おいかけっこ6(適当)



「そういえばさ。お前名前なんていうんだっけ?」
教えてもらったのにまた忘れてた。母ちゃんが名前言わなくても分かったからいいけど、俺も忍になるんだし、もうちょっとがんばんなきゃだよな…。
…実は名前もあやしかったって母ちゃんにばれたら怒られるかもしれないからこっそり聞いた。
ふわふわでもこもこで、近所にいるむくむくの犬にちょっと似てる。
「カカシ。カカシっていうんだ」
「へー?カカシか。宜しくな!俺はイルカ」
「うん。イルカ。…イルカ」
繰り返し名前を呟いて、なんでかわかんないけど楽しそうだ。
変なヤツ。
まあでもいいヤツだよな!チョコケーキくれたし!
代わりに俺も滅多に作ってくれない貴重なおまけのお好み焼き分けてやったけどな!
いつものごはんにするヤツの半分よりちっちゃいヤツで、ソースで絵も描いてくれるし、たまにしか作ってもらえない。
母ちゃんが作るおやつはどれも美味い。
だから付いてきたヤツ…カカシも大喜びすると思ったのに。
「美味いだろ?母ちゃんの作る飯は、めちゃくちゃ美味いんだ!」
父ちゃんも俺も口癖みたいになってる台詞だ。
だってすっごく美味い。普通にお店で売ってるのより美味いと思うヤツもある。
「うん。おいしいね」
…なんか、違う。こいつ嘘ついてる。いや、嘘って言うか、こいつが食ってるのはおいしいとかじゃない。
笑ってるのに笑ってない。
「…なんだよ。折角母ちゃんが作ってくれたのに」
母ちゃんの作ってくれたおやつを馬鹿にされたみたいな気がして、ちょっとだけ泣きそうになった。
泣かないけどな!
だって俺はもうでっかいし、もうすぐアカデミーにだって行くし、コイツみたいにひょろひょろじゃないし!
「え!あ、ごめん!ちょっと懐かしくて。うちさ、母さんがいないんだ。何年か前に…え!あの!えっと!…ごめんね?」
母ちゃんがいないと聞いて、さっきまで堪えていたはずの涙が勝手に溢れ出してしまった。
だって、母ちゃんだぞ!
ごはん作ってくれて、褒めてくれるし怒るとめちゃくちゃ恐いけどすっげえやさしいし、あとは、あとは…とにかく母ちゃんはすごいし、大事なのに。
コイツにはそれが全部ないのか。
「カカシ。カカシはさ、俺んちにまた来いよ!」
なんだかわかんないけど悲しくて悲しくてそう言っていた。
俺の母ちゃんだし、父ちゃんのえーっとおよめさん?だから絶対に上げないけど、でもさ、でもさ。
母ちゃんの美味い飯とか食わせてもらってもいいよな?
「う、うん!」
何でほっぺた真っ赤なんだろ?もしかしてこいつも泣きそうなのかな。
…俺は多分聞いちゃいけないことを聞いちゃったから、ちゃんと謝っておかないとだよな。
「カカシ。えっと、ゴメン。あとさ、これから宜しくな!」
自然にそう言っていた。
だって、カカシはいいヤツだ。
「うん!」
一瞬だけ泣きそうな顔をして、それから今度こそ本当に笑ってくれたから。
だから嬉しくてぎゅってしておいた。
母ちゃんに父ちゃんがよくやってるやつだ。
元気が出るし、なんか胸がふわってする。父ちゃんは髭がもさってするけど安心するし、母ちゃんはやわらかくて暖かくていい匂いがする。
カカシは、なんだろう。細いけど力が強くて、なんか、なんか。

俺、がんばってコイツを守ろうって、何でかしらないけどそう思った。



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適当。
ちょっとあほのこ。溢れすぎてる庇護欲は親譲り。
ご意見ご感想お気軽にどうぞ。

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