先輩22 -夏祭り-(ヤマト視点幼馴染カカイル夫夫)

「そうめんは茹でるのが暑いんだよなぁ…」
僕としては兵糧丸だけでいいやって気分なんだけど、そうもいかない。
暑いからって何も食べないでいると、すぐにイルカさんが気付いて心配してくれて、ソレはとっても嬉しいし、申し訳なくもなるんだけど…。
最終的に先輩に制裁を加えられるんだよね…。
先輩としては大切な奥さんであるイルカさんが先輩以外の人と仲良くするのが嫌なんだろうけど、被害が大きいから…できる限りそういう事態は避けたい。
だから何か食べない取って思うんだけど…暑いからついついそうめんになっちゃうんだよね。
…なぜかアスマさんからそうめんを贈られたからってのもあるけど。
「ほそっこくて目ばっかりでけぇなおめぇは。食え」
って、大概失礼だよね。
まあ不器用な心配だってわかるから僕も言い返せなかったんだけど。
「おめぇも、大変だよなぁ…」
なんて、心底哀れむような視線を向けられたのことの方がちょっと辛かった。
…アスマさんも先輩にいろいろされてるんだろうなぁ…。だってイルカさんはアスマさんと仲がイイから。
何か親近感が湧くよね。年の差はすっごくありそうだけど。
ああ、話がそれた。
で、僕の夏はそうめん一色になってたんだけど。
なにせずーっとそうめんばっかり食べてるから、イルカさんから教わった美味しいそうめんの食べ方レシピもそろそろ尽きかけている。
「乗っける具も尽きてきたなぁ…。いためるにしても茹でなきゃいけないし」
料理は…先輩にいろいろ仕込まれたせいで慣れた。
なんていうか、筆舌に尽くし難い目にもあったけど、任務でも生活でも役に立つからって自分に言い聞かせて、最近は結構美味しいものが作れるようになったと思う。
ついつい美味しそうなレシピを見ると作っちゃったりするし。
でも、なんだか最近だるいし、何かを作るのが面倒で仕方ない。
…原因はわかっている。
「おい。テンゾウ」
「ひっ!?」
きた。今日も…!
「分かってるな?」
「…はい…」
そうめん、茹でかけだけど待ってくれないよね…きっと。そう思ったんだけど、先輩はそうめんが踊っているなべを一瞥すると、舌打ちして一応待っていてくれた。
でも急いでるし、先輩がずっと睨んでるから食べてる気はしないし、時間もないからおかずなんかなくてそうめんだけだ。
だから一応念のため、兵糧丸も飲んでおいた。…任務とは別の意味で体力と気力を消耗するからね…。
「行くぞ。イルカが待ってる」
…ああ、やっぱりね…。
先輩にせかされるままに、僕はとりあえず適当に身支度して、今日も思い足を動かしたのだった。
*****
「あ!テンゾウさん!きてくれたんですね!ありがとうございます!」
この笑顔、やっぱり癒されるなぁ…!
ほわっとした気分に浸りたかったけれど、あんまりみてると先輩に制裁されるからぎこちなく視線を外した。
暗部服の変わりに浴衣を着て、お面だけそのまま被った僕は、はたからみれば一般人に見えるだろう。
…まあ、チャクラとかみられちゃえばバレバレだけど。
「今日はやっと本番です!」
そう、楽しくてやっかいなこの頼まれごとも、今日でやっと最後だ。
「じゃ、僕はいつも通りたこ切りますね」
普段は、包丁よりずっと多くの時間をクナイや他の武器を握るのに使っている。でも今は…一生分くらいは包丁を使ってるんじゃないだろうか。
「キャベツとかは俺がやっといたから。イルカは焼く準備してまってて?」
「え!ありがとうカカシ!じゃ、こっちの仕度してるからー!」
元気一杯にかけていったイルカさんはかわいらしいけど…僕はこれから始まるであろう制裁を覚悟した。…つもりだったんだけど。
「とっととやれ…」
低く殺気を孕んだ声に、やっぱり足が震えた。
…先輩…!なんだってそんな実戦並みのチャクラみなぎらせてるんですか…!?
あせりながらも、僕はとにかくひたすらたこを切り続けた。
*****
そもそもの切欠は、イルカさんの知り合いが毎年たこ焼き屋さんの屋台をやってて、一年に一度の木の葉神社での屋台も楽しみにしていたらしい。
