真夜中の訪問者(適当)

掠れた声で小さく悪態をついた。
軋む体は、もうしばらくは言うことを聞いてくれそうにない。
本来とは違う目的で酷使され続けたせいでもたらされる違和感にはもう慣れたが、目覚めた時のこの情けなさには慣れることができないままだ。
隣では健やかな寝息を立てる男が平和そうに眠りこけているというのに。
重い体を横たえて見慣れた天井を見上げると、この状況が幻術にでもかかってるんじゃないかとさえ思えてくる。
せめてこれが任務なら。
…俺はもっと簡単に割り切ることが出来たはずなのに。
初めてのときもそうだった。
あの日、眠っていた俺に圧し掛かり、好き放題に犯したくせに、目覚めた男は何も覚えていなかった。
どろどろになった布団で目覚めた男は、俺と部屋の惨状を見て、息を飲みさえしたのだ。
正気を失っているらしいことは、行為の最中に気付いたが、全く何も覚えていないとまでは思わなかった。
何があったのかとうろたえるばかりの男を怒鳴りつける気力さえ失い、出て行けと言ったのだが、男は自分のせいだからと甲斐甲斐しく世話を焼いた。
ソレが俺にとってどれだけの苦痛だったかなんて想像もできなかったんだろう。
地に頭をこすり付ける勢いで謝って、俺の怒りに追い立てられてやっと去っていった男は、だがそれからしばらくすると、またそっくり同じ行動を取った。
そうして、今度は俺が、その全ての痕跡を消した。
覚えていない男は、はじめてのとき以外にまだ俺を抱いているなんて考えもしていないだろう 。
本人には寝ぼけて俺の家に来るのは止めてくれとしか伝えていない。
だから…きっと、男は自分が抱きしめて眠っている相手に何を強いているか気付けないでいるのだろう。
理由は知らない。分かっているのは男に単独任務が与えられた夜には、ほぼ確実に俺の家に上がり込み、無体を強いるというだけだ。
軋む体を誤魔化すように起き上がった。
これから…眠りこける男を抱き上げてシーツを片付け、再び寝かしつける仕事が待っているからだ。
「あーあ」
いい加減自分も馬鹿だ。
男は覚えていないのに。
あの日、俺の体に縋り、腰を押し付けながら、「たすけて」なんて言うのが悪い。
…どうにかしてやりたいなんて、思ってしまった俺が馬鹿すぎる。
「イルカ、せんせ…」
むにゅむにゅと寝ぼける男は、空腹を満たした獣のように幸せそうに眠っている。
…いつか、この関係に破綻が来るにしても。
「アンタが来る内は…」
俺はこの男を突き放せないだろう。
甘えるようにすりよる男に涙を一つ零して、俺はいつかこの寂しい獣が幸せになることを祈った。


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適当ー!
実は確信犯だったら恐ろしいという話?

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