意地っ張りな恋人(適当)



無防備にごろ寝している姿は、もはや俺にとって獲物にしか見えない。
「うー…も、飲めな…」
したたかに酔い、そしてそのまま寝転がって眠りの世界に旅立ったらしい。
赤い唇も桃色の頬も、暑かったのかだらしなく脱ぎ捨てられた服も、全てが俺を煽る。
着古したトランクスは大分生地が薄くなっていて、汗で湿ってまとわりついて、それが隠しているモノの形が分かってしまうし、同じくくたびれたランニングシャツ越しにも乳首やへそや、筋肉の形まで透けて見える。
恋人は浮気や裏切りが嫌いだ。
怒ってくれるならまだいいけど、この人の場合は己を責める方向に行きかねない。
同性同士だからってそんなに負い目に思うことはないはずなのに、女ならとっくに大家族の父親だと嘯きながら一人で泣いたりするんだもの。
それから、別れてくれと強請るでもなく、少しずつ一人で悩んで病んで、全部隠して。
やつれても笑おうとする姿は凄絶に色っぽかったけど、当然心配して五代目の所に力づくで引きずっていった。
あの時放っておいたら、きっとそのまま死ぬまで俺には何も言ってくれるつもりはなかったんだろう。
…浮気なんてしてないのに。第一絶対ありえない。見てるだけで満たされる笑顔も、傷だらけになりながら仲間を守って、鍛えられてるのにペンだこなんかもある体も最高だし、何よりイルカ以外の相手なんて考えられないほど、その精神の形に惚れている。
どうあっても口を割らなかったから、勢い余って術も薬も使った。それでも俺には絶対にいおうとしないから、五代目のフリをしてまで強引に聞き出した。
そうして、態々良く知りもしない女が、俺との子が出来たとありもしない嘘を並べ立ててあの人を責めたと分かって、怒りのあまりその女をずたぼろにして、多分止められなかったら殺していた。
ま、結局精神の方は駄目だったみたいだけど、どうでもいい。元々キチガイだったんだし、今更でしょ。
下らない嘘で俺の恋人を苦しめた対価はその命だけじゃ足りないくらいだ。
「ねぇ。どうして俺のこと信じてくれないの?」
そう聞いても、笑うばかりで。
「あなたにはね。笑顔ばっかりみせてやるんだって決めたんですよ。…だからこれは俺の意地です」
笑顔は好きだ。でもその時の泣き笑いの顔も鋭い視線も、全部が愛おしくて、だからこそ辛くて、必死になってそれを訴えた。
「すき。すきなの。他なんてどうでもいいし、笑ってようが泣いてようが、なんだっていいの。ねぇ、もっと俺に全部見せてよ…」
最後の方は禄に言葉も思いつかなくて、殆どかんしゃくを起こしたようなものだったのに、なんだか知らないけど謝られて抱きしめられて…我慢できなくて襲った。
気絶するまでヤリ倒して、朝だったか昼だったかわからないけど起きてすぐ謝ったらものすごく吹っ切れた笑顔で拳骨一発貰って、それ以来少しは本音を見せてくれるようになった気がするんだけど…。
多分、これは完全に油断してるか、それか自棄酒に違いない。
ま、罠でも我慢できないんだけど。
俺の任務は馬鹿みたいに長くて、元々あと一月は掛かるといわれていたものだ。
でもそんなの我慢できないし、面倒だし、イルカ切れで死んだらどうするのよ。
さくさく片付けて後処理は有能でちょっと乗せられ易い後輩に押し付けて逃げ帰ってきても、多分誰も俺を責めないはずだ。
1ヶ月。禁欲に禁欲を重ねて暴発しそうなほどになった所に、帰宅するなり全身で食ってくださいと訴えているような恋人が転がってたら、やることは当然一つしかない。
「いっただきまーす!」
声は興奮に掠れ、ケモノのうなり声にも似て耳障りだったけど、寝くたれている恋人は気付かなかったようだ。
荷物を置くのに一旦自宅に酔っておいて良かった。風呂にも入ってある。
「ふぇ?あ?え?あー!おかえ?うぁ!」
「たくさん飲んだ?こっちも熱いね?」
もだもだと抵抗とも抱擁ともつかない動きを封じ込めて、強引に足を割り開く。
全部脱がせたいような、脱がせるのがもったいないような、むしろもうどっちでもいいから突っ込みたいという気持ちの方が強くなってきた。
「ん、カカシさ…!」
鼻にかかった声は普段のこの人から想像できないくらい甘くて、目の前が真っ赤になった気がした。
「食っていいよね?」
「ぜんぶ、どうぞ」
にかーって、なんなのエロイ顔してるのにそんなにさわやかに笑って!
