指先(適当)

「ちっちゃい手ですねぇ」
手のひらをくすぐる指先は、確かに自分のものよりずっと大きい。
そう、不本意ながら今は。
「しみじみと言わないでよ」
何が楽しいのかしらないが、くるくると手のひらで踊っているその指先に、腹立ち紛れに舌を這わせてやった。
「んっ…ちょっ!なにするんですか!」
この人、外見がこうだからって、中身が俺だってこと忘れてるんじゃないの?
いくら子供に変化してたって、いつだってこの人が欲しいことには代わりがないのに。
「油断してると食っちゃうよ?」
かわいい反応が嬉しくて、挑発してやった。
子供だからって油断されても困る。
それでなくても子供に好かれるこの人のことだ。隙だらけでうろつかれて何かあったら…俺は同胞殺しになるかもしれないしね。
ま、今回みたいに相手が俺ならいいんだけど。
…そこまで考えて思いついたのは、ちょっとしたいたずらだ。
だって、痛い目にあった方が警戒するでしょ?
記憶力も、能力だって決して低くはない。低いのは同胞への警戒心だけだ。
ま、この人なら、性懲りもなく仲間は信じるものだなんていって、あっさり教われそうだから油断できないんだけど、やってみる価値はあるはずだ。
「その外見でそういうこと言わない!ほら、今日はもう寝なさい。任務帰りなんだから」
こういう態度が俺をあおるってどうしてわかんないんだろう?
隙だらけで、どうしようもなく愛おしい。…それに腹も立つ。
俺以外にもこんな顔みせちゃいないだろうね?
「イルカせんせー?だっこして?」
「なんですか!急に甘えて!」
警戒してる。いい傾向だ。でもぐらついてるのもわかる。本当に子供がらみだと容易いひとだ。
「だって…どうせ子ども扱いするならちょっと位いいじゃない。…ま、だっこされた記憶なんてほとんどないけどね」
子供の手を握る数より、クナイを握る方がずっと多かっただろう。
一緒に寝た記憶すらおぼろげだ。
物心付いたときには、俺も忍になっていたからしょうがないんだけどね。
…こんなことを言ったら絶対にこの人が断るわけがない。
「カカシさん。ちゃんとつかまっててくださいよ!」
豪快に抱き上げられて、ぎゅうぎゅう抱きしめられた。
その途端、急に胸が苦しくなった。
暖かくて、居心地が良すぎるこの腕が悪い。
ベッドにたどりついたら襲ってやろうと思ってたのに。
この人はきっと、たくさん抱きしめてもらって、たくさん抱きしめ返して、だからその分俺にも優しくできるんだろう。
「あったかい」
「…あなたのが今はあったかいですよ。体温まで子供体温なんですね」
くすくす笑いながら抱き寄せてくれた腕が、額を撫でる指先が、俺から抵抗って物を奪っていく。
この人の全部を独り占めしたいのに。
こうやって俺が考える策なんてあっさり蹴散らして、この人は笑うのだ。
「残酷…」
「なーに言ってんですか?いいからほら、寝ますよ!」
ぎゅうぎゅうに抱きしめてきてすぐ、幸せそうに眠りの世界に旅立っていった。
…そして当然自分も眠い。体力も子供並みになっているからだ。
それでも悔しくて、少しだけいたずらした。うなじに残る痕に気づくのは、俺が元の姿に戻ってからだろう。
かわいいうめき声に反応するより、そのぬくもりに眠気を感じてしまう己に毒づきながら、俺は目覚めたら今日の分までひいひい言わせてやろうと決意したのだった。


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子カカイル祭り継続中。
容易いはずの中忍の天然反撃に轟沈する上忍でお送りしました。
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