帰ってきた変態(いつでも側に…!)
多少の覚悟はしていた。
何せヤツに与えられた任務は半年。
勿論俺はその間里から出る予定もないし、出る気もなかった。
…つまり、ヤツとしては俺のケツも触れなければ、俺を舐めることもできない環境に長期間留め置かれるコトになるわけだ。
当然、ヤツは相当な駄々を捏ねた。
「イルカ先生が一緒じゃないなら任務なんか行きません!」だの、「イルカ先生のおしりがない生活なんて…俺、生きていけない…!!!」だの、「踏んでもらえないし…!きっと狂っちゃう!!!」だの…俺のケツにへばりついて揉んで…涙ながらに言い続けた。
まあ、最後のに関しては、「五月蝿いぞ駄犬!貴様はとっくに狂ってるから安心しろ!」と言い渡し、思いっきり踏んでやったが。
だが…その後ヤツは勝手にもだえて気がついたら俺の上にのしかかって…!
いや、コレは…まあ、どうでもいいことだ。
とにかく、ヤツが喚きに喚いて、暗部に引きずられて任務に連れて行かれてから…俺はしばしの平安を十分に満喫することに専心してきた。
やつがいない平和な時間は、きっとそう長くは続かないと分かっていたから。
任務期間は確かに半年。…とある大規模な犯罪組織の内情を探り出し、崩壊させることだ。
ヤツでも一日や二日で終わらせることは出来ないだろう。
だが、確実に半年も掛からない。…俺がいない生活にやつがそんなに長く耐え切れるはずがないからな。
いつ帰ってくるか分からないというのは恐ろしかったが、それでも…しばらくは何とかなるはずだ。
そう思って、俺は我慢していたことを全部実行した。
ヤツがいる間には決して出来なかった長風呂、そして風呂上りにパンツ一丁で一気飲みするビール…他にも凝視されないでゆっくり食事ができ、いついかなる時もケツに気を配らなくてもいい生活を送ることが出来るのだ。
だが、平和な生活は、俺にとって長く、そして短かった。
ふとした瞬間に、勝手に出てくる飯がないことを寂しく思い始めた辺りから、俺は自分があの駄犬にならされているコトに恐怖を覚えた。それから…思わず駄犬の気配を探りながら生活してしまうことにも。
決定的だったのが、…その、そっちの方の処理だ。
ヤツがいる時は油断すると腎虚になりそうなくらい搾り取られて続けていたから、全然全く欠片も…何とかしようって気にはならなかった。
というか、そんな余裕もないくらいヤツにやられ放題だったというコトだが。
1週間は…ヤツに怯えつつ、心穏やかに過ごすことができた。だが、それ以降は…。
ヤツに出会う前はそれなりに…そういう処理はしていた。もう10代の頃のように盛ることはないにしろ、全くないというほどは枯れていない。
…結局不本意ながらその気になって自分で何とかしようとして…イけなかったのだ。
こすってもこすってもどうしようもなくて…ヤツのせいで俺の身体がどうかしてしまったって事を痛感させられた。
だがその事実が恐ろしくて萎え切ってしまったので結果的にはまだましだったのかもしれない。
ともかく、俺はヤツの気配に別の意味で怯えることとなった。
もし、ヤツが返ってきて、望まぬ禁欲を強いられた俺の身体が勝手にヤツに反応しようものならえらいことになる。
その気にならないよう何とか押さえ込もうとしても、なぜか毎晩のようにヤツにやられる夢を見て…もう思い出したくない。
ため息が多くなった俺を、三代目は心配し、同僚たちは、「大丈夫だって!まだ…もう少しは帰ってこないに決まってる!…多分。」なんて慰めてくれて…俺はえらく居心地の悪い思いをしている。
帰って来て欲しいのか、帰って来て欲しくないのか…もう、俺にはわからない。
まだたった2週間しか経っていないのに。
「駄犬なんてどうでもいいはずだったのに…!」
こぼした呟きは、梅雨空の雨にかき消されるだけだったけど…。
*****
重い。しかもなんか…あらぬ所が熱い。なのに動けない。もしかして…コレはまたあの夢だろうか?
俺の名を呼び、蕩けそうな微笑を浮かべてしがみ付き、挙句の果てにしつこく俺に腰を振りたて続けるあの馬鹿の夢。こんなに短い時間でこんなに妙な夢ばかり見させられてもううんざりだ。
「駄犬め…!」
思わず低い声が漏れる。
だが、その呟きに応えるものがあった。
「はぁい!アナタのカカシでぇす!!!たっだいまー!!!イルカ先生…!!!相変わらず魅惑のお尻をお持ちですね…!!!俺がいない間にめっきり色っぽく…は!?もしや間男!?」
「黙れ!」
思いっきり一括してから気がついた。
当然のように俺の攻撃をよけるこのすばやさ、そして変態的な言動と、気がつけば全裸の俺。
…全てが俺の平安が終わったことを示している。
「イルカ先生!お帰りなさいって言ってください!」
「お帰り…なんていうと思ったかこの駄犬!任務はどうした!?」
コイツが凄腕の上忍で変態でも、いくらなんでも早すぎる。よもや任務放棄でも…!?といぶかしんで問い詰めたと言うのに、変態は俺の股間を食い入るように見つめながら熱いため息をついている。
「俺のイルカ先生をひとりにしてだらだら任務なんかやってられないので、もう終わらせてきました!長かった…!夢でしかあえないなんてもう俺、このままじゃイルカ切れでしんじゃう所でしたよ…!!!」
涙目で語る言葉にうそはないだろう。
…だが…。
「アホか!!!お前は任務を何だと思ってるんだ!」
「ああんもう!寂しかったんですね…!大丈夫、これからいなかった分を取り返しますから!とりあえず…夢だとあんまりできなかったから、踏んでもらおうかな!」
…コイツは…!!!
踏んでもらうために腹を見せてベッドに転がる変態は、任務帰りというのが丸分かりの泥と血にまみれた姿だ。
…怪我はしていないようだな…。…別に心配してるわけじゃないぞ!
「いいからとっとと風呂入って来い!!!」
「はぁい!お風呂プレイですね!」
相変わらずコイツの脳は万年発情期のようだ。
だが、風呂場はマズイ!俺の…この不本意な状況をしられてしまう!
「お前一人で入れ!」
「照れなくても大丈夫ですよ…!やっぱり夢だけじゃなくて、ホンモノ同士がいいですよね!」
「…さっきから夢、夢しつこいが、一体何のことだ!?」
俺の夢…あの淫らで濃密な夢を除き見られたようで、ぞっとした。コイツならやりかねないし。
だが、事態はその更に上を行くものだった。
「だぁって!かわいいかわいいかわいい…俺の魂の番!永遠の伴侶!すばらしいおしりの魅惑の天使…俺のイルカ先生を一人にしたら、愛をタップリ注ぎ込んできた身体が夜鳴きしちゃうんじゃないかって…!それに我慢できないし!だから俺、頑張ったんです!」
「ナニをだ!?」
想像はコイツの発言で大体できたが…信じたくない。
もしかしなくても全部仕組まれた物だったなんて。
「俺がちゃぁあんと夢の中で会いに行ってましたから!最初はちょっと我慢したし!それにぃ!間男に何かされても絶対にその気になれないように、俺以外が触っても出せないようにしときました!!!」
「やっぱりか!?」
「もー!夢であってもイルカ先生は最高のお尻で…!寝てる間に出しすぎてちょっと大変でしたけど!!!洗濯しながら興奮しちゃうし!」
最悪だ。俺の苦悩はなんだったんだ…!
あの不安も、恐怖も、全部…コイツのせいじゃないか!!!
「ふざけるなこの駄犬!一体俺に何しやがった…!」
「愛をタップリ込めた術印とか術印とか術印とか…あと札とか術とかおまじないとか忍犬とかですかね!」
「ぎゃー!?何やってんだ貴様は!!!」
ヤツは姿を見せないだけで、一日たりとも俺から離れられないってことが良く分かった。
「さ、早速愛を確かめ合いましょうね!」
「わあ!?何しやがる!下ろせ!」
「生イルカ先生はヤッパリいい匂い…!今日も一杯気持ちよくなりましょうね!」
「離せー!!!」
…俺の叫びは大きく里中に響き渡ったが、当然誰も助けに来てはくれなかった。
*****
三代目は俺に「帰ってきてよかったのう!」などと能天気であさってな感激を表現してくれた。
同僚たちは「そう気を落とすなって!多分、その、いつかは落ち着くよ!…きっと!」などと慰めてくれた。
そして変態は…。
「お帰りなさいイルカ先生!まずは俺?それともご飯?やっぱり俺?風呂?風呂と見せかけて俺?やっぱりここは俺ですね!!!お、俺の特濃ミルクのタンクも満タンですよ…!!!」
家に帰るなりいつも通りの世迷いごとを喚いている。…全裸で。
ある意味これも日常だ。
変態曰く離れていた時間を埋めるため…らしいが、離れていた期間より長いことこの格好だから、十中八苦変態の趣味だろう。ソレも長く繰り返されて慣れてしまった。いきなり襲われやすくなったので十分な警戒が必要なくらいで…。
「最後のはいらん!とっとと飯!」
とりあえず命令に従って、何故か股間を反り返らせながら飯を用意する変態を見つめながら…俺は日常と言うものはどこまでを言うのか深く考えてみる羽目になったのだった。

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変態さんバージョン!…ちょっとだけ気合い入り。
うちのかわい…男前なイルカてんてーに、変態さんの帰還を…祝っ…いや、色々考えてもらいました! まだまだ…お帰りなさい祭りにご意見ご感想がございましたら、お気軽に拍手などからどうぞ! 引き続き…皆様!拍手でも何でもイイんだ!是非是非お帰りなさいと叫んで下さい…!!! 帰還を…一緒に寿いでくれ!!!

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