チャンス

手ばかりかかる任務に、掃除、ああそうだ、忍犬たちを洗って、予防注射にも連れて行かなきゃならなかったんだ。
…そう。明日までに片付けることが山ほどあるのに、なんでこんな目に合うんだか。
「だから、聞いてんのかー?このふさふさあたま!」
俺を睨みつける瞳は酒毒に浸りきって、溶けそうなほど潤んでいる。叫んでいる言葉の内容も、普段の様子からは信じられないほど乱暴で素直なものばかり。
典型的な絡み酒だ。
いつもならば、適当にあしらって、しつこいようなら術でも使って捨ててくる。
…相手が狂いそうな程愛しい思い人じゃなければ。
「きーてますよー?」
適当に答えながら、鼓動が早まるのを止められなかった。
これが積年の思いをぶつけるチャンスだということだろうか?
全てを捨てて、この人を手に入れるための。
「聞けー!…あ、このするめうまぁ!」
かの人は散々飲み散らかした後らしく、きっちり酔っ払っている。酔い潰れるのも秒読みだ。
あと、きっともう一口で。
「え、あ?飲むー」
無言で差し出した杯を美味そうに干して、ぱたりと倒れ込んだ人を抱き上げた。
このチャンスをつかむために。
*****
任務には何とか間に合わせた。
今頃あの人は布団の中で、目を白黒させているだろうか?
とろけた体を暴いても、その身のうちに己の肉を食ませても、酒にひたりきった体は抵抗すらしなかった。
気持ち良さそうに瞳を細め、俺の肩に手を回しさえしたのだから。
…そのせいで多少乱暴になった行為の痛みにも、一瞬泣きそうな瞳を見せただけで、あとは不思議そうな顔を快楽に染めるのに夢中になった。
面倒な任務も、帰ってからのことを思うと気にならなかった。
逃がさない。絶対に。
浮かれ騒ぐ心は、軽やかな足にも表れて、あともう少しで帰り着ける。
そう、あの人に会えるまで後少し。
*****
酒に逃げた。
なのにわざわざ後でもつけてたんじゃないかって思うくらいのタイミングで、その原因が追っかけてくるんだからたまらない。
苛立ちをぶつけた。…だが肝心のことを言えるほど俺は強くなかったから、ただ…酔っ払いの戯言にすら付き合おうとするその優しさをむしりとろうとしか思わなかった。
差し出された杯を干して、それからそのまま捨て置かれるだろうと思ったのに。
…一瞬の空白の後、手に入らないと思い知っているのに求めすぎてくるいそうだったものを与えられていた。
きっと、酒のせいだ。酔って男ならだれでも感じる一瞬の欲に流されただけ。
それでもいいと思ってしまった。
だから…せめて。
欲しいと思う相手を抱き寄せて、その熱を受け入れた。
…夢にしてはどうしてこんなにも現実的なのか不思議に思いながら。
もう一度目覚めたら、きっと俺は…その手を諦められなくなっているのかもしれない。
過ぎた快感に負けて意識が薄れていくに任せながら、そう思った。


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てきとうー。
とりあえず…帰ってきたのでそっとふやしておくってばよー!
ではではー!ご意見、ご感想などお気軽にどうぞー!


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