とある上忍のけいかく19(適当)


これの続き。



「たのもー!」
今朝の夢見は最高によくて、気合も十分。カカシに朝飯を食わせて、それから昼飯も用意して、もちろんたっぷり撫で回して不安そうな顔で俺を見送るカカシを置いて、執務室に直行した。
「なんじゃイルカ。騒々しいのう?」
 うっ!まあその、ちょっとだけ気合が空回りしてるか持って自覚はあるが、この決意はそんなことで揺らいだりしない。
「カカシを…!俺に、下さい!」
 言っちまってからなんか間違っているような気がしたが、大体意味はあってるんだから大丈夫だよな?正式な養子縁組じゃなくても俺んちで保護する許可がどうしても欲しかった。
「ほっ?なるほどのう?」
 笑ってはいる。…でもじいちゃん…もとい、三代目の笑顔はたっぷり裏があることのほうが多いから、油断なんて少しも出来ない。
「だ、だめですか?やっぱり…。血継限界とか…」
 いや駄目って言われて引き下がれるかって言われると答えはもちろん無理になるんだが、特殊な管理が必要な場合もあるから一概に言えないのもある。チャクラが暴走しやすいとかな。そういう子はちゃんとそれを制御できるようになるまですぐに対応できる環境にいたほうがいいからな…。
でも、カカシはあんなに寂しそうな顔してるんだよ。駄目なら駄目で俺にその理由を示して欲しい。機密に触れるなら術印でもなんでも使ってくれて構わないから。
「いやかまわんが、おぬしはそれでよいのか?」
「へ?いや親御さんが黙ってないでしょうし、里にいるときだけでも俺んちで過ごさせたいんです。駄目ですか?」
「…親は、おらん」
「え」
 一瞬で腹が冷たくなった。…そうか、やっぱりか。あの幼さで母親を失うなんて。…忍里には良くあることだけど、辛かった世な…。
「母親はずいぶんと幼い頃にな。父も…」
「そ、う、です、か」
 父親までなんて、知らなかった。いいたがるようなら聞こうと思ったけど、一人で静かに何かを考えている事が多いあの子に聞けなくて。
 ああくそ…もっと、もっと一杯話をきいてやりゃよかったのに、何やってんだ俺は。
「お主が泣くなというのに」
「っすみま、せっ…でも…!」
「…まあよい。機密は守るのじゃぞ?」
「はい!」
 守るとも。命を賭してでも。それはカカシだからとかじゃなくて、忍として当然だ。
 ま、まあ…気合は余計に入っちゃってるかもしれないけどな!
「暗闇に棲むことが、アヤツにとって良いことかどうか分からぬしのう」
「や、やっぱり無茶な任務に…!?」
「…実力相応のものじゃが、確かに高ランク任務ばかりを選んでこなしよる」
「そんな…」
 あんなにチビなんだぞ?でっかくなったとはいえ一緒に寝たいとかいってくっついてくるし、朝も起きて飯作ろうと思ったらもそもそくっついてきて一緒に作ってくれたし離れたがらないし!
 うちの生徒と変わらない。…まだ、早いだろ?早すぎる。
 俺たちの世代は確かにあの年齢で戦場に放り込まれたけど、今は見かけだけかもしれなくても平和が保たれているんだし、あんな地獄を他の子どもに味合わせたくない。
 ましてや親を亡くしているのに、これ以上あの子から何を奪おうと言うんだ。
「側にいてやれ」
「へ?」
「イルカよ。アヤツはお主の存在を支えとしておる。…なに、血を継ぐことに関してはいくらでも手があるわい」
「へ?え?え?」
「ではの。くれぐれも頼んだぞ」
「はっ!拝命しました!…いや、命令じゃなくても、俺はあの子を!」
 よく分からんことも言われたが、許可が出たってことだもんな。言われなくたって守るとも。
 大事な大事な俺の。俺の…家族って、呼んでもいいんだろうか。あの寂しそうに膝を抱えて、いつも辛いことに耐えてきただろうあの子を。
「子どもに好かれるヤツじゃな。まあよい。色惚けするでないぞ?」
「いろぼけ?」
「なんじゃ。違うのか?」
「え?何の話でしょう?」
 色ボケっていうのは…ナルトの編み出した術で鼻血出したのひょっとして見られてたか…!?い、いやでも!あれは反則だろ!
