好き(適当)

「殺したかったんだもん」
そう素直に白状した笑顔の少年相手に、クナイを突きつけられたのはついさっきのことだ。
恋人が任務から戻らずに早2週間。
期間を知らせずに発ったから、きっと長いんだろうとは思っていた。
帰れなくなっても、「言わなかったら待っててくれるでしょ?」なんて最低な台詞を吐いたときは殴ってやったものだが、結局それを続ける男を黙認したのは、そこに俺への執着をみたからだ。
「ずっとずっと一人で待ってると思ったら大間違いだ」と詰ったときに、薄笑いを浮かべて「うん、そうして」なんていうから、泣きそうな顔でそんなことを言うから。
だから俺は何も言えなくなっただけだったのに。
寝首を掻こうとした恋人にそっくりの子供は、その隠し子にしては育ちすぎている。
と言っても、十代半ばで子供を作ったっていうなら話は別だが。
…ただ、それを否定するものは俺の勘だけ。
この姿だがこの言動。
まず間違いなくこれは俺の恋人だ。
「アンタ、何があったんですか」
殺意なく刃を向けた子供を縛り上げたときは、同棲している相手狙いの刺客でも来たのだと思ったものの、きょとんとした顔を見ればそれが間違いだったのだとすぐに知れた。
「何が、あったって…?あれ、何があったんだっけ?」
埒が明かない。恐らく何がしかの術を食らって記憶が飛んだのは間違いなさそうだ。
この姿の時に術を食らったのか、それとも変化まで敵の術なのかは判然としないが、由々しき事態だってことくらいは分かる。
里の誇る上忍、戦力の塊がこの有様。
中忍の俺に押さえ込めるなんて論外だ。
…いつ命を狙われるか分からないというのに。
「くそ…っ!火影様に…!」
医療忍術の最高峰にある女傑なら、この事態に眉をひそめるくらいはしても、解決に導くことなど造作もないはずだ。
少なくとも原因くらいは導き出してくれる違いない。
子供一人担ぎ上げるくらい簡単だ。…この子供が命を狙うのを諦めてくれさえすれば。
「ああ、思い出した。…だってアンタで頭が一杯で苦しいから。だから。でもさ、消そうとしたらもっと苦しい。なんでだろ?」
不思議そうに見つめる瞳。
まっすぐすぎるそれに邪な喜びがばれやしないかとひやひやした。
子供らしい素直さなのに、こんな姿でもやはりどこまでも素直になれない男だ。
「好き、なんてものはね、厄介な感情なんですよ。カカシさん」
「…っ!」
俺の苦手とする稚拙な幻術に、写輪眼もちのはずの子供があっさり落ちた。
抱え上げた体は子供らしく自分よりほんのり暖かい。
「治ったら、覚えてろ」
夜の闇に飛び出した体に、無意識に縋る子供を愛おしいと思った。
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「ごめんなさい」
しょぼくれた犬みたいな顔はしているが、あの時の子供はもういない。
五代目曰く、術返しが一応成功していたせいだろうと笑っていたくらいだ。後遺症もない。
「悪いと思ってるなら、どうします?」
嫌みったらしい口調と怒りを込めた笑顔は、少しわざとらしかっただろうか。
どうやら俺の演技に男は気付いていないようだが。
「いやだ。別れない。絶対だめ」
その必死さに胸が疼く。それと同時に湧き上がる笑みを押し殺すのも一苦労だ。
「で?」
ダメ押しのように冷たくあしらうと、病み上がりの癖にすがり付いてきた。
「好き。誰かのものになんてならないで」
「さっさとそう言え!馬鹿野郎!」
これで、待っていてやれる。
もう二度と、自分以外と幸せになれなんていわせない。
「うん。ごめん。ごめんなさい」
謝る男がしばらくはこの反省を忘れないでいることを期待して、甘い顔はもう少しだけ見せてやらないつもりだ。
「しばらく反省してなさい」
そう言って…キスだけはしてやったんだけどな?


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適当!
風邪悪化しました('A`)。反応鈍くても生あったかく見守ってあげると喜びます。
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