ソレが高じて昼も夜もなく試作だの材料調達だのに励んだ結果、当の本人が倒れ、結局イルカさんがうっかりその代理を買って出ちゃったって訳だ。
…まあ一人で出来るわけないし、先輩そっちので練習に励む責任感の強いイルカさんを、手伝うことになったのはいいんだけど…。
それからずーっと試作を続けてて、その材料の準備は主に僕だ。
ただひたすらたこを切り続けるのは、正直飽きる。それでも、気を抜いたりなんかせずにがんばって切ってた。
…その分、自分の食生活が随分と荒んだけど、そこはまあそれとして。
いつもいつもそれをみたイルカさんがちょいちょい様子見ながらこっちを気にしてくれるもんだからたまらない。
その視線の優しさに胸がほわってしたけど、ソレを打ち消すほどの激しさで先輩が殺気立つってくれるので生きた心地がしなかった。
…このお手伝いのせいで、料理する気もなくなるし、疲れるし…ろくなことがない。
唯一幸せを感じられるのは、イルカさんの笑顔と一生懸命さを間近で見られるってことぐらいだし。
だが、ソレも今日で終わりだ。せっせとたこ焼きを焼くイルカさんを手伝ってると、美味しそうにほお張ってくれてるお客さんをみてると、ちょっとだけだけど…充実感みたいなものも湧いてきて、ほっとした。
ただ…隣でずーっといちゃいちゃしながらたこ焼き作ってるイルカさんと先輩を見てると、ちょっとだけ胸焼けしたのが不思議だ。やっぱり試作品の食べすぎだろうか?
…僕もいつか、あんな風に傍らを埋めてくれる人ができればいい。
奇妙に痛む胸を押させながら、そんなコトを思った。
*****
で、イルカさんの可愛さとたこやきの美味しさあっという間に完売して、片付けなんかも殆ど終わってから、一緒にっていってくれたイルカさんと殺気の塊の先輩と連れ立って、神社のお参りをした。
他の屋台の食べ物をつまんでみたりもしたけど、やっぱりイルカさんのが最高に美味しかったんだけど…。
「おみくじ!引いてみましょう!」
最後にそう言って笑うイルカさんに勧められるままに、僕は信じてもいないおみくじ引いた。
そこには…。
「…恋愛運…遠い未来、いずれ運命の相手と出会うでしょう…?え、えーっと、望む形ではないが、抗うより流された方がいいこともある…って!?」
これって…要するに、なんだかわからないけど、よくない感じなんじゃないかな!?
運命っていう言葉はあこがれるけど、なんだか流されろとかって…!?
「すごい!運命の人…楽しみですね!」
「ま、俺はもう出会ってるし、運命を手に入れたけどねー?」
「わっ!カカシ!苦し…っ!」
「あ、ごめんね?でも…イルカが俺の運命だから…」
「カカシ…!」
「イルカ…!」
僕は、微妙な結果のおみくじに落ち込むよりも、無邪気に喜んでいちゃついてる先輩たちが、なぜか凄く羨ましく思えたのだった。
ちなみに…今回の先輩はお仕置きはしないでくれたけど…。
それがなんだか不安になっちゃった自分が嫌だったし、あれだけ飽きたと思っていたはずのたこ焼き器が僕の家にやってきてしまったのが怖い。
…癖になっちゃったって言うか…!たこ焼き、美味しいよね…。
…でもなんで買っちゃったんだろう。店先で見かけてイルカさんの笑顔とか思い出して、気付いたら衝動的に…!
「もしかして、僕ってこれからも…!?」
とにかく、僕はいつか来るかもしれない何だかよく分からない運命って代物に、流されないでいられるかどうか、凄く不安に狩られたのだった。


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幼馴染で夫夫扱いになってる(イルカはおそらく良く分かってない。)カカイルと、 少年なテンゾウ(チョイ馬鹿)の続きでございます…。
自分で危険に飛び込んでっちゃうのがテンゾウたんってことで!
えー…ご意見ご感想など、お気軽にどうぞ…。

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