 後は没収したエロ本は俺が鼻血吹くのを知ってる同僚が撤去してくれたしな…?なんだ?どれだ?何の話だ?
「…お主がそれでは手も出し難いか。ふむ。無体を強いられたら言って来るのじゃぞ?」
「えーっと。はい」
無体ってなんだ?まさかカカシが?…確かにカカシがあの術使ったらそりゃもう絶世の美女になるだろうから、そんな物を見た日には鼻血で失血ししかねん。
「機密の多い身ゆえ、宿舎を引き払うことは許可できんが、身一つでお主の家に泊まるくらいならかまわん」
「はい!」
しかつめらしい顔で言われたから、当然こっちも顔を引き締めて答えた。
内心は頬が緩んで踊りだしたいくらいだったとしても、そこは俺だって忍。扉を閉めるまでは頑張ったとも。
扉が閉まるなり嬉しすぎて足が縺れて転んじまったのは…まあ、うん。今度から気をつけよう。
*****
仕事が終わるのが待ち遠しくて仕方がない。先生どうしたのーってやたらと聞かれるくらい、俺は浮かれた気分が隠せていなかったらしい。
うきうきしながらアカデミーを出て、そこでいつかの特等席にちょこんと座って待っていたカカシに思わず飛びつくように抱き上げてぐるぐる回しちまったくらいには、俺は舞い上がっていた。
「三代目が俺んちにいてもいいっていってくれたんだ!カカシさえイヤじゃなかったら、いくらでもいてくれていいからな!」
 今日からカカシはうちの子だ!
嬉しくて嬉しくてわしゃわしゃ撫で繰り回して、さあ帰るぞと意気揚々と手を繋いだ途端、カカシがすごい勢いでしがみ付いてきた。
うおーかっわいいなあ!とか悶えそうになりながらやに下がった顔を近づけたら。
「へ?」
「あっ…!」
 今、ちゅって、ちゅってしたよな?キスってやつだよな?
真っ赤になって照れてるんだか間違って当たっちまって驚いてるんだかの判断は俺にはつかなかったけど、なんていうかだな。
くっそ!かわいいじゃねぇか!って。
闇雲にときめいて、なんだか分からんが犯罪者になったような後ろめたさが…!ま、まあこんなのモノの弾みだし!キスくらいどうってコトないけど、恥ずかしがるカカシがかわいすぎるってだけで!
「お、俺、買い物行って来ます!」
「え?わっ!ま、待てって!俺もいくから!」
テレやさんでかわいいというかなんというか根本的な問題が。
オレは、もしかしてロリコンだったのか…。
いや別にこんなちっちゃな子にどうこうしたいとかじゃないんだ。でも嬉しいってのは…ちょっとまずいだろ。やっぱり。父ちゃんにちゅーとかしたことないしな…。
許可貰っといてなんだが、どうしよう。もしかして俺は…俺はもしかして犯罪者予備軍なのか。
無体とかいってたもんな。三代目はお見通しだったとか?そんなつもりは全然ないけど、手を出すと思われるくらい確かに俺の心配具合は異常だったんじゃないだろうか。
「あ、あやまらないから!」
「え。あ、まあ、事故だ事故。気にすんな!」
「…イルカせんせのにぶちん」
「へ?」
 動揺の真っ只中にありながら、カカシが口をへの字に曲げているのを見た。
 なんだかよくわからん。わからんが、とにかくカカシがあの闇に濁った瞳をしていない事が嬉しかった。
「買い物、行こう?」
「おうとも!」
 飯食って風呂入ってそんで一緒に寝て、そういう普通の暮らしを、カカシにたっぷり味合わせないとな!
 なんてたって、今日からカカシは俺んちの子になるんだから!
ゆめみぎい
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適当。
舞い上がりんぐ中の中忍。それは狼ですと誰も教えてはくれませんでしたとか。
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