けない格好を晒している。こっちの脱がせるのも早業なら、器用に出入り口をふさいだまま服を脱ぎ捨てていくのも素早くて、なんでこんなにやる気なんだと嘆く暇さえない。
「え?だってイルカ先生長風呂じゃない。一人で入ってたら萎えちゃうでしょ?」
「わー!なに言ってんですか!」
「ま、萎えても立たせちゃいますから安心してね?」
「できねぇよ!しねぇって言ってんでしょうが!」
「お断りシマスー。はいパンツ脱ぎましょうね?濡れてスケスケってのも悪くないけど」
「ぎゃあ!なに言ってんですか!」
 守り通そうとした最後の砦は恥ずかしいセリフと共に引っぺがされて、もはや身にまとうモノは何一つない。悲鳴ばかりが馬鹿みたいに響いて、涙目になろうが何をしようが止まることを知らない男は少しばかり首を傾げた後、得たりとばかりに応えらしきものを寄越した。
「えーっと。あ、エッチなことですかね?」
「真顔でいうようなことなんですかそれはッ!」
「大事なことでしょ?愛し合うんだから」
 輝かんばかりの笑顔はもはや凶器だ。クサいセリフも様になるなんてどうなってんだろうな。…それにクラクラきている自分をどうしようもできないでいるのが一番の問題だが。
「あ、愛って、そ、んなの」
「イルカ先生はあんまり言ってくれないよねぇ?ま、いーけど。その分体に聞くから」
 不満というには甘ったるく、だが唇を尖らせて物騒なことを言う。この男に振り回されてばかりで息もつけない。
 それなのにそれを心地良いと思い始めている。
「明日は、演習で…!」
「そ?じゃ、三回までね?」
 やらないという選択肢はないのかと問うても答えなど分かり切っている。第一今更後には引けない状態なのは悲しいかな俺も一緒だ。
「…せ、せめてベッドで…!」
「じゃ、ここでは一回にしときましょうねー?」
 いかにも譲歩しましたとばかりに、朗らかな恋人は尻に指をねじ込みながら唇を奪うという器用な真似を仕掛けてきて、どうやら今日も俺の懇願は届かないらしいことに気づかざるを得なかった。

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クリスマス始めました。多分クリスマスまでには終わる…はず!たぶん!

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