金色の人(適当)



満面の笑みを浮かべた金色の人は、その日初めて会ったのに不思議なことを言った。
「ああ、こんな頃からかわいかったんだねぇ」
頭を撫でられた。父ちゃんみたいにわっしわっし髪の毛がぐちゃぐちゃになっちゃうようなのじゃなくて、ふわふわって、猫でも撫でるみたいにやわらかく。
こんな頃ってなんだろう。それにこの人誰だろう。
ここは俺の家に押入れで、母ちゃんも父ちゃんも留守だから、お客さんじゃない気がする。
…なら、これはえーっと。しんにゅうしゃ!に違いない。
じいちゃんに式を飛ばして、けいびたいのひとにやっつけてもらわないと。
いつも首から提げているじいちゃんのくれたお守りをぎゅっと握り締めた。
大きく息を吸い込む。それから自分の耳が痛くなるくらい大きな声で叫んだ。
「じいちゃん!てきしゅー!」
ぼふんと煙がでて、練習のときみたいにお守りから猿がでてきた。
じいちゃんの猿の中で一番強い子で、将棋にもまだ勝てたことがない。
一緒に修行してもらったときも背中に乗せて走ってくれたときも、ちょっときむずかしくてじいちゃんみたいなしゃべり方だけど、優しい。
じいちゃんを襲いにきた敵だって一発でやっつけてしまった。
だからきっとすっごく強いはずだ。
こんな、変だけど優しそうだけど、なんだかわからないのになんて負けない。
「…?おまえ、どうしてここにいる?」
あれ?戦わない?ってことはこの人は敵じゃないんだろうか。
「ねぇねぇ。えんまー。この人やっつけなくていいの?俺がんばるよ!」
クナイは投げるのはまだ下手だけど体術はすばしっこくて上手いって褒められた。
でもいい人ならやっつけちゃだめだし、でも俺の家に勝手に入ってるのは駄目だと思うし。
うー…どうしたらいいんだろう?
「…大人しくしていろ。して、主は」
「まあつもる話はあるんですが。うちのカカシ君のお嫁さんをちょーっと調査してみようかなって!」
良くわかんないけど話をしてるってことは多分敵じゃない。よな?
「むずかしいお話ですか?」
金色の人に聞いたらなんでかわかんないけどぱぁっと顔を輝かせた。
じいちゃんとかがよくこんな顔してる。
こういう時は父ちゃんと母ちゃんがいたらなんだかものすごく嬉しそうにしてるんだけど、今日は二人とも任務だから…。
「うーん?ま、そんなに難しいお話ってわけじゃないんだけどねー!いやぁかっわいいねぇ!さすがうちのカカシ君!」
「イルカ。ヒルゼン…三代目の所へ行っておれ。ワシも後で」
「はぁい!あのさ、あのさ!後でまた将棋で勝負してくれる?」
じいちゃんは時々ずるっこして勝てるのに負けてくれるからつまんないけど、えんまはいつもちゃんと勝負してくれるからおもしろいんだよな。
たまにしか会えないからおねだりしてみたんだけど、ふんっと鼻息を噴いたと思ったらワシワシ撫でられた。えんまのてはふさふさで気持ちイイ。
「よかろう。気をつけて行け」
「そ、そ。気をつけておでかけしておいで」
「うん!」
じいちゃんちに行ったら、後でえんまと将棋が出来る。
それがすっごく嬉しくてお洗濯物のこととかも全部忘れて俺は駆け出した。
ふすまの向こうで聞いた事がないくらい低い声で話すえんまの声にも気付かずに。
*****
「じいちゃーん!」
「おお!イルカではないか。どうした?」
「あ、知らない人」
「…こんにちは」
ぺこっと頭を下げてくれたから、俺もおんなじように頭を下げた。
同じくらいの大きさだから、多分俺とあんまり変わらない年の子だ。
でもアカデミーでもみたことないなあ。誰だろう?
「こんにちは!んとはじめまして!うみのイルカです!6歳です!」
「えーっと。…はたけカカシ。年はいいとして、なにがあったの?」
「そうじゃそうじゃ。猿魔は?」
「金色の人が着て、お話があるからじいちゃんちにおでかけしなさいって言われた!後で将棋してくれるって!」
嬉しくてにへっと笑ったら、三代目はゆっくり頷いてくれたけど、隣の子は目に見えて動揺した。
「三代目、消えた先生かと」
「大方、術の暴発じゃろうな。まあ猿魔がこってりとしぼってくれるじゃろうて。すまんのう。カカシ」
「いいえ。三代目。あの馬鹿師匠…!なにやってんだ!」
「…じいちゃん」
良くわかんないけど恐い話をしてるのは分かる。
ちょっと泣きそうになってたら、慌ててちっちゃい子が俺を慰めてくれた。
「イルカはさ、ちっとも悪くないからいいんだよ。ほら、えーっと三代目?」
「そうじゃな。しばし将棋で一勝負でもするかの?」
じいちゃんが笑ってるから、多分大丈夫。…だよな?えんまがちょっと心配だけど、怒られてたのはどっちかっていうと金色の人の方だし。
「する!カカシも強いの?」
「え!俺?…普通、かな?」
「そうじゃな。カカシよ。アヤツめの探索はよい。イルカと将棋につきあってやってくれぬか?」
「はい!」
やった!知らない子と将棋って楽しそうだ。俺より強いかなぁ?普通って言う人は大抵強いんだよな。母ちゃんとかさ。
「よーっし!勝つぞー!」
「ん。おてやわらかにね」
そういって手を出してきたからぎゅっと握ったら、急に真っ赤になった。なんでだろ?
「ゆっくりしておいで。…カカシ、後のことは任せておけ」
「…はい」
「うん!じいちゃんありがとう!」
将棋セットを引っ張り出してわくわくしながら縁側に座った。
カカシも反対側に座ってちょっと顔を伏せている。瞑想かな?たまに父ちゃんがしてるけど、俺が勝っちゃいそうになったときだけだ。
「手加減なしだかんな!」
「うん」
にこっと笑ったのに、なんだか急に落ち着かない気分になった。
変なの。今日は変なことばっかりだ。
将棋のこまを並べながら、父ちゃんと母ちゃんが帰ってきたらたっぷり今日のことを話そうと思った。カカシっていうすっごくきれいな子と知り合ったってことも一杯。


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適当。
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