とある上忍のけいかく2(適当)


これの続き。



「ある日突然俺の前に現れた胡散臭い男は、自分はお前の未来なのだといった。
「頭おかしいんじゃないの?」
素直な感想を小声で零したのを聞き逃さず、しかも怒ることもしないどころか、うっとりと目を細めて見せたのだ。
「わからないかもねぇ?まだ。出会ったらわかるよー。運命に」
胡散臭い。しかも狂人なのかもしれない。
だがそれでも…運命とやらに心惹かれた。
うんめい。それは父も先生も互いの番のことをそう呼んではいなかったか。
「なにそれ」
興味がなさそうに精一杯振舞ったつもりなのに、男はニヤリと、それはもう極悪な笑みを浮かべてこう言った。
「ねぇ。手に入れたいでしょ?…運命を」
確かに俺なのかもしれない。覆面とおろせば父に良く似て、だが少しだけ母にも似た顔が目の前にある。
なにより悪巧みをする時の顔に、心当たりがありすぎた。
「なにしろっていうのよ?」
「話が早いね。流石俺!…ちょっと時を越えてもらうだけ」
ちょっと散歩に行くくらいの気軽さで、楽しげに言っている。
やはりこの男は狂っているのかもしれない。
「禁術だろ?火影様が許可するはずがない」
まだ子どもとはいえ一応下忍で、もうすぐ中忍になる予定だ。
人手不足というのが要因の一つではあるが、それでも能力を認められているのは確かで、コイツが俺を浚って情報回収や草に仕込もうとしているのだとしたら油断するわけには行かない。
コイツが示した根拠は、何もかもが曖昧で、冷静になってみれば信じるに値しない物ばかりだ。チャクラなど偽装できるし、外見なんてもっとだ。変化の気配がしなかったとしても、俺の知らない術や薬なんてたくさんある。
逃げるか。それとも捕らえるか。
警戒心も隠して、できるだけ馬鹿にしたような口調で挑発した。暴れてくれたら捕縛しやすいから。
でも、男はうっかりしてたみたいなことをもそもそ言ったかと思えば、いきなり肩に手を置いてきた。…逃げようとしたのがばれたのか?
「いやーすっかりいうの忘れてたよ!ま、それは大丈夫なんだよねぇ。だって俺が火影」
なる気はなかったけど側にいてくれる人がいるからとか、権力も使いようでおいしいとか、ろくでもないことを口にしながら脂下がっている。
火影、火影って…これが?
「木の葉の里は大丈夫なのか…」
真偽のことより、このアホ面のほうが気になった。まさか。まさか、な?
「もーイルカ先生みたいなこと言って!大丈夫だって!火影なんて器じゃないんだけど、今はほら、平和だし、俺もそこそこがんばったのよー?」
晩御飯がんばってつくったのーって言う時の母さんみたいなノリでそんなこといわれても…。信じる馬鹿はいないだろうに。
「証拠もなしに…」
穿き捨てるように零した言葉は、我ながらやさぐれまくっていた。
だって、コイツ馬鹿な上に狂ってるし。
「あるよー。まずはほら、火影印!」
「え」
ホンモノだ。こればっかりは偽装できない。継承の儀を執り行った後、チャクラを同調させてある意味この印章との契約を結ぶからだ。
なんてもの持ってきちゃってるんだよ!
…ちょっとだけ先生に似てて恐い。先生も火影候補だって噂があるし、こういう行動とるのって、もしかして火影病みたいなもんなの…?
「信じてもらえたかな?」
「…それ以前にアンタなにやってんだ火影の癖に…」
この男の言葉が真実なら、このアホが未来の俺なわけで、落ち込むなという方が難しい。
だがそんな俺の様子にもかかわらず、男は相変わらずご機嫌だ。
「会ったら一瞬で分かるよ。俺の…つまりお前の運命はうみのイルカ」
術の気配にぞっとした。
強制的に飛ばすつもりだ。…でも、一体どこに?
「ちょーっとびっくりするかもしれないけど、がんばってねー!まずは5歳8ヶ月のお前からはじめるから!」
「クソ火影…!」
世界が、歪む。
脳裏を過ぎるのはこのまま戻れないのかもしれないという恐怖と、それからあのどうやらホンモノの火影らしい頓狂な男への罵倒。
…それから、運命と男が呼んだだれかのこと。
痛みはない。ただ天も地もない歪んだ空間に吐き気がする。
せめて…せめて運命とやらがホンモノでありますように。
それだけを祈って、俺は意識を手放した。

うみのイルカ。俺はイルカ先生って呼んでた。ちゃんと覚えとけよ。

そんな身勝手な台詞に毒づきながら。


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適当。
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