とある上忍のけいかく24(適当)


これの続き。



一つ、分かった事がある。
どんな形であれ、イルカ先生は想定した以上に俺のことを大事に思ってくれている。
自分勝手に飛び出していったのに、追いかけて探しに来てくれた。今思えばガキっぽすぎる。
挙句、ちょっとしたことで悪夢を見て、魘されて、迷惑ばっかりかけてしまった。
イルカが謝るから。少しも、欠片だって悪くないのに。
…完全に八つ当たりとか、とばっちりってヤツだったのに。
それなのにこうやって同じ布団で眠ってくれて、魘された俺が落ち着くまで色々話をしてくれて、それも全然押し付けがましくなかった。
掛けてくれた言葉は同じでも、父さんが逝ってしまったときに寄ってきた連中とはまるで違う。
大丈夫かなんて。
裏で厄介事をどうやって誰かに押し付けるかってことしか考えていない連中から言われてもね。あとは陰口とか、ざまあみろなんて騒ぐ奴らも多かった。
でも、イルカはちがう。
変な慰めとかじゃなくて、ちょっと茶化したりぎゅうって時々潰れそうになるくらい抱き締めてくれる。
ただ八つ当たりしても受け止めてもらえる理由は、きっと俺の求めるようなモノじゃない。
多分それは寄る辺のない子どもへの同情とか、後は多分庇護欲とかなんだろうと思う。
それでも、俺が望むような形じゃないにしろ、いい大人が心配して泣いてくれてくれるくらいには大切にされている。
つまり、それだけ俺にはチャンスがあるってことだ。
開けっぴろげで無頓着で隙だらけのようでいて、鈍すぎるせいで意外とそこがネックになって女には近づきがたいらしいってところまでは調べ上げた。
結婚相手にはいいけど恋愛はできないとか、ふざけたことを言っていた同僚らしき女には入念に暗示をかけておいた。
…手に入らないぶどうはすっぱいからって、俺のイルカを道具みたいにいうからそれ相応の手は打たないといけないもんね。
こんなに純粋で不器用だけど一生懸命で強くて、優しい人、絶対に皆欲しがるに決まってるんだから。
今のうちに…俺が元の時の流れに戻るまでに、この人を手に入れておきたかった。
俺はきっと、あの気狂いの思い通りに動いているんだろう。
癪に障るけど、それが一番、この人を俺のモノにするための近道なんだから割り切ることにした。
女は危険だ。イルカはかなりそういうことにはぼんやりしてるから、体で絡め取って、孕んだことを理由に縛り付けようとするかもしれない。もちろん男も。といってもこの人の側にその気がありそうなのはいなかったから大丈夫そうだけど。
警戒と処理を同時に行うなんて日常茶飯事だけど、任務なんかよりよっぽど興奮した。
敵だ。命じられて敵と認識せよと言われたわけじゃなくて、明確に俺にとってだけの敵。
心理系の術を身につけておいて良かった。一番使いたかった人はもういないけど、こうして敵を排除するにはもってこいだから。
おかげで蹴落とす必要がありそうなのは、あの金髪の…先生と同じ色を持つあのガキだけ。もう一匹同じ班にもいるうちは一族らしいのがいるけど、あっちは多分先生の手をとるだけの勇気はないだろう。
でもほだされやすくて心配だ。
あのガキさえ排除すれば今のところは大丈夫そうだけど、なんだかんだいって世話好きだから、一々知り合いや生徒のことを心配しててそこが気に障る。
…でも、一番近くにいるのは俺だ。
心も、体も。今だけじゃなくてずっと先も。
「んー…あ、れ?カカシ!」
隣に俺がいないと思って飛び起きたイルカを、抱きつくことで出迎える。
「おはよ。ごはんできるよ!」
「へ?おお!?こんな時間か!すまん!俺が作ろうと思ってたのに!」
「昨日遅かったじゃない。でもごはんはちゃんと食べなきゃ!」
「へへ!そうだな!…夕飯は任せとけ!」
「うん!」
あの日から凄く気をつけてごめんとか、それでもやっぱりイルカは律儀だからいっちゃうことはあるけど、あんまり言わないようにしてくれている。
「…でも、だな。ちゃんと作る前に起こしてくれよ?俺はまあそんなに上手くないが、一緒につくろうな?」
「…!うん!」
こういう所も大好き。
まだ、迎えは来ない。いっそ永遠にこなくてもいいとさえ思う。そんなこと、期待しても無駄なのは分かってるけど。
なら、それなら。…敵の排除に全力を尽くすしかないじゃない?
女たちも、後はその気のある男も排除した。
目下の敵はあのガキだ。
イルカがちょこちょこ会話に出すし、まあ他のガキのこともだすけど、心配性だから。
それにのガキの方が、しっかり警告してやったつもりだけど、頭はあんまり良くなさそうだったっけ。油断できない。
…なにせあの先生と、それから多分だけど、赤いハバネロの息子だ。顔立ちなんか枯らしても間違いないと思う。
頭の中身はともかくとして、将来有望なのは確実だ。
「イルカ先生」
「ん?どうした?」
ぐりぐりと頭をなでられながら、うっとりと目を閉じる。
…これは、俺の。だからへこたれてなんかいられないんだよ。
「あー…顔とかあらってくるから、ちょっと待っててくれな?」
「うん!」
いそいそと洗面所に消えていくのを見送って、幸せをかみ締めた。
あとちょっとだけ、ちょっとでいいからこの生活が続くことを祈りながら。


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適当。
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