支配者の唇


ヤンカカモノ注意ー!続き物再捕縛編?イルカてんてー視点。


仕事は片付いた。だからきっと、あの人は迎えに来る。
…いや、違う。きっとそれは…。

さっきから頭にもやが掛かったように思考が曖昧だ。あの手が、俺に触れたその感触がずっと肌に残って離れない。

今度こそきっと。

…その理由の無い確信だけを胸に、あの人を待っていた。

期待と、それから不安。何処かへ行ってしまうんじゃないかと、根拠の無い焦燥感にかられて、待っていたのはほんの数分だったはずなのに、随分と待たされたような気がした。

でも。

「イルカ先生。行こう?」

音も気配もなく現れて、俺の手を引いてくれた。そうするのが当然といわんばかりに。

ああ、やっとだ。

触れられる手に、やわらかくたわむ瞳。そしてきっと、その口布に隠された…薄く冷たく見えるのに柔らかくて、いつだって俺に優しく触れてきた唇が、ほくそ笑むように弧を描いているだろうことも知っていた。

見たことがないはずなのに、それが絶対に間違っていないという確信があった。
ありえない既視感に眩暈がする。

それなのにこの人は絶対に俺を見棄てないし、今度こそ手離さないでくれると浮かれる気持ちが抑えられなかった。

やっと。やっと取り戻した。
勝手に再生されるあいまいで断片的過ぎる記憶。そのことに酷く満たされる自分が恐ろしいのに。

…今度こそ、この手を放さないという思いだけが強く俺を突き動かしていた。

*****

手を引かれるままに連れてこられた店は見慣れない、だが明らかに上等な店だった。

「ここ」

終始にこやかな上忍の瞳が、穏やかな口調とかけ離れていることには気付いていた。

迎えに来てくれたときに俺を見つめたその瞳には、狂喜と、そして禍々しいまでの執着が映りこんで、それが俺を安心させてくれる。

おれはこのひとじゃなきゃだめなんだ。

ずっと一人でいて、でもきっと誰かが迎えに来てくれると闇雲に信じていた。その誰かが誰なのかも思い出せないのに。

でも、ソレを口にするたびに、ぞっとするほど表情が抜け落ちた顔をする養い親でもある里長が怖くて、悲しくて…だからずっと口にしないでいた。

その思いを忘れたことなどなかったけれど。

手馴れた様子で案内された部屋は一目見て上等だと分かる調度が設えられている個室で、すぐに店の女将らしき人も出て行ってしまった。

二人っきりだ。ここなら誰も邪魔しない。

あの時のように。

嬉しくて舞い上がりそうなのに、それを否定する自分がいる。
こんなのはおかしい。だって俺はこの人のことを良く知らないはずだ。

触れたいなんて…ありえないのに。

小さな食卓には向かい合うように座布団が敷かれていたから、その時に手を離してしまった。それだけで涙が出そうなほど悲しい。

俺は、どうしてしまったんだろう?

「イルカは、何が好きかなぁ?ここにオムライスはないんだよねぇ?」

「俺は、子どもじゃありませんよ」

そう、もうあの時のような子どもじゃない。

ふわふわのオムライスは今でも好きだけど、ラーメンの方が好きだし、酒だって飲める。
それに、もっと奥深くまで触れる方法も知っている。

あのときみたいにいっぽうてきじゃなくて。おれから。

「そうね。だから…」

そこで言葉を止めて、カカシ先生がゆっくりと見せ付けるように口布を下ろした。
その顔を知っているのに知らなくて、俺が見ない間に変わっていたことに腹が立つのに、知らないはずの顔を知っていることが恐ろしくて、もう訳がわからなくなって。

分かるのは。…このつりあがった赤い唇は、きっと俺の全てを飲み込んでしまうということだけ。

近づいてそっと触れてくるその唇の感触が泣きたくなるぐらい懐かしい。それがもたらすのは安堵と快感だ。
その確か過ぎる感覚に、我を忘れた。

もう、我慢しなくてもイイんだ。

激しさを増した口づけに必死で応えながら、自分からも舌を絡ませてそこから先を強請った。

何も考えたくない。だってもう、余計なことなんか考えなくてもいいんだから。


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誰も待ってないだろうヤンカカモノ続きー!
やはりこれは人が少ない時でないとのう…。
…えろ、いるんだろうか???そもニーズが心配だ…!
えんでぃんぐまではふやしそうなきがしますが!
ではではー!ご意見ご感想など、お気軽にどうぞー!

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