体から(適当)


任務中だった。少なくとも俺はそうだったはずだ。
それがなにをどうなってこんなことになってるんだ。
「ね、イイ?」
「やぅ!あ、やめ…!」
「ウソ。こんなにお漏らししちゃってるのに?」
そういって達しかけてヒクついている性器たどる指は白くて、充血したそれに触れているのみるだけで、何かを汚してしまったような気がして涙が滲んだ。
強いられているのはこちらの方だってのに、どうしたらいいんだ。この罪悪感は。
腕は動かせない。手首に巻きつけられた何かごと背にした木にクナイで留められているからだ。
背後から顔見知りの男が現れたときは、道連れができたことを嬉しく思ったのに。
まさかそのままいきなり拘束されるだなんて予想できるわけがない。
男は里切っての上忍で、殆どの幻術にも毒にも惑わされないと聞いていた。実際報告書を見る限りで、その手のもので倒れたことは殆どなくて、チャクラ切れでぶったおれるのがせいぜいだったんだ。
様子がおかしいかどうかと聞かれたら、むしろいつも以上に穏やかに微笑んでいたことしか覚えていない。
笑顔もままで傷つけたくないからといきなり人の腕をくくりつけやがったんだ。こいつは。
そうしておいて、下肢を綺麗に剥いて、かわいいだなんだと失礼な感想を寄越した男に、多分薬を使われた。
泣いて喚いて懇願して止めてくれと訴えたのに、それでも男は淡々とコトを進めた。ねじ込まれた他人の雄の象徴に、圧迫感を感じこそすれ、痛みが全くなかったことが恐ろしくてまた泣いて、それに喜んだ男はこのわけの分からないまま始まった行為を止めるつもりはなさそうだ。
ぞっとするほど深くまで穿ち込まれたそれが、ずるりと抜け出してはまた強引に押し入ってくる。それにあわせるように尻の穴に塗りこめられたモノでじゅくじゅくとはしたない音が響いて、耳をふさぎたいのにそれすらもできずにいる。
一般人ならまず通らない森の中とはいえ、外で。
もがけばもがくほど締まるモノで、腕の感覚は遠くなりつつある。
代わりのように熱をこもらせるばかりの下肢が、こんな好意を強いられているというのに疼いて仕方ない。
今も、焦らすようにゆるゆると動きながら、俺に屈辱的な言葉をかけて笑っている。
このまま殺されるのか。俺は。
「ああ、駄目。飛ばないで。ほら、俺を見て?」
「ん、ん…や、も、もう…!」
「ん。いーよ。ほら、出しちゃいな」
意識を手放しかけたことを咎められて、中の酷く感じるところを攻められて、あっさりと放っていた。
飛び散った液体はもう勢いがない。何度も何度もこうして追い上げられて、空っぽに近いはずなのに、男に触れられるだけで他愛のない体は簡単に熱を上げる。持ち主よりもずっと蹂躙者に従順だ。
「っうー…!」
「ふふ。また泣いちゃった。ま、いーけど。ねぇ。俺が、誰かわかる?」
「え?…カカシさん…?」
「そ。じゃ、任務内容は?覚えてる?」
そうだ任務中だ。この荷物を木の葉に届けなきゃいけない。
急がなきゃいけないんだ。綱手様が戻られる前にこれを届けて、それから。
「はや、く」
「ん。そーね。もっと欲しいでしょ?」
そっちじゃない。届けなきゃいけない荷物の心配をしただけだったのに。
わざと勘違いしたフリをした男に、俺はずたぼろにされた。
*****
起きたというか、どれくらい意識を手放していたのかもわからない。少なくとも腕が自由にされる間くらいは意識を飛ばしていたらしい。
「尻が、いてぇ」
服は当然のように上半身も剥かれている。手は動く、足は…腰ががくがくするが立てばなんとかなるだろう。局部の痛みについては…手持ちの薬を使えば小一時間くらいどうとでもなる。
行かなくては。
「やー。燃えましたね」
「…うるせぇ」
なんなんだこの人。任務は。敵が化けてたりしないだろうな。任務はどうしたんだ。
ああ、そうだ。任務だ。
忍にとって絶対であるもの。それ以外のことは後で考えればいい。それを守るために不安と屈辱感と痛みとに苛まれる体を起こそうとした。
「ほら。駄目ですよ」
それを制する男の手は優しいのに、それにすら抗いきれない。それほどまでに体力を削られている。
「邪魔をするな。任務がどれだけ大切なものかわからないわけじゃないだろ!」
「そーね。俺も任務なのよ。ま、役得ですけど」
「え?」
「くったくたの今ならいけるでしょ。ほら、俺だけ見てて」
赤い目が回る。くらりと視界がゆがんで、それと同時に何かがはじけ飛ぶ音を聞いた。
…そうだ。俺は、もうとっくに任務を終えている。
「俺!荷物!アレの中身は!」
一気にクリアになった頭に、依頼人に荷を渡して、途中経過を式で飛ばした瞬間に、捕まったこと、それから術をかけられ、いかにも高級そうな包みを持ち帰るように指示されたこと、忘れていたはずのすべてが流れ込んできた。
「もう回収しちゃったから大丈夫。綱手姫が留守中に細菌撒こうなんてね」
「細菌!?」
そうか。そんなものをばら撒くところだったのか。この人はそれを止めるために。…他に方法がなかったのかと問い詰めたくもあるが、すべては己の失態だ。反省すればこそ、この人のことをどうこう言える立場じゃない。
…落ち込みはしたが。
「ん。だから止めて来いって。暗示が思ったより深いから、ちょっと飛んでもらおうかなって」
「…はぁ。そうでしたか…」
そんなことのためにあんなところまで舐めたり、そんなところにつっこんだりしてきたのか。この人。流石上忍。職業意識が高いというか、俺には真似できない。絶対に。
「どうせなら気持ちよくなって欲しいじゃない?」
「ええ。え?は?」
「あわよくば食っちゃおうかなと。ついでに好きになってくれたら最高なんですが」
好物を前にした子どもみたいな目で俺をみている。期待に満ちた瞳はかわいらしくみえなくもないんだが、その光が…どっちかというと食われそうというかなんというか。本能的に恐ろしい。
「…里に戻っても?」
「あーはい。術と薬物の検査があるから一晩入院コースかな。ま、しばらく療養するにしても、俺がいるから大丈夫ですよ」
なにが大丈夫なんだと問うには、笑顔で無言の圧力ってモノは重すぎた。
肩を叩かれて、腰の痛みに呻いている間に、さっさと担ぎ上げられて、気づいたときには病院だったって事態にも文句を言えないくらいには。
だからって、責任取ってくださいといわれてそう簡単にうなずけはしなかったが。
「えー?ケチー」
「ケチでも何でもいいです!あんなことしょっちゅうされたら…!」
まともに動けなかったんだぞ。俺は。検査にきた医療忍に生ぬるい笑みを向けられるからなんだろうと思ったら全身キスマークだらけだったし、任務で忙しいはずなのにいつのまにか見舞いとやらに来てちょっかいかけてくし、俺のことをおもちゃかなんかだと思ってるんじゃないだろうか。
「ああ。休みの日ならまだしも、平日は3回までにしますよ?その分休日はたっぷり愛し合いましょ?」
「は?」
そして会話が成立しない。っつーかなんなんだ。任務だったんだろ。そうだったんだろ?頼むからそれ以上の何かを考えさせないでくれよ。
もうとっくに処理しきれなくなってるのに。
「ま、逃げても無駄ですし」
笑顔がこんなにも圧迫感を感じさせるものだなんて知らなかった。
遠い目をして視線をそらしたのをものともせずに、キスが降って来る。
こんなもさいの捕まえてやることじゃないだろうに。
哀れにも思えるほどの必死さで構い倒してくる男からは、当分逃げられそうもなかった。



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適当。
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