よりそうひと(適当)


「おはよ」
「ふが?お!?おはようございます?」
驚いた顔もとてもかわいい。俺よりずっとチビだけど、寝ぼけて潤んだ目がおいしそうにみえて、ほんの少しだけ頬に触れてみた。
「ちゃんと寝た?」
「え、ええと。さっきまで寝てました」
きりっとした顔で大きな声で答えてくれた。素直だ。っていうかこれ、寝ぼけてるかも。かわいー。
ちょっかいを掛けたい気持ちを押さえ込んで、でもこっそり頭とか首筋とかなでながら目を白黒させてる生き物を構ってやった。
「そ?良かった。じゃ、元気?今」
「ええと。…そ、そこそこは?」
「ふぅん?」
一応考えてから返事をするあたり、やっぱり真面目だよね。でもそろそろちょっとだけ正気づいちゃったかも?だって不審そうな顔してるもん。
ま、忍としては致命的に今更すぎると思うんだけどね。
「…あのー。それでその、どちらさまでしょうか?」
「あ、隊長だったんだけど。覚えてない?この間の任務」
「隊長…隊長!?あ!銀髪!なぜこちらへ?何かあったんですか?」
「ううん。特に」
「えーっと…その、ではご用件は?」
取り乱してるとこもおもしろい。怒っていいのか迷ってるよね。今盛大に寝ぼけてなかったら、もっと噛み付いてくるはずだもん。今はすっごく素直だし、寝ぼけると敬語になるのはやっぱりあの父親の影響?
「夜這い?」
「よばい?」
この顔は確実に意味がわかってないよね。何を言ってるんだろうって顔がたまらない。分からなくてごめんなさいって顔中に書いてあるみたいだ。
「かーわいいなー」
「…あの、申し訳ありませんが、後日にしていただけませんか?俺洗濯も溜まってるし、買い物行ってねぇから飯食ってねぇし、装備の手入れもしてないし、あと実はまだ眠いんです」
「ん。そーね。元気じゃないとねぇ?」
その必死さに胸がときめく。今すぐにでも食ってしまいたいくらいだけど、流石にまだ、ね。鷹揚にうなずいて、ついでにさりげなく撫でてやったらそのままぺこっと頭を下げた。
「申し訳ありません」
「うん。いーよ。寝てて?」
布団をかけてやって、ついでに隣に転がっても、抵抗するなんてことすら思いつかないみたいだった。
「ふぁい…うー…おやすみ、なさ」
そして横になった途端寝ちゃったんだけど。様子を見に来るのが早すぎたかも。おかげでいっぱいかわいいものみられたんだけど、悪いことしちゃった。
「下忍ってみんなこんな感じなのかなぁ?弱っちそうだし、唾つけとかないと取られちゃう」
「かあちゃ、と、ちゃ」
鼻先をつつくとにへーっと笑ってくっついてきた。無防備だねぇ。
「…ごはん、作ってあげるね?洗濯もしとくし、ちゃーんとうちの子になるまで飼ってあげる」
「ごはん?ごはん…らーめん」
食い物への反応は、そういえば任務中もすごかったけど、今もモゴモゴ口を動かしてにこにこしている。おもしろいから指を突っ込んでやった。
やっぱりもごもご言いながら幸せそうな顔をしたままだ。ま、でもかまれそうだからそろそろやめとこうかな。
だってそんなことされたら我慢できなくなっちゃうもん。
「最初からやっちゃうのもいいけどねー。…もうちょっと育つまで待ってあげるから、ちゃぁんと俺のモノになってね?」
「ふが?うー?うー」
「おもしろーい」
いなくなった指を求めてさまよう手に口付けて、布団の中に押し込んでおく。ついでに買い物と、後は洗濯と飯だっけ?起きるまでにはきちんと準備しておかないと。
「うぅ?う、ん」
もぞもぞしていたのが急に止まって、すーすーと寝息を立て始めた。完璧にねちゃったみたいだからおそろそろ始めるか。
「楽しみにしててね?きちんと育ててあげるから」
口付けにも一瞬眉を寄せただけで寝ることを優先している子どもにほくそ笑んだ。
良いものみつけちゃったよね。俺。
浮き足立つ俺が飯を作って洗濯も済ませ、ついでに一緒に入ろうとお風呂も準備しておいたんだけど、寝ぼけたイルカが母ちゃんって呼んできて盛大にかわいかったからつい。
ついその日のうちに俺の家に浚っちゃったのは若気の至りに入るのかも?
ま、責任とってきちんと育ってから全部綺麗にいただいて、今もちゃんと飼ってるんだからいいよねー?
「なにしてんですかカカシさん…にやにやしながらパンツ畳まないでくださいよ」
「えー?だって育ったなぁって」
昨日も散々弄り倒した尻をなぞるとあっという間に真っ赤になって逃げて行った。もー毛が生える前から知ってるのに相変わらずおもしろいよね!反抗期も最高だったもん!
「…カカシさんの変態」
ふすまをちょっとだけ開けて、その向こうからぼそぼそ文句を言うイルカは、もうとっくに中忍になって、しかも大きくつやっつやに育った。
「変態はきらい?」
わざとらしい質問にも、泣きそうな顔をするのがたまんないよね。
「…変態は嫌いだけど、でもアンタは…俺のだ」
抱きついてきた体を抱き締めたままベッドに運んだ。
さっき畳んだパンツは早速後で使うことになるだろう。
しあわせ。
胸に満ちる暖かなものに酔いながら、あの日やっぱり捕まえといて良かったなーなんて自画自賛しておいた。



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適当。
赤頭巾ちゃんはお母さんのふりをした狼に食われてしまったという話。
ご意見ご感想お気軽にどうぞ。

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