遠い、故郷6(適当)



「…やりすぎ、か?」
不在中に他人を家に入れないでと泣くから、あの山盛りのナスを自分で何とか消費しようとがんばってみた結果がこれだ。
定番のみそ汁に、マーボーナスにそれから焼きナス揚げナス煮物に漬物。
正直言って、もうみたくもないくらいナスまみれだ。
作ってる最中ですらうんざりしたんだから当然か。
何も一度に作ることはなかったかもしれないが、見ているだけで余計なことを考えてしまうから、早く片付けたかった。
親の敵のようにナスを切り続け、何とか作り終わったというのに少しも食べる気になれなかった。
ナスは、好きでも嫌いでもないんだが。
「漬物はまだ食わないしな。冷凍って手もあるし、弁当にしてもいいし」
自分へのいい訳は随分と弱弱しく部屋に響き、それがまた自分が一人であることを改めて感じさせて少しばかり涙が出そうになった。
今頃あの人は何を食べているだろう。
寂しそうに肩を落として天幕で落ち込んだりしていないだろうか。
多分淡々と兵糧丸を齧り、土の上でも木の上でも平気な顔で休むんだろうけど。
だってあの人は上忍だ。俺だって忍だ。
食うや食わずで待機なんてのは幾度も経験した。
水があれば数日はもつ。いや、持たせる事ができなければ忍とは呼べない。
…秋道一族は別だけどな。あの一族は元々振り分けられる任務が限られる。その特殊さこそが武器だから。
だからきっと大丈夫だと分かっているはずなのに心配なのは、いつだって俺の前では子どもっぽくて、そのくせ必死で愛を囁き、俺が応えるまで辛抱強く耐えていたのを知っているせいかもしれない。
今、あの人は何をしているだろう。
腹をすかせていないだろうか。怪我をしていないだろうか。無茶をしすぎてチャクラ切れでもしていないだろうか。
いざというときに使えるようにしたあのお守りは、ちゃんと持っているだろうか。
「…俺は親じゃないってなー…」
まるで自分の子どものように。いや子どもなどもったことはないし、あの人を選んだ以上これからももつことはないんだろうが、心配なんだよ。
俺の事に関してはとんでもない無茶をする人だから。
あの人は仲間を大事にするけれど、自分の懐に入れるのはホンの一握りの人間だけだ。その懐に入れてくれたことを今は嬉しく思うし、覚悟もしている。
でも。だ。
大事にしすぎるんだよ。今だってずっとずっと昔に失った誰かを、毎日のように慰霊碑の前で思い出しては悔いている。
だから失った時に狂わないように、大事な物はホンの少ししか持たないのかもしれない。
白状すれば、俺以外の誰かにあそこまで熱心なことに、嫉妬しているのも事実だ。
死者に敵うはずがないのも、恋情であそこまで慰霊碑に通いつめている訳じゃないのも知っている。
どこまでも内省的なあの人が、己を断罪し続けることで自我を保っているんだとしたら、もうそれでもいい。
ただ苦しんで欲しくないだけだ。
…正直に言えば俺のことだけ考えて、他のことなんざ忘れていつもみたいにくっついてニコニコ笑っていて欲しいと思うんだが。
時々ケダモノなのもご愛嬌だ。突っぱねれば大人しく我慢してくれた。…俺の我侭だったってのにな。
「やっぱり全部冷凍しとくか」
帰ってきたら片っ端からその口にねじ込んでやろう。
それから遅れた誕生日プレゼント代わりに一日独占させろと言ってみようか。
あの人は、俺の嫉妬に気づくだろうか。
…気づかないだろうな。慰霊碑通いに俺が気づいていることも知らないかもしれない位だ。
ただ少なくとも喜んではくれるだろう。愛されている自覚がないというか…やたらと俺の何もかもを欲しがる人だから。
「早く、帰って来い」
誕生日なんてもうどうでもいいから。…俺を置いていかなきゃそれでいいから。
頬を伝う水なんてないし、ぐすぐす鳴る鼻なんて、気のせいだと己に言い聞かせておいた。

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適当。
祝いじゃ祝いじゃ(`ФωФ') カッ!
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