最終決戦 チョコの日8(適当)




これの続き。

「なん、か、ふわふわします」
「そ?ねぇ。ケーキおいしかった?」
 薬の効果は順調に出ているようだが、確認の意味も込めて聞いてやった。本人は自分の異常に気付いていないようだ。うっすらと頬を赤く染めてにこりと笑った。
「美味いです。すごく美味いです!」
 そんなに力いっぱい言われるようなことなんだろうか。聞いておいてなんだけど、これって素なのかそれとも薬のせいなのかわからないかも。
本人はふわふわすると繰り返して、その原因であるとも知らずに景気よく茶を煽っている。いろいろ不安になるんだけど。
 ま、いいか。このまま次の効果が出るまで待てばいい。ケーキは…美味いと言いながらどうも自分の体調が気になるせいか進んでいない。とはいえ俺なら二口も食いきれないだろう濃厚なそれを、すでに半分は片付けてはいるんだが。
「そりゃよかった」
 諦め半分期待半分。茶の追加を淹れてやると、また一気に飲み干している。なんだろうね。これ。確かに多少体温は上がるけど、こんなに喉が渇くって程じゃないはずなんだけど。この人に限って俺の家で緊張するなんてこともありえないはずだし。何せ俺が上忍だからとか、そんな配慮にして欲しいわけじゃないけど、俺の家でも先にベッドに入って布団に収まって待ってるし、ま、布団めくり上げてくれて肩まで布団かけなおしてくれたりもするけど、その後はパジャマからへそが見えるような格好で大口開けて寝くたれてるくらいだ。
 そろそろ頃合か?少なくとも自白剤の方は確実に作用している時間だ。ダメ押しするかどうするかってとこだけど。
「こんな美味いケーキ初めて食いました!ふわっとしたのが美味いし、クリームもなんか酒ですかね?これ。うまい」
 しみじみと語る中忍は、それがお前の好みに合わせて注文したものだと言うまで気付きもしないだろう。
「ま、俺の愛がこもってるからね?」
 だからそれはちょっとした軽口のつもりだった。
 どうせ笑って喜んで流されて終わるだろうと思ったのに、驚くほど激しい反応がかえってくるなんて想像できるわけないでしょ。
「…え?え、いえ、その。…カカシさん…いいんですか…?その、俺は勘違いしてもいいんでしょうか?」
 まず顔が真っ赤だ。薬のせいもあるかもしれないけど、それだけじゃありえないのがその目に宿る熱っぽい感情の色。硬く握り締めた拳には、今にもへしゃげて折れそうなフォークがおさまっている。でかい図体を縮めるように、もじもじと体を揺らし、上目遣いでこっちを見つめているくせに、哀れな姿を晒すフォークだけが異質だ。チャクラでも暴走させたんじゃないかと不安になってくる。いや、それ以上にこれって。 え?うそ。今更?何この反応?喜んでいいの?
 不幸慣れした自分に冷静さを呼び戻すべく、深呼吸する。期待しすぎても無駄になるのはこの中忍に限っては確実だが、どっちにしろ逃げられないんだし、ここでちょっとぐらい本音を聞きだしておくのは当初の計画通りだったはず。
「ねぇ。勘違いってなぁに?」
「アッ!」
 いつも通り耳元で囁くと、カチャンと金属質のものが床に転がる音がやけに大きく響いた。縋るように背に回された手が震えている。
 …あ、これ食っていい反応。
 そうと決まれば話は早い。本当はこの後昼間から酒なんてといいそうな中忍が思わず手を伸ばしてしまうように上等な酒に一服盛ったのを飲ませて、つまみも食わせて、ほどよくめろめろになったところを食うつもりだったけど、計画変更だ。
 食休みとかそんなことはもう考えない。この空気だ。ずっと追い求めていたそれを、今まさに手にしている。
 この機を逃してなるものか…!
「カカシ、さん…?」
 この期に及んで何が起こっているのかわからないらしい中忍を抱え上げてベッドに転がした。呼吸が荒い。興奮しているのか。この男も。
「大丈夫。やさしくする。多分だけどね」
 我慢しろといわれたってするつもりはないし、これだけ我慢に我慢を重ねて一回で終われるはずもないし、この男が未経験ってのも調査済みだが、治療の手立ても痛みも疲労もなんとかしてやるだけの甲斐性はあるつもりだ。
 そんなものがどうでもよくなるくらいの技術も、ね。
「ええと?はい。おねがいします!」
 わかってないくせにいつも通り元気よく返事をした中忍の服を剥ぎ取る。
 どこかおもしろそうにしているのが癪に障るような哀れに感じるような。
自慢じゃないが知略にかけても百戦錬磨と謳われる、この俺の感情すらわからなくさせるなんて、この男の存在そのものが、俺にとっては脅威だ。隙を見せればこの状態からだって状況をひっくり返されるかもしれない。急いでさっさと事を成しておくべきだろう。
 要所要所だけ脱がせてヤルのも楽しそうだが、今回はこの余計なことばかり考えるイキモノに疑念の余地など一切与えないほど徹底的に俺の意図とこの感情を理解させるつもりだ。素っ裸にひん剥いてやる方が安全と判断した。
「さむい?」
 あっけなくその身に纏うものを奪われて、小さく震える男をからかうように聞いてやると、不思議そうに首を傾げられた。
「いえ、あれ?なんか…あつ、い…?」
 晒された己の性器が硬く尖っていることにすら自覚していないらしい。
 興奮している。俺が、そして目の前の獲物が。
 指に引っかかる袖すらもどかしく、こっちもさっさと服を脱いだ。
 わかりやすく徹底的に、俺という存在をこの男に刻み込むために。

 


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適当。
バレンタインその8。もうちょっとのはず_Σ(:|3」 ∠)_

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