脱いで

「脱いで?」
当然とばかりにそう言われて、促されるままに服を脱ぎ捨てた。
洞察眼として名高いその赤い瞳せいだけじゃなく、その視線の強さで心も体も見透かせるような気がした。
検分するような視線は、決して色を帯びたものじゃない。
ただ…その執拗さに自分が勝手に反応した。
「あ…」
うろたえる暇もなかった。
後ろ手に縛られた腕と、転がされた自分の体に驚くことができたことだって奇跡かもしれない。
全てが、一瞬のことだった。
そう、吐息がかかり、顔が触れ合うほど近くに男の顔が寄せられたのも。
「ねぇ?誘うなって言わなかった?」
かすかな怒気を混じらせた声で、男が喉に触れた。
誘ったつもりなどない。
…男はこの戦場の忍全てを率いる大隊長で、つまりは上官だ。
すれ違いざまに「誘うな」と囁かれて、からかわれたか聞き間違いだろうと思ったのがせいぜいだ。
思わせぶりに自分にだけ聞こえるようにそう囁いた意味なんて、他に思いつかなかった。
それなのに、今の自分は急所を押さえられ、手足の自由さえままならない。
腰の上にまたがった男は、見た目の細さからは想像もできないほど俺の動きを易々と封じた。
なぜ、こんな?
「誘うって…誘ってなんか…!」
いないと続けるはずだった言葉は、俺の唇ごと男に奪い取られた。
「自覚、ないのね?ま、いいか。…これからたっぷり思い知ってもらうから」
*****
…後になって、それが告白のつもりだったのだと知った。
随分物騒な物言いとそれからの行為が許し難いものだったので、男をろくでなしだと思いこんでいたが、どうやら想像以上に律儀だったものらしい。
「だって、どうしても欲しくなったのはアンタが初めてなのに、アンタふらふら愛想ばっかり振りまいてるから!」
要するに、思い知らせるというのは、自分の気持ちをということだったようだ。
…困る。とにかく困る。
なにがって、あの時の熱を忘れられなかったのは俺もだからだ。
一時の気まぐれだろうと思い込んでいた行為は、あの最初の視線よりも執拗で、男としての矜持など粉々に砕かれるほどその快楽に溺れた。
みっともなく喘いで、縋って、強請って。
…そうして身動きさえままならない体に苦しみながら、朝になったら配置換えを言い渡されて、里に帰されたのだ。
だから、絶対に今度あったら殴ってでも話をつけてやろうと思ってたのに。
「好き。あの時はなんて言えばいいか分からなかったけど、アンタだけが欲しい」
こんな殺し文句まで覚えてこられて、勝てるなんて思えなかった。
「最初から、そう言え!」
怒鳴り声が涙にかすれて、俺を抱き寄せる男の背に手を回した。
…こんな馬鹿がきっと俺の唯一なんだと溜息をつきながら。


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脱衣祭とかどうだろうかと妄想しながらうっかり増やしてみます。
…マンネリ…?…orz。
ではではー!ご意見、ご感想などお気軽にどうぞー!


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