遠い記憶

ココはどこなんだろう?
地も空もうすぼんやりと光り、先が見えないほど何も無い。
ただ、目の前にたたずむ少年のほかは。
ゆるやかに吹く風に、その逆立った銀色の髪がゆらゆらと光をはじいている。
「もうすぐだね。」
見知らぬ少年が微笑む。
「え?」
「長かったんだよねぇ。」
見た目は確かに少年なのに、まるで幼さの感じられない口調。
長いため息と遠くを見つめる視線はまるで涙を流しているように見えた。
「何が、長かったんだ?」
この少年がこんなに嬉しそうで、そして悲しそうなのはなぜなんだろう?
「待っててね?」
問いかけには答えず、少年がそっと俺の手を握った。
まるで祈るように瞳を閉じて。
「何を…?」
わからない。ただ、あいまいな不安と期待が胸を満たすのを感じた。
「ごめんね?会ったらきっとまた離して上げられない。…今度こそずっと。」
一際強く、ぎゅっと握られたかと思えばそのまま少年の頬に導かれ、頬ずりされた。
無骨な男の手を、愛おしそうに。
ああ、また出会える。
何故かそう思った。
「待ってる。」
当然のようにそういうと、少年は花が咲いたように笑った。
ただ、その瞳だけは…飢えた獣の様にぎらつかせながら。
*****
「夢…?」
目覚めるとソコにはいつもの天井があった。
妙な夢をみた。…夢らしくなく奇妙な現実感を伴う曖昧な夢。
手にはまだあの少年のぬくもりが残っているようにさえ感じるのに。
いつもの時間より少し早く目が覚めてしまった。
それも仕方が無いことかもしれない。
おそらく緊張していたからだろう。今日はそのはやんちゃに手を焼いた大事な教え子が、ついに忍としての第一歩を踏み出すのだ。
普段大雑把を自認する自分も、存外神経が細かった物らしい。
それでも…。
きっとまた会える。
ただの夢なのに何故かそう確信めいた物を感じながら、少年の握った手をぎゅっと握り締めた。
*****
「イルカせんせー!受かったってばよ!」
「ナルト!」
ああ、良かった…!
正直9割がた無理だろうと思っていただけに、こみ上げる喜びは恐ろしいほどで、思わず子どもたちを髪の毛がぐしゃぐしゃになるほどもみくちゃにしてしまった。
子どもたちの背後に隠れていた男が、俺の目の前に立つまで。 「初めまして。コイツらを担当することになりました上忍師の、はたけカカシです。」
緩やかに吹く風がその逆立った髪を撫でて、ゆらゆらと光をはじく。
「初めまして。俺はコイツらの元担任の、うみのイルカです。」
伸ばされた手に応えるように俺も手をぎゅっと握った。
握り返された手に残るぬくもりがあの少年のものと一緒で…。
確かに初対面のはずなのに、何故か理解した。
この人はいつか俺を捕らえ、二度と離さないだろう。
緩やかに弧を描く瞳が、真っ直ぐに俺を見つめる。

あの、少年と同じ光を湛えて。



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こっそり増える拘束具シリーズ???
始まり的な?こっちの子カカイルは暗いので多分書かないけどネタフリだけ。
あー…これまたいつも通り変な話。

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