かわいいは正義2(適当)




これの続き。


「ひとーつ、ふたーつ、みーっつっと」
 力加減とチャクラの調節には気をつけないとね。首を切り落とすときに刃こぼれすると面倒だし、きれいな切り口のほうが依頼人が喜ぶ。拷問してくれって頼まれたときはその限りじゃないけど、俺自身も余計な労力を使いたくない事情もある。
 早く帰りたいな。きっとまたいつもみたいにそわそわしながら待ってくれている。
 幸い今回のターゲットは数は多いけどせいぜい普通の上忍クラスだ。順番にさくさく落として、専用の臭いも血ももれない袋にしまいこんでいく。見た目は目の粗い麻袋みたいな感じなのに、何が入ってるか想像もできないくらい中身の存在をたどらせない優れものだ。ずっしりと重いそれは命を失ってからもしばらくは生暖かいはずだが、熱すら遮断するのか、そういえば暖かいと思ったこともない。今のところ任務は順調だ。半分以上奇襲で潰せた。逃げたやつも事前情報ほど足が速いわけじゃなさそうだし、この分だとすぐに帰れるだろう。なにせツーマンセルの相方が俺のことを半ば崇拝してるような後輩だし?よほどのことがない限りはなんでもやってくれるだろう。持つべきものは優秀な後輩だよねぇ?
 血糊を適当に振り払って、残りの気配を探った。ん。なるほど。半分以上数を減らしても、向こうから仕掛けてくるだけの気概がまだあるらしい。探す手間の分助かっちゃった。ホント今日はついてる。
 早速手近なのから首を落として袋に放り込もうとしたら、後輩の小言が降ってきた。
「…先輩、それやめてくれませんか?」
 なにもう腕組みなんかして。珍しい。小言も不満も多い子だけど、今日みたいに抜けたはずの部隊のお手伝いを通常任務に見せかけて請け負わされるなんて状況で文句言うなんてめったにしないはずなんだけど。
「えー?むき出しで持って歩くの面倒くさくない?」
 できるだけ凄惨な印象を与えろとかいう指示でもない限り、無駄なことはしない主義だ。重いし臭いしなにより腐る。切ったら即収納。理にかなった処理だ。依頼人のターゲットかどうか証明できなくなるような真似はしたくない。
 ま、俺って足も速いから、まずそんなことないだろうけどね。っていうかどうしたちゃったの?テンゾウ?もしかして反抗期?

「そっちじゃありません。完全に浮き足立ってますよね?お幸せなのは結構なことですが、今は任務中ですよ?」
 えー?浮き足立ってなんか…いるけど。ちゃんと任務片付けてるのに文句言われても困るんだけど。お説教モードに入ると長いんだよね。先生のお説教は何時間でも聞いてたいし、お説教プレイも楽しいけど、この意外と常識人で割りと保守的な後輩の話を聞いてやる余裕が今はない。許せテンゾウ。これも愛のためだ。
「ん。いつつ、むっつ、ななつっと。もう終わったよ。帰っていいでしょ?」
「先輩!ちょっ!首放り投げるのやめてくださいよ!」
 もって帰りやすいようにという気遣いに、繊細でちょっとぴりぴりしている後輩が悲鳴を上げた。雑兵も一応かるーくだけど処分しやすいように固めて切り飛ばしてある。後は処理するだけだもんいいよね?
「今日ちょっと急いでるの。後始末、テンゾウなら簡単でしょ?」
 一応は持ち上げつつもお礼もきちんと言っておく。だってイルカ先生にちゃんとしなきゃ駄目ですよって教えてもらったからね?きちんとしないからって俺のこと嫌いになったりはしないけど、心配するし多分悲しむ。そんなことできるわけないでしょ?
 隠してるつもりでもそういうことだけはなんでかしらないけどばれる。愛の力ってやつなのかな。
「そりゃたいしたことないですけど!またあの人絡みですか!いい加減にしてくださいよ…。確かに今回の任務は僕たちが不甲斐ないせいかもしれませんけど!」
「イルカせんせのお土産なにがいいかなー?大福食ってるときほっぺたまんまるにしててちょっとむせちゃったりして白いの口につけちゃって最高にエロいんだよね。豆寒天もぼりぼり喜んで食べるけど、時々唇に黒蜜ついちゃったりしてなめ取るのがまた色っぽいっていうか俺のも舐めてって思うよね?」
「先輩の話が深すぎて、僕はついていけません…」
 寂しい後輩に参考までにちょーっとだけ話してあげただけなのに、いい感じに地に伏して落ち込んでいる。繊細なヤツだ。
「今夜はイチャパラナイトだから。後頼んだよ」
 悪いが今日はその精細さを気遣うよりも、イルカ先生とのイチャパラが優先だ。イルカ先生が修学旅行とか外遊に連れてかれちゃってるときなら考えてやらなくもないけどね。
 あーはやく帰りたい。ただ漫然と帰還して装備を整えるためだけの場所だったところが、いまや俺の楽園だ。
 帰ったらがんばったんだってしっかり主張して、ちゅーしてもらわないと。
「せ、せんぱーい!…ま、まあいいか…際限なくのろけ聞かされ続けるよりは…」
 後輩がなんだかぶつぶつ言ってるのを放置して、飛ぶように木々の間を駆け抜けた。
 どんなお土産買って帰ろうかなって考えるのも楽しくて、暗部プレイもいいなって想像するだけで興奮する。

 だから家に帰り着いた途端、イルカ先生が抱きしめてくれたのを抱きしめ返しついでに抱き上げて、そのまま寝室に直行しちゃったのは、ちょっとしたやんちゃだって許してもらいたい。

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適当。
後輩は常に犠牲者。ぬるぬるばかっぷる連載風味始めました。

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