闇よりも深い瞳


ヤンカカモノ注意ー!続き物再捕縛編?カカチてんてー視点。


迎えにいったときのイルカの表情は、安堵と歓喜に満ちていて、それが俺を確信させてくれた。
…取り戻したのだと。

あの時と同じ瞳だった。
俺だけを求め、俺だけを映し、俺のためだけに笑ってくれたあの時の…ひたむきで真っ直ぐな瞳。

僅かに見せる躊躇いは、記憶を隠されているからだろうか?
無意識に俺に縋る手も、甘く響く声も、全てが俺を求めているというのに。

拒むことなどありえないと分かっていた。
ただ邪魔が入るのが面倒だったから、使い慣れた店に連れ込んだだけ。

融通が利き、口の堅い主は、かつて俺の手でその命を救われたからと、忍としての第一線を退いてからも手足のように使われることを望んだ。

そう、あの哀れな老人よりも俺のために働くことを選んだのだ。

食事も…勿論宿も用意させたが、待ってやれるなんて欠片も思わなかった。

やっと取り戻した。
長い長い間、奪われ、引き離されていた俺のモノを。

顔だけは穏やかさを装っても、凶暴な光を宿した己の瞳が、あの闇よりも深い漆黒の瞳に映りこんで全てを暴く。
…だが、イルカも。

陶然とした瞳は暗く激しい欲望の炎を宿している。
俺を、俺だけを求めている。

逃がさないとばかりにぎゅっと手を握り締めて。

まるで迎えに来た親に縋るようなその素振りを、これからもっと違う色に染めてしまおう。

…あの時のようにもう幼い子どもじゃない。
欲しいなら、その全てを奪い取って隠してしまえる。
それだけの地位と名と力を得た。

…あの老人が恐れていた通りに。

イルカも俺を求めている。
あの時は…きっと俺にされていることがなんなのかすら理解できていなかっただろう。
その瞳が今はあからさまな色を湛えて俺を射抜く。

「イルカは、何が好きかなぁ?ここにオムライスはないんだよねぇ?」

食卓につくために手を離しただけなのに、不安で一杯の顔をしてくれるから、少しだけからかってみたくなった。

今すぐにその肌を暴いてしまいたくてたまらないのに、あの時と同じ顔が俺にそうさせた。

「俺は、子どもじゃありませんよ」

そう、もうあの時のような子どもじゃない。
不満よりも欲情をその声にまで滲ませて、俺を捕らえた瞳が真っ直ぐに向けられている。

「そうね。だから…」

もう、こんなものは必要ない。
ここにいるのは…俺と、イルカだけ。

俺とイルカを隔てるモノは、顔を覆う布一枚さえ疎ましかった。

邪魔な布切れを引き下げて、俺だけのモノのためだけに笑った。心の底から。
その途端、泣きそうに歪んだ顔で、俺に手を伸ばしてくれた。

きっと俺は恐ろしく満足気な顔をしていただろう。
胸を満たすのは気が狂いそうなほどの歓喜。

何年ぶりか…直接触れたその唇は冷たく震えていて、頬を伝う涙が俺の手をぬらした。
触れるだけで痺れるほどの快感がわきあがる。

そうだ。やっと、やっと取り戻した。

もう、我慢しなくてもイイ。

その全てを飲み込んでしまいたいとさえ思いながら、あわただしく服を剥ぎ取り、その肌を暴くのに夢中になった。
イルカが俺を求めて誘うのに、頭の中が真っ白になるほど興奮した。

もう、誰にも渡さない。…この愛しい俺だけの…。

「イルカ」


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