ふさふさ(大)妻との出会い編(肉食獣のいる生活もしも編)

もし肉食ぬこと子どものころ会ってたらどうなってたかなぁという妄想の中で登場する、ふさふさ(大)=16歳くらいのサクモさん馴れ初め編をお送りしておきます。
ブログからお引越し!


いつもの任務のはずだった。
そこに彼女がいなければ…。

陣の中心の木の上で気配を消し、休憩も兼ねた見張りをしていた。
先ほどまでの戦闘で、殆どの敵は退けることが出来たが、味方にも負傷者が出た。
俺たちの…暗部にもそれなりの被害が出るくらいだ。一般の忍はいうまでもなく、怪我人だけではすまなかった。重傷者も多い。
仲間には体を休めるように指示を出し、俺は一人、敵の残党を警戒するつもりだった。

「隊長!そろそろ、交代します!一番消耗しているのはアナタでしょう?」

「いや、大丈夫だ。」

気遣いが細やかな部下は、昔から俺が動くといつの間にかこうやってフォローしてくれる。
何も言わずに出てきたが、返って裏目に出たようだ。

なんと言って休んでもらおう。

…そんなコトを考えていた思考は、一瞬で吹き飛んだ。

「何かありましたか?隊長。」

俺の様子がおかしいコトにすぐ気付き、副官でもある部下が声を掛けてきたが、まるで耳に入らなかった。

「…。」

「…?どうしたんですか…!?」

そこにいたのは一人のクノイチだった。

どうやら今回の戦闘で出た負傷者の治療をしているらしい。真剣な顔で治療をしたと思ったら、花のように笑う。
足元に咲く白い花にまで笑顔を零し、一生懸命になってくるくると良く働く彼女が…。

一瞬だけ自分に視線を向けて微笑んだ。

同じ陣にいるとはいえ、暗部相手に自然に笑顔を向ける忍は珍しい。
だが、そんなことよりも。

…欲しい。

ただそれだけを強く思った。

だが彼女は、会釈だけして去っていく。このまま、俺を置いて。

「隊長…!?」

制止する仲間の声がしたのかもしれない。

だが気付けば彼女の前に降り立って、その白く柔らかい手を握り締めて、こう言っていた。

「結婚して欲しい。」

「え?」

驚いた顔も美しい。優しげな瞳が見開かれて、面の中の俺の瞳をまじまじと見つめいてる。

欲しい。どうしようもなく欲しい。

…ならば、このまま攫ってしまえばいい。

「え??なんですか?どうしたんですか?…きゃっ!」

慌てふためく彼女を大切に抱き上げて、そのまま走り出していた。

「わー!?隊長―!?」

悲鳴じみた仲間の声すら聞こえないくらい、俺の頭は彼女だけに染まった。

抱き寄せた華奢な身体と伝わる体温が愛おしい。
狂いそうなほどの幸福感に包まれて、俺は彼女をそのまま人気の無いところまで攫った。

*****

「あ、あの?」

そっと地面に彼女を下ろす。

彼女の体温が離れていく腕が、ぞっとするほど寒々しく感じた。

戸惑う彼女が、自分を見ている。…自分だけを。

「返事を、教えて欲しい。」

ああだが、断られても諦められるだろうか?
このまま彼女を俺の腕の中だけに閉じ込めたい。

「な?なんでしょう?なんでこんなことを?」

きょときょととよく動く瞳が愛らしい。短く整えられた艶のある髪がふわふわと風をはらみ、はじかれた光が彼女を輝かせているように見えた。

だが、どうやら、聞こえなかったらしい。

そういえば副官にはよく、「隊長の言っているコトは時々分かりにくいので、相談させて下さいね」といわれているから、これはもう一度きちんと伝えるべきだろう。

「結婚して欲しい。」

なぜだろう?こんなに鼓動が早いのは?
返事を待つまでの時間が長すぎて、時が止まったようにすら感じる。
どうしたらいいだろう?欲しいという思いを伝える方法を他に知らない。彼女への思いを言葉にしたいのに、出てこない。

勝手に彼女の方に伸びてしまう手を必死で堪えていると、彼女が、ふわっと笑ってくれた。

「あの…結婚は、その、いきなりそういう話をする前に、付き合うとか、話をするとか…お互いに何も知らない状態では…!」

つっかえつっかえ、一生懸命に話してくれる。
桜色の唇からこぼれる言葉が、なんて美しいんだろう。
意味まで理解するのに時間が掛かったくらいだ。

「そうか。…では、付き合って欲しい。」

「あ、…そうですね?とりあえずお友達になりましょう?」

友達…そういえばそう呼べる存在はいない気がする。
仲間は大切だ。守るべき物だ。だが、彼女は…。

今まで自分が灰色の世界に生きてきたんだと知った。彼女が…彼女だけが、色鮮やかに世界に存在している。

…友達というのとは違うと思った。

彼女と俺とを隔てている面が邪魔だ。これがなければ彼女をもっと見つめることが出来るのに。

掟のことなど過ぎりもしなかった。

「…!」

面を取ったコトに驚いた彼女が、言葉もなく自分を見つめている。

「泣かないで。」

優しい声、そして彼女の手が俺の頬に触れた。

ああ…温かい。

「泣いて、いるのか?」

「自分でわかってなかったんですか?」

呆れたような声なのに、その瞳は慈しみに満ちて。
ただそれだけで満たされる。

「分からない。ただ、俺はアナタが欲しい。」

「しょうがないですね?」

そういって、柔らかく微笑む彼女が、俺の全てなのだと知った。

世界が彼女だけに染まり、見詰め合うだけで息が詰まるほど幸福で…だから、慌てふためいた副官が、俺を探し当てるまで、陣が大騒ぎになっていることなど気付きもしなかった。

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ふさふさ(大)ド天然犯罪的運命の出会い編!
大プッシュを頂けましたのでこそっと増やしておきます!
ではではー!ご意見ご感想などお気軽にどうぞ!!!


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