無茶な告白(適当)


「好きです!付き合ってください!」
真っ赤なバラの花束をもってまちかまえていたらしい人に、いきなり頭を下げられた。
なんてベタな…。
正直ちょっと引いた。引いた理由はそれだけじゃないけどね。
「イルカせんせ。どうしちゃったの?悪いものでも食べたの?それとも罰ゲーム?無理しちゃだめでしょ?」
人がイイこの中忍がやたらと騙されやすいのは周知の事実だ。
自分だって他愛のない嘘でこの人を引っ掛けてからかったことがあるだけに、周囲の人間がなにかと嘘八百でこの人を振り回すのを止めることもできない。
いい年の男のくせに、騙されるとしょげかえったり真剣に怒るのが、却ってその手の人間の嗜虐心を煽るってことがわかってないんだろう。
流石にエビスが実は火影様の隠し子がどうのっていう盛大な嘘に引っかかって苦悩に満ちた顔で相談に来たときは、疑うことも覚えてくださいと諭しちゃったけど。
かわいいんだよねぇ?嘘だってのに真剣に反応してくれるから。
依頼人の嘘なんかには敏感なのに、どうしてか仲間からの他愛のない嘘にはほぼまちがいなくひっかかっている。
勿論任務中はそうでもないらしいっていうのも知ってる。戦っている時のこの人の状況判断能力は、上忍になってもおかしくないくらいだった。
…情に流されやすいってところをのぞけば。
「いいえ。悪いものも食べてませんし、罰ゲームでもありません。無理は…無理というか、むしろ無理を強いているのは俺の方なのは分かっています。でも、どうしてもいいたかったんです。今日」
「…今日?何の日だっけ?」
昨日ならまだわかる。この人の誕生日だったはずだ。
確か上忍師になるときに渡されたこの人の資料だったか何かでそれを知って、ふと思いついて誘ったらものすごく驚かれた。 一緒に飯を食うくらい珍しいことでもないのに、酷く喜ばれたんだから記憶違いってこともないだろう。
祝ってくれるとは思わなかったなんて大げさだと思ってたけど、これって、本気でそういうこと?だから何で今日なの?
疑問符だらけの俺を、まるでこれから出撃するんじゃないかってくらい真剣な瞳のイルカ先生がみている。
「今日は、その、昨日の勢いが残っているうちじゃないと言えないと思ったんです」
「えーっと?」
「きっぱり断られても大丈夫だって、思えたんです。昨日、祝ってもらえたので」
「なんで?」
フられるために告白する…まあこの人ならやりそうだけど。諦めるためにとかって。
でもこの人の思いは俺の予想以上に強かったものらしい。
「簡単には諦められないってことが確かめられました。昨日。だからどうせフられるならってしり込みしててもしょうがねぇなぁって思えたんです。どうぞフってください。これからくどきますから。それでだめなら諦めます」
にかっと笑って見せるんだから度胸が据わってるって言うかなんていうか。
「相変わらず男らしいね」
男なんて趣味じゃない。恋愛にも正直言って興味がなかった。惚れた腫れたは面倒なばかりで、本当に大事だと思える相手などいなかったから。
でも、ひょっとするとこの人なら違うかもしれない。
愛読書にあるようなときめきだのめまいだのなんてのはないけど、こんなにも俺を惹きつける。
そもそも誕生日だからって、何の興味のない相手を酒に誘ったりしない方だ。
「返事を、いただけますか」
真剣勝負を申し込む忍も、それを馬鹿正直に受ける忍も普通はいない。
目的を達成することを優先にするのが当たり前で、むしろ策を講じずに突っ込む方がおかしい。
この人にはそんなものが通じそうもないけどね。
「じゃ、おつきあいしましょーか…お互い酒とつまみの好み位しかしらないけど、口説いてくれるんでしょ?」
もっと、この人のことが知りたい。理由はそれで十分だろう。
「へ!?ええ!?いいんですか!?」
この顔も好きなんだよね。目を白黒させてるとことか、期待しちゃダメだって顔してるとことか。
「そっちこそ、予想と違ったとか言わないでね?ま、言ってもいいけど、それが理由でフるのはなしの方向で」
実は結構トラウマだ。よってくる女の殆どが、二つ名に付随する余計なものを目当てだったから。
どうせなら、中身に惚れたっていってほしいじゃない?嘘でも。
ま、この人は俺に嘘なんてつけないだろうけど。
…そうね、とりあえず夜の立場だけは、今夜辺りはっきりさせときますか。
「はい…!もちろんです!色々教えてください!」
喜んでる顔もかわいい。早く触りたい。もうその権利は俺にあるんだから。
ああ…なんだそうか。ひょっとしてもう手遅れってやつなんじゃないの?俺。
「んー?そうね。さっそく今夜からおじゃましようかなー?」
「え!今夜!いいんですか?」
「イイに決まってるでしょ?色々宜しくね?」
「はい!」
素直すぎるよねぇ?一応この人だって忍なのに。
そこそこ実力だってあるのに守りたいと思わせちゃうのはどうなのか。
「焼きがまわった、か」
「どうかしましたか?」
「いーえー?…楽しみにしてますね?」
「俺のほうこそ!」
俺の思惑なんてさっぱりわかってなさそうなイルカ先生の手をさりげなく握った。
獲物を逃がさないように。…そんなことを思う自分をわらいながら。


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適当。
ねむすぎる。
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