ああもう。どうしよう。もういいよね?後で泣かれても怒鳴られても、今我慢なんてできない。
おれもうくえませんからとか言ってるから、現状を理解してない気もするけど知ったことか。
「欠片も残さず頂きます」
決意表明の通り散々喘がせて縋らせて中にも一杯出しすぎて溢れる位して、途中から正気に返ったのか若干激しくなった抵抗もきっちり気持ちよくすることでいなして、文字通り全部綺麗に頂いた。
*****
「悩むのが、馬鹿らしくなりました」
「えーっとはい。そうですか」
謝る理由がわかってないのに謝るとイルカが怒るから、でもなんでかしらないけど今もうちょっと怒ってるし、やり過ぎたことにだったらとっくに殴られているはずで、もうどうしていいかわからなくてベッドの上で正座してたら撫でられた。
「わかってないのはわかってますが…まあいいです」
「うー…良くない!また何かためこんでんじゃないの!下半身の溜まったのはたっぷりおいしくいただきました!」
「怒るのかやに下がるのかどっちかにしやがれ!」
うぅ…だってもう毎日夢に見すぎておかしくなりかけてた大事な大事な恋人が目の前にいるわけよ?しかもしっぽりどころかぐちゃぐちゃべたべたになるまでたっぷりやりたおして、凄まじい色気を放ってる。
見てるだけで幸せってもんでしょうが。
「イルカせんせ。食べていいですか」
真顔で聞いたら頭を抱えられた。もちろん起き上がれないので横になったままだし、体は拭いたけど素肌で触れあいたかった俺の希望によりまだ全裸だ。
乳首がみえるとかシャツの上からしゃぶったのも楽しかったけど、直のがたのしいかもしれないとか、トランクスが擦れるってひいひい鳴いてくれたのも楽しかったけど脱がせてからも感極まって抱きついてきたのがたまんなくて座位でやった後足らなくて後からもたっぷりして、それからまた色々しちゃったこととかも思い出してもう俺の頭はパラダイスだ。
だから欲望に正直におねだりしてみた。だってイルカは俺のおねだりに弱いんだもん。こうやって突き放されると辛いから、せめて体だけでも触れ合いたい。繋がっていたい。それこそずっと。
「…まあ、いいです。思ったより多分俺もアンタも単純で、世の中だってそうなんでしょうよ」
その口ぶりからしてまた何かあったのは確かなんだけど、また教えてくれないのか。
「ひどい」
思わず泣きそうになったら、なぜか爆笑された。
「か、カカシさんはこんなにかわいいからいいんです。知りたかったら教えますけど、その前に俺は動けないんで、責任とって飯です飯!」
さわやかで元気一杯の笑顔にしょげ返りつつ、ご飯は何よりも大事なんだよって先生もいってたからせっせと支度した。
ご飯食べたらイルカを食べるかそれとも食べながら聞き出すか、食べた後聞きだすかきめないと。
不満と欲望を押し殺して卵を焼く俺に、イルカは悠然と笑っていた。
「悩むより、慣れろってのはホントだなぁ…」
なんていいながら。

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適当。
かかしへん。
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