中忍大作戦 白い日編2(適当)



これの続き。

 カカシさんはすごい人だった。それはもういろんな意味で。
 まず飯が美味い。すごく美味い。夢中になって食ってたら皿が空になってて、美味かったのにもうないって悲しい気分になるだろ?そしたらすっと席を立ったかと思えばすごい速さでもう一品出てきたんだ。そしてそれがまた美味い。
 一番最初に一楽のラーメン食ったときも感激したけど、この人のはもはや奇跡のようだった。忍としても一流で料理が美味いってどういうことだよ!
 しかもそれから腹がくちくなったらお茶が出てきてしばらく色々聞かれたから答えてたら、良くわかんないけど難しい顔しだしてな…。食っただけじゃあれだから食器洗いますって言ってるのに、いいからって着替え渡されて風呂場に石鹸の場所から何から説明されつつ押し込まれて、その風呂がまた広くて大喜びしてついついゆっくり浸かってたら、溺れてない!?って途中で様子見に来てくれて…なんていうか、心配性な母ちゃんみたいだった。
 本当にイイ人なんだよ。布団はふかふかだし、居心地なんて最高に決まってるのに、色々気遣ってくれて涙が出そうになった。俺は元々丈夫な方だし、中忍同士なんてお互い雑な扱いが当たり前だからってのもあるかもしれないが、こんな風に母ちゃんみたいにやさしくされたのは本当に久しぶりだった。
 申し訳ないからせめて洗濯とか食器とか朝飯の準備とか思うんだけど、いいからって言われて美味い飯を食わされちゃうとついうっかり忘れちまうんだよな…。
 しかもだ。御礼のつもりで次にお邪魔したときは風呂に温泉の素が置いてあって、好きなの使ってっていってくれて、すごく珍しいのもあるのに選び放題って状態だったときなんか、この人は神様かなんかなんだろうかって思ったもんだ。
 時々怖い顔で質問攻めにされることはあるけど、話題も豊富で気遣いも細かくてやさしくて、しかも顔もイイ。ご近所の忍犬情報通り黒子はあったけど、それが色っぽいっつーかな。これが色男ってヤツなんだろうと思う。
 もうな。うらやましいとすら思えないんだ。そこまでいくと。
 お礼にいくつもりで何度も歓待されている内に、カカシさんちに行っちゃうからまずいんだと思って、飯に誘ってみたら今度は美味い飯屋に連れ込まれてそこがまた美味かったんだ。奢るつもりで財布を出せば、恥じかかせないでとかいうけどそういうわけにはいかないだろ?せめてちょっとだけでもと、後は次こそは俺がと思って誘われてはついていってがんばっているうちに、ほぼ毎日のように一緒に飯を食うようになった。楽しかったが財布の方が大打撃だ。
 給料日の前日の塩ご飯とかに侘しさを感じつつも、奢るためにも節約をと努力してたんだが、今度は手料理を振舞ってくれるようになったんだよなぁ…。
 問答無用で引っ張って帰られて食卓に着いたら速攻でご馳走って、幻術かなにかかと思った。それがまた美味い。幸せだ。食器も洗わせてくれないのが申し訳なくて、それならいっそ俺の家に呼べばいいじゃないかと思って実行したのに、張り切って風呂の用意とかパジャマの用意とかしてる間に、結局カカシさんに飯を作られてしまっていた。
 世の中ってのは、中々上手くいかないもんだよな…。
 ただ嬉しかったことがあった。カカシさんが甘えてくれるようになったんだ。時々見せる寂しげな表情がずっと気になっていたから、初めてくっついてこられたときなんか嬉しくて小躍りしそうになったからな! 上目遣いでぴたってくっついてきて遠慮がちにぺたぺた触ってくるからもうたまらなくなってぎゅーってしたら、急に変な顔されちゃったけどな。照れてんのとも違いそうだし、カカシさんは複雑な人なんだなってことで納得した。
 そんなこんなで気付けばどっちかの家でカカシさんが飯を作って、俺が風呂を沸かしてパジャマを用意するのが当たり前になり始めた頃、ついに俺にもチャンスが巡ってきた。
 お礼にぴったりのイベントとしてバレンタインを選んだのは、色々珍しくて美味そうなものがならぶ時期だからってのもあるが、その決定を元に周囲にどこの店のが美味いのか聞き取り調査を行った結果、全員に応援してもらえたからってのもある。
 カカシさんの料理上手っぷりとかわいらしさについては控えめながら常々もらしていたから、みんな気を使ってくれたんだよな。きっと。
 幸せな気分でチョコを選んで手渡したときの驚いた顔といったら、自分史上一番といっていいほどの快挙だったと思う。
 …まあ味見してみてって言われて半分以上食っちまったのは大失態だったけどな…。反省しきりだ。
 だからホワイトデーにはとびっきりの酒を持ってったのに、結局酒盛りで俺もガンガン飲んじゃった上に、カカシさんの秘蔵の酒まで貰ってべろんべろんに酔っ払って迷惑かけちまった。
 だが、心のどこかでそれを望んでいたのは俺だったのかもしれない。
 お返しをしてしまったら、もうこの人から離れなきゃいけない。それはきっと寂しくて…耐えられない。
 なにかにつけてお礼しようと努力しても、上乗せして返してくれてしまうこの人の側にいられることが俺にとっては何よりも大切なことになっていたんだ。
 ずっと一緒にいたいと思える特別な人。喜んで欲しくて幸せでいて欲しくて、そうしたら、それがもしかしたらって、やっと気付いた。
 この人が、俺の運命なんじゃないかって。




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適当。
ホワイトデー中忍の無駄な努力と盛大なすれ違い編。

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