疑い深い男(適当)


「愛してるなんていうから試したくなるんでしょ?」
ろくでなしのセリフだ。
…しかもそれを言うだけじゃなく実践までしてるんだから、この人は間違いなくそういう方面ではろくでなしなんだろう。
人間的にはどうなんだろうと思うし、窘めもしたが、友人として付き合う分には問題ないといえばなかったから、女を作っては捨てるこの上忍に、それ以上いうことは出来なかった。
唐突にこの人に押し倒されるまでは。
「なにすんですか」
あまりにも突然すぎて、却って冷静に問いかけてしまった。
見上げる顔は真剣そのものに見える。
愛を試すとやらの中身に、他の女といちゃついて見せるというのがあったから、まさか利用されてるんだろうか。
残念ながら巻き込まれるのは初めてでもない。
修羅場の女性の恐ろしさというものまでこってりと思い知らされている。
だが、自分から進んで巻き込んできたことなどなかったのに。
うんざりした気分がため息になって出てしまったのに、男は俺を下に敷いたまま熱っぽく囁いた。
「愛してるって言ってよ」
流石に驚いた。
試されてソレに叶わなかった女たちがいくら懇願しても簡単に切って捨ててきた男が、その台詞を言ったというだけで執拗に疑った男が。
その台詞を言えなどといったのだ。
…それも俺相手に。
タチの悪い冗談だと笑うには、男の態度が真剣すぎる。
どうやら真剣に、俺に愛を請うているらしい。
…それなら、返事など決まっている。
「言いません。絶対に」
俺の答えを予想でもしていたんだろうか。
苦しげに眉を潜め、だがほの暗い炎を瞳に宿らせた男の唇を奪い、言ってやった
「試されるのはごめんですから」
驚きに見開かれた瞳にも唇を落とし、抱き寄せた。
「なに、それ」
自分から仕掛けてきたくせに、こんな他愛のないふれあいだけで頬を赤く染めている。
臆病で驚くほど純粋で、愛おしい。
「あんた馬鹿だから、体で分からせて上げます」
上手く笑えていただろうか。
耐え切れないとばかりに覆いかぶさってきた男を逃がす気などないのだけれど。
うたぐり深い恋人は、どうせまたいつか俺を試すだろう。
だが、それでも。
救われたように笑う男に、俺は満足したのだった。


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適当。
あかんねむい。
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