喉が痛い。 …あれだけ声を出し続ければそうなるのも当たり前か。 「うー…」 うめき声すらかすれて、痛みと、それから腫れぼったさを感じる。 原因は酷使したことにあるのだから、休ませればいいだけの話であるはずだ。 「痛い?」 心配そうな声に、あえて返事をしなかった。 痛みの原因のくせに。 …なんでそんな顔をするんだ。 他の、一番忘れたかった所の痛みと疼きが、誤魔化しきれなくなるじゃないか。 「ぁ、んたは、黙れ」 頭をかき混ぜ、なだめるように背を撫でる手が、余計な感覚を生んで戸惑う。 触れられるだけで背筋が震えるのは、快感のせいだなんて。 …本の少し前までただの知り合い程度だったはずの男に、なぜこうもかき乱されなきゃいけないんだ。 八つ当たりだ。完全に。同意は一応…あったような気がするから。 好きだと言われて受け入れて…そのくせこういう行為を想像もしなかった自分の方がずれているのかもしれない。 ただ甘える姿がいい年の男で上忍のくせにかわいく見えて、今だけかもしれなくても、それが自分のモノであることが嬉しくて。 …膝に乗りかかってきた男を撫でてやることなんて、今まで何度でもあったから、なぜそれが急に変わってしまったのかとっさ理解できなかったのが敗因か。 「好き」 そう熱っぽく囁く男が愛おしくて、だから頭をすりよせてなつくついでにいきなり唇を塞がれて押し倒されても、じゃれてるんだろうくらいに思っていたのだ。 「なんでだ」 抵抗はしなかった。…何をしようとしているか理解しなかったとも言う。 服を脱がされたときにおかしいと思ったくせに、深く考えることもしなかった自分の鈍さを呪った。 自分の恋人が男だからという理由で、外で女を抱くつもりもないし、男同士でそういう行為に及びたいと思うほどはそっちの欲は強くなかった。 溜まってきたら適当に出せばいい。 …恋人を泣かせるより、肉の欲求など適当に押さえ込む方がよっぽどいい。 それは男も一緒なのだと思っていた。 だが、男にとっては違ったのだ。 俺が怖がると思ったなどとぬかして、ついでに実際に何が起こったか理解しきれずにパニックを起こした俺に、男はいきなり、そういきなり、激しい愛撫の雨を降らせたのだ。 キスすらしない関係を甘んじていた訳じゃなかったらしい、妙に冷静にそう気づいたときには、見に纏うものなど何一つ残さずに引き剥がされ、代わりに与えられた…いや、押し入られた男の欲に、散々喘がされていた。 「うぅぅぅ…」 喉が、痛い。腰も、それからあらぬところも、それに…胸も痛い。 俺を熱心に喘がせながら、男はずっと愛を囁き、ついでにずっとこうしたかっただの、かわいいだの…余計な台詞までついてきた。 俺の方は唐突に襲われた嵐に、熱いだのいやだだのもっとだの…それから恋人の名を呼ぶくらいしかできなかったというのに。 いきなりなにすんだと叫びたい。いきなり情事の舞台になったせいでそれはもう大惨事といってもいいほどに酷い状況の居間にも、痛みにも、押し開かれた挙句に欲望をたっぷりと注ぎ込まれた箇所の異物感にも。 …それなのに、我慢させていたんだと思うと自分の方が悪かったように思えてくる。 心配そうな顔。それが幸せに輝いて見える。 こんな顔がみられるなら、もっと早くしてみればよかったと思えてしまいそうだ。 こんなになにもかも酷い状態なのに。 「イルカせんせ。…ごめんね?でも嬉しい」 素直な男だ。…だからまあ、いっぱつ殴るくらいは受け入れてくれるだろう。…それから俺からキスでもしてやればいいかもしれない。 一眠りして体力が回復したら。だが。 「…起きたら、殴らせろ。痛い。…それから、俺だって好きなんですよ。あんたが」 思いのほかはっきりいえた台詞に満足して、しっかり眠りの海に逃げ込んだ。 目覚めてから計画通りに殴ってキスして、…ついでに押し倒されたのは言うまでもない。 ********************************************************************************* 適当。 お祭り疲れで寝落ちしたとかまさかそんな…。・゚・(つД`)・゚・。 おくれてごめんなさい…! ではではー!なにかご意見ご感想等ございますれば御気軽にお知らせくださいませ! |