幼馴染の野望


「なんで…?」
本当に欲しいって言ってくれるの?こんなにすかすかで血を流すことばかり上手くて、でも禄に笑うことも出来ないのに。
「いいから、俺ん家に来い!そんでさ、一緒に飯食って一緒に寝て、家族になるんだ!」
*****
あの日、血まみれの俺の手を握り締めて言ってくれたイルカは、小さい頃から男前だったっけ。
焦土と化した木の葉に戻るたびに、自分が壊れているのを自覚して、だから…傷だらけの体を手当するのも面倒になってゴミみたいに転がっていた。
イルカが俺を見つけて手を引いてくれるまでは。
傷の手当をしてくれて、イルカが自分で作ったっていう掘っ立て小屋に連れて行ってもらって、そこで少ないけど食事と毛布を分け合って眠って…。
それから、ずっと一緒にいる。
大きくなってから家族の意味は変わったけどね?
「お前あんときすっごく可愛かったのに!」
自分の気持ちに気付いて、色々我慢したけど辛抱たまらなくなって襲った後、ぶーぶーそうやって文句言われて、ついでに殴られて、でも腰が抜けてるイルカじゃ痛くなくて、怒ってるけど受け入れてくれたのが嬉しくて、ぎゅうぎゅう抱きしめた。
「今は?駄目?かわいくない?」
正直言って、イルカの方が昔っから可愛かったと思うんだけど、可愛くないからいらないなんていわれたら悲しい。
「あー…もう!なんででっかくなってもそんな顔するんだ!今は…かっこいいけど!」
「へへ!ホント?ホントに?」
別に外見なんてなんでもいい。俺が出来損ないでも欲しいって言ってくれるんなら。
「でもやりすぎは駄目だからな!あと浮気とかもだ!」
「んー?後半は当然ありえないけど。前半はちょっと自信ない」
イルカはウソをつれるのが嫌いだから、正直に言わないと怒られるかなぁって思ったけど、正直に言っても怒られた。
「やりすぎだ馬鹿!毎回こんなだともうやんないぞ!」
「えぇ!?」
そんなの酷い!こんなに気持ちよくて幸せなのに…駄目だなんて!
泣きそうになりながらイルカを見つめたら、はぁってあからさまな溜息をつかれた。
「お前強いのにどうしてなんだろうなー?まあいいんだけどさ」
残念そうに言われると不安になる。どうしよう?どうしたらいい?いらなくなったら…捨てられちゃうの?
「そんな顔すんな!…勝手にフラフラすんのも駄目だからな…」
今度はイルカがちょっと泣きそうな顔してる。
どうしてもイルカが欲しくて、めちゃくちゃにしちゃいそうで怖かったから、最近家に帰らなかった。
我慢したら直るかと思ったのに結局駄目で、ふらふら家の近くにきたらイルカが怒って追っかけてきて捕まえてくれた。
…ま、そのせいでこんなコトになっちゃったんだけど。
「ふらふらしない。任務だとちょっと長いこともあるけど、だから捨てないで!」
ぎゅうって抱きついたら、耳引っ張られて怒鳴られた。
「捨てるか馬鹿!…お前もう俺のなんだからな!」
ついでに髪も撫でてくれて、ちょっと乱暴なそれが気持ちいい。
ああ、やっぱり男前だ。あんなに小さい頃から俺の心をがっちり捕まえて離さない。
「うん!…大好き!」
いくら抱きしめても足りなくて、本当はもっとしたくなっちゃったんだけど、我慢してたら気付かれた。
「…はぁ…。いいか!あ、あと、その…一回だけだからな!」
「イルカ…!」
…もちろん、そんな風に言われて一回ですまなかったんだけどね?

で、俺の最近の野望がイルカにこうやって一生くっ付いてる事だっていうのは秘密にしてるんだけど、(あともう1個の野望はイルカが俺以外の誰かを拾うのを阻止すること)きっとばれてるんだろうなぁなんて思いながら殴られた頬を撫でて幸せに浸ってたら、後輩にブツブツ文句言われたり、三代目にもぐちぐち文句言われた。
だからって曲げるつもりはないんだけど。
…イルカがずーっと俺を飼っててくれるように毎日祈る俺がいる。
でもなぁ…イルカだからなぁ…。
俺以外の誰かを拾ってきても、俺が一番だって言ってもらえるように頑張ろう!
気合いと野望を胸に、今日も俺はイルカの家に帰る。
愛情たっぷりの生活は最高だと思いながら。


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てきとう!
幼馴染の野望は尽きない…のかもしれない?
イルカちゃん的な野望も密かに…!
ではではー!ご意見ご感想など、お気軽にどうぞー!

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