逃げちゃ駄目?(適当)


汗でぐっしょりと湿って重みを増したアンダーを脱ぎ捨て、飛び込むように風呂場にむかった。
頭から一気に冷水をかぶってからやっと、人心地つけた気がする。
「なんだったんだ?アレ」
任務でもないのに里内を気配を消して全力疾走するなんて、めったにない。
それでなくても暑い季節だ。
普通に過ごしているだけでも消耗するのに、わざわざ疲れると分かりきっていることなんてしたくない。
…だが様子のおかしい上忍をみてしまったとき、自分の中の何かが今すぐ逃げろと告げたのだ。
普段はエロ本片手に気だるげに歩いている上忍は、その日に限って手ぶらで、代わりにゾッとするような殺気を纏って、ゆらりゆらりと歩いていた。
歩くそこから凍り付いてしまうんじゃないかってほどに強烈なそれに思わず息を殺していた。
確かにそこに歩いているのに気配はない。
あるのは殺気だけだ
咄嗟に逃げ出した自分の判断が妥当だったのか今になってからすると疑問だが、そのときはそれ以外考えられなかった。
俺のイキモノとしての本能が、その場にいてはいけないと急き立て、戦場にいるときのように全身の神経を研ぎ澄まし気配を殺してその場を走り出した。
逃げ込むように家に飛び込んだ瞬間、湧き上がってきたものは間違いなく安堵だった。
それでもまだ己の中に確かに息衝く恐怖に指先が震えているのが分かる。
自分の家の、それも奥まった所にある風呂場にいることで、やっと少しだけ落ち着けた気がした。
「ねぇ。なんで逃げるの?」
耳元でそう囁かれるまでは。
「っ…!」
とっさに逃げ出そうとした体は、あっさりと地を這った。
殴られたわけじゃない。…強すぎる殺気のせいだ。
「あー。素っ裸で転がってると風邪引きますよ?」
好きでやってるわけじゃないのは分かってるはずだ。
だが男が余りにも普通で。それも少し呆れているように話すから、夢でも見てるんじゃないかと思えた。
「っ…ぅ」
せめて立ち上がろうともがくのに、体がいうことを聞かない。
男が、笑ったのが分かった。
「そうやってると、卑猥ですねぇ?」
…もう我慢するのやめちゃおうかな。
その台詞が、殺気を纏ったまま俺に触れた指先が、自分が身を守るものを何一つ身につけていないことが…その全てが恐ろしくてならなかった。
***** 「逃げちゃうのが悪いよね?」
そう呟いて、男は行為を開始した。
無造作に割り開かれた足の間に、同じ性を持つものの性器がつきこまれ、痛みよりもその状況がまるで受け入れられなくて、ただ呆然と男を見上げることしかできない。
「あっぁ…っ!」
恐怖から逃れるための代償行為か、単に施されている愛撫への反射なのか、勝手に反応し、鎌首をもたげた己の性器が滑稽だ。
己を犯す男を延々と見せ付けられ、短く吐き出される吐息ばかりが浴室に響く。
精神はとっくにこの状況を受け入れることを拒否し、経験したことのない、だが確かに快感としかいいようのない感覚に溺れ始めている。
「気持ちイイの?かわいい顔」
酷く嬉しそうに笑う男に、何故か安堵した。
…いつの間にかあの臓腑が腐りそうなほど強烈だった殺気が、鳴りを潜めている。
もう、大丈夫だ。
根拠もないのにそう思えた。
「ん、ん、ぁ…!ふぁ…!」
考えることを忘れたまま素直に快感に溺れる。
だが少しだけ残った意識の欠片が、男を、縋るように俺を抱くこの腕を、どうしていいのか途惑わせた。
「ん。ぎゅってして?」
掴まれた手をそそのかされるままに男の背に回すと、妙になじむ体温がおかしかった。
そうだ俺はおかしくなってるんだ。…だからこれできっといい。
触れる肌が心地いいのも、男が嬉しそうに笑ってるのも、俺が…俺がこの男を欲しいと思うのも。
「カカシさん…カカシさん…」
いつものように名を呼んで、だがまるで違う言葉のように聞こえるその甘さに、男が笑った。
「もっと、もっと呼んで?ねぇ…イルカせんせ」
名を呼ばれて背筋がぞくりと震えた。…恐怖じゃなく、快感に。
「カカシさん」
他の言葉を忘れたようにそれだけを囁く俺に応えるように。
男は延々と俺を揺さぶり、中を満たした。
…意識が途切れるその瞬間まで。
*****
いつも一人で眠るはずの寝床に誰かの体温を感じて、寝ぼけたまま飛び起きた。
「ふえ?え?…いってぇっ!」
「あーごめんなさい。ちょっとやりすぎちゃったかも?」
男が笑っている。
じわじわと…少しずつ思い出される昨日の…正確に言えば今朝までかもしれないが、己の痴態に憤死しそうだ。
「うぅぅ…!っいてぇ…」
腰の骨がずれてるんじゃないかってくらい体が痛んだ。
起きることも寝ることもできずに固まっていると、慌てたように、男の手がそっと俺の体を横にした。
「寝てて。後ろは薬ぬったけど、飲み薬は意識ないと怖いし。…もう大丈夫だよね?」
「んんー!?」
口の中に苦味のある物体とともに、ぬるりと男の舌まで入り込んできて、眼を白黒させている間に飲み下していた。
匂いで痛み止めの類であることは推察できたが、わざわざこんなことをする意味が分からない。自分で飲める…じゃなくて!
「アンタ、なにすんですか…」
色んな意味でホントにこの人なにをしてくれたんだろう。
善良な知り合いの中忍捕まえてこんなこと…飲み友達だと思っていたんだが、もしかするとたかが中忍くらい何してもいいと思ってたんだろうか。それにしちゃ待遇がよすぎるけど。
「何って、ナニかなぁ?」
ふふふと意味深な笑い方をされて、自分の方が恥ずかしくなる。
なんであんなことしといてこの人こんなに普通なんだろう。
「…どうしたらいいんだ…!?」
とりあえず腹が減った。飯を食いたいが、一歩足を踏み出した瞬間に倒れる自信が俺にはある。
そしてなによりにこやかに微笑むこの男を自分へのダメージ覚悟で殴っていいのか、出てけとでもいえばいいのか…どれも無駄になりそうな気はするのだが。
「とりあえず寝てて?ご飯食べるでしょ?それから…」
てきぱきと指示を下され、思わず従ってしまいそうな自分が嫌だ。
…それに、途中で切られた言葉が怖すぎる。
「それから…?」
怯えをたっぷり含んだ視線を向けた俺の耳元に、男がすっと顔を寄せた。
「俺の恋人になってね?」
甘い甘い言葉。
甘すぎるそれは脳の奥まで意味が届く前に、俺の中に溶けて染みこんでしまったんだと思う。
*****
その言葉通りというかなんと言うか、呆然としている間にあっという間に外堀まで埋められて、気付けば言葉通り男の恋人とやらになってしまっていた。
「逃げなきゃよかったのか…」
今でも時々そう呟くことがある。
そうして、その度に男はにこりと笑ってこう言うのだ。
「逃げて正解でしょ?だって俺の恋人になってくれたんだから」
恋の切欠にしては物騒すぎる気がする。
…だが、降る様に愛の言葉を囁き、掃除だの炊事だのの家事も、それから夜の営みもせっせと励んでくれる男に、いつのまにやらしっかりほだされている自覚もあるわけで。
「うぅ…!」
俺はあの時の決断が正しかったのか、今でも決められないでいるのだった。


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適当。
ねおちたぁあああ(((((((( ;゚Д゚))))))))ガクガクブルブルガタガタブルブル
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