今夜も眠れない9(適当)



これの続き。

 爽やかな目覚めと言っていいんだろうか。これも。
 青臭い匂いに湿ったシーツ、脱がせた服も点々と散らばっていて、夢中になって振りすぎた腰が重い。
そんな風に部屋中に荒淫の痕跡がありありと残されていて、多分起きたら怒るかパニックを起こすかもしれない。体中に痕を残し、もう出ないと泣いて縋られても欲を煽られるばかりで、どうしようもなく欲しくてたまらなくて我慢できないと伝えたらもう無理だと言った口がしょうがねぇなぁなんて言いながら笑ってくれた。
…そう、こんな状態にしたのは俺だ。それなのに最低なことに最高の気分ではある。隣で未だ目を覚まさずにぐったりしている人を手に入れることができたから。せめて一度だけでも抱きたいと何度も夢想し、それを同じ数だけ打ち消してきたのに、この人が全部ぶちこわしてくれた。
これっきりなんてありえない。一夜だけで終わらせる気なんてもうすっかりなくなっている。これだけ長い間諦めきれなかった自分の執着の強さも原因の一つでもあるんだが、最終的に俺はこの人のまっすぐさに負けたってことでしょ。きっと。
 巻き込まれてしまったこの人には申し訳なく思う部分も確かにある。でもそれ以上に愛おしさが募って、見ているだけで気分が浮き立つから不思議なものだ。同じ空間に存在できるだけで幸せで、それ以上に申し訳なくて、触れることすらせずに耐えられていたのが嘘のようだ。一瞬でも側から離れたくなくて腕の中の人に頬をすりよせた。
 目を閉じたままもにょもにょと顔を顰めて、いきなりわしわしと頭を掴まれたかと思ったら、ゆっくりと泣かせすぎて赤く染まった目が開いた。
「うぅ?あーめし、しごと、せんたく…お、おお?朝?何時だ?ヤバい!え?おお?カカシさん…え、あ、うお!ぐっ…!」
 ぼんやりしていた顔が一瞬で強張り、時計から俺に視線が移った途端叫ばれてしまった。うん。そうね。驚くよね。さんざんしちゃったから動けないかと思ったけど、とりあえず声は掠れてるけどちゃんと出るみたいでほっとした。飛び起きたのに腰を丸めて震えてるってことは、体へのダメージも相応にあったに違いない。そりゃそうだ。俺でさえ腰が怠いのに、この人は…多分いや、確実に男相手に組み敷かれるなんて経験したことなかっただろう。立てるといいんだけどねぇ?
「おはよ」
「…っはようござぃます…」
 平静を保とうと努力してくれてるんだと思う。でも目が泳いでるし顔は真っ赤だし、腰を押さえてるところをみると、相当痛むんだろう。薬はあるけどその前に後始末しなきゃいけないし、お腹も空かしているだろうからそっちの準備もしないとね。
「朝ごはん、俺が作りますね。その前にお風呂入りたいでしょ?」
 親切ごかして下心は満々だ。触れたい。離れたくない。それがずっとなんて訳にはいかないのはわかっているから、だからこそ今日くらい自分を甘やかしても許されるんじゃないかと勝手に決めた。この人といるとついつい自制心が緩くなることを自覚しつつ、それでもここで引き下がる気などさらさらない。
「え!いえ飯なら俺が!ふ、風呂はその、自分で!いってー!おお?な、なんだこれ?」
「俺のせいだし、俺もお風呂入りたいし、離れたくないんだけどダメ?」
 戸惑う人を抱き込むと、頭に疑問符を生やしたままの恋人を素早く風呂場に連れ込んだ。正気付かれちゃうと逃げようとするのは確実だし、善は急げっていうしね。シーツごと鼻歌交じりで風呂場に横たえて、さあ御開帳ってところで激しい抵抗にあった。
「おわ!え?わっダメじゃ、ないですが!おいこら待て!う…ッ!」
 勢いよく暴れてたのに、いきなり活きのいいエビみたいに丸まってうめき声なんかあげるから痛いのかと焦ったけど、そのまま真っ赤になって膝をもじもじすり合わせている。ああこれってもしかして。
「俺の出てきちゃった?ごめんね?シーツは後で洗うから」
「わあ!言うなー!」
 顔を両手で覆って嘆いているのはすごくかわいそうなのに、頭の中まで春に染まったみたいに碌でもないことを考えてしまう。
シーツ早く見たい。綺麗にしてあげなきゃってこともちゃんとわかってるけど、それ以上に自分が彼の中に放ったモノを滴らせて身悶えしているのをこの目に焼き付けたい。
「はいはい。ちょっと我慢してね?」
 かわいいかわいい恋人は、見せかけの優しさにあっさり騙されてくれた。おずおずとシーツを脱ぎ、しかも自力でシャワーを浴びようと手を伸ばしている。手に握りしめている手ぬぐいらしきものは、いつもこの人が風呂場で体を洗うのに使っているものだろう。
 もちろん止めた。だってそんなもったいないことなんてできないでしょ?
「おわっ!なにすんですか!」
 シャワーを奪い取ると同時に、威嚇してくる人を強引に膝の上に乗せた。しばらくもが抵抗してくれたけど、素肌の感覚に驚いたのか割とすぐに大人しくなってくれた。今のうちに言い包めちゃわないとね。
「だーめ。俺が汚したんだから俺にさせてよ?」
「いいいいいえ!そんなの気にしなくていいから!頼むから、その!しばらくそっとしといてくださいよ…!」
 眉を下げてしょんぼりしてるんだけど、それがまたたまらなく嗜虐心をそそった。こんなおいしそうな状態の涙目の恋人に欲情しない男が世の中にいるだろうか。少なくとも俺は無理だ。性欲なんていくらでもコントロールできるつもりだったし、実際今まではできてたのにねぇ。この人にだけは無理。絶対に無理。体は疲労してるのに、いっそいくらでもできる気がする。
初心者にさすがに今日は無理だってのは分かってるんだけど、だからっていつまで我慢できるかなんてこれっぽっちも自信がなかった。
「いっぱい出しちゃったから…こんなに汚しちゃってごめんね…?」
 太腿を汚す白濁は後から後から零れ落ちてきて、指先で掬い取って肌に馴染ませるように触れると、泣きそうな顔で睨まれた。どうしてこう人を煽るようなことばかりするんだろう。十中八九自覚なんてしてないんだろうけど。
「うるせぇ!そ、それは俺も同意してたからいいんです!それはそれとして自分でなんとかするんで頼むから…!」
「ダメ?」
 逃がしたくなくて結構本気で悲しい表情になっていたと思う。あからさまに怯んでくれたもんね。
「その顔!反則だ!くっそう!あんたも洗わせてもらうからな!」
 威勢良く言い切ってくれたのはいいんだけど、洗わせてもらうって、なにそのサービス。意地になって石鹸を泡立ててるところをみると、どうやらこの楽園のような状態はしばらく続いてくれるらしい。
 ま、中を綺麗にするのは譲れないけどね。
「俺にも洗わせてね…?」
「うぅ…!す、好きにしたらいいでしょうが!」
 照れてるくせに泡立てたタオルで肌をがしがし擦ってくれて、なんていうか、うん。好きで好きでどうしようもないってこういうことなのかなぁって改めて幸せを?みしめた。

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適当。
_(:3」∠)_こどもの日ネタかきそこなったってばよ。
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