かくもながき不在(適当)


横たわるシーツの冷たさに目がさえて眠れない。
一人横たわるベッドは広すぎて寒くて、遠い温もりをかき集めようと枕を抱き込んではみたが、少しも暖かくならなかった。
あの男が側にいないのが悪い。
ずっと一緒とか、離れないとか言うくせに、いつもこうして俺を一人にする。
あの日全てを失ってから、やっとの思いで一人でいるコトに慣れたのに。
そんな俺を捕まえて、甘やかして、煩い位に愛を囁いて、こうして骨抜きにしたくせに。
「寒い…」
頭まですっぽり布団にもぐりこんで、頬がぬれている理由は考えないようにした。
今ここにいない相手を心の中で詰っても、寒さはましにならない。
ぐすぐすと鼻が鳴るのがうるさかったが、それでも少しはましなはずだ。
自分の体温で温められた空気に混じる、男の僅かな残り香を感じることが出来るから。
「アレ?どーしたの?」
「遅い!」
腹立ち紛れに投げつけた枕をひょいっと避けて、男が顔を近づけた。
「どうしたの?怖い夢でもみちゃった?コレ飲んで温まったら一緒にねよ?」
湯気の上がるマグカップからは、俺のお気に入りのほうじ茶の香りがふわりと立ち上っている。
「うぅー…!」
すぐ戻るって言ったくせに、戻ってこないのが悪い。
戻ってこないなんて…嫌なことばかり思い出してしまうじゃないか。
「もーかわいいんだから!ほら、くっ付いてたら平気でしょ?」
脂下がる男が憎い。
俺がどれだけ毎日毎日恐ろしい思いをしているか、知ってるくせに。
俺の苦しみをこうやって喜んで、気付かないフリまでしやがるのだ。
「遅かった!すぐ戻るって言ったのに!」
詰る言葉は我ながら子どもみたいで、止めることの出来ない嗚咽ばかりが馬鹿に響くから、余計に悲しくなってきた。
「寒いから水じゃなくてお茶にしたからねぇ?待ってて、寂しかったんだ?」
ほにゃりと、それこそ溶けた様に顔を笑み崩している。
無駄に綺麗で、いつもうっかり見惚れてしまうほど整った顔が台無しだ。
…落とされたのはこの顔だってのがまた腹立たしい。
口なんか聞いてやるもんか!
「眠くなると素直になるよねぇ?イルカせんせ。かわいいんだからもう!」
抱きついたのにしっかりお茶は死守して、一口だけ口移しで飲ませてくれた。
使い過ぎて乾いた喉にふわりと優しい香りが染み渡る。
その温かさで喉を潤した後も、残されたままだった舌が、ちゅくりと俺の口を吸って離れていく。
「…あったかい」
「そ?温まったら一緒に寝ようねー?くっ付いてたら暖かいのが逃げないから」
そうして、ぎゅうっと抱きしめられて、暖かくてほっとして悔しいんだけど何だかソレもどうでも良くなって。 「おやすみ。ずーっと俺だけに甘えてね…?」 暖かい声に唆されるままに、俺は沈み込むような眠りに落ちて行った。 忌々しいこの人でなしの胸が、腕が、全てが。…温かくて優しすぎることを呪いながら。

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適当ー。
こんなに寒いのはダメだと思うんだ。冬眠すべきだよ!と思ったらこんなんでましたけど。←ダメダメ。
ではではー!なにかしらつっこみだのご感想だの御気軽にどうぞー